リリアン女学園付属図書館 「ミックス☆ジュース」リメイク版 第六話

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ミックス☆ジュース リメイク版 第六話

私市 朔耶



「ごきげんよう、香さま」
「お、望ちゃんじゃない、いらっしゃい^^
 ・・・あれ?
 ねぇ、芽衣子は一緒じゃなかったの?」
 一人でやってきた可憐な人物に、大河内香は歓迎と、そして疑問を差し出した。
 芽衣子とは、白薔薇のつぼみである雪村芽衣子嬢のことだろう。
 お客の彼女、黒崎望は、芽衣子ちゃんと一緒に行くからね、と香に前もって連絡していたのである。
「それが・・・あの・・・
 途中までは一緒にいたんです。
 でも、お姉さまを連れてくるのを忘れたって言って、一目散に―――」
「薔薇の館へとんでっちゃったんだ?」
「はい・・・」
 その慌てていたであろう、芽衣子の姿を思い描き、香は小さく吹き出すと、微笑ましい、と言った表情で言葉をつむぎだし。
「まったく、しょうがない子だね」
「でも、それも芽衣子ちゃんのいいところだから・・・
 ところで、なんなんですか?その格好」
「あぁ、これ?
 ウチのリンゴ大王の陰謀。。」
「ちょっと香クン、ノリノリなのに何言ってるんですか」
 軽い当てこすりに、奥から苦笑いを混ぜた反論をよこしたのは、香の言うリンゴ大王に当てはまる人物、私市朔耶だ。
「直前まで秘密にしてたでしょうが」
「そこはそれ、意外性がないと、盛り上がりに欠けますから」
「朔耶はどこかのTVのディレクターかい・・・?」
「えー?
 あー、うーんと・・・(^^;
 そ、それより、お客さん待たせてていいんですか?」
 三年生二人だけでとんとん進む会話に入っていけず、カウンターの向こうでオロオロしている望に配慮を向ける。
 ただ単に話題をそらしただけ、と言うところに突っ込んではいけない。
「おっと、ごめんごめん。
 そうだね、望ちゃんのを先に作っちゃおうか。
 何のジュースがいいんだっけ?」
 望は右手の人差し指をあごに当て、少し考えた。
「暖かいものがいいんですけれど・・・」
「暖かいもの?
 う~ん・・・わかった、がんばってみる」
 香は右手を上げる。
 これでいつも竹刀を握っているとは思えないほど、しなやかな細い指先だ。
 人差し指だけ立てると、ある一点を指し示した。
「見えるかな、あそこに椅子あるでしょ?
 アレが待合席だから、そこで待っててもらえるかな?」
「はい、わかりました。
 ・・・香さま?」
「ん?なぁに?」
「おいしいの、期待してますわ^^」
 にっこりと微笑んだ彼女の笑顔は、香のやる気に火をつけた。


「えーっとですねぇ、そしたらホットレモンとかがいいんじゃないですか?」
「・・・なるほど、朔耶にもリンゴ以外の選択肢があるんだね」
「なんですか、それ」
「自覚ないの・・・?
 自分が事あるごとにリンゴリンゴ言ってるの」
「知ってますけど・・・私にも一応の常識が・・・」
「うん、まぁそうだろうけど」
「・・・一応聞きますが、リンゴって言う確立が高い私に、なぜ相談を?」
「そんなの、見てのとおりだよ。
 玲はさっきからあのペースの注文数だから相談してらんないし、
 彩は唐辛子がどうとかいうに決まってる。
 京はもちろん、論外」
「消去法で私ですか。。」
「そーゆーこと。
 まぁいい参考になったし、今後はもうちょっと朔耶を信用してみることにするよ^^」
「・・・綺麗な笑顔なのに、ずいぶん毒舌なんですねぇ(^^;」


「香ちゃん、来たわよ!」
「はぁ、もう、芽衣子、そんなに走らなくても・・・!」
 声に気がついて、朔耶は振り向いた。
 その目に映ったのは、カウンターを両手でがしっと掴んでいる元気いっぱいの雪村芽衣子と、ひざに手を当てぜぇぜぇと肩で息をしている正木聖香。
 山百合会に名を刻む、白薔薇の姉妹だ。
 文化祭の前日、当日ははしゃぎ回ったり忙しく動き回ることに目を瞑って貰えるとは言っても、立場を鑑みればもう少し控えるべきではなかろうか。
「いつぞやのように、ちょっと暴走気味ですね、芽衣子さん(^^;
 元気なのはいいことですけど、聖香さん疲れちゃってますし、
 私たちはここから逃げたりしないですよ?」
「あ、朔耶さま。
 あの時はどうも!
 って、えぇぇぇぇ!?」
「はぁ、はぁ、ご、ごきげんよう、さくやさま・・・んなぁぁぁぁ!?」
「・・・どうしました?
 芽衣子さんも聖香さんも、そろって変な声出して」
 芽衣子は左手で敬礼のポーズを取り、そのまま少し手が緩んで固まっている。
 走ってきて疲れた聖香は中腰から顔を上げたところで奇声を上げた。
 二人は目を『驚いている』と言うのを強調するがごとく見開いていて、それがさりげに可愛かったりするのだが、薔薇らしからぬのは言うまでもない。
 全校生徒の憧れの的たちは、脳内でなにをどう処理したのか、顔を見合わせると、そのまま姉妹内で口論を開始する。
「ちょっと芽衣子!
 どうして剣道部がこんな素敵な姿してるのに教えてくれなかったの!?」
「あたしも今来たんですよ、お姉さま!
 教えるも何も、あたしが行くまで薔薇の館でのんびりしてたくせに!」
「あ、そう言えば聖香さんは写真部でしたっけ?」
「そうですよ、あぁもう芽衣子が急かすからカメラを忘れてきちゃった・・・」
「あ、お姉さまそれ酷い!
 あたしのせいにする気ですか!?」
「まぁまぁまぁまぁ(^^;
 何度も言いますけど、私たち逃げたりしませんから。
 シャッターチャンスはいくらでもありますって、聖香さん。
 それより、何か飲んで落ち着きませんか?
 おあつらえ向きに、ここはジュースバーなんですから^^」
 ホストと言うより商売人のような口の回し方。
 一応三人の中では一番の年長者なので、二人は朔耶の顔を立てて、矛を収めた。
「そ、そうですわね、じゃあお言葉に甘えますわ。
 私は、玲さまにお願いしたいんですけれど・・・」
「玲さん、オッケーですか?」
 カウンターの奥から凛々しい声が返ってくる。
「あぁ、いつでもいいよ」
 タオルで手を拭いた後、ふぅ、とため息を一つ。
 腰に両の手を当てて「どっからでもこい」とアピールする。
「じゃぁ、あたしもついでにいいかしら?」
 今までの誰でもない声色に、一同「えっ?」と言ってふりかえる。
 ぱちり、ぱちり。
「おー、いい感じに素顔が撮れたわ。
 どうかな朔耶さん、今の写真、現像したら展示していい?」
「つ、つなみさん!?」
 なんとそこには、聖香と同じ写真部の3年生、椎名つなみがカメラを片手に立っていた。
「・・・二人ともおんなじジュースで良ければ一辺に作れるよ?」
 律儀な玲は、つなみの質問に的確な答えを返す。
「ええ、じゃーそれでお願い」
「ところで、つなみさん、何でカメラをお持ちなんですか?」
「あら、失礼ね朔耶さん、今は文化祭の真っ最中よ?
 それに、写真部の生徒たるものは、いつ・なんどきでもカメラを手放したりなんかしないものよ。
 そうよね、聖香?」
「・・・(、、;」
 俯いたまま、ウンともスンとも言えない聖香嬢。
 まさかここで、ごめんなさい持っていません、とは言えない訳で。
「ところで、二人とも何のジュースが飲みたいんだい?」
「・・・・・・えーっと?」
 状況をうまくつかめていないのか、少しの間沈黙する。 
「あー、そっか、注文の途中に私が割って入っちゃったのね。
 聖香、何をたのむつもりだったの?」
「えーと、すみません、考えてませんでした・・・」
「そう、それなら玲さんにまかせましょ。
 とびきり美味しいので、ヨロシクね^^」
「心得ました」
 玲の、まるで執事のような台詞は、多少気障ながらもその自信が垣間見えた。
 言うが早いか、作業に取り掛かる彼女は真剣そのもの。
 りりしい横顔は、ファンが多いのも素直にうなずけるほどだ。
「で、芽衣子さんはどうします?」
「あたしは、香ちゃんに事前にお願いしてあるんだけど・・・」
「ざーんねん、香は今、別件でお仕事中よ」
『あ。』
 新たなる登場人物に、芽衣子以外が全員ハモッて声を出した。
 一瞬遅れて、芽衣子が口を動かす。
「げっ、ロサ・フェティダ・・・!」
 のけぞりつつ発したロサ・フェティダとは、常盤京の事だ。
「何よ芽衣子、その『げっ』て言うのは?」
「言っていいの・・・?」
「あーっと芽衣子さんストップ、駄目ですその先は。」
 朔耶があわてて芽衣子の口をふさぐ。
 モガモガした声とバタバタした両手で「手を離せ」と抗議するが、ここで手を離すと芽衣子が何を言うかわからないので、笑顔でごまかしつつ抗議を流す。
 芽衣子が何も言えなくなってしまったのをいいことに、京は話を先に進める。
「と言うわけで、芽衣子の分は私が作ってあげるわ」
 その言葉を聴いたとたん、芽衣子の反応が変わった。
 全力で朔耶の手をぐいっと下へずらし、いや体を持ち上げつつ、力いっぱいに抗議する。
「何がどう、『と言うわけ』なのよ!?」
「だいじょーぶよ芽衣子、レシピはちゃんと持ってるから」
「・・・ほんとにレシピどお(むぐ)」
「(つなみさま、そんなこと聞いたら危険ですっ!)」
「じゃ、お客さま三人は、おとなしく待っててね☆」
 常盤京はウィンクをひとつすると、芽衣子がなにやら騒いでいるのも聞かずに奥へ行ってしまった。


「ねぇ芽衣子、レシピって、何のことだったの?」
「あれ?お姉さまには言ってませんでしたか?」
「あ、香クンから聞きましたよ。
 なんでも、イメージは雪の上の椿。
 中身には、イチゴジュースにミントの葉を乗せたものだそうで?」
「そうですわ。
 製法が難しいから、先にレシピを渡しておきましたのに・・・」
「結局、それがあだになっちゃったのねぇ」
「ごめんね、私がもうちょっと待っていれば・・・」
「いいのよ望ちゃん、もうこの際仕方ないわ。
 限りなくゼロに近いけど、まともなものがくるのを期待する」
 などと、待合用のいすに腰掛けて、あきらめの雑談をしていると。
「さすがの京も、アレはてこずってたよ?」
「あ、香クン」
「香ちゃん!
 あたしをほったらかして、何してたのよ!?」
「え?
 そりゃもちろん、営業だよ。
 はい望ちゃん、待たせてごめんね、ホットレモン」
 ありがとうございます、と言って受け取るのだが、口をつけようとしない。
 芽衣子の分ができるまで、待つつもりなのだろう。
 何の事はなく現れた香に、朔耶は疑問をぶつけてみる。
「ところで、京さんは香クンが用事だって言ってたんですけど・・・?」
「いや、だからずっと中にいたんだってば。
 望ちゃんのジュース作らないで、いったいどこに行くって言うの?」
「だから、『仕事中』だったんですか・・・」
「・・・ハメられた・・・」
 がっくり肩を落とす白薔薇のつぼみ。
 その肩を叩きつつ、香は芽衣子を慰める。
「まぁまぁ芽衣子。
 多分今回は大丈夫じゃないかな?
 変なもの混ぜると形にならないから、あのジュース」
「まーったく、難儀なもん注文してくれたわよねぇ」
「うぉわ!ロサ・フェティダ!?」
 本人は軽いいたずらのつもりなのだろう、唐突な登場が好きな京。
 今回その隣には、涼しげな表情の玲もいる。
「変な声出さないの。
 あなたも、誉れ高い次期白薔薇の候補なのよ?」
「はい・・・。
 ・・・あまり聞きたくないけど、ジュースの方は?」
「ちゃーんと、ここにあるわよ。
 ね、玲?」
「もちろんだ。
 お待たせしたね、二人とも。
 京が面白いもの作っていたから、レシピ真似させてもらったよ」
「わ~、綺麗・・・」
 二人の持ってきた透明のカップ。
 そこには、赤と白のコントラストの美しい、芸術品があった。
 飲んでしまうのがもったいないその三つの作品は、それぞれ、注文者の手に渡る。
「初めて作ったから、うまくいったかわからない。
 飲んでみてくれないか?」
「はい、喜んでちょうだいいたします」
 白薔薇さまといえども、ミスターリリアンの眼力には力及ばなかったか。
 うっとりした表情でカップを受け取ると、そっと口をつける。
 ち~~るるる~~~。
「・・・とっても、おいしいです♪」
 その笑顔はまるで夢見る少女のようだった、と、隣で見ていたつなみは語る。
 持っていたカメラでしっかりシャッターを切っていたつなみ。
 その写真は後に聖香に見つけられ、没収されてしまう運命なのだが。
「んじゃ、はい。
 次は芽衣子の番よ」
 ずぃ、と手渡された物には、玲のもの以上の洗練された品格がある。
 それでもどことなく怪しく感じるのは、芽衣子の意識に刷り込まれた、度重なる試練のせいか。
「う~・・・いただきます。」
 ぱくっ・・・ちぅ~~~~。
「・・・おいしい」
 きょとーんとしている芽衣子。
 どーんなもんだい、と、大きく胸を張っている京は、どこか嬉しそうにも見えた。
「・・・もうちょっと、信用してもいいのかな(ぼそっ)」
「ん?
 芽衣子、なんか言った?」
「あー!(照れ隠しの大声)
 そうよ、元はといえば香ちゃんがあたしを待っててくれなかったのが・・・」
「望ちゃんは、ちゃんと待ってたよ?
 ごめんね、ホットレモン抱えさせたまんまで。」
「いえ、そんな・・・
 では、私もいただきますね」
 そっと口をつけると、やはり熱かったのか、一度口を離す。
 熱をさまそうとして、ふ~ふ~と息を吹きかけているのだが・・・。
「あの、すみません、みなさん・・・」
「はい?
 どうかしましたか?」
 突然のアクシデントに、望以外の全員が、なに?何が起こったの?と顔を見合わせる。
 少々恥ずかしそうに望が告げた内容はこうだ。
「その、あまり、じぃっと見ていられると・・・すみません(///」
『・・・』
 7人分の視線にさらされた中で『飲む』という行為は、確かにキツいものがあるだろう。
 気を取り直して、コクコクとホットレモンを飲む少女。
「あたたかくて、おいしいです。
 香さま、ありがとうございます」
 熱かったのか、恥ずかったのか、赤みの残る頬に笑顔を浮かべ、香に礼を言った。
 なんの、このくらい。
 そんな感じの多少そっけない返事だったが、香もまんざら悪い気はしなかったのは、その場の全員が感じ取れた。


「じゃあ、あたしもっとあっちこっち撮ってくるから。
 聖香、カメラ手放しちゃ、だめよ?」
「・・・はい、すみません」
 しっかりバレていた聖香は、小さな肩をさらに小さくして、謝った。
 つなみは、アレは一種の特殊技能なのか、すぐに人ごみに紛れると、わからなくなった。
「じゃ、お姉さま、一度薔薇の館に戻りましょう」
「そうね、そうしましょうか」
 白薔薇姉妹はステレオでごきげんよう、と言うと、薔薇の館へと向かっていった。
 二人の手には、まだ例の飲み物が握られている。
 もったいないから、一気には飲みきれない、とのことだ。
「望ちゃんはどうするの?」
「そうですね、一人になってしまいましたから・・・
 そのあたりを、ちょっと回ってこようと思います。
 よろしければ、香さまも一緒に・・・
 あ、もしかしてまだお仕事残ってらっしゃいますか?」
 邪心や含みのない、真っ直ぐな瞳。
 正真正銘の、純粋培養のお嬢様がここにいる。
 これはちょっと危ないな、と思った京は、香をけしかける。
「香、ついていってあげなさいよ。
 ちょっと早いけど、休憩にしちゃっていいから」
「いいの?
 それはそれで嬉しいし、僕は構わないんだけれど・・・」
「優柔不断ねぇ、今日は栄えあるリリアン女学院の文化祭なのよ?
 男どもだって、多少は紛れてるわ。
 もし、この子に変な虫でもついたら・・・」
「望ちゃん、一緒に行こう(きっぱり)。
 京、冗談でも、そういう事は言って欲しくないな」
「この子の場合、冗談だけじゃ済まないんじゃないの?
 じゃー望ちゃん、ナイトは貸しておいてあげるから、楽しんできなさい(^^)」
「はい!
 香さま、早く行きましょう♪」
「あぁ、危ないから引っ張らないで(^^;」
 祭とはかくあるものか。
 そう目立つ身長でもない二人は、道行く人とぶつかりそうになる。
「こらぁ、気をつけなさいよー!?」
 最後の忠告は聞こえたかどうか。
 京には、やかましい人ごみの中から、かすかに、二人のものと思われる笑い声が聞こえてきたという。


あとがき



この作品が長くなっている理由は、書き方を変えたからなんですよ。
ここでは、自分でシナリオを考えると言うより、むしろ登場人物たちどうしに会話をしてもらい、
その妄想の産物をそのまま書き連ねていくと言う、小説を読むときと全く逆の操作にしてみました。
偉そうなことを言っているようですが、ようは読書をするがごとく徒然なるままに筆を走らせただけなんですね(^^;
そのわりに話がまとまっているのは、慣れと、やはり登場キャラクターのおかげかとおもいます。