失われし記憶

原曲:阿礼の子供
Arrange:RD-sounds

概要


「さてここで質問。稗田はすべてを記録する。けれど、一つだけ記録されていないものがあります。さてそれはなんでしょう?」
「――。」
「はいそこまで。答えは、他ならぬ私自身の記憶。稗田阿礼その人である、阿礼乙女の活動の記録でした。」
「私が引き継ぐ記憶は限定されていて、その全てが残っているわけではない。私の活動は、主として縁起に記され記憶され記録される。けれど、私自身の活動はそれが全てではない。阿弥(まえ)の私が何をしたのか、憶えていない。"この"私の活動も、きっと、残らない。」
「――。」
「何故なんだろうって、思ったわ。一番肝要なのが縁起の編纂だとしても、その時その時の当人の記憶を全ては残さないなんて、不自然じゃない?」
「――。」
「気になった。けど、何を調べても載っていない。調べに調べに調べに調べに調べに調べに調べに調べに調べに………」
「……調べた。でも、どうしても出てこない。苛々したわ。すべてを記録する稗田がどうして自分を記録しないんだって。まるで、"記録してはならない事実"があるみたいじゃない。ねえ?」
「――。」
「そう。それは正しかった。記録してはならない……というより、記録できないのよ。これは。」
「――。」
「人は何寸斬り込めばどのように血を流すのか? どこをどのように刺激すればどう痛みを感じるのか? 一通りのことは医学書に書かれているーーそんなことは知っている。けれど、あんたがどう悲鳴を上げ、どう懇願し、どう鳴くのか、誰がどこに記せるというの? はじめから無理よ。」
「――。」
「阿弥(わたし)も阿七(わたし)も阿夢(わたし)もその前もその前も前も前も……同じ結論に至って、記録することを放棄した。するだけ野暮というものだわ。百歩譲ってそれができたとしても、別の誰かに向けて、どうせ同じことを繰り返す。元々そういうやつなの。阿礼(わたし)は。」
「――。」
「私が三十そこらまでしか生きられないのも、納得だわ。それ以上生きてると多分、もっと非道いことを仕出かすに違いないから。間の百年は、或いはそれに充てる、贖罪の時間なのかもね。でもーー」
「ーーそれでも私は生まれてくる。記録するものは、この幻想郷に必要だから。その内に止められない衝動を秘して。」
百年に一度生まれ来る人の形をした災厄。それが、阿礼乙女の本質。稗田はそのはじめから、呪われているということ。わかった?」
「――。」
「多分、今回は少し"早い"のかもね……この感じからすると。まあ、どうでもいいんだけどね。それよりも、こうして知り得たあなたの全て、この記憶。これは、私だけが持っていく。誰にも渡してなどやらない。次の私も知ることのない、稗田阿求だけの記憶。ふふ……」
「巻き込んじゃってごめんね、小鈴。その顔、忘れないからね」

考察



小ネタ


コメント欄

  • でた…あきゅすずはやっぱり闇・・・ -- 名無しさん (2017-12-08 22:44:37)
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最終更新:2017年12月08日 22:44