さくら姉ちゃん 6話

才葉さくら、OLです
今こちらはぱらぱらと小雨が降っています、なので外で遊ぶわけにもいかんので大波くんを膝に抱えながらテレビを見てます
野球少年の割りには結構小さい大波君、私の膝に乗ってもそんなに重くないんですよ。
そんな大波くんにはテレビを見るときにだけの面白い癖がありまして、
例えば「笑いどころ」とかが来ると笑顔でくるっと私の方を見てくるんですよ
「……(チラッ)」ほらね、可愛いでしょ
そして私がニコッっと笑顔で返すと満足したようにまたテレビを見るんです
多分「お姉ちゃんも今の面白かったかな」と思ってるんじゃないかなと解釈してます
あっそれと大波君は撫でられるのが大好きなので常に頭の上に手を置いてます
「~♪」本当無邪気な子供なんだから
「……ねえ大波君?」「なに?」
……出来ればずっとこのまんま、波風たてずにいたいとも思ったけど、私の口は聞かずにはいられない
「大波君、私に隠し事してない?」
「えっ?」きょとーんとしてる、そりゃいきなりなんだって思うよね
「……この間、ジナイダさんに会ったんだよね」「!?」それでも私は直接その単語を出さない
大波君を信頼してるんだよってことにならないからね
「……もちろん、私はそんなことないなあ~っては、信じてるけど」
大波君の目線がチラチラと散らばっていく、子供の嘘って目から見え見え
私もこうだったのかなあ~
とか思いながら私は大波君の肩に優しく触れる
「私の目を見て、しっかり答えてほしいな」「……」だんだん血の気がなくなってますぜ、旦那
しかも鼓動ばくばくしてる胸の動きからも察した、これは嘘ついてる
その目にはうっすら涙すら浮かんでいるんだもの
「一旦深呼吸しよっか」「……うん」
「……お姉ちゃんは怒ってるわけじゃないよ、でも正直に言わない子には鬼のツノが生えてくるかも、みゃはは」
「……嘘をつくつもりはなかったんだ」お?
「俺が宇宙にいくって聞いたんだよね」その目からついに涙がポロポロと落ちては跳ねる、声は震えていた
「宇宙に行くのは本当だよ…ヒクッ、でもっ、お姉ちゃんにっ、知られたらお姉ちゃんもうっ、ヒクッ、会ってくれなくなるんじゃないかって思って言えなくてっ」「……よくお話しできました」溢れる涙を袖で拭く大波君を、そっと抱き締めてあげる
「……っ………っ……うぅぅ」肩がひくりひくりと動く、目には大きな涙の粒、えらいえらいと私は背中を優しく撫でる
「私はそんなことでいなくならないからね」「ごべんなざい……ごべんなざい」「謝らなくていいのよ、みゃは」
一度出ると止まらないもんね、涙って、よくわかるよ、だから遠慮せずに泣いていいから
そう言い聞かせて、泣き止むまでずっとこう抱き締めていた
…………
「……すぅ……すぅ」泣き止んだ途端に今度は眠っちゃったので、ソファーベッドに寝かせておく
「……寝てても可愛いんだから」
寝顔を見てついこっちまでよだれを垂らしそうになるなあ…
小麦色に焼けた肌、もっちりしてそうな顔、うう…「しかし未成年に手は出せぬ……」来いよア○ネエエエエエス!!
……それから寝ている間におやつでも作ってあげようかとキッチンで準備をしている時だった
「ピンポーン」と軽快な音を立てチャイムが鳴る、外のインターホンには中国人?の女の人が立っていた
「こんにちは、あなたが才葉さくらさんですか?」玄関で迎えると女性は軽快に私に話しかけてきた
私の事を知ってるのかな?
「どちら様ですか…?」するとついうっかりと言うような仕草をして女性がにこやかに自己紹介をしてくれた
「私の名前はホンフーと言います、あなたが異常性癖を持っているとの事でカズさんから聞いてやって来ました♪」この人もかっ!カズさんからの刺客!……と、思いきや女性は意外なことを口にし始めた
「私はカズさんの表現には多少オーバーがかかっているとは思ってますよ♪見たところそんな趣味の人では無さそうですし、なによりそんな性癖をしている人にあの子がなつくと思いませんしね、私はカズさんの誤解を解きにも来たのですよ♪」
この人はただ者ではない、一瞬で把握した、言葉の丁寧さやどこからか来てるかわかんない威圧感がビンビンだ
「とりあえず客間へどうぞ、大波君をちょうど寝かしつけたところなんで」
「おや、やっばりあやしいかな?」
「どうでしょうか~?」
ソファーベッドに寝転ぶ大波君を見て「おやまあここまで気を許すなんて」と微笑むホンフーさん、この人も大波君を知っているみたい
せっかくなので二人で寝顔を少しの間眺めていた、大波君はなんにも知らずに小さな寝息を立てている
「みゃはは、可愛いですよね」
「そうですね♡…まずなんで、カズさんがあなたの事をやたらと警戒するのかはわかりますか?」「ふにゃ?」唐突な質問に脳内があたふたする
……カズさんの過去の事とか聞いてると限りでは素直に警告してくれてるのかとしか思えないなあ…
「私の事を思って警告してるんだと思ってます」しかしブッブーと両手でバッテンをされた、ぐぬぬ
「カズさんはあなたに嫉妬しているんですよ、おほほ♡
あの人の青春話は多分本人から聞いてるでしょう?あの人は一度失恋している、失恋はですね、人の心をかなり歪ませるんですよぉ」「はにゃ…」
ずいぶんとド直球な事を言ってくるなあ…
「……あの人の嫉妬は私にも気持ちはわかります」「ホンフーさんも失恋を?」「いえいえ、彼女を昔無くしてまして」

ドンガラガッシャン!

「おやまあ…」


男の人なの!?
「……先に言うのを忘れてました、私は男です」「みゃはは…そうですか…」「いろんな人に間違われます♡」み…みゃはは…
「とにもかくにも、私は彼女を失いました、そのときなぜ救えなかったのか、自分の無力さを今でも悔やんでいます……だから、可能性がある人には逆に失ってほしくないんですよ」
……可能性がある?つまり…
「彼が宇宙に行く期間は3~5年間です、もうその事を知ってるあなたは待つだけでいいのです」「……それが当たり前じゃ無くなるかもしれないんですか?」ちょっと深読みしすぎたかな…とも思ったけれど、ホンフーさんは「……驚きました」と苦笑いをする
これはきっとなにかがあると言うことなのだろう
「……彼には三人の父親がいるのですよ、その父親達があなたとの交際をあまりよく見てない節があってですね…いえ異常性癖のように見ているわけではなくて、なんと言いましょうか、貴方がいることで駄目な人間になったと思っているそうです」
私の…せいで?
私が大波君を甘やかしたからか…な
「……『混乱して、落ち着かないで』」
ホンフーさんが私に声をかけてると何故か急に頭が冷やされた
「あなたが甘やかしていることは間違ったことではないのですよ、むしろ足りないものを補ってあげてるんだから、しかし旧パラダイムの育成方針の彼らには」「旧パラダイム?」
聞いたことあるような無いような…
でもよくわかんない…
「……簡単に言うと、昔の考えです、つまりは昭和の頑固親父とでも思ってください、とにかくそこに新パラダイム…あなたが入ってきたので頑固親父からしたら横槍を入れられて、しかも自分達よりなついていってるから面白くないのですよ」「私がそんな新パラダイムなんて…」時々あって甘やかすだけでそんな影響でるかなあ?
「出るんですよ」「うひゃあっ!?」
心の中読まれてる!?
「カズさんの知り合いの私がなんの能力も無いわけがないですよね♪まあまだこれは端に過ぎませんが」……納得
「あなたと出会ってからどうやら彼、学校での成績がうなぎ登りだそうですよ?あと多少フレンドリーになったそうな」「そんな簡単に!?」
信じられぬ…私がやったことと言えば…
「おやつ食べるー?」とか「なでなでー」とか「今日はキャッチボールしよっかー」……改めて考えるとそんな特別でもないような?
「彼からしたら他人の家でのんびりしたり異性から撫でられたりとかは目新しい事ばかりでしょうねえ」「……だから心を読まないでください」「おや、能力の切り替えを忘れてました」
「でも、それって別に悪いことじゃないような……」「……彼の視点が広まったと言うことで、父親達は野球への影響を考えています、事実、ここに来る日は練習を午前で切り上げて来るらしいですからねえ、成長期に野球漬けにしたい彼らからしたらあなたがもたらしたものは邪魔でしかないようで…そこにカズさんの話が舞い込んできたからさあややこしい」……私たちが勝ち上がったときも練習は普通に休みいれてたし、プロになった小波くんも「休みは必要」とか言ってたのになあ…
「……おそらくもうじき接触してくるでしょうね、彼らは強引なところがあるので、勢いに押される事の無いよう、おそらくカズさんも同行してくると思います」「なんか喧嘩みたいですねえ…」怖いよお
「あら?これはれっきとした乙女の大問題です、大波君を守りたいなら、あなたが戦う姿勢を見せなくてはいけません」
私が戦う…大波君のために
そんなの当たり前じゃない
「やってやりますですよ!」ふんと力こぶしを作るポーズを見せるとホンフーさんが笑った、ちょっち恥ずかしい…
「私も協力しましょう、まずこちらにも助っ人を用意します、ブラックと言う方です」ブラックとな?まるで正義のヒーローみたいな名前だなあ
「どんな人ですか?」「正義のヒーローです」本当にかい、まあ感覚がなれたので今度はそこまで驚かなかった
「……守れる関係は大切にしないとダメですよ?失って気がつくのは手後れの懐古に過ぎないので」そう語るホンフーさんはちょっと寂しそうに見えた
「うぅーん…うわ!ホンフーさんがいる!?」おっと大波君が起きたようだ
もうそんなに時間がたってたんだなあ…最近は話で時間が過ぎていく事が多いにゃー…
「では私はこれで失礼します、大波君も、そろそろお家に帰る時間でしょうし、送っていくので」
「それはありがとうございます!……また来てくださいね?」
「ええ、ここは良いところですし、たまに遊びに来るかもしれません、その時はどうぞよろしく♡」
「……」「……ん?」「……おやおや」
大波君が珍しく「まだ遊ぶ」オーラを出してきている、他人の手前で甘えるなんて珍しいなあ、でも今日はさすがに遅いし……
「あらあら、でも大波君、今日のところはおいとましましょうか」「……わかった」ホンフーさん本当大人だなあ…拗ねてる大波君も可愛いなあ
私このまま泊まらせたかもしれない
……別にそんな変な意味じゃないよ?
「あなたやっぱり」「違います!」
…………
「いよいよ明後日、その彼女とやらの家に乗り込むでやんすね?」「ああ、ホンフーは多分説得失敗するやろうしな」「……あんたら本当に行くんでやんすね」「これは大波を野球に引き戻すため、仕方のないことでやんす」「そう言うことですねん山田さん」「…………」
…………
寝る準備をしていた夜遅くにまた玄関からチャイムの音が
「……?」ドアを開けるとそこには黄色いヘルメットを被った眼鏡の人が立っている
「あんたがさくらさんでやんすか?おいらは山田、大波の父親でやんす」
この人が!?ととっさに身構えるが
どうも覇気がない
「おいら達は三人で大波を育ててるでやんす、多分あんたが考えてる眼鏡は湯田とか落田でやんすね、少しだけ玄関先でいいから質問に答えてほしいでやんす」……この人は反対ってようすでもない、三人のなかでも意見が違ったりするのかなあ?
とりあえず質問に答えることにする
「アンタは大波にどうなってほしいでやんすか?」
シンプルで簡単な質問だった
そんなことはずっと前から決まってる
私は深呼吸をすると山田さんの目をぱっちりと見て回答する
「大波君には、立派な野球選手になってもらいたいです」
山田さんは驚いた顔になる、その奥では笑っているように見えた、そして私に「アンタならあとの二人も説得できそうでやんすね、ガンバるでやんす」と言って手を差し出してきたので
私もその手を握り返し豪語した
「任せてください!」