リリアン女学園付属図書館 「出会い」

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出会い

中司 春菜



ある日の1年桃組の教室。ひめ乃と遊びに来た春菜ほか数人が仲良くお弁当を食べていると、
「ねぇ、ひめ乃さんと春菜さんってずいぶん仲が良いけど、どうやって知り合ったの?」
 いきなり佳子がそんな事を二人に聞いてきた。
「どうしてそんな事を?」
 春菜が小首をかしげながら聞く。
「だって、春菜さんは高等部からでその前は学校が違いましたし、クラスも違いますし、それに部活動も委員会も違うじゃないですか。おふたりの接点が思いつかないんです
もの」
「言われてみればそうよね」
 佳子の話に頷く周りの生徒。
「えっと、それはね」
「ひめ乃ちゃんは黙って、食べてたら?遅くなっちゃうわよ」
 答えようとしたひめ乃を黙らせると春菜は話し出した。
「ひめ乃ちゃんと初めて会ったのは高等部の入学試験の時……」

 2月のとある日。リリアン女学園高等部の入学試験日。面接を終え、銀杏並木まで戻った春菜。少し先を深い色の制服を着た子が歩いている。しかしなんだかふらふらした
感じで危なっかしく見える。そしてフラッと彼女の体が大きく揺れた。
「あ、あぶない!」
 春菜があわてて彼女を抱きしめると、彼女は気を失ってるようだった。

「失礼しまーす」
 春菜は気を失った彼女を連れて保健室までやってきた。幸いにも試験案内には、試験に使う教室以外に、万一に備えてか保健室の所在地が書かれていたので、春菜は迷わず
行く事が出来た。
「あら、どうしたの」
「この子が急に倒れちゃって……」
 養護教諭に話す春菜。養護教諭は彼女を見ると、
「中等部の子ね。試験疲れかしら?」
 そういうと、ベットに連れて行く。そして彼女をベッドに寝かせると春菜にむかい、
「ところで、この子が倒れたときの状況は?」
 と聞き始めた。

 十数分後、話を聞き終えた教諭は春菜にお茶を出す。
「はい、お茶。色々聞かせて貰ってありがとう」
「いえ、当然のことですし」
 ふたりが、そんな会話をしていると、ベッドの方で声が、
「あれ、私、何処に?」
「気がついたわね。取り敢えずクラスと名前は?」
 養護教授が彼女に尋ねる。
「中等部3年松組の一ノ瀬ひめ乃です」
「そう、一ノ瀬さんね。銀杏並木で倒れたそうだけど覚えてる?」
「あ、はい」
 そして数分、教諭とひめ乃は話をする。そして、
「で、あの子が貴方をここまで連れてきてくれた中司春菜さん」
「初めまして、一ノ瀬ひめ乃です。ごきげんよう」
「中司春菜です。初めまして、一ノ瀬さん」
「春菜さん、出来れば名前で呼んで頂けませんか?リリアンではこれが普通ですから」
「あ、はい。ひめ乃さん」
「ところで春菜さんはどこから受けに来られたんですか?」
「岡山ですよ」
「えっと、岡山って」
「中国地方ですよ」
「へぇ、遠いんですね。私、大阪より左側に入ったこと無いんですよ」
「左側って……」
「変ですか?」
「どちらかというと西側と言った方が良いのでは?」
「あぅ」
 お互いの話が盛り上がって来た頃、教諭は
「ねぇ、一ノ瀬さん。試験も終わってるし、親に迎えに来て貰った方が良いわね。電話をかけるから」
「あ、自分でかけますから」
 そういうと、ひめ乃は電話をかける。
「あの、迎えに行けないからタクシーを頼みなさいと言われたのですが」
「判ったわ、じゃあ呼んでおくからもう暫く横になってなさい」
「はい。ところで春菜さん」
 教諭に返事をしたひめ乃は春菜に声をかける。
「途中まで乗っていきませんか?」
「え、悪くない?」
「ひとりで乗ってもふたりで乗っても値段は変わりませんよ」
「あ、うん。そうだよね」
「タクシー来たら守衛室から連絡有るから、一ノ瀬さんは安静にしてなさい。中司さんは一ノ瀬さんお荷物もお願いね」
「え、そんな」
「ひめ乃さんを運ぶことに比べたら楽ですから」
 気にしないでと答える春菜。そして、タクシーが到着しふたりはそれに乗った。

 そしてタクシーの中、お互いの学校のことを話していくうちに、
「それでね、ひめ乃ちゃん」
 何時しか春菜の呼び方が変わっている。ひめ乃はそれについては特に言わず、リリアンについて話したりしている。しかし高等部のスール制度のことは話した物の、ひめ乃にとって当たり前のことは当然話さず、春菜は『白ポンチョって何に使うの?』『はちまきはクラス発表後にって何でだろう?』とか幾つも疑問を抱えることになるのでした。

 そして入学式当日。
「これからの学園生活が充実した物になりますように」
 春菜はひめ乃に言われたように、マリア像に手を合わせる。そして、
「春菜さん!」
「きゃ!」
 急に腕にまとわりつくモノ。春菜が見ると、そこには腕に抱きつき、上目遣いのひめ乃が、
「ひめ乃ちゃん!?」
「ごきげんよう。春菜さん、受かってたのね、落ちてたらどうしようかって思ってたの」
「えっと」
「一緒に通いたかったもの。春菜さんと一緒に高校生活がおくれるから嬉しい!」
「ええ。そうね」
「あれ、そんなに嬉しくないの?」
 嬉しいとか、嬉しくないかとかの前に、状況にちょっとついて行ってない春菜。それでも、
「そんなこと無いわよ。これからもよろしくね、ひめのちゃん」
「よろしくね、春菜さん」
 そんなふたりを目の前のマリア様は静かにお見守られるのでした。


あとがき



さて、今回のお話しは「何故、春菜は『ひめ乃ちゃん』と呼ぶのか」でした。もう一つの主題は云わなくても判りますよね?