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*ウェイクアップ・コール(第一回放送)  朝日はビルの谷間に柔らかなぬくもりを投げかけている。  その光景に逆らうが如く、窓を人口の光で満たし続ける建物が一つ。不夜城という言葉を思い出させるその眩さも、穏やかな陽の光に少しずつ薄らいでゆく。  まるで町が悪夢から醒めて行くかのようだ。  現実と言う名の悪夢からは、誰も醒められはしないのだが。  陽の光が完全に遮られたビル内の一室。天井からつり下げられた青い布の前に立つ女性の側で、スタイリストが慌ただしく最後の化粧直しをしている。その前を早足で横切った女性に耳打ちされ、カメラ脇の男が太いフェルトペンで大判のスケッチブックに何かを書き取っって女に向けた。 「はい、それでは本番はいりまぁす……五秒前!」  不意に響き渡った声に群れていた人影が引き、部屋が静寂に包まれる。 「四!」  電算室でモニタリングをしていた社員たちが、一斉に顔を上げて目の前の巨大スクリーンを見やる。 「三!」  整列したライオトルーパーたちの前に、ゆっくりと上官が立つ。 「二!」  調整室のスタッフが互いに目配せを交わし、スイッチに手をかける。 「一!」  サロンの椅子に身を預けた村上が、一人時計に視線を落とす。  島中の時計が、それぞれの方法で夜明けを告げた。          *   *   * 「ハァ〜イ。参加者のみなさん、おはようございます。よく眠れましたか?」  自動的に点灯した画面の中で手を振る女の表情には、計算づくの笑みに宿る独特の白々しさがある。 「それでは、早速脱落しちゃった参加者さんを紹介してみたいと思います。  一条薫さん、一文字隼人さん、剣崎一真さん、芝浦淳さん、立花藤兵衛さん、天道総司さん、水城史郎さん、モグラ獣人さん、モモタロスさん、以上の九人です。  せっかく参加者してくれたのに早くもこんなに死んでしまって、お姉さんもちょっと寂しいです。くすん」  女は両目を指で拭う素振りをする。が、次の瞬間にはもうわざとらしい笑顔をこちらに向けている。 「でも心配はいりませんよ。死体さえ無事で残っていれば、親切な優勝した人が生き返らせてくれるかもしれません。生き返らせたい人がいる参加者さんは、ぜひぜひがんばって優勝してくださいね。ファイト♪」  大げさな身振りは見たものに苛立ち以外の何ものも感じさせない。あえて反感を買おうとしているのであれば、立派に成功と言えるだろう。 「でも身体の大事な部分が欠けてしまったり、灰になってしまった死体は、流石の我が社でも復活させることはできません。お友達の死体は、くれぐれも大事にしてくださいね。間違っても首輪を外してあげよう、なんて考えちゃ……だめですよ」  笑顔のまますっと細めた目尻はどこか、獲物を見据える猫のような残虐さを漂わせている。 「そうそう、もちろん死んだお友達が禁止エリアに残っていても灰になってしまうので気をつけてくださいね。これから禁止になるエリアは、七時にF-7、九時にE-5、十一時にC-6です」  女が天気予報の如く手で背後に映った地図を指し示す。 「最後にお知らせです。この放送が終わった頃、電車が動き始めます。乗車可能なのはD-9の乗換駅からそれぞれG-2の水族館、A-4の大学北に向かう二つの路線です。  皆さんはフリーパスで利用できるので、ぜひぜひ使ってみてくださいね〜。それじゃお昼まで、さようならぁ〜♪」  誘惑のような、それでいて嘲笑を帯びたウインクとともに、画面が切り替わる。  残り43人、という文字を大きく映し出すだけの、冷たい映像に。           *   *   * 「おつかれさまでした〜」  機材を置いて持ち場を離れ始めたスタッフの間を、スマートレディがにこやかに通り抜けてゆく。  スタジオを出る彼女の肩越しに歩き回る人影も、照明が落ちるとともに鮮やかさを失う。  灰色の怪物たちが蠢く光景を覆い隠すかのように、背後で扉が閉じた。 |043:[[Hypothesis and reality]]|投下順|045:[[狂気と侠気]]| |043:[[Hypothesis and reality]]|時系列順|045:[[狂気と侠気]]| |000:[[さくらの花の咲くころに]]|[[村上峡児]]|087:[[クロックアップ・バトル]](第二回放送)| |000:[[さくらの花の咲くころに]]|[[スマートレディ]]|087:[[[[クロックアップ・バトル]](第二回放送)|
*ウェイクアップ・コール(第一回放送)  朝日はビルの谷間に柔らかなぬくもりを投げかけている。  その光景に逆らうが如く、窓を人口の光で満たし続ける建物が一つ。不夜城という言葉を思い出させるその眩さも、穏やかな陽の光に少しずつ薄らいでゆく。  まるで町が悪夢から醒めて行くかのようだ。  現実と言う名の悪夢からは、誰も醒められはしないのだが。  陽の光が完全に遮られたビル内の一室。天井からつり下げられた青い布の前に立つ女性の側で、スタイリストが慌ただしく最後の化粧直しをしている。その前を早足で横切った女性に耳打ちされ、カメラ脇の男が太いフェルトペンで大判のスケッチブックに何かを書き取っって女に向けた。 「はい、それでは本番はいりまぁす……五秒前!」  不意に響き渡った声に群れていた人影が引き、部屋が静寂に包まれる。 「四!」  電算室でモニタリングをしていた社員たちが、一斉に顔を上げて目の前の巨大スクリーンを見やる。 「三!」  整列したライオトルーパーたちの前に、ゆっくりと上官が立つ。 「二!」  調整室のスタッフが互いに目配せを交わし、スイッチに手をかける。 「一!」  サロンの椅子に身を預けた村上が、一人時計に視線を落とす。  島中の時計が、それぞれの方法で夜明けを告げた。          *   *   * 「ハァ〜イ。参加者のみなさん、おはようございます。よく眠れましたか?」  自動的に点灯した画面の中で手を振る女の表情には、計算づくの笑みに宿る独特の白々しさがある。 「それでは、早速脱落しちゃった参加者さんを紹介してみたいと思います。  一条薫さん、一文字隼人さん、剣崎一真さん、芝浦淳さん、立花藤兵衛さん、天道総司さん、水城史郎さん、モグラ獣人さん、モモタロスさん、以上の九人です。  せっかく参加者してくれたのに早くもこんなに死んでしまって、お姉さんもちょっと寂しいです。くすん」  女は両目を指で拭う素振りをする。が、次の瞬間にはもうわざとらしい笑顔をこちらに向けている。 「でも心配はいりませんよ。死体さえ無事で残っていれば、親切な優勝した人が生き返らせてくれるかもしれません。生き返らせたい人がいる参加者さんは、ぜひぜひがんばって優勝してくださいね。ファイト♪」  大げさな身振りは見たものに苛立ち以外の何ものも感じさせない。あえて反感を買おうとしているのであれば、立派に成功と言えるだろう。 「でも身体の大事な部分が欠けてしまったり、灰になってしまった死体は、流石の我が社でも復活させることはできません。お友達の死体は、くれぐれも大事にしてくださいね。間違っても首輪を外してあげよう、なんて考えちゃ……だめですよ」  笑顔のまますっと細めた目尻はどこか、獲物を見据える猫のような残虐さを漂わせている。 「そうそう、もちろん死んだお友達が禁止エリアに残っていても灰になってしまうので気をつけてくださいね。これから禁止になるエリアは、七時にF-7、九時にE-5、十一時にC-6です」  女が天気予報の如く手で背後に映った地図を指し示す。 「最後にお知らせです。この放送が終わった頃、電車が動き始めます。乗車可能なのはD-9の乗換駅からそれぞれG-2の水族館、A-4の大学北に向かう二つの路線です。  皆さんはフリーパスで利用できるので、ぜひぜひ使ってみてくださいね〜。それじゃお昼まで、さようならぁ〜♪」  誘惑のような、それでいて嘲笑を帯びたウインクとともに、画面が切り替わる。  残り43人、という文字を大きく映し出すだけの、冷たい映像に。           *   *   * 「おつかれさまでした〜」  機材を置いて持ち場を離れ始めたスタッフの間を、スマートレディがにこやかに通り抜けてゆく。  スタジオを出る彼女の肩越しに歩き回る人影も、照明が落ちるとともに鮮やかさを失う。  灰色の怪物たちが蠢く光景を覆い隠すかのように、背後で扉が閉じた。 |043:[[Hypothesis and reality]]|投下順|045:[[狂気と侠気]]| |043:[[Hypothesis and reality]]|時系列順|045:[[狂気と侠気]]| |000:[[さくらの花の咲くころに]]|[[村上峡児]]|087:[[クロックアップ・バトル]](第二回放送)| |000:[[さくらの花の咲くころに]]|[[スマートレディ]]|087:[[クロックアップ・バトル]](第二回放送)|

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