リリアン女学園付属図書館 「花言葉に想いを込めて」

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花言葉に想いを込めて

中司 春菜



 芽衣子は彼女のお姉さまである聖香と連れだって、図書館にやってきた。図書館の戸を開けると、芽衣子にとって見慣れた長い黒髪が見えた。
「はーるなさん!」
 芽衣子は後ろからぎゅっと春菜に抱きついた。
「きゃ、芽衣子さん!?」
 春菜は本を抱えたままぎゅっと固まる。
「春菜さんって意外と胸大きい?」
「な……何言ってるんですか芽衣子さん。と、言うより手を離して」
 芽衣子の台詞に頬を染める春菜。
「春菜さん、真っ赤になって可愛い」
「ほら、あんまりからかわないの芽衣子」
 聖香がたしなめると芽衣子は素直に春菜から離れる。
「ごきげんよう春菜さん」
「ごきげんよう聖香さま。助けて下さいまして有難うございます」
 聖香の挨拶に答える春菜。
「別に大したことではないから。何の本を持ってるのかしら」
「花言葉とかを書いた本ですね。聖香さまの誕生日は?」
「6月9日よ」
「ではスイートピーで、花言葉は『ほのかな喜び』だそうですよ」
「ほのかな喜び……ほのかって言葉はあまりお姉さまには似合わない気がするわね」
「そうかしら芽衣子。芽衣子は私らしくないといってるけれど、素敵な言葉だと思うわ。わたくしも写真を撮るときはいつも、ほのかな喜びを感じてるもの。ところで、その芽衣子は?」
「芽衣子さんですか?芽衣子さんは何日?」
「4月5日だけど」
「えっと、ワスレナグサで『私を忘れないで!』だって。でも芽衣子さんを忘れる人はリリアンにはいないような気がする」
「え、なんで」
「だって、白薔薇のつぼみだし。ほかの学校ならともかく、リリアンで生徒会メンバーを知らないのは相当の変わり者じゃない?」
「それもそうね」
「でも、わすれな草より宵待ち草のほうがすきだけどなぁ。歌があるじゃない? まてどくらせどこぬひとの……って」
「『待てど くらせど来ぬ人を、宵待ち草のやるせなさ今宵は月も出ぬそうな』って確か夢二だったかしら?」
「そうそう、夢二だわ。で花言葉は?」
「『浴後の美人』だって」
「そっちの方が良いわね。でも、宵待ち草の歌は、逆に忘れられてることになるのかな?」
「どうかしら」
「その歌を好きってことはやっぱり『私を忘れないで!』って思っているのかも」
 そう芽衣子が言うと今まで黙っていた聖香が、
「そうね、芽衣子ってとても寂しがり屋さんだから」
「お、お姉さま!」
「何度、この言葉を芽衣子から投げかけられたかしら?」
「春菜さん!春菜さんの誕生花は?」
「芽衣子さん?えーと」
「私が見るから、誕生日言って」
 芽衣子は春菜から本を取るとそういった。
「あたしは10月6日だけど」
「と、言うことは赤いコスモスで、花言葉は『乙女の真心』か。なんかずるいわ、春菜さんのが一番好印象じゃない!」
「え、でもそういわれても……」
「お姉さまも春菜さんも淑女みたいな花言葉なのに、私だけ『忘れないで!』なんてわがままみたいじゃない」
「ほら、押さえて芽衣子。でも、春菜さん。ふふふ、ぴったりじゃない?春菜さんってとても真っ直ぐでピュアな心を持っていると思うし」
「あ、また真っ赤になった。可愛い」
 そういうと芽衣子はまた春菜に抱きついた。
「め、芽衣子さーん……」
「芽衣子ったら、もう」
 つい苦笑を浮かべた聖香だったが、良いことを思いついたとばかりに話しかける。
「せっかくだから3人で写真を撮りましょうよ。いいわね?芽衣子、春菜さん。
どうせなら中庭の方が良いかしら。では、三脚をもってきますわ、中庭で少し待っていてね」
 そういうと、あっという間にセーラーカラーが翻らないぎりぎりの早さで駆け出す聖香。
「聖香さま!?どこに行ったのかな?」
「多分、クラブハウスね。写真部の部室はそこだから」
 そういいつつ歩き出す芽衣子。春菜も芽衣子について来つつ話を続ける。
「そうなの」
「お姉さまって、写真の事になると人が変わるから。もっとも、わたしもお姉さまの事笑えないけど」
 芽衣子の台詞に首をかしげる春菜。
「絵のことになるとね」
 苦笑を浮かべる芽衣子。
「似たもの姉妹なんだ」
「そう、似たもの姉妹」
そして二人で笑う。そうするうちに聖香が戻ってきて、
「待った~?さぁ撮るわよ。
芽衣子、もう少し右ね。春菜さん笑って笑って!
さ~撮るわよ。
 聖香はセルフタイマーを押して2人へ向かって走って来る。
「はい、チーズ!」
「お姉さま、タイが曲がってますわ!」
芽衣子がタイに手をかけた時。
カシャ!
シャッター音とともに、3人の笑い声が中庭に響いた。
「どうします?撮り直されますか?」
「良いじゃないのこれで。お澄まし写真なんかより絶対良いわ」
「そうですね、お姉さま」
 白薔薇姉妹はすごく気に入ったらしい。
「何だか撮影意欲がわいてきたわ。ごきげんよう」
 そういうと聖香は挨拶もそこそこにいなくなってしまった。
「ねぇ、結局何をしに図書館に来たの?」
 春菜はふと浮かんだ疑問を芽衣子に聞く。
「例の劇のためなんだけど、お姉さますっかり忘れてるみたい」
「そうだったの」
「一人で探しても仕方ないし、今日は帰るね。ごきげんよう」
「ごきげんよう」

 そして、翌日1年椿組の教室。
「そういえば芽衣子さん。わすれな草の花言葉だけど」
「花言葉がなに?」
「あの『私を忘れないで!』という言葉、元はドイツの伝説から来てるみたい」
「それで」
 芽衣子は続きを促す。
「その話は、恋人のために花をとろうと崖をおりた騎士が、すべって川にながされてしまい、その花を恋人に投げながら『わたしを忘れないで!』と最期に叫んだそうなの」
「そうなの。お姉さまなら感動するかもしれないけど、私には大して面白くないわ」
「どうして?」
「その恋人、『花を取ってきて』と言ったの?」
「そうじゃないと思う。幾つか見たけど、基本的に騎士が思い立ってる形だし。中には女性が引き留めてるのもあったし」
「だったら、死んでまでしてとってほしいとも言ってない花をとりにいくな~っておもうもの」
「うーん」
「あ、そうだ昨日の写真だけど」
「え、あの写真がどうしたの?」
 急な話題転換に、問い返す春菜。
「春菜さんに渡すようにって、お姉さまから」
 そして白い封筒を渡す芽衣子、中身を見て春菜は、
「やっぱり変わった感じね」
「そこが良いんじゃないの」
 芽衣子がそういう。そして二人顔を見合わせると、笑い出したのでした。