彼方第一巻

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作者:京◆Kr6L6V3ak2  ---- 「・・・琴様、今日は親族の来る日ですよ」 まだ10歳ぐらいの少女は、自分より少し大きな少女の部屋へと入る。 中に居る少女は、その長い髪をお気に入りの櫛ですいていた。 「へ?・・あぁ。そうやな。そろそろか」 櫛を引き出しへしまう。 「・・・じゃ、行こうか」 「はい。畏まりました・・。」 少女は少女らしくなく、丁寧な言葉でお辞儀をする。 すると大広間へと足を運ばせる。 「・・あ、おーい、にいさーん」 「・・・?」 初めて見る人に、少女は吃驚した。 「琴様・・?この方は・・?」 「あ、これは私の従兄。樹夜兄さん。」 「・・あ、どうも、私、琴様の使用人を務めさせて頂いています、忍者の夜音ですっ」 「・・こんにちは。」 優しく少女に笑いかける青年。 ――これが、2人の出会いでした。 ---- 「・・・」 ご馳走の前で、ぽけー、としている。 それは決して、ご馳走のあまりの美味しさに、ではなかった。 「・・・あの方・・・。どんな人なんだろう・・」 さっきの出会いを思い出す、と、顔が赤らめる。 それを何回も繰り返し、少女は正気に戻りにくかった。 「・・琴様っ」 少女は琴夜という少女の場所へ行くと、琴夜の隣に、そのお方が居るのに気づき、少し離れる。 「・・・どうしふぁん?」 口にフライドチキンを突っ込んで、もふぁもふぁと喋る琴夜。 そして、その口でその人と会話していた。 少女――・・。夜音は、その人・・樹夜の事が木になって仕方がなかった。 あぁ、その綺麗な顔で物を食べるのか。 そのような動作をするのか。 そのような笑みを作るのか・・。 樹夜の全ての行動が夜音の中に入り込み、溶かしてゆく。 苦しさと切なさを足して2で割ったみたいな感情に、夜音は吸い込まれていった。 「・・・あの、お肉ばかりもアレですから、サラダコーナーに行きましょう琴様っ」 「あ、じゃあ樹夜兄さんも・・」 「さぁ行きましょう!!」 琴夜をずるずると引きずり、無理にサラダコーナーで移動させる。 夜音には恋している人と共に居るのは辛くてたまらなかった。 だけれど、それが恋と自覚するのはまだまだだった。

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