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キリのいい所で一旦仕事を終わらせ、一息つこうと時計を見ると既に五時を過ぎていた。事務所を閉める時間だ。 隣の応接室では真宵がソファに陣取ってドラマの再放送見ていた。 少し前に話題になって、未だに二時間のスペシャル版を時々放送したりする。成歩堂にとっては縁も興味も無いものだ。 「真宵ちゃん、今日はもう閉めるからそれ見終わったら帰っていいよ。駅まで送っていくから」 「あ、うん。ありがとう、ナルホドくん」 真宵は事件の直後こそ、無理に明るく振る舞っているようなところがあったが、最近では自然に笑顔を見せるようになってきた。それでも、成歩堂としては彼女を一人にさせることにはまだ抵抗があり、しばらくは駅まで送っていくことにしていた。 カップにお茶を注ぎ、真宵の隣に座る。 テレビの中では一組の男女が言い争いをしている。成歩堂はこのドラマを見たことが無いので話の流れが分からないが、どうやら男女の三角関係を描いたものらしい。 ぼんやりと見るともなしに画面を眺めていただけの成歩堂の耳に突然、男の台詞が飛び込んできた。 『自分の気持ちに嘘つけねぇよ。言わずに後悔する方が嫌だろ!』 心臓が跳ねた。 自分も後悔するんだろうか・・・・・・。 昼間の思考と御剣を思い出す。 (なんだよ、せっかく忘れてたのに・・・・・・) 苦々しい気持ちでお茶を飲み干した。 けれど、心に焼きついた言葉は流れてはくれなかった。 その後、真宵を駅まで送り、事務所に戻って残った仕事を片付けて、寄託したのは九時過ぎだった。 部屋に入るなりベッドに倒れこむ。 夕方のドラマの台詞が頭から離れない。 告白なんてしない方がいいに決まっている。 (でも、して後悔するのと、しないで後悔するのとどっちがいいんだろ) いなくなっていた一年の間に御剣が何を見てきたのか、成歩堂には分からない。確かなのは、彼が彼の信念の拠り所となるものを手に入れて帰ってきたことだ。それを法廷でまざまざと見せ付けられた。 逃げたと思っていた後姿は、しかし、実際には自分を置いて先へと進んでいたのだった。 そして成歩堂は気づかされた。自分がある点で間違っていたことに。 自分の想いに。 それまでの彼は思い出に捕らわれていた。 孤立した自分を救ってくれた御剣。父のような弁護士になりたいと、その夢を語るときだけは目を輝かせた御剣。そんな過去ばかりを見て、現実の御剣とは向き合っていなかった。 確実に変わった御剣を見て、今の彼を思い知らされて、このままではいけない、と思った。 彼は立ち止まったりしない。どんどん経験を積んで、先へと歩いていってしまう。 御剣は強い。一人でも壁を乗り越えるほどに。しかし、同時に弱さを隠している。そんな彼が愛しい。そんな彼の、あらゆる意味で隣にいたい。置いていかれるわけにはいかない。 「そうだよ」 成歩堂はむくりと上半身を起こした。 「何テレビに影響されてんだよ。あれはあれ、これはこれじゃないか」 大切なのは彼の隣にいること。彼の愛を得ることではない。 「あーもう。・・・・・・ご飯食べて寝よ」 迷いは捨てなくては。 [[戻る>逆転裁判]] [[次へ>PAST→FUTURE3]]
キリのいい所で一旦仕事を終わらせ、一息つこうと時計を見ると既に五時を過ぎていた。事務所を閉める時間だ。 隣の応接室では真宵がソファに陣取ってドラマの再放送を見ていた。 少し前に話題になって、未だに二時間のスペシャル版を時々放送したりする。成歩堂にとっては縁も興味も無いものだ。 「真宵ちゃん、今日はもう閉めるからそれ見終わったら帰っていいよ。駅まで送っていくから」 「あ、うん。ありがとう、ナルホドくん」 真宵は事件の直後こそ、無理に明るく振る舞っているようなところがあったが、最近では自然に笑顔を見せるようになってきた。それでも、成歩堂としては彼女を一人にさせることにはまだ抵抗があり、しばらくは駅まで送っていくことにしていた。 カップにお茶を注ぎ、真宵の隣に座る。 テレビの中では一組の男女が言い争いをしている。成歩堂はこのドラマを見たことが無いので話の流れが分からないが、どうやら男女の三角関係を描いたものらしい。 ぼんやりと見るともなしに画面を眺めていただけの成歩堂の耳に突然、男の台詞が飛び込んできた。 『自分の気持ちに嘘つけねぇよ。言わずに後悔する方が嫌だろ!』 心臓が跳ねた。 自分も後悔するんだろうか・・・・・・。 昼間の思考と御剣を思い出す。 (なんだよ、せっかく忘れてたのに・・・・・・) 苦々しい気持ちでお茶を飲み干した。 けれど、心に焼きついた言葉は流れてはくれなかった。 その後、真宵を駅まで送り、事務所に戻って残った仕事を片付けて、帰宅したのは九時過ぎだった。 部屋に入るなりベッドに倒れこむ。 夕方のドラマの台詞が頭から離れない。 告白なんてしない方がいいに決まっている。 (でも、して後悔するのと、しないで後悔するのとどっちがいいんだろ) いなくなっていた一年の間に御剣が何を見てきたのか、成歩堂には分からない。確かなのは、彼が彼の信念の拠り所となるものを手に入れて帰ってきたことだ。それを法廷でまざまざと見せ付けられた。 逃げたと思っていた後姿は、しかし、実際には自分を置いて先へと進んでいたのだった。 そして成歩堂は気づかされた。自分がある点で間違っていたことに。 自分の想いに。 それまでの彼は思い出に捕らわれていた。 孤立した自分を救ってくれた御剣。父のような弁護士になりたいと、その夢を語るときだけは目を輝かせた御剣。そんな過去ばかりを見て、現実の御剣とは向き合っていなかった。 確実に変わった御剣を見て、今の彼を思い知らされて、このままではいけない、と思った。 彼は立ち止まったりしない。どんどん経験を積んで、先へと歩いていってしまう。 御剣は強い。一人でも壁を乗り越えるほどに。しかし、同時に弱さを隠している。そんな彼が愛しい。そんな彼の、あらゆる意味で隣にいたい。置いていかれるわけにはいかない。 「そうだよ」 成歩堂はむくりと上半身を起こした。 「何テレビに影響されてんだよ。あれはあれ、これはこれじゃないか」 大切なのは彼の隣にいること。彼の愛を得ることではない。 「あーもう。・・・・・・ご飯食べて寝よ」 迷いは捨てなくては。 [[戻る>逆転裁判]] [[次へ>PAST→FUTURE3]]

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