SS・4スレ目-027

    

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644名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日: 2006/02/14(火) 10:17:46.81 ID:KjY+EMf/0

時は如月十四日、草木も眠る丑三つ時。

場所は地球から一天文単位、太陽の下屋敷。

一切の光無く闇に覆われた主の寝所の天井板がカタリと動き、半寸ほどの隙間が開いた。

隙間よりすすすす、と伸び下りたるは女の髪を繋ぎ合わせた糸である。

先端には重し代わりの縫い糸が吊り下げられている。

ふらりふらりと揺れながら、間の抜けた寝顔を晒す太陽の口元に至り、ぴたりと止まった。

天井裏の曲者が糸の次に取り出したるは腰に下げた竹水筒。

飲み口を糸に近づけ、慎重に中身を注ぐ。注がれたのは南蛮豆と砂糖に一族秘伝の妙薬を加え、

常温においても液状を保つように工夫された、苦味を持つ菓子である。

粘性の高い黒褐色の液体はとろりとろりと糸を伝い、太陽の重力に引かれるように針の先へと辿り着く。

甘い芳香を漂わせる雫がぽたりぽたり二つ三つと滴り落ち、太陽の口腔へと消えた。
645名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします投稿日: 2006/02/14(火) 10:18:49.82 ID:KjY+EMf/0

糸は下り来るときと同様、一切の音を立てることなくするすると引き上げられる。

途中、はねた雫が太陽の鼻孔に飛び込み盛大にむせかえるもその程度で目が覚めるほど

繊細な天体ではない。心身共に老牛の如き鈍感さである。ゆえに皆あれこれと苦労するのである。

糸を手繰り終えた曲者、天井板を元に戻そうとした手を止めて標的の間抜け顔を見下ろす。

きつく噛み締められる唇。

夜を見透かす忍びの目が切なげに細められ、男の唇に触れた針先をちろりと舐めた桃色の舌が

囁くように蠢いた。

  ━━━━恋は秘するもの。想いは忍ぶものにござる━━━━

誰の耳にも届く事の無い小さなつぶやきの残響と共に曲者の姿は消え失せ




あとに残るは闇ばかりである。

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