リリアン女学園付属図書館 「伝説の本」

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伝説の本

正木 聖香



今日は卒業式前日。1・2年生も明日の式の準備のため、お昼までの授業だった。
私は、借りていた本を返しに図書館のドアを開けた。
「ごきげんよう」笑顔でカウンターにいたのは、
東雲柚妃さん。一年藤組のいつも笑顔が可愛い図書委員さんだ。
「ありがとう、柚妃さん。とても読みたかった本だったの、取り寄せて
貰ってよかったわ、かずらさんにもお礼言っておいてね」
「いえ、図書委員のお仕事ですし。その本はあしながおじさんの続編
なんですよね? ぜひ次は柚妃が借りてみたいです!」
「ええ、是非。でも、柚妃さんが西洋の児童文学に興味があるなんて
ちょっと、意外ね」
「ああ!聖香さま、柚妃がジャニーズの写真集とかそんなのばっかり、読んでる
なんて思ったでしょう?」そう言うと柚妃さんはちょっと、膨れっ面になった。
「ふふ、そんな事は思ってないわよ。でも柚妃さんってどちらかというと和の
イメージだわ、茶道部だし。そうそう十二単なんか似合いそう」
柚妃さんの顔がみるみる赤くなった。
「聖香さまったら、柚妃を褒めたって。なにも出ませんから!図書館ですから
本をお貸しすることはできますけど」
「あはは、なら図書館秘蔵のあの『伝説の本』をお貸ししていただけるかしら?」
私が悪戯っぽい顔で言うと。柚妃さんは慌てて
「え!?この図書館に伝説の本なんてあるのですか?図鑑なら、貸し出し禁止のが
ありますけど。かずらさまから、そんな話なんて聞いたことないし……」
真顔で、悩む柚妃さんを見て。私はますます面白くなって。
「ええ、たしか学園創立時からその本はあるのだけど。その本を手にした人は、次々と不幸に襲われるの。見かねた前の学園長さまはその本を図書館の奥に厳重に保管されてるって、もっぽらの噂よ。柚妃さんは聞いたことない?」
「は、初耳です。で、でも聖香さまがなぜ。そのような本を…… だって誰もが不幸になってしまう本なんでしょ?」
「そうね、でもその本を手にするとひとつだけ『願い事』を叶えることができるの
願えば、なんでもそれが本当になる魔法の本ね、だけど代わりにそれだけの代償があるってことかしら?
でも、興味があるじゃない柚妃さん、もしこの本があれば、何をお願いする?」
柚妃さんは、少し悩んで
「願い事ですか?ええっと明日、卒業される三年菊組の薫さまにお会いしたいです!図書委員の先輩でしたが、とてもお忙しいみたいで。卒業式までにお別れの
挨拶をしたくて……」
柚妃さんは、顔を真っ赤にしながら、「願い事」を告白してくれた。
三年菊組の伊達薫さまは、「才色兼備」という言葉がピッタリという先輩で。特に文筆の才能は多彩で小説のコンクールや、俳句や短歌にも入選作を出した事も
ある、リリアンの一の「小説家」である。
私の憧れでもあり、卒業後は某大学の文学科に進み。その才能が認められて、
処女作となる小説の出版もリリアン卒業と同時に出版予定なのである。
その時。ポン!!
私は後ろから、本で軽く頭を叩かれた。後ろを振り返ると。
「はい聖香、お待ちどう!これが、我が図書館の伝説の本よ!」
な、なんと、後ろにいるのは薫さまだった!さすがに私もビックリして。
「か、薫さま。学校にいらしてたのですか?」
「あら、私がいちゃ悪かったかしら?それに、聖香!私のかわいい柚妃ちゃんをからかうのはよしてくれる?伝説の本なんてうちにはありません。あるのは、この『Alice in Wonderland』だけよ!」
私は気が動転してしまい
「ごめんなさい、私、この間のバレンタインイベントで柚妃さんへのプレゼントを考えていたのですけど。浮かばなくて、咄嗟にちょっとした悪戯で、柚妃さんから聞き出そうとしてまったの。柚妃さんもごめんなさいね」
柚妃さんも、呆気に取られている。どうやら、薫さまは柚妃さんの『願い事』は
聞かれてなかったようだ。幸いにも、薫さまはその時、私を懲らしめる為の
「伝説の本」を探しに行っていたのだった。
「もう聖香ったら、もし柚妃ちゃんが『未来に行きたい』とか『空を飛びたい」とか言ったらどうするつもりだったの?」
「はは…… それはごもっともです。でも柚妃さんへ、一つプレゼントができたみたいね」
「は?」 薫さまは不思議な顔をしながら。
「柚妃ちゃん、せっかくだから。この『伝説の本』で、聖香に願い事聞いてもらいなさい。願い事の代償は、私から聖香に後で、お灸をすえるという事で聖香が引き受けてくれるわ。ね?聖香」
「はい、薫さま。たっぷり、焼くなり煮るなり好きにしてください!」
面白がってる、薫さまに、私も冗談たっぷりに返事をした。
「ええ、じゃあ聖香さま、今度、柚妃にチョコレートパフェを奢ってください。
飛びっきり大きいのを!」
「あら、柚妃ちゃん、聖香がもっと困っちゃう願い事すればいいのに?本当に
可愛い子ね」
薫さまに、頭を撫でられた柚妃さんはとても幸せそうだった。
邪魔者はそろそろ、去ったほうがいいみたいだ。
「では、私は山百合会の仕事がありますので、柚妃さん、パフェの件はわかったわ。今度、ご馳走してあげるわね。では、薫さま、卒業おめでとうございます。
ごきげんよう」
「ありがとう、聖香。私が卒業しても、柚妃ちゃんをいじめたら承知しませんからね!ごきげんよう」
愉快そうな笑顔で、薫さまは私を見送ってくださった。
「聖香さま、伝説って本当だったのですね。ごきげんよう」
図書館を出ようとする私に、柚妃さんは小さな声で呟き、微笑んで答えてくれた。
その目には少し光る物が見えた気がした。

「Alice in Wonderland」は私と柚妃さんだけの「伝説の本」となって
今も図書館に眠っている。
                                 おわり

あとがき



柚妃さんへ、バレンタインイベントの
プレゼントとして書かせていただきました。
作中に登場する「伊達薫さま」は春菜さんの
作成したNPCの三年生です。