リリアン女学園付属図書館 「嬉し恥ずかしお弁当」

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嬉し恥ずかしお弁当

雪村 芽衣子



 お昼休み。大河内香と従姉妹である雪村芽衣子は家族をまじえてお弁当をひろげていた。
芽衣子「おばさま、お久しぶりです」
香の母「もうリリアンにはなれた? 芽衣子ちゃん」
芽衣子「ええ、香ちゃんが言った通りに過ごしているつもりです。おかげさまでお姉さまもできたし……」
香の母「だめよ~、香のゆうことなんか聞いちゃ。このこったらあの喋り方どうにかならないのかしらね」
香「……」
 芽衣子は心の中で自分の性格が男っぽくなった一因には香ちゃんの存在があるのではと思いつつも笑顔でその場をごまかした。
香はというと、さっきからなぜか落ち着きがない。それに気づいた芽衣子が問いかけた。
芽衣子「香ちゃん?」
香「芽衣子には関係ない」
芽衣子「関係ないって、なによ。このわたくしが珍しく心配してるのに!」
聖香「どうしたの? 芽衣子。大声なんか出しちゃって、みなさんもいらっしゃるのに」
 突然の耳慣れた声にぎょっとして芽衣子が振り返るとそこには芽衣子の姉である通称ロサ・ギガンティア、正木聖香の姿があった。
聖香「あ、ごきげんよう。香さまのお母様、お久しぶりです、いつもお世話になっています」
香の母「まあ聖香さん、ごきげんよう。どうぞ座って」
芽衣子「お姉さま……普通、妹の兄に先に挨拶しませんこと?」
聖香「ごめんさい、芽衣子。お兄様お久しぶりです」
 芽衣子の兄は軽く会釈して母さえ居ない女性陣に囲まれて少し困った様子であった。芽衣子はまだ機嫌が直っていないようすであったが、
親族一同はいつものことだと、談笑しつつご飯を食べていた。
聖香「よかったら、お昼ご一緒させていただいて、よろしいかしら?」
芽衣子「お姉さま……いくらスールとはいえ少しは遠慮したら?」
聖香「芽衣子の意地悪~私と一緒じゃ嫌というのね……」
香「芽衣子のことは気にしなくていいよ。急にお姉さまが現れたもんだから意地張ってるだけなんだから」
 それを聞いた芽衣子はにやりと不適な笑みをうかべた。
芽衣子「意地はってるのはどっちでしょうねぇ」
香「なんのこと?」
芽衣子「最近よく美術室にくるじゃない」
香「……」
聖香「ああ、あのかわいい子ね。わたくしも気になってましたわ。お名前はなんていったかしら?」
香「聖香までいっしょになって……」
芽衣子「黒崎のぞ……あ、望さんだ!」
 今度は二人が同時に芽衣子の指さすその方向を観ると、そこにはまぎれもない一年松組で美術部の黒崎望が立っていた。お弁当を片手に彼女はだいぶ動揺した感じであった。
望「私が、どうかしました?」
芽衣子「望さん、待ってたわ、さあ一緒に食べましょう」
聖香「遠慮なんてなしよ、美術部では芽衣子がいつもお世話になってるのだし、いらっしゃい望さん」
 望はおずおずと無言で聖香と芽衣子のつくった香の隣のスペースに緊張した様子で座った。
聖香「望さん、わたしのたこさんウィンナーあげるわね」
望「わぁ。ありがとうございます。今日入ってなかったんです」
芽衣子「望さん、わたくしのからあげあげるね」
望「芽衣子さんも?」
聖香「あら、芽衣子もお料理の腕上げたわね、前はから揚げなんて作れなかったじゃない?」
芽衣子「どうせ、母がつくりました……」
望「じゃあ私の玉子焼きも食べてみてください。これだけは定評があるんです」
聖香「ありがとう、いただくわ。おいしい、香さまもいかがです?」
香「いや、僕は……えーっと、望さん、春巻きは嫌いじゃない?」
望「春巻きは好物です。ありがとうございます、香さま」
聖香「中華なんて、作れますのね。さすが香さま、今度教えてくれません?」
香「……母がつくりました」
 さすがに一同が沈黙した。が、すぐに望が
望「お母様、お料理上手なんですね」
 と、笑顔でおいしそうに春巻きを食べ始めた。それを見た香はさっきまでとはうってかわってほっとした様子であった。芽衣子がひじで聖香をつつく。
芽衣子「お姉さま、わたくしたちが居なくてもだいじょぶそうね」
聖香「そうですわね、いい感じね。お二人とも」
香「なに二人でコソコソはなしてるのさ?」
芽衣子「香ちゃんには関係ない」
香「う……」
聖香「もうこんな時間! 早くお弁当、食べないとフォークダンスに間に合いませんわ」
 あわててお弁当を食べ始めた一同だったが、その時、聖香にも芽衣子にも見えないようにそっと望が香にささやいた。
望「交換です」
 香のお弁当箱のすみにはちょこんと望のつくった玉子焼きがおいてあった。

xxx終わりxxx