リリアン女学園付属図書館 「ミックス☆ジュース」リメイク版 第一話

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ミックス☆ジュース リメイク版 第一話

私市 朔耶



「ねぇ、ブドウとマスカットって、ジュースにした時にどっちがおいしいと思う?」
「えーと・・・どうなんでしょうねぇ。
 どちらかと言えば、マスカットの方がさっぱりしてると思いますよ?」
「朔耶さまー、いいオレンジの選び方とかって知ってますかー?」
 うっすらと寒さの降りてき始めた、神無月の終わり。
 揉めに揉めた文化祭企画だったが、ジュースバーをやろうと言うことで、話のまとまったリリアン女学院剣道部。
 その部員である、大河内香、私市朔耶、都橋彩の三人は、翌日に控えた文化祭のために、学校最寄のスーパーへ買出しに来ていた。
 文化祭の準備と言う名目があること、さらに女の子だけでの買い物と言うこともあって、中々どうしてあれも欲しいこれも欲しいになってしまい、買い物篭がどんどん膨れ上がっていく。
「ちょっと朔耶、なに、そのりんごの量は」
「え?
 いや、りんごジュースは需要が高いものかと思いまして」
 オレンジを抱えてひょっこり戻ってきた彩が、朔耶の脇から冗談を飛ばす。
「てゆーか、ご自分で食べるつもりだったりして?」
「・・・・・・」
「な、なんですかその間は!?」
「えぇとですねぇ、いいオレンジの選び方ですけど――」
「話をそらさないで下さい!」
 ・・・冗談が冗談でなくなったようだ。
 そんなこんなで、買い物は楽しく進んでいく。
「レモンがあるのなら、蜂蜜も買っておきましょうか?」
「あ、賛成ですー」
「それだったら、ミルクもあった方がいいんじゃないかな?」
 あれやこれといった、隠し味もばっちり。
 その他、各員持ち寄った調理器具だけでは足りなかった物も揃えた。
 一通りの物を取り揃え、レジに向かおうとした三人。
 レジの方向、その視線の先に、なんと京がいた。
「ねぇ、あれって・・・」
「香クン、静かにッ」
「・・・(ゴクリッ)」
 ついつい京の視界の中に入らないポジションまで移動してしまった三人の事など知るよしもなく、京は会計を済ませる。
 レジのお姉さんからレシートを受けとって、こちらに気づかぬまま歩き出した京。
 その手に持っている買い物袋の中には、『何か』が大量に入っていた。
「持ってたのって・・・多分、わさび・・・だよねぇ」
「いえ、私はからしのように見えましたが?」
「え、でも、あの黒いビン。あれって、バルサミコ酢じゃ・・・」
「でも、それだけじゃなかった」
 ――京さまファンの人、がんばって。
 3人で同じ思いに浸っていた時、彼女たちはもう一人、見知った人間を見つけた。
「あ、香クン、玲さんもいらっしゃいますよ?」
「玲も多分、ここで調味料を揃えるつもりなんだろうね。
 ところで彩さん、玲が何買ってるか、見える?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、私は・・・」
「彩さん、その長い空白の意味は、何ですか・・・?」
「いえ、あの、お醤油が・・・」
「・・・・・・自宅が近いそうだから、ご家庭のお買い物かもしれないよ」
「そ、そうですよね、みりんや和風だしもありましたから」
 ともかく、ここでこうして隠れていても仕方がない。
 三人でレジへ向かう。
 とりあえずびっくりしたのが、レジのお姉さん。
「すごい量ですね、これ、全部みなさんでお食べになられるんですか?」
「いえ、明日の文化祭でジューススタンドをやるんですよ。
 これは、その材料なんです。」
「あ、そうでしたか、これは大変失礼しました」
「いえいえ、お構いなく。
 これだけ買えば、一言尋ねてみたくなるのもわかりますから(^^;」
 朔耶とそんなやり取りをしながらも、手際よく商品を数えていくお姉さん。
 ピッ、ピッとバーコードを読み取っていく様子を、香は何の気なく眺めていた。
 ――・・・おやぁ?
「ねぇ、彩さん、まさかとは思うけど、真っ赤に熟れた唐辛子とかって・・・」
「はい、もちろん買いましたよ?」
「・・・」
 確認を取ってしまったことを軽く後悔し、沈黙する香。
 彼女は思った。
 ――最低でも、自分の飲む分は、ちゃんと自分で作ろう――と。


 なかなかに重量のある買い物だったが、そこは日ごろ体を鍛えている剣道部。
 キャスター付の買い物籠も貸してもらい、ガラガラと重みのある音を鳴らしつつ、さして遠くない学校へ向かう。
「もう明日なんですね、文化祭。
 今更ですが、私、ワクワクしてきましたよ」
「はい、私も楽しみで仕方ないです。
 ね、香さま?」
「うん、そうだね(・・・無事に終わればいいけど・・・)」
 真っ赤に染まった並木道を、三つの長い影が通り過ぎていく。
 そうこうしている間にも、今日という日は、少しずつ暮れていく。
 そして、また少しずつ上るのだろう。
 今日はまだ、ただの始まりにすぎないのだから。


あとがき



以前にお読み頂いた時、これは準備SSでした。
私の、自分の作品に対する不安がにじみ出ているようでお恥ずかしいのですが、
コレがあってはじめての長編『ミックス☆ジュース』なわけでして・・・。
なので、今回は第一話になってもらいました。