「ミックス☆ジュース」リメイク版 最終話

ミックス☆ジュース リメイク版 最終話

私市 朔耶



「さて、そろそろここも片付け始めないと・・・」
「あら、もう?
 お邪魔じゃなければ、私にも一杯頂けないかしら?」
 おそらく、今回の文化祭最後のお客様である。
 学園内で見慣れた衣装、やさしい物腰、正しい言葉使いの、人生の先輩。
「学園長!」
「あら、そんなにおどろかないで欲しいわ。
 それとも、何か悪いことでもしてたのかしら?」
「いえ、そんなことは・・・(いろいろと・・・(衣装とかw)
 そうですね、せっかく来て頂いたんですから、作りましょう、ジュース。
 ちょっとそちらの席で待っていてくださいますか?」


「・・・と言うのはどうでしょう?」
「行き当たりばったりで、それを学園長に?」
「面白そうじゃない、やってみましょうよ」
「そうだな、私も悪くないと思う」
「隠し味は、もう在庫切れですし(笑)」
「じゃ、そーゆーことで(^^)」


『お待たせしました、学園長』
 5人分の声と、意外ときれいなハーモニー。
 夕焼け色に染まる校舎を眺めていた学園長は、ゆったりと振り向いた。
「ごめんなさいね、無理を言って。
 通りすがりの子に聞いたのだけれど、剣道部のジュースバーって指名制だったんですってね?」
 京が会話を返す。
「ええ、でも、流石に誰、とは言いにくいでしょうから、ちょっと工夫をしました」
 こらえきれない彩が前へ出る。
「あたしたち、全員で作ったんです」
 二の句を香が継ぐ。
「正確には各人の作品を混ぜ合わせたんですけど」
 唯一味見をした玲は、一言。
「絶品ですよ」
「お客さんは誰も思いつかなかったんで、学園長が最初で最後です。
 特製、剣道部全員分の「ミックス・ジュース」です!」
「まぁ、そんな豪華な一品なの?
 どうもありがとう(にっこり)
 こんなきれいな子達全員分のジュースを一度で頂けるなんて、贅沢ね」
 ストローにつっと口をつけると、少しづつ飲んでいく。
「とってもおいしいわよ、ありがとう」
 そう言って、にっこり笑ってくれた学園長。
『ぃやった~~!!』
 文化祭は、大成功で幕を閉じようとしている。


「はい、お疲れ様でした~」
 ぬっと差し出されたカップを目にして、京が疑問符ではじめる。
「あれ?
 これってもしかして・・・」
 片付けの終わった剣道部。
 流石に全員へとへとで、火の元へ行って踊ろうとする者はいない。
 妹のいる二人は、そっちの片付けが済み次第、踊ろうと誘われるのだろうが。
「はい、学園長にお出ししたものと同じものです」
「あ、そういえば、混ぜる前のが意外と多く残ってましたものね。
 あたしは、てっきり捨てたものかと・・・」
「そんなもったいないことはしませんよ、彩さん(^^;」
「へ~、でも気が利くじゃない、朔耶」
「上出来だな」
「と言う訳で、乾杯しましょう!
 せ~のっ!」
『かんぱーい!』
 んくっ、んくっ、んくっ。
「あ、朔耶さまのジュースの味がわかる」
「この中のオレンジ、玲さんのじゃないですか?」
「香だな、このレモンは」
「京はこれに、マスカット入れたでしょう」
「彩のマンゴーのジュースの味もするわよ。
 でも、ここまでそれぞれわかるのに、美味しいわよね?」
 一同、不思議な顔をして頷きあう。
 混ぜてあっても、個性は失わない。
 だからといって、邪魔もしない。
 競い合い高めあい、手を取り合って、そしてさらに高みを目指す。
「・・・このジュースってつまり、私たちみたいなものですか?」
「キザねぇ、朔耶w」
「あながち外れてはいないけども」
「まぁ、何にしても、僕たちはよくやったよね」
「央さんに相談してよかった~w」
 他愛もない雑談は、冷え始めた11月の空へ消えていく。
 今言った言葉も、日常という時間の中で擦り切れ、断片と化していく。
 しかし今日という日の記憶は、一生消えるものではないだろう。
 人の輪の中心で揺らめく炎。
 その炎と同じ色をしたミックスジュースは、疲れた部員たちに染み渡り、つかの間の休息と、心地よい温かみを与えてくれた。


あとがき



一応、これで最後です。
二度も三度も同じ物を読んでくれて、どうもありがとうございました。
この場を借りて、シリーズを通してアドヴァイスをくれた香クンに、心から感謝を述べたいと思います。
今後も別のシリーズでSSを書く予定がありますので、
お時間がありましたらまた読んでいただければとおもいます。
では、失礼^^  朔耶


最終更新:2006年01月27日 20:27
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