山百合会劇・衣装部買い出し編act6
一ノ瀬 ひめ乃
カラボスといえば黒のロングドレスということで3人とも意見が一致した。
「京さまのカラボス素敵でしょうね」
綺羅さまとひめ乃は口を揃える。
「うん、京さんなら美人だし、綺麗な人は悪役も綺麗にハマりますよね」
朔耶さまは京さまと同じ剣道部という事もあり、
より一生懸命生地を探し始めた。
カラボスはお祭好きだし、黒い衣装が映えるように光る素材がいいかな。
と思っていた矢先、
「ひめ乃ちゃ~ん、これいいと思いませんか?ベロアです!」
きちんと札を見て生地名を確認したらしく、朔耶さまはご満悦そうに言った。
朔耶さまは面白いし、なんだか微笑ましくて、
やっぱり下級生にもてるのだろうなとぼんやりと思った。
「黒のベロア、いいですね。光沢もありますから、舞台映えしそうですし」
「では魔女らしく、シンプルで少し胸があいたスクエアカット、
そしてダーツだけ入ったロングドレスに致しましょう」
しかし、ベロア。これも高価な生地である。
その点について悩んでいたら、お店のおじさんが近付いてきた。
「お嬢ちゃんたち、リリアン女学園の生徒だね。学園祭の劇のために毎年生徒さんたちが来るんだよ。
こんなにたくさん買ってくれるなら、その生地全部半額にしてあげるよ。
実はうちの姪っ子がリリアンの中等部に通っててね。」
取り置き用スペースに積まれた生地を見ながら、
とても優しい笑顔でそう言ってくださった。
きっと普段から気のいい方なんだろう。
「本当にいいんですか?半額だなんて・・・」
3人とも不安な表情で顔を見合わせて、
「申し訳ないですよ、でも本当にいいんですか・・・?」
全員揃っておずおずと確認した。
「それくらいで店が潰れたりはしないし、
今回だけの特別サービス。男に二言はないよ」
にっこりとしておじさんはそう言った。
本当に気のいい素敵な方だ。
3人は感謝しきりで何度も頭を下げ、お礼を言った。
最終更新:2006年01月27日 18:09