リリアン女学園付属図書館 「セント・メアリの鐘の音は 2話 男装の姉妹」

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中司 春菜



 ごきげんよう、皆様方。学園祭SS「セント・メアリの鐘の音は」の続きを投下させていただきます。
 色々検討した結果、他のSSと矛盾が出ないように、基本的に時間の流れを明記しない方針で書かせていただきます。ですから「話数=時間の流れ」を示すものでないとご理解下さるようお願い致します。
 それではお話しの方、ごゆっくりとお楽しみ下さいませ。

セント・メアリの鐘の音は 2話 男装の姉妹



 朔耶の計らいで学園祭デートをし始めたふたり。並んで歩き出すが、かずらはちらりちらり玲の指先を見つめる。
「かずら」
 そのかずらにそっと差し出される玲の手。かずらは満面の笑みにちょっと朱を差しながら、玲の手を握る。
「ところで何処に行きたい?」
 玲の簡潔な、ひとつ間違えれば素っ気なく聞こえる質問が出る。
「お姉さまが行きた……」
「特に行きたいところが無くてね。かずらが選んでくれると嬉しいのだが」
 かずらの台詞を予感してたかの様に、玲が話を続ける。玲の頬がほんの僅か赤みを差してるのは本人にも判らないだろう。
「では、お姉さま」
 そして、かずらは興味のある場所の名を告げる。

「お帰りなさいませ、お嬢様方」
 ふたりが来たのは1年生の出した喫茶店「セント・メアリ・ル・ボウ」。カントリーやヴィクトリアンのようなものに興味がある、かずらとしては当然の選択だったかもしれない。でも、かずらの横ではいきなり「お嬢様」と呼ばれ瞬間フリーズした玲が……。
「こ、こちらへどうぞ」
 そしてカチンコチンになりながら、ふたりを案内する志保子。元々上級生と話すのになれてない上に、男装で凛々しさアップの玲相手に完全委硬直寸前。
「では、ご注文はどうなさいますか。お嬢様?」
 フリーズ寸前の志保子に変わり、萌が注文を取る。
「注文は、……そうだな、サンドイッチと紅茶。銘柄はあまり詳しくないので何でも良いが、ストレートで」
「私は。そうね、紅茶に何か適当なものをつけてもらえます?」
「はい、かしこまりましたお嬢様」
 そして一礼して下がる萌。注文した品が来るのをふたりが待ってると、
「ごきげんよう、かずらさま。それに玲さま」
 と制服姿の春菜が声をかけてきた。
「ごきげんよう、春菜さん。あら、制服姿なんですね」
「ええ、休憩時間でしたので」
「あら、そうだったんですか」
「それでは着替えてきますから、ちょっと失礼します」
「ええ、いってらっしゃい」

「お嬢様、お待たせ致しました」
 数分後、お盆を持った春菜と志保子が、ふたりの前にやってきた。
「サンドイッチと紅茶。それに紅茶とスコーンになります」
「ありがとう春菜さん。そう言えば、春菜さんだけ格好が違うのね。お似合いだけど、春菜さんのメイド姿も見てみたかったかも」
「うーん、かずらさま。あんまり似合わないと思いますよ」
「春菜さんなら似合うと思いますけど」
「そうですよね、かずらさま!」
「えっ、芽衣子さん?」
 そう、いつの間にか春菜の後には執事姿の芽衣子が
「ごきげんよう、芽衣子さん」
「ごきげんよう、かずらさま。実はこんな事が有ろうかと」
 芽衣子が取り出したのはメイド服。それを見た春菜は、
「もしかして、あたしの!?」
「とーぜん、春菜さんのよ。春菜さんに着て貰うために、家庭科被服室から持ってきたのよ」
「やっぱり」
 あまりにも予想通りな内容に、ため息を吐きつつ、つぶやく春菜。
「ため息吐くと幸せが逃げてしまうわよ、春菜さん」
「あら、被服室からってどういう事?」
 かずらが小首をかしげ、問いかける。
「あ、かずらさま」
「春菜さんは、着替えてきて。説明は私がしておくから」
「やっぱり着るのね」
 あきらめ顔で服を持ち、着替えに行く春菜。そんな春菜を横目に芽衣子は、
「実はかずらさま、家庭科の授業の時に作ったんですよ、これ」
 といって芽衣子は志保子のメイド服を指さす。
「あら、そうなんですね」
「ええ、授業で作ったワンピースに、フリフリのエプロンとメイドキャップで、メイドさんの出来上がりですわ」
「じゃあ、さっきのは春菜さん自身が作ったワンピースと言うことか」
「はい、玲さま。正解です。でもワンピースは兎も角」
 そう言うと芽衣子は、思わせぶりな笑みを浮かべる。そんな芽衣子の様子にまた小首をかしげるかずら。
「ちょっと趣向を凝らしてみました」
「そうなの?」
「さぁ、どうぞお食べ下さい、玲さま。かずらさま」
「ええ、頂きます」
 そしてふたりが食べ始めて少しした頃、
「お待たせしました」
「あら、可愛らしいですね」
「そうですか?かずらさま。ねぇ芽衣子さん、これって装飾過剰だと思う」
 春菜はかずらの感想に答えつつ、フリルなどをたっぷり使ったエプロンを軽く持ち上げる。
「うーん、お似合いだけど」
「って、これじゃまるでパーラーメイド」
 と困惑気味な口調で春菜が言うと、
「あら、ここでしてることはパーラーメイドそのものでは?」
「どういうこと?かずら」
「だって、パーラーメイドって、男性使用人の代わりにお茶などの接待をするメイドのことでしょう?」
 かずらは玲の質問に答えつつ、『あってるわよね』という風に春菜を見る。
「あ、はい。そうです。でも、調理や片づけまでしてますから、あたしとしては雑役女中(オールワークス)のような気がしますけど」
「そうかもね」
 そんな会話を交わしてる横で、うずうずしてる芽衣子、
「きゃぁ!」
「やっぱり、春菜さんって良い!」
 いつも通り、ぎゅーと春菜に抱きついた芽衣子。
「あら、仲が良いんですねえ」
「かずら、少し違うと思うのだが」
「もぅ、芽衣子さん離してよ」
「もうちょっと」
「駄目だってば」
 渋々春菜から離れる芽衣子。
「全く、芽衣子さんたら……」
 少々頬を膨らましてる春菜。メイド達がばたばたしてる間に、ふたりは食べ終えており、
「ごちそうさま、美味しかったよ」
「ごちそうさま。クローテッドクリームが良かったです」
「はい、ありがとうございます。そう言って頂けると幸いです」
 そして「行ってらっしゃいませ、お嬢様」の声に見送られて出て行くふたり、ふたりのデートはまだまだこれからです。