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*僅かばかりの不信  夜が明けて間もない時間帯が生み出す肌寒さと、昇った太陽が本領を発揮する寸前という時間帯の呼び込む微量の陽気。  それら二つの反発が作り出す春先独特の気候は、三角形を形成しながら歩む三人の男性にとっても心地が良いものだ。  全身に風格を漂わせながら先頭を切って進む男の名は、ヒビキ。  一目でその実力が分かる鍛え上げられた肉体と、確固たる意思を宿した瞳。「漢」と呼ぶのが相応しいだろうか。  ヒビキの後ろから追従する二人の男は、対称的な様子で道を踏みしめている。  その一人、城戸真司は正面を真っ直ぐに見据えている。心の奥底に秘めた悲しみを牢から解放はせず、明るく振舞うことに徹している。  一方、風間大介は視線をあちらこちらへ滑らせ続けている。風向を次々と変える気まぐれな風の様に。  内心後悔していた。ハナを一文字任せにしてしまったことを。彼女に殴られた鼻の痛みが増した気がした。  現在は殺し合いの真っ只中であり、いくらハナが戦闘手段を持ち同行者付きと言っても安心は出来なかった。  また、大介をもう一つ悩ませる要素が存在した。緑川あすかのことである。  真司に支給されたデルタギアを強奪し去った彼女は、大介からすればハナの次、二番目に出会った参加者にあたる。  あの場にいた他の参加者よりも同行時間が長かったにも関わらず、彼女を止められなかったのも自分の力不足が大きい、と大介は思い込んでしまう。  だが過ぎたことはどうしようも無い。風らしく、大介は次の目標を定める。 (女は花……ならば、全ての花は私が救ってみせましょう)  そうと決めてから歩みが速まるまでに時間はそう掛からなかった。三角形の並びから先頭のヒビキを抜き去り、列を崩す。  早急に仲間を集めて、再びハナと合流した上で、更にあすかも連れ戻す。  その意思を汲み取ったのか、三人の辺りを吹く疾風は追い風となり、彼らを後押しせんとしている。 「よし……じゃあ少しペースを上げるか」  たちまち大介に追い付いたヒビキが少しばかり笑みを含む。  それに真司も合わせる様にして大介に並び、三角形はその内の一角の奮起から直線へ変化した。 ◆  エリアE-5の中央で三人は、ほんの一時的に歩みの速度を緩めながら平淡に繰り返される景色を眺めながら進む。  その過程で真司は、自身に妙な感覚を覚えていた。  リゾートと呼ばれる地であると言うのに、視界に入るそれらはどれも見覚えがある様な構図で、懐かしさすら感じてしまうのだ。  ジャーナリストの端くれとして各地を取材して回ってきたことで、一般人より多くの景色を記憶してきた真司の脳がそう思わせているのかも知れない。  辺りを見渡せば見渡す程、この場で行われているゲームと自身を取り巻く周囲の雰囲気とのギャップには悪い印象しか浮かばない。  彼がこのゲームに参加する前に投じていた戦い「ライダーバトル」。それはほんの一握りを除いて関係者以外に知られることは無かった。  普通通りの進行を見せる現実の抱える静寂中で、戦いは行われていたのだから。  ライダーバトル同様、外部の者に知られることなく進み、幾多の命が絶たれていくこのゲーム。  真司にとって、このゲームの開催はそれが再び繰り返されたことに等しいものだった。  今度こそ止めなくてはならない。ライダーバトルの時は試行錯誤を繰り返してきたが、今回のゲームではハッキリと方針を固める動機がある。  戦いを止めることができず、尚且つそれが長期化した際に起こる悪夢――,一般人への被害拡大。  ライダーバトルの最終局面におけるミラーモンスター――レイドラグーンの大量発生。それと似た現象が起こるのを真司は恐れていた。  方針は則ち、ゲームとの無関係者をも巻き込んだ惨劇への発展を阻止すること。  集団との一時的な合流、三人になってからの行動中に経た思考から、主催者であるスマートブレインがその惨劇を起こせるだけの力を持っていると真司は確信していた。  真司からすれば、死者蘇生を可能にするという村上の発言に嘘は無いと考えるのが普通だ。  実際に彼の知る命を落とした筈のライダーが複数人ゲームに参加しているのだから。  たちまち人間を灰化させた首輪といい、彼の危惧している事態を起こせるだけの力を必ず持っている筈――そう考えるのもおかしくないだろう。  だからこそ放っては置けない。必ず仲間を集めて、スマートブレインを討つ。  その信念は何処へ向かうのか、その結末は、不透明のままだ。 ◆  それにしても、何とむさ苦しいことか。決して外観のことではない。むしろ、真逆。  足元で断続的に咲き乱れる花達はそのままでも美しいし、空を青く染めている太陽はその美を可能な限り高みへと引き上げている。  リゾートを名乗るだけあって環境にも気を配っているらしい。空気は澄んでいるし、定期的に耳へ飛び込む動物や鳥類の鳴き声も心地良い。  環境の腐敗した都市を思わせる大規模な建物も、喧騒もこのエリアの周囲には存在していない。美しいものを愛する自分にとっては決して悪くない環境。  それをむさ苦しいものへと墜としているのは、間違いなくこの二人だと断言できた。  ヒビキ、城戸真司。面構えだけ見れば決して悪い男では無く、むしろ上の部類。  ヒビキの肉体は相当鍛えていることを思わせたし、城戸も先程から雰囲気が変わっている。  おそらくは自分と同様、この戦いにおける目標を固めたのだろう。確かに二人共一線の外から見れば、外面的にも内面的にも優れているという第一印象を持つ。  しかし実際に一歩踏み込んでみるとどうだろうか。ヒビキはいつ女に見られるか分からない状況で変身後全裸になっても平然としている呆れた神経の持ち主。  城戸は城戸で発言の節々から、上辺だけで何も考えて無い、馬鹿の臭いがする。  それはそれで言い換えれば「愛すべき馬鹿」とか「良い意味での馬鹿」に族するということなのだろうが。  とにかく、馬が合うタイプではない。勿論協力者としては信頼に足る存在であるのは間違いないと理解しているが。  早朝のヒビキの戦いぶりや、手段はどうあれライダーバトルという殺し合いにおいて最後の二人にまで残ったという城戸の話を聞く限り、戦闘力は素人の自分よりは上。  実力者である以上、守るべき対象である花さえ咲いていればこれ以上無い用心棒と捉えることができる。  ……のだが、肝心な探し求めている花がどこにも咲いていない。    初めに名簿を見た時点で女性らしい名前が少ないのは把握済みだった。  それでも二人の女性にいきなり同行することができたことから、楽観視していたのかも知れない。  しかし、最初から二人と合流できた時点で気付くべきだった――残りの女性はほんの僅かだということを。  もし気付けていれば、こんな決意は生まれなかっただろうに。  しかし今更方針を変える訳にはいかない。そんなことをすれば、疼きながらも心情に共鳴し、躍動を続けてくれている両足にも申し訳が立たない。  だから進み続ける。悲願達成の為に、脱出の為に。  ふと城戸に目をやると、地図を取り出しながら口を開きだした。 「俺達、どこに行けば良いのかな?」  そう、未だ行き先は決まっていない。D-5とE-5エリアをうろつきながら形式的な捜索をしているだけ。  その言葉を聞いてふと、グループの問題点を垣間見た気がした。自分も含め、優れた統率者足る人物がいないのだ。  確認したところ、ハナさん達との再合流時間は別れてから二時間後だという。さすがに短すぎる。  気絶していて提案できなかった自身にも非があるのだが、せめてその位はうまく調整して欲しかったと思う。 「まあ南下していますし、人影のありそうな都市部の主要施設をいくつか確認するのが妥当ですね」  どうせだから自分の意思を伝えておく。といってもこのルートでは、他にできそうなことは無いが。 「都市部って……合流時間まで後三十分しか無いのに……」 「だからといって収穫無しで戻る訳にはいかないでしょう。これだけ時間を掛けて短距離を捜索しても、辺りに気配は無いですし」  この程度の距離を探索するならば、グループを分断する必要も無かった筈だ。危険を冒した以上、結果が無ければ気に入らない。 「でも俺達だけで勝手に行動したら、二人が戻った時心配を掛けちゃうし……」  当然の反応を返す城戸。ヒビキか城戸が提案していたら自分もそうしただろう。 「一人だけ戻って、ハナさん達と合流。その後どこかの施設で落ち合う、でどうでしょうか。私達は皆変身できますし、最低限の襲撃は防げます」 「もし一人じゃ対応できない相手に襲われたらどうする? 真司やハナが戦った白い奴みたいに」  今度はヒビキが返してきた。やはりこれも妥当な問い掛けと言える。 「そのレベルにまでなれば何人でも同じです。……そんなに心配なら私が行きましょう。ハナさんのことも気になりますしね……」  彼女に殴られた鼻を右手でそっと押さえてやると、辺りを旋回していたドレイクゼクターが左肩に舞い降りた。  クロックアップのことを考えれば、この中で一番その役目に相応しいのは確かに自分ではあるのだが。この二人はその能力を知らない。  悪いがこちらもこの状況下で無駄足を踏むつもりは無い。自分が戦闘の素人だとしか話していない以上、どちらかが、名乗り出る。 「怏々としているな……分かった。それは俺に任せてくれ」 「ヒビキさん!?」  ――この様に。 「いや、あの場でまとめちゃったのは俺だから。計画変更なら俺が伝えなきゃ駄目かな、って思ってさ。……それで、合流地点はどうする?」 「病院辺りでどうでしょうか。治療具やらも調達できるでしょうし。時間は指定せず、先着組は待機しましょう」  ヒビキが頷いたのを認めた後、城戸に視線を動かす。ヒビキに全幅の信頼を寄せているからか、それなりに納得した表情だった。 「じゃあ急ぎましょうか。場所が場所ですしね」  現在地は三十分も経てば禁止エリアと化すE-5。長居は無用だ。城戸に合図しながら歩き出すと、三歩終えて再び呼び止められた。  向き直ると、ヒビキが何かを投げてくる。片手で掴みとり、瞬間的に握った拳を解く。  簡易的だがカブトムシを連想させる一本角が目立つゼクター。天道総司の物とは違い、銀が基調になっており、「ZECT」の刻印。 「その蜻蛉を見てたら、お前に預けとくのが一番良さそうに思えたからな」  既に見慣れた感のあるポーズを見送り、進行路に向き直る。ヒビキが走りながら来た道を戻っているのが足音から推察できる。  少々早めのペースで歩き出したことで、ヒビキと自分の距離は広まっている。  しかしこの謎のゼクターは無反応……実におかしい話だ。  何故ゼクターが単体で存在しているのか。ライダーへの変身はゼクターにツールを組み合わせることで完了する。  天道のベルト、影山のブレス、そして自分が何故か所有しているグリップ――ゼクターならばそれらを持つ者に追従している筈なのに、こいつは動く気配が無い。  対応ツールが無いのか。だとすれば何故支給されているのか。用途は何なのか。  マニュアルがあれば話は別だが、ヒビキなら持っていた場合は渡してくる筈。  ……謎だらけではあるが、意味のある存在であることは間違いないだろう。  この場からの脱出、戦場に咲く花たる女性達の保護に加え、こいつの調査。これらの目的をいかに効率的に消化するか。最短ルートは―――― **状態表 【日高仁志(響鬼)@仮面ライダー響鬼】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:E-5エリアからD-5エリアに向けて移動中】 [時間軸]:最終回前 [状態]:疲労回復、顔面に傷 [装備]:変身音叉・音角、音撃棒・烈火 [道具]:基本支給品一式(着替え2着と元の服を含む)、野点篭(きびだんご1箱つき)、釘数本、不明支給品×1(確認済)、猛士の刀 【思考・状況】 基本行動方針:出来るだけ多くの仲間を守って脱出 1:一文字達と合流後、迂回して病院を目指す。 2:真司と風間に対する心配。 3:もっと仲間を捜す。金色のライダーに変身する男(志村)に気を付ける。 4:あすか、どうしたのかな。 5:この刀(猛士の剣)に付いているのは自分の名前だが……? ※猛士の剣は現在切れ味の悪いただの剣ですが、ある条件を満たすと……? ※一文字の話から、茶髪の男―仮面ライダーグレイブが戦いに乗っていることを知りました。 ※変身制限に疑問を持っています 【風間大介@仮面ライダーカブト】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:E-5エリアからF-5エリアに向けて移動中】 [時間軸]:ゴンと別れた後 [状態]:鼻痛(鼻血は止まっています) [装備]:ドレイクグリップ、ドレイクゼクター [道具]:支給品一式、オロナミンC2本(ぬるめ)、ハイパーゼクター 【思考・状況】 基本行動方針:戦いはなるべく回避し、できるだけ早く脱出する。 1:城戸と共に都市部を探索した後、病院へ向かう。 2:協力者を集める(女性優先) 3:謎のゼクターについて調べる。 4:あすかがどうなったのか心配。 5:移動車両を探す。 6:影山瞬に気をつける ※ハイパーゼクターはジョウント移動及び飛行が不可能になっています。マニュアルはありません。 ※変身制限に疑問を持っています。 【城戸真司@仮面ライダー龍騎】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:E-5エリアからF-5エリアにむけて移動中】 [時間軸]:劇場版、レイドラグーンへの特攻直前 [状態]:全身に軽度の痛み、芝浦の死に悲しみ [装備]:カードデッキ(龍騎) [道具]:支給品一式 【思考・状況】 基本行動方針:早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒 1:市街地へ向かう。風間に同行。 2:金色の仮面ライダー(グレイブ)に注意する。茶髪の男?まさか…? 3:本郷ともできれば再度合流したい。 4:志村の後を追い、長田結花との合流を目指すついでに話を紐解く。 5:手塚に似てるなぁー。 [備考] ※不信感を多少持ちましたが、志村をまだ信用しています。 ※名簿に手塚、芝浦、東條、香川の名前がある事から、スマートブレインが死者蘇生の技術を持っていると考えています。 ※連続変身出来なかった事に疑問を感じています。 ※志村について話していません。 ※道中での情報交換により、危険人物及び友好的人物、要注意人物に対してのある程度の共通認識を持ちました。 敵対的:白い怪物(ダグバ)、金色のライダー(グレイブ) 友好的:本郷猛(R)、一文字隼人(R)、ハナ、手塚海之、桐矢京介、和泉伊織(イブキ)、加賀美新 要注意:香川英行、東條悟、桜井侑斗、影山瞬 ※都市部の探索ルートは次の書き手さんにお任せします。 |059:[[全てを喰らう牙]]|投下順|061:[[コントラスト]]| |056:[[枯れぬ策謀]]|時系列順|061:[[コントラスト]]| |048:[[傷付いてもいい、強く立ち上がれ]]|[[日高仁志]]|071:[[希望と絶望と偽りの顔(前編)]]| |048:[[傷付いてもいい、強く立ち上がれ]]|[[風間大介]]|066:[[ちぐはぐな仲間たち]]| |048:[[傷付いてもいい、強く立ち上がれ]]|[[城戸真司]]|066:[[ちぐはぐな仲間たち]]|
*僅かばかりの不信  夜が明けて間もない時間帯が生み出す肌寒さと、昇った太陽が本領を発揮する寸前という時間帯の呼び込む微量の陽気。  それら二つの反発が作り出す春先独特の気候は、三角形を形成しながら歩む三人の男性にとっても心地が良いものだ。  全身に風格を漂わせながら先頭を切って進む男の名は、ヒビキ。  一目でその実力が分かる鍛え上げられた肉体と、確固たる意思を宿した瞳。「漢」と呼ぶのが相応しいだろうか。  ヒビキの後ろから追従する二人の男は、対称的な様子で道を踏みしめている。  その一人、城戸真司は正面を真っ直ぐに見据えている。心の奥底に秘めた悲しみを牢から解放はせず、明るく振舞うことに徹している。  一方、風間大介は視線をあちらこちらへ滑らせ続けている。風向を次々と変える気まぐれな風の様に。  内心後悔していた。ハナを一文字任せにしてしまったことを。彼女に殴られた鼻の痛みが増した気がした。  現在は殺し合いの真っ只中であり、いくらハナが戦闘手段を持ち同行者付きと言っても安心は出来なかった。  また、大介をもう一つ悩ませる要素が存在した。緑川あすかのことである。  真司に支給されたデルタギアを強奪し去った彼女は、大介からすればハナの次、二番目に出会った参加者にあたる。  あの場にいた他の参加者よりも同行時間が長かったにも関わらず、彼女を止められなかったのも自分の力不足が大きい、と大介は思い込んでしまう。  だが過ぎたことはどうしようも無い。風らしく、大介は次の目標を定める。 (女は花……ならば、全ての花は私が救ってみせましょう)  そうと決めてから歩みが速まるまでに時間はそう掛からなかった。三角形の並びから先頭のヒビキを抜き去り、列を崩す。  早急に仲間を集めて、再びハナと合流した上で、更にあすかも連れ戻す。  その意思を汲み取ったのか、三人の辺りを吹く疾風は追い風となり、彼らを後押しせんとしている。 「よし……じゃあ少しペースを上げるか」  たちまち大介に追い付いたヒビキが少しばかり笑みを含む。  それに真司も合わせる様にして大介に並び、三角形はその内の一角の奮起から直線へ変化した。 ◆  エリアE-5の中央で三人は、ほんの一時的に歩みの速度を緩めながら平淡に繰り返される景色を眺めながら進む。  その過程で真司は、自身に妙な感覚を覚えていた。  リゾートと呼ばれる地であると言うのに、視界に入るそれらはどれも見覚えがある様な構図で、懐かしさすら感じてしまうのだ。  ジャーナリストの端くれとして各地を取材して回ってきたことで、一般人より多くの景色を記憶してきた真司の脳がそう思わせているのかも知れない。  辺りを見渡せば見渡す程、この場で行われているゲームと自身を取り巻く周囲の雰囲気とのギャップには悪い印象しか浮かばない。  彼がこのゲームに参加する前に投じていた戦い「ライダーバトル」。それはほんの一握りを除いて関係者以外に知られることは無かった。  普通通りの進行を見せる現実の抱える静寂中で、戦いは行われていたのだから。  ライダーバトル同様、外部の者に知られることなく進み、幾多の命が絶たれていくこのゲーム。  真司にとって、このゲームの開催はそれが再び繰り返されたことに等しいものだった。  今度こそ止めなくてはならない。ライダーバトルの時は試行錯誤を繰り返してきたが、今回のゲームではハッキリと方針を固める動機がある。  戦いを止めることができず、尚且つそれが長期化した際に起こる悪夢――,一般人への被害拡大。  ライダーバトルの最終局面におけるミラーモンスター――レイドラグーンの大量発生。それと似た現象が起こるのを真司は恐れていた。  方針は則ち、ゲームとの無関係者をも巻き込んだ惨劇への発展を阻止すること。  集団との一時的な合流、三人になってからの行動中に経た思考から、主催者であるスマートブレインがその惨劇を起こせるだけの力を持っていると真司は確信していた。  真司からすれば、死者蘇生を可能にするという村上の発言に嘘は無いと考えるのが普通だ。  実際に彼の知る命を落とした筈のライダーが複数人ゲームに参加しているのだから。  たちまち人間を灰化させた首輪といい、彼の危惧している事態を起こせるだけの力を必ず持っている筈――そう考えるのもおかしくないだろう。  だからこそ放っては置けない。必ず仲間を集めて、スマートブレインを討つ。  その信念は何処へ向かうのか、その結末は、不透明のままだ。 ◆  それにしても、何とむさ苦しいことか。決して外観のことではない。むしろ、真逆。  足元で断続的に咲き乱れる花達はそのままでも美しいし、空を青く染めている太陽はその美を可能な限り高みへと引き上げている。  リゾートを名乗るだけあって環境にも気を配っているらしい。空気は澄んでいるし、定期的に耳へ飛び込む動物や鳥類の鳴き声も心地良い。  環境の腐敗した都市を思わせる大規模な建物も、喧騒もこのエリアの周囲には存在していない。美しいものを愛する自分にとっては決して悪くない環境。  それをむさ苦しいものへと墜としているのは、間違いなくこの二人だと断言できた。  ヒビキ、城戸真司。面構えだけ見れば決して悪い男では無く、むしろ上の部類。  ヒビキの肉体は相当鍛えていることを思わせたし、城戸も先程から雰囲気が変わっている。  おそらくは自分と同様、この戦いにおける目標を固めたのだろう。確かに二人共一線の外から見れば、外面的にも内面的にも優れているという第一印象を持つ。  しかし実際に一歩踏み込んでみるとどうだろうか。ヒビキはいつ女に見られるか分からない状況で変身後全裸になっても平然としている呆れた神経の持ち主。  城戸は城戸で発言の節々から、上辺だけで何も考えて無い、馬鹿の臭いがする。  それはそれで言い換えれば「愛すべき馬鹿」とか「良い意味での馬鹿」に族するということなのだろうが。  とにかく、馬が合うタイプではない。勿論協力者としては信頼に足る存在であるのは間違いないと理解しているが。  早朝のヒビキの戦いぶりや、手段はどうあれライダーバトルという殺し合いにおいて最後の二人にまで残ったという城戸の話を聞く限り、戦闘力は素人の自分よりは上。  実力者である以上、守るべき対象である花さえ咲いていればこれ以上無い用心棒と捉えることができる。  ……のだが、肝心な探し求めている花がどこにも咲いていない。    初めに名簿を見た時点で女性らしい名前が少ないのは把握済みだった。  それでも二人の女性にいきなり同行することができたことから、楽観視していたのかも知れない。  しかし、最初から二人と合流できた時点で気付くべきだった――残りの女性はほんの僅かだということを。  もし気付けていれば、こんな決意は生まれなかっただろうに。  しかし今更方針を変える訳にはいかない。そんなことをすれば、疼きながらも心情に共鳴し、躍動を続けてくれている両足にも申し訳が立たない。  だから進み続ける。悲願達成の為に、脱出の為に。  ふと城戸に目をやると、地図を取り出しながら口を開きだした。 「俺達、どこに行けば良いのかな?」  そう、未だ行き先は決まっていない。D-5とE-5エリアをうろつきながら形式的な捜索をしているだけ。  その言葉を聞いてふと、グループの問題点を垣間見た気がした。自分も含め、優れた統率者足る人物がいないのだ。  確認したところ、ハナさん達との再合流時間は別れてから二時間後だという。さすがに短すぎる。  気絶していて提案できなかった自身にも非があるのだが、せめてその位はうまく調整して欲しかったと思う。 「まあ南下していますし、人影のありそうな都市部の主要施設をいくつか確認するのが妥当ですね」  どうせだから自分の意思を伝えておく。といってもこのルートでは、他にできそうなことは無いが。 「都市部って……合流時間まで後三十分しか無いのに……」 「だからといって収穫無しで戻る訳にはいかないでしょう。これだけ時間を掛けて短距離を捜索しても、辺りに気配は無いですし」  この程度の距離を探索するならば、グループを分断する必要も無かった筈だ。危険を冒した以上、結果が無ければ気に入らない。 「でも俺達だけで勝手に行動したら、二人が戻った時心配を掛けちゃうし……」  当然の反応を返す城戸。ヒビキか城戸が提案していたら自分もそうしただろう。 「一人だけ戻って、ハナさん達と合流。その後どこかの施設で落ち合う、でどうでしょうか。私達は皆変身できますし、最低限の襲撃は防げます」 「もし一人じゃ対応できない相手に襲われたらどうする? 真司やハナが戦った白い奴みたいに」  今度はヒビキが返してきた。やはりこれも妥当な問い掛けと言える。 「そのレベルにまでなれば何人でも同じです。……そんなに心配なら私が行きましょう。ハナさんのことも気になりますしね……」  彼女に殴られた鼻を右手でそっと押さえてやると、辺りを旋回していたドレイクゼクターが左肩に舞い降りた。  クロックアップのことを考えれば、この中で一番その役目に相応しいのは確かに自分ではあるのだが。この二人はその能力を知らない。  悪いがこちらもこの状況下で無駄足を踏むつもりは無い。自分が戦闘の素人だとしか話していない以上、どちらかが、名乗り出る。 「怏々としているな……分かった。それは俺に任せてくれ」 「ヒビキさん!?」  ――この様に。 「いや、あの場でまとめちゃったのは俺だから。計画変更なら俺が伝えなきゃ駄目かな、って思ってさ。……それで、合流地点はどうする?」 「病院辺りでどうでしょうか。治療具やらも調達できるでしょうし。時間は指定せず、先着組は待機しましょう」  ヒビキが頷いたのを認めた後、城戸に視線を動かす。ヒビキに全幅の信頼を寄せているからか、それなりに納得した表情だった。 「じゃあ急ぎましょうか。場所が場所ですしね」  現在地は三十分も経てば禁止エリアと化すE-5。長居は無用だ。城戸に合図しながら歩き出すと、三歩終えて再び呼び止められた。  向き直ると、ヒビキが何かを投げてくる。片手で掴みとり、瞬間的に握った拳を解く。  簡易的だがカブトムシを連想させる一本角が目立つゼクター。天道総司の物とは違い、銀が基調になっており、「ZECT」の刻印。 「その蜻蛉を見てたら、お前に預けとくのが一番良さそうに思えたからな」  既に見慣れた感のあるポーズを見送り、進行路に向き直る。ヒビキが走りながら来た道を戻っているのが足音から推察できる。  少々早めのペースで歩き出したことで、ヒビキと自分の距離は広まっている。  しかしこの謎のゼクターは無反応……実におかしい話だ。  何故ゼクターが単体で存在しているのか。ライダーへの変身はゼクターにツールを組み合わせることで完了する。  天道のベルト、影山のブレス、そして自分が何故か所有しているグリップ――ゼクターならばそれらを持つ者に追従している筈なのに、こいつは動く気配が無い。  対応ツールが無いのか。だとすれば何故支給されているのか。用途は何なのか。  マニュアルがあれば話は別だが、ヒビキなら持っていた場合は渡してくる筈。  ……謎だらけではあるが、意味のある存在であることは間違いないだろう。  この場からの脱出、戦場に咲く花たる女性達の保護に加え、こいつの調査。これらの目的をいかに効率的に消化するか。最短ルートは―――― **状態表 【日高仁志(響鬼)@仮面ライダー響鬼】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:E-5エリアからD-5エリアに向けて移動中】 [時間軸]:最終回前 [状態]:疲労回復、顔面に傷 [装備]:変身音叉・音角、音撃棒・烈火 [道具]:基本支給品一式(着替え2着と元の服を含む)、野点篭(きびだんご1箱つき)、釘数本、不明支給品×1(確認済)、猛士の刀 【思考・状況】 基本行動方針:出来るだけ多くの仲間を守って脱出 1:一文字達と合流後、迂回して病院を目指す。 2:真司と風間に対する心配。 3:もっと仲間を捜す。金色のライダーに変身する男(志村)に気を付ける。 4:あすか、どうしたのかな。 5:この刀(猛士の剣)に付いているのは自分の名前だが……? ※猛士の剣は現在切れ味の悪いただの剣ですが、ある条件を満たすと……? ※一文字の話から、茶髪の男―仮面ライダーグレイブが戦いに乗っていることを知りました。 ※変身制限に疑問を持っています 【風間大介@仮面ライダーカブト】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:E-5エリアからF-5エリアに向けて移動中】 [時間軸]:ゴンと別れた後 [状態]:鼻痛(鼻血は止まっています) [装備]:ドレイクグリップ、ドレイクゼクター [道具]:支給品一式、オロナミンC2本(ぬるめ)、ハイパーゼクター 【思考・状況】 基本行動方針:戦いはなるべく回避し、できるだけ早く脱出する。 1:城戸と共に都市部を探索した後、病院へ向かう。 2:協力者を集める(女性優先) 3:謎のゼクターについて調べる。 4:あすかがどうなったのか心配。 5:移動車両を探す。 6:影山瞬に気をつける ※ハイパーゼクターはジョウント移動及び飛行が不可能になっています。マニュアルはありません。 ※変身制限に疑問を持っています。 【城戸真司@仮面ライダー龍騎】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:E-5エリアからF-5エリアにむけて移動中】 [時間軸]:劇場版、レイドラグーンへの特攻直前 [状態]:全身に軽度の痛み、芝浦の死に悲しみ [装備]:カードデッキ(龍騎) [道具]:支給品一式 【思考・状況】 基本行動方針:早期に殺し合いを止めた上でのスマートブレイン打倒 1:市街地へ向かう。風間に同行。 2:金色の仮面ライダー(グレイブ)に注意する。茶髪の男?まさか…? 3:本郷ともできれば再度合流したい。 4:志村の後を追い、長田結花との合流を目指すついでに話を紐解く。 5:手塚に似てるなぁー。 [備考] ※不信感を多少持ちましたが、志村をまだ信用しています。 ※名簿に手塚、芝浦、東條、香川の名前がある事から、スマートブレインが死者蘇生の技術を持っていると考えています。 ※連続変身出来なかった事に疑問を感じています。 ※志村について話していません。 ※道中での情報交換により、危険人物及び友好的人物、要注意人物に対してのある程度の共通認識を持ちました。 敵対的:白い怪物(ダグバ)、金色のライダー(グレイブ) 友好的:本郷猛(R)、一文字隼人(R)、ハナ、手塚海之、桐矢京介、和泉伊織(イブキ)、加賀美新 要注意:香川英行、東條悟、桜井侑斗、影山瞬、老紳士(死神博士)、赤い怪物(ゴルゴス)、牙王 ※都市部の探索ルートは次の書き手さんにお任せします。 |059:[[全てを喰らう牙]]|投下順|061:[[コントラスト]]| |056:[[枯れぬ策謀]]|時系列順|061:[[コントラスト]]| |048:[[傷付いてもいい、強く立ち上がれ]]|[[日高仁志]]|071:[[希望と絶望と偽りの顔(前編)]]| |048:[[傷付いてもいい、強く立ち上がれ]]|[[風間大介]]|066:[[ちぐはぐな仲間たち]]| |048:[[傷付いてもいい、強く立ち上がれ]]|[[城戸真司]]|066:[[ちぐはぐな仲間たち]]|

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