さくら姉ちゃん 最終回 真ルート

真ルート
心が冷えてしまったかのように
顔の影を濃くしていく大波くんに
私が一番できることと言えば……

ガバッ
「……!」

ホンフーさんが言ってた母性ってのは
言葉とかだけじゃなくて
私がそばにいてあげることなんだ
「……」ぎゅうっと抱き締めて
ただ頭を撫でる
触れあえばそれで私たちは通じるはず
私が伝えたいこともなにもかも
「……お姉ちゃん」
いいんだよ、泣いて
ほほから伝う涙は私の肩に降りてくる
冷たくも暖かくもある涙は
大波君の心中そのまま
だから私は暖めてあげるの
首から流れる血はまだ止まらないけれど
大波君が暖かくなるまで
抱き締めてあげる
「……真の母親の愛は言葉を使わなくても伝わる、さくらさんよくたどり着きました」
ホンフーさんに誉めてもらえると
なんかとてもすごいことのような気がするなあ、えへへ
「お姉ちゃん…俺…こんな」
ううん、なにも気にしなくていいんだから、君はまだ小さな子供なんだから
私が大波君くらいのときは
もっとワガママで、周りを引っ張り回して、やんちゃしてたんだよ?
だからほらこんなことで落ち込まないで、男の子なんだから
「……お姉ちゃんは、怒ってない?」
「……(コクリ)」
怒ってないよ、怒ってない
「お姉ちゃん、俺の事嫌いになった?」「(フルフル)」嫌いじゃないよ、大好きだよ
「本当に?」「……(コクリ)」
全部伝わってくれるといいな
私がどう思っているのか
そう心で願い、うなずくと涙がやや暖かいのが強くなってくる、心の中にゆっくりと「いつも」が戻ってきている
私は大波君の事嫌いになんてならないから、もう安心していいんだよ
「……これからもっ、これからもぉっ…ずっと居てくれる?」
「……(ニコッ)」微笑んだその時、確かに私は
大波君の冷えていた心がほどけて
そこから暖かいいつもの感じがあふれでてくるのを感じることができた
……あ、れ?意識が遠くなっていく
なんかとても、気分が、重く、眠く…
「お姉ちゃん…!」「やれやれ、ちょっと無茶をしてしまったようですねえ、まあでも死んだりはしないので心配しないでください」
「でも…」「ほら、顔見てくださいよ、苦しそうにしてるでしょ?死ぬ前の人間は安らかな……笑顔になるから、さくらさんは生きてます」
「……申し訳ない、うちのカズが迷惑をかけてしまって」「ホホホ、それを言うならこの人に言ってあげてください、極めて一般人に近い人間がヒーローに立ち向かったんですから」
「……言えてる」

次に私が目を覚ましたときは
真っ白な病院の中
ぼんやりと目を開けるたらそこにいるのはいつもの面々、ホンフーさん、お兄ちゃんにお父さん、駆けつけてくれたチームメイト、そして大波君
目を覚まして最初に首の下を見るとやっぱり縦に傷がぱっくり空いてて首から胸元まで抉れていたな
お医者さんいわく「もう少し遅れていたり、例えば幹部に触れてたりしていたらお陀仏だった」らしいからお父さんたちから久しぶりに大きな雷を落とされる始末となった
私だって自分でこれくらい選ぶわよ!
大波君は真っ先に見つけるつもりだったんだけど起きた瞬間ドアの近くにいた大波君はバターン!って音を立てて部屋を逃げ出そうとしてたなあ…
「恥ずかしがってるんですよ、この子」ホンフーさん、楽しんでますな
「……おいで、大波君」両腕を上げておいでのポーズ、これをしたら大波君はこっちに来るしかなくなる
腕の範囲内に入ったらCQC!
「わっぷわっぷ!」あたふたしてとっても可愛いなあ…こう言うのも久しぶりな気がする、思いっきりぎゅーしてやろう
周りが少し引いてる気がするけど
気にはならない……ならないんだから!「にょがにょらにゅれらー!!」
みんなが帰ったあとも、大波君はずっと隣にいた
「……お姉ちゃん、元気になってくれてよかったよ」「……うん、少しはしゃぎすぎたかな、喉いたい」
傷口開くところだった、声ヤバイ、振動がぶるぶるになるんだなあ…
……ん?なんかこっちに近づいてくる足音が、こんな時間に誰かな?
まあ、七割がた想像ついてるけど
「……どうも~」カズさん、正解だったな、大波君が牽制してる
なんだろう、まるでわんこちゃんが吠えてたときみたいだなあ
まあでも止めなくちゃな
かわいいけれど
「大波君、二人で話してもいいかな?」「!?危ないよ」大丈夫だと思う、外はホンフーさんが気を張り巡らせてるし
「いざとなったら守ってくれるんでしょ?」ね♡ダーリン
渋々引き下がっていく大波君が見えなくなってからカズさんが話し出す
「……その喉から胸の傷は、痛かったやろ?」「……うにゅ?」よくよく考えてみると私大波君の事に必死でそれから倒れて気が付いたら病院だったから、痛いって思う暇なかった…
我ながらすごい単純だなあ、えへへ
「痛いって思ってなかったです」
「はあ!?」嘘でしょう!?みたいな顔されても困ります…
「いや、下でパニックしてた大波君を落ち着かせて、それから失血で気絶して…でしてね」うん、これがありのまんまだからしょうがない、立場逆な気がするけど気にしない、気にしたら負けな気がする
「……あんたは本当、大波が好きなんやなあ…」「ええ、大好きです」
今度はあきれ顔されちゃったよ…
そんなに非常識なことなのかな…
「えっと、私そんな特別なことしてませんよ?」「二十倍の重力に耐えた上に喉かっ切られて、それでけろりと生還してくる人間なんて常識人やないで、あんたは私に力を使わずに言葉だけで勝ってしまったんや、非常識人の仲間入りやで」クックックって笑うカズさん、どうやら私の胸元を見て笑ってる、どうせ傷しかありませんよ谷間なんてないですよ、すいませんね
「と言うわけですなおにごめんなさい、どうやらあんたは本物やったみたいやな、大波にとってふさわしい物を持ってたんや…私の見立てがアホやったわ」そう言いながら照れるカズさん、私もなんか誉められ過ぎで照れちゃうなあ…
「そうかあ…この傷かあ…」するとカズさんはとても自然な手つきでわたしの肩をはだけさせて、傷全体を見渡すようにする、えーと今私襲われてる?女の人にこんな事されるのは…2回目か、もう諦めた
「ひゃうっ!?」でもだからって舐めないでくださいぃ…ひぁっ、つつーって上に舌を這わせないでえ…
なんでそこから首筋まで…ふぁあ…
そこはやめて…って
「なにするんですか!大波君とすらまだなのに!」「いや…人の傷を見るとついぼーってなってなあ…」
「うう…人生で2回もレズに会うなんて…」「そんなもんやで」
そしてそれからカズさんはあっさりと引き返していった
謝ってくれたし、それに関してはいいけど…
すぐに大波君が入ってくるが
なにされたかなんて絶対に言えない
「大波君、退院したらね」「?」
それからは連日見舞い客が訪れた
野崎さんが来たときは思わず目が点になったなあ…
後ろにいたのはあのフードのお姉さん
すぐ大波君を盾にして話したのは秘密
「なぜ隠れるんですか♡」「ひいっ!」
それから、なぜか大神社長さんが来て…

「こ、こんにちは…才葉さくらです」
「……この子を、よろしく頼む」
「はっ、はいい!!」
その後才葉グループがオオガミの実質的な子会社になるのは別の話
……なんか病院にいたのにすごい疲れたなあ
大物ばっかりくるもんだから…
まあ、退院した今となってはいい思い出か
今は大波君がとなりにいる
私の部屋で、お菓子を食べて、テレビを見る、いつもの光景が戻る
「お姉ちゃんの膝の上はやっぱりいいなあ…」「誉めてもお菓子しかでないよ~」湯田さんともあの後ちゃんと話が出来た、少し照れ臭そうに話すのは、気まずかったのごまかしたいんだろうなみんな
私にできることは明るく冗談ぽく話すこと、それでいい
無理に着飾ろうとなんてしなくていい
「……ね?大波君」「?」
やっぱり可愛いなあ…
……今日は誰もいないんだよね…
(推奨BGM『第一印象から決めてました』)
「……ねえ、今日は帰りたい?」
「……!…帰りたくない」
「……そっか」

ガバッ!

弾道が1上がった!

ミートが2上がった!
パワーが20上がった!
走力が1上がった!
内野安打○を手に入れた!
緊縛を手に入れた!
連打○を手に入れた!
体力が80下がった
……
「……やけにつやつやしてますね」
「そうですか?」
翌日はホンフーさんが我が家を訪ねてきた、実は病院で目を覚ました以来会うのは久しぶりになる
大波君はまだ起きていない、まあ多分今日は起きれないと思うけど
「カズさんとも仲直りしたようで何よりです」「仲直りどころか襲われかけましたよ」「そりゃあなた同性を引き付けるフェロモンが出てますもの」
え、なにそれ、知らないんだけど
同性を引き付けるフェロモン!?
「あなた昔から多分人気者だったでしょう?人気者は、同性にも好かれないとなれないのですよ♡」
そういやわんこちゃんがなついてた子ってそんないなかったしなあ…
……これからは気を付けよう
「それはさておき…カズさんに勝てたこと、心から喜んでます……同時に、あなたはもうすでに裏世界に片足を突っ込ませてしまい、怪我を負わせてしまったことをお詫びします」
「……カズさんと対峙するってそんな危ないことだったんですか?」
正直流されるがままに終わってたから特にそんな意識することもなかったしなんか周りの反応が逆に恐いくらい
「……」ホンフーさん、あなたもでございましたか
「あの人の力を体で体験しておきながら…あなたは本当に人間なんだろうか……カズさんは一山を簡単に削り、その気になれば世の中の定理であるものを大体書き換えられます」
「……はにゃ?」
「まあ私でも一度負けたことがあります、その人を相手に能力なしで勝ったのは貴方くらいでしょうね」
……どこの空想世界なんだろう、いや現実かあ…
「達観してしまいましたね」「お陰さまで…」
「……まあとにかくあなたには感謝しています、大波君のこと、大事になさってくださいね?」「当たり前です!」んん?ホンフーさん、何を疑ってらっしゃる?珍しくじっと見つめてくる
「……事は結構ですが野球に差し支えない程度にしてくださいね」バレテーラ
この人に隠し事はできない、今確信した、いや今さらか…
「事が見たい人はわっふるわっふるとリクエストしてあげてください」「わっふるわっふる?」



「いってきまーす!」あれから大波君は公私両方で大きな成長を遂げた
月に飛ぶ前日は少し不安そうではあったけれど
もう今は元気に宇宙船に乗り込んでいった
帰ってくる頃には私は三十路だろうけど、私は私でオオガミとの提携事業やカズさん達からの依頼をたくさん引き受けてるから暇ではないかな
……なんでそんなに引き受けたかって?
帰ってきた大波君のために
後の人生を少しでも楽しく生きるために
今を精一杯やっていこうと思う
そして帰ってきたらいつもの部屋で笑顔で迎えてやろう
「おかえりなさい!」って


真ルート
終わり