Past→Future5

    

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駅で真宵を見送り、成歩堂は御剣の車に乗り込む。
「じゃあ悪いけど事務所まで」
「家までじゃなくていいのか?」
「うん。荷物置きっぱなしだし、自転車もあるしね」
御剣は、そうか、と言って車を発進させた。その横顔を見て先程まで見ていた光景を思い出し、成歩堂はくすりと笑った。
「なんだ?」
訝しげな視線が投げられる。
「いや、御剣にラーメン屋って似合わないなーって」
「まぁ・・・確かにあまり行かないな・・・」
「だよねー。あはは・・・ははは」
笑いが止まらない。
「何だ、ここで降りたいのか」
「すいません」
睨まれて姿勢を正す。
しかし成歩堂は内心安堵していた。
(案外、普通に話せるじゃないか)
避けていた自分が馬鹿みたいだ。意識すればするほど忘れられなくなるというのに。
やはり「友人」が一番自然な関係ということだ。
成歩堂の心の穴に何かがすとんと落ちてきて、ぴたりと当てはまった。


数分後、事務所が入っているビルの前に車が横付けされる。
「ここでいいか?」
「うん、ありがと。じゃあ・・・」
また、と言いかけて成歩堂は思い付いた。
「あのさ、よかったら少し寄っていかないか?」
御剣は一瞬考えて、すぐに、
「そうだな。たまには君とゆっくり話すのもいいか」
と言った。


「そこ座っててよ。今お茶淹れるから」
御剣に応接セットのソファを示して、自分は給湯室へと向かう。
棚から紅茶の茶葉が入った缶を取り出す。彼が紅茶党なのは知っていた。
お湯が沸くまでの間、給湯室から御剣の様子を窺うと、物珍しそうにキョロキョロしているのが見えた。そういえば御剣が成歩堂の事務所に来るのは初めてのことだ。二人で時間をとって語り合うのも。
どんな事を話そうかと考えると、自然と口元が綻んだ。
「はい。お待たせ」
御剣の前にカップを置いて、自分も彼の向かい側に座った。
「真宵くんは元気そうだな」
カップに口をつけながら御剣が言う。
「そうだね。最初は無理してる感じもあったけど・・・。いい子だよ。ぼくや春美ちゃんに心配かけないようにしてるんだ」
「そうか。・・・そういえば・・・」
御剣が視線をよこした。
「この前、裁判所にいたな」
「え?あ、ああ・・・」
ばれていたのか。
「いや、ほらお前、取り込み中だったみたいだからさ。話し掛けなかったんだけど・・・」
自分でも歯切れの悪い言い方になったと思ったが、御剣はふうん、と小さく言ったきりだった。
(ごまかせた・・・?)
成歩堂は身構えたが、相手はもう興味を無くしたようだ。
それから互いの近況や、法律談義、昔話をして、気づけば二人で話し始めてから三時間近く経ち、紅茶もすでに四杯目になっていた。
新しく淹れた紅い液体を一口飲み、成歩堂は何気なく聞いた。他意は無かった。御剣がそこまで動揺するとは思わなかった。
「ねぇお前ってさ、好きな人とかいるの?」
ガシャン。
御剣の手からカップが落ち、白い破片が散らばった。
「うわ、お前何やって・・・大丈夫か!?」
「貴様は何を・・・!」
彼は明らかに慌てていた。
成歩堂は給湯室へ布きんを取りに行く。
「火傷とかは?」
「・・・平気だ」
平静を取り戻した御剣はテーブルの上の欠片を集めている。
「すまない・・・」
「いいよ、どうせ安物だし。今新しいの淹れて・・・」
「いや、今日はもう失礼する。随分長居してしまったしな」
成歩堂が時計を見るとすでに十時を過ぎていた。明日も平日だし、確かにもう帰ったほうが良さそうだ。
カップを弁償すると何度も言う御剣を、気にするなと見送って、一人になった事務所で成歩堂は首を傾げた。
「そんなに聞いちゃいけないことだったか?」







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