リリアン女学園付属図書館 学園祭SS・演劇部編

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学園祭SS・演劇部編

貴水 朋子



「ごきげんよう」
学園で聞きなれたあいさつのほかに「おはよう」「久しぶり」といった言葉が飛び交う。
深い色の制服にまざって赤、白、緑。色とりどりの服が廊下を行きかい
大きな声ではしゃぎながら教室に入っていく少女やその友人、父兄の笑顔。
今日だけ年に一回いつもと違ったリリアンの姿がここにある。

「いらっしゃーい!熱々のおでんいかがですかー!」

今日はリリアン女学園、毎年一度のお楽しみ。学園祭だった。


遠くに聞こえる笑い声を聞きながら、視聴覚室では静かな女の戦いが開かれていた。
篠田まき、天野了花、東条萌の演劇部の1年3人娘が衣装変えに四苦八苦している状況。
そんな様子を窓に寄りかかりながら楽しそうに眺めているのは美しきマリア様ー…
もといマリアの衣装に身を包んだ貴水朋子の姿だった。

今年の演劇部の出し物のテーマは「受胎告知」
カトリックの学校らしく毎年キリストにちなんだ演目が披露されている。
もちろん、もう他にもう1本冬の演劇大会用とかねた劇もある。
これはお約束的なものらしい出し物と思われそうだが
本格的な衣装、セット、効果をつかう本格派なリリアンの演劇部。
毎年舞台を目当てに来場する人も多く今年の様子を見ても満員御礼は確実のようだった。
時計を見れば開演14分前。
そろそろ舞台袖にいても良い時間だ。
「みんな鏡はしまって。もう行きましょう」
「え!」
勢いよく振り向いたのは萌ちゃん。
「ど、どうしましょう。私緊張して台詞忘れたらー…」
「大丈夫よ萌さん落ち着いて。そうですよね朋子様」
「まきさん…そうよね、そうよ」

「その時は了花のせいにすればいいわよ」

さらっとウインクして答えた。もちろん責任を負うつもりは当然無い。
「何を言うんですか朋子様!萌さん頼むわよ!」
あれだけ練習したじゃないと燃える姿、後輩ながら頼もしい。

嬉しいことにちょっと覗いた観客席は満員で立ち見のお客さんも多くいた。
演劇用に作られたステージではないから壁際の席の人は見づらいだろうに、
それでもこちらを向いて幕が開くのを待っていてくれている。

照明が少し落とされて会場のざわめきが小さくなった。

ーまもなく、演劇部による上演がはじまりますー

落ち着いた調子で放送部のアナウンスが流れた。
観客席からの声が収まり、幕の内側では空気がぴんとはった。
自分の立ち位置につこうとした時、袖が引っ張られたのに気付いた。
「朋子様」
ふりむくと萌ちゃんがちょっとだけふるえた声で聞いてきた。
「あの、朋子様は緊張されないんですか」
「してますよ」
「そうは見えません」
「やっぱり?私こういうの好きだから」
軽く笑って萌ちゃんの頭をなでてあげた。
人からの視線。注目されること。期待されること。
実際のところ緊張は確かにしていたがそれはとても心地よいものだった。
朋子はプレッシャーこそ最大の原動力になる自分の性格を良く知っていた。

「誰かが見ているという事がチカラになるって感じ」
「ダレかって…親すら皆、見に来てるんですよ…」
ちょっとげんなりした彼女の表情をみるにきっと観客席に両親の姿を見つけたにちがいない。
「萌ちゃんの友達もきっといるわよ。ひめ乃とか」
「あ。そうですよ!それこそ御自分の妹が来てるならー…」
「やだ。じゃあなおさら緊張できないじゃない」

「お姉さまの可憐で大輪の薔薇のような姿、見せてあげなくちゃ」

くるっとターンして一見誰もが騙されるような笑顔をみせてあげた。

見ててね。ひめ乃。あなたの誇りになれるような、
誰からも憧れられるような、とびきり綺麗な姿をみせてあげる


薔薇は薔薇でもそれはきっとブルー・ローズ。
そんな普通出来ないようなことやってのけるのは朋子様だけだな。と萌は思った。