リリアン女学園付属図書館 「冬の日」

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冬の日

月城 玲



私がリリアンに進むことを決めた日、
それはたしか、15の冬。

「玲」
母上がそう唐突に私に呼びかけたのは、煮物の鍋がことこと鳴る夕食の準備の時間だった。
「なんですか」
まだ中学の制服を着ていた私は短くそう返す。
母上は美しい顔を崩さずに、味噌汁の出汁をすくい味見用の小皿に移すと、こちらを見ずにはっきりと言った。
「あなた、受験。どうするつもりなのかしら?」
「受験?」
知らずに眉間にしわが寄る。この話はあまり好きではない。
「そう。志望校とか決まっているの? 私はあまり他人と自分のことは比べないたちだけれど。玲あなた、行きたい高校をまだ決めていないのだったら少し遅すぎてよ」
「はい」
私は正直、高校に行きたいとすら思っていないのだとは母上に話さなかった。
勉強は嫌いではなかったが、学校とは私を縛り付ける場所でしかなく、自分から積極的に「行きたい」と思えるようなところではなかった。自分の学力に自信はあったし、高校に行かなくともどこかの企業に勤めることはできるだろう。だから受験の話しは延び延びにして、結局高校には行かないつもりだった。
母上が、その一言を言い放つまでは。
「―――玲。行きたい学校がないのなら、リリアン女学園を受験なさい」
「・・・は?」
その言葉は本当に唐突で、私は少々面食らう。
「知っているでしょう?カトリック系の私立女子高、私の母校よ。
 ・・・・私の、大好きだった学園」
母上の瞳がほんの一瞬やわらかく細められる。まるでいとしいものを語るように。
「外部受験には相当の学力が必要、なんて言われているけれど。あなたなら絶対に受かるから」
「・・・・」
母上は、冬に咲く桜のような、厳しく優しい声音でもう一度言った。

「・・・・あなたには、リリアン女学園で。あの温かな箱庭で、三年間を過ごしてほしいのよ」

私が「はい」と言うまでには、そう時間はかからなかった。
思えば私は、このときすでに運命ともいえる悪戯なゲームに乗ってしまっていたのだろう―――

あとがき



今回のSSはいつものように学園を舞台にしたものではなく、
私がリリアンに進むことになった、中学3年生の頃の様子。
母上がリリアンのOGなので、
このときにすすめられて受験を決意した。
大して面白くはないのだが・・・(苦笑)