儚い夢第一巻

作者:京◆Kr6L6V3ak2 



お父様は、信用していた人間の部下に食事に毒を盛られ、死にました。
部下は最初からお父様の身に付けている財宝が目当てだったようです。
お父様の財宝を袋につめて未だ逃走中です。
――父が殺されてから、竜の世界に人間が入る事を少しだけ警戒するようにしました。

「・・お母様、みてみてー!蝶々がね、指にとまったのー!」
「えぇ、すごいわ、よかったわねぇ、ノタ」
私のお父様に対する思い出は少なかったです。
しかし、この生活が満足でした。
優しいお母様が、私の事を大切に育ててくれているから。
お母様だって辛いのに、私が涙を流したらずるいから。
「お母様、だーいすき!!」

だけれど、幸せは儚かったのです。

「お花で輪をつーくりーましょー♪輪を作ってお母様にあげーましょー♪」
私は庭の花畑でお母様のために花で輪を作ったり、指輪をつくったり、束にしたりしました。

「・・・くっくっく・・。竜の秘宝、貰っていくぞ・・・」
「・・ん?人の気配が・・・」
お母様が扉をあけました。
「・・?!あ、貴方達、人間?!やめて、その秘宝がないとっ・・・」
「見つかったか・・くそっ」
ダンッ!
「・・うっ・・。拳銃・・・?!」
「へっ、じゃあなっ」
バタッ

「・・お母様、みてみてー!お母様のためにねー!・・・お母様?!!」
「・・・」
「お母様!どうしたの?!赤いのいっぱい出てる!お母様ぁっ!!」
「・・ノ・・タ・・・」
「お母様!!」
「私・・ね・・。遠い所に・・旅行に・・行くのよ・・?」
「私も、私も行く・・!お土産買うの!そこの名産のものも食べるんだよ!お母様と一緒に・・!」
「・・駄目・・なのよ・・。決められた人しか・・行けないの・・」
「嫌だ・・!嫌だ!お母様も行っちゃ嫌だ!一人は嫌!!お母様を連れていかないで!」
「・・・ノタ・・。ノタが大好き・・。」
「お母様!」
「さようなら・・。・・・私の可愛い・・ノタ・・・」
「お母様ぁぁああ!!」
――それから、竜の世界には完全に人間が入れないようにしました。
私は人の世界へ行きました。
汚染されている世界に、私は憎悪を覚えました。
      • お父様とお母様を殺した人間を、きっとこの手で懲らしめる・・。
――私は、心に決めています―――。
最終更新:2008年03月22日 16:31