ROCKETEER

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匿名ユーザー

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夕暮れの街を、成歩堂は最近いつもそうしているように真宵と共に駅に向かって歩いていた。
寄り道の学生、買い物の主婦、習い事帰りの子供。通りは賑やかだ。
「ナルホドくん、お腹空いたね」
「そうだね」
「ナルホドくん、ラー・・・」
「嫌だよ」
真宵が言い切る前に否定する。
「何で!?」
「昨日も食べただろ!?」
彼女が言いたいことは分かっている。「ラーメンが食べたい」。
「違うよ。今日はいつものお店じゃなくて駅前にできた新しい・・・」
「ダメ。そんなにラーメンばっかり食べてたら血圧上がっちゃうだろ」
「もー!ナルホドくんの年寄り」
「はいはい」
何と言われようと二日続けてラーメンは精神的にきつい。
そんなやり取りをしているうちに、二人は裁判所の前を通りかかった。
成歩堂は横目で通い慣れた建物を見上げる。
数日前に御剣を見かけて以来、裁判所へは行っていない。ただ、真宵を駅まで送るために門の前だけは毎日通っていた。
「あ。あれ、御剣検事じゃない?」
真宵の声につられてエントランスを見ると、臙脂の影がまさに建物から出てくるところだった。今日は糸鋸刑事の姿は見えない。
ロビーで敢えて声をかけなかったことを思い出して、成歩堂の胸に気まずさが広がる。
「御剣検事ー!」
「あ、ちょっと真宵ちゃん・・・!」
止める間もなく彼女が御剣に駆け寄っていってしまったので成歩堂も仕方なく追いかけたが、足取りは重かった。
(タイミングが悪いな・・・)
避けたい時に限って、どうして会ってしまうのだろう。


御剣が歩み寄る成歩堂に気づいて、二人の視線が重なった。
「おや。君もいたのか」
「人をおまけみたいに言うなよ」
跳ね回る心臓を無理矢理押えつけて平静を装う。
「久しぶりだな。元気だったか?」
「変わりはない」
御剣は素っ気無い。その素っ気の無さが成歩堂に徐々に落ち着きをもたらした。
「ねーねー検事、聞いてくださいよ。ナルホドくんたら駅前にできた新しいラーメン屋さん、連れてってくれないんですよ!」
真宵がぷくりと頬を膨らませる。
「成歩堂・・・、君もケチな男だな」
御剣が呆れた様な顔をする。
「いやいやいや。そんな目で見るなよ。だって昨日も食べてるのに」
「では私と行こうか、真宵くん」
「え。ほんとですか?」
「君も、日々あの男の世話で疲れているだろう?」
「おい、ちょっと・・・御剣、仕事は?」
「今日はもう帰ろうと思っていたのだ。今、車を回すから待っていたまえ」
後半は真宵に向けたものだ。
「わーい!御剣検事、ご馳走になります!」
彼女もちゃっかりしている。
「で、成歩堂。君はどうするのだ?」
御剣の顔は完全に面白がっている。二人で勝手に盛り上がられて妙に悔しい。
「・・・行く」
何故こんなことに・・・。成歩堂は空を仰いだ。







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