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休息」(2008/09/16 (火) 12:12:36) の最新版変更点

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*休息 薄暗い道路をゴ・ガドル・バはバイクで走り抜ける。 バイクを従わせている腕は右腕のみ。左腕はというと…ガドルのバッグの中だ。 先ほどのゼロノスとの戦闘による傷を癒すため、ガドルは地図に記された保養所を目指していた。 病院に向かう事も考えたが、ある事実が病院に向かう事を断念させた。 ゼロノスと同行していた香川から、取引の代償として受け取った首輪探知機。 その首輪探知機が病院へと向かう道に多くの参加者がいる事を探知していた。 本来ならば多くの者と戦える事はガドルにとって願ったり叶ったりな事なのだが…なにぶん状態が悪い。 左腕の欠損もそうだが、全身に広がる疲労も無視できない。おまけに変身もできないのだ。 もっとも、完全に変身できないわけではない。香川から受け取った首輪探知機以外の代償、オルタナティブゼロのカードデッキ。 これを使えば戦う事自体は可能だろう。だがそれでは意味が無い。 (本来の力を出し切れぬ状況で戦い、それが何になる?その状態で勝っても負けても、得る物は悔いだけだ) ゴ・ガドル・バの目的はあくまでも強き者と戦い強くなる事。そしてダグバを倒す事だ。 その為の糧にならない、ただ自分の身を護るだけの戦いなど、ガドルには意味が無い。 だがダブルライダーやオルタナティブゼロ、ゼロノスとの戦い。彼らのような強き者との戦いは正にガドルが望む戦いそのものであった。 願わくば再び彼らと…いや、まだ見ぬ強き者とでもいいし、クウガでもいい。戦いたい、ガドルの本能はそう呟く。 だがその本能を理性で抑え、ガドルはバイクを北へと走らせる。空はいよいよ明るくなり、夜の時間は終ろうとしていた――           *   *   * 風と一体になるように、バイクは走る。 馬とは違う、その走り。ガドルは運転に慣れ余裕ができると、次第にこのバイクという物が中々良い物だという事を実感できるようになってきた。 単に移動手段として優れているだけではない。言葉にできないが、あえて言うならば浪漫という奴なのだろうか? (バダーが気に入るのも頷ける…) ゴ・バダー・バ。現代の馬ともいえるバイクを愛した彼は、自らのゲゲルにもバイクを使い、殺戮の限りを尽くした。 そんな彼もあと一歩という所で、クウガに敗れた。そう、敗れたはずなのだ。 だが彼の名前がダグバや自分の名前と共に名簿に載っていた事は事実。しかしそれがどうした。 何故だとかどうしてといった感情はない。あるのは自分が求める強き者が増えたという事だ。 彼の実力は十分理解している。同じ『ゴ』として、しのぎを削るのも悪くない。 強き者との戦いに思いを寄せるガドルを現実に呼び戻すかのように、場違いな音楽が流れ出す。 こんな音が鳴ったままでは参加者を呼び寄せてしまうかもしれない…ガドルはそう考え、バイクを止めてバッグを漁る。 その動作はまるで長年片腕であるかのように淀みが無く、ガドルの適応能力の高さを物語る。 音源の正体は携帯であり、何やら女の声が聞こえてきていた。 その声は煩わしいが、内容が内容だったので、ガドルは一語一句漏らさぬように、その放送を聴いた。           *   *   * 放送を聴き終え、ガドルは息を一つ吐くと、空を見上げた。空は明るく、これから一日が始まる、そんな思いも過ぎるが… (この空を見ることなく、絶えた者もいるのだな…) ガドルにとっては電車の情報は興味を引くものではない。禁止エリアの情報も、少なくとも今の自分の場所を考えると関係ないと言える。 だが死亡者の情報は…この中に或いは強き者がいたかもしれない、そう考えると惜しく感じた。 出会うことなく絶えてしまった者達を想いつつ、ガドルは携帯を操作する。 携帯を取り出したついでに首輪探知機を使用し、辺りの状況を確認する事にしたのだ。 一つ、反応があった。 ガドルは辺りを、いや、反応があった方向だけを見つめる。だが人のいる気配はない。 しかし地面にほんの少しだけ違和感を感じ、ガドルはその場へゆっくりと近づく。 近づくにつれ違和感の正体がはっきりする。周りの土と比べると、その場所だけ何かを埋めたようになっているのだ。 しばらく悩んでいたが意を決し、携帯を懐に仕舞い込み、土を掘る。 一度掘り返したのだろうか?意外なほど土は柔らかく、右腕だけでも簡単に掘り起こす事ができた。 眠っていたのは、男だった。所々に火傷のような傷があり、中でも胸にできた傷は特に痛々しい。恐らくはこの傷が致命傷となったのだろう。 だがそれほどの傷を負って死んだにも拘らず、男の顔は…自分を貫き通した顔をしていた。 (…強き者であったのだな、貴様も。先の放送のどれかが、貴様の名前なのだろう…) ガドルはしばらく男の顔を見つめた後、周りの土を再び男に被せ、掘り起こす前と同じ状態にする。 (貴様と戦えなかった事が惜しい。せめて…貴様と戦い、生き残った者とは、戦ってみたいものだ) ガドルは何事も無かったかのようにバイクの元へ戻り、再びエンジンをかけて走り出す。 本来なら首輪の反応等無視し、まっすぐ保養所へと向かうべきだったのだろう。 だが強き者が数多くこの地にいる。その事実がガドルの精神を高揚させ、傷ついた肉体に少なからず、影響を与えていた。           *   *   * しばらくバイクを走らせると灰色の建物が見えてきた。派手な看板等は無く、質素な印象を受ける。 地図と照らし合わせ、この建物が目指すべき保養所だということがなんとか確認できた。 バイクは建物の裏手へと運んでおく。こうしておけば少なくとも表から見た限りでは誰かが中にいると即座に気づかれる事はないだろう。 ガドルはバイクを隠すとバッグだけを手に持ち、再び保養所の表へと戻る。 (…うん?) 来たときには保養所自体に目が行き気がつかなかったが、よくよくみるとあたりにはタイヤの跡がいくつか残されている。 中には地面が削れたような跡もあり、どうやらこの場所で戦闘が行なわれたらしい。 もしかしたら、この施設内に残っているかもしれない。この戦闘を行なった参加者が… ガドルはオルタナティブゼロのカードデッキをいつでも取り出せるようにし、警戒しながら中へと踏み込んだ。 ロビーはこざっぱりとしていて、ソファーや小さなテーブル、そんな中で目を引くのは古ぼけた大時計といった所か。 外とは裏腹に中は随分と綺麗なものだ。中も多少は荒れていると考えていたガドルは拍子抜けした気分だった。 そのままガドルは一階を探索し…探索を終える頃には警戒心をすっかり解けていた。 右手に握られた首輪探知機のおかげだ。一階を探索している間、常に探知機の反応を見ていたが、結局一度も反応する事は無かった。 探索中、誰かがいた形跡はあったが、あいにくこれといった物は見つからない。随分前にこの場を後にしたらしい。 階段をギシギシと軋ませながら、二階へ移る。その右手には探知機は無い。 既に安全と分かったという事もあるが、電池の減りが思っていたよりも早く、乱用は禁物のようだ。 ガドルは階段に一番近い部屋を選び、ドアを開ける。質素ではあるが、陽の光が差し込み、悪くはない部屋だ。 バッグを部屋に放り出し、座り込む。このまま休んでもよかったが、先ほど一階を探索している間に見かけた浴場―― (…一度味わってみるのも悪くはない、か) ガドルは部屋にあった備え付けの浴衣を手に取り、階下の浴場へと歩を進めた。 浴場の入り口は二つあったが、なんとなく青いのれんが掛けられた方を選ぶ。 片腕だけで器用に衣服を脱ぎ去り、棚の中に置いてある篭へと放り込んでいく。 ガラガラとガラスの戸を開けると青い空が見えた。露天風呂、という奴だろうか。 ヒンヤリとした石の感触を素足に感じ、ガドルはキョロキョロと辺りを見渡し、目当ての物を見つける。 こういう所ではまず身体を清めるもの、と記憶している。この状況で気にする必要があるかどうかは別として。 流し場にいくつか置いてある木製の椅子に腰を下ろし、目の前の鏡を見つめる。 自然と鍛えられ、盛り上がった筋肉が外気に震えている。 左肘から先は欠損し、注意深く見ればそこかしこに小さな傷もできている。 ガドルは左肩にできた切り傷にそっと触れてみる。自身の治癒能力はある程度制限されてはいるが、健在のようだ。 時間さえ掛ければ、あるいは左腕を接合する事も可能かもしれない、そんな事を考えつつ蛇口を捻り、桶にお湯を溜める。 お湯に浸したタオルに石鹸を滲み込ませ、なるべく傷口には触れないようにしながら身体にこすり付けていく。 今度は別の蛇口を捻る。シャワーから勢いよくお湯が飛び出し、身体に纏わりついた汚れや垢を泡と一緒に流していく。 そのまま頭を濡らし…手が止まる。目の前には二つボトルがあり、恐らくどちらかがシャンプーと呼ばれる物なのだろう。 だがもう一つは?仮に間違えた所で何の問題も無いとは思うが…ガドルは悩んだ末に両方とも使い、髪を泡立て、洗い流していく。 身体を清め終わったガドルは立ち上がり、風呂へと向かう。確かに身体を清めるのは悪くはない、が―― (分からん、何故単なるお湯に身体を浸ける事をリント達は好むのだろうか?) 右足をゆっくりとお湯へと浸ける。多少熱く感じるが、我慢できないほどではない。 そのまま左足。しばらくそうして仁王立ちをしていると、少しずつだが身体に熱がこもってくる。 そのまま腰を下ろし、風呂の中の段差に座り込む。下半身は完全に浸かりきった形だ。 (なるほど…確かに、悪くはないな) 多少傷口に沁みるが、緊張が解される感覚が心地よい。左手の負傷が無ければ全身を浸からせていた所だろう。 しかしこの心地よさ。もしも全身を浸からせていたらあまりの心地よさに眠ってしまうのではないだろうか。 「おぉ~……」 思わず声を漏らし、ガドルは初めての温泉を堪能した。 少々長湯しすぎたようで、ガドルは多少のぼせてしまっていた。 もやもやとする頭で浴場を抜け、身体を乾いたタオルで拭いていく。 (風呂とは心地よいが、危険だな…) そう心に刻み込みつつ、浴衣に着替え、二階の部屋へとふらふらとした足取りで戻っていく。 部屋にたどり着き、扉を閉めた所でついに限界を向かえ、バタリと倒れこんでしまう。 這いずるようにバッグの側まで近づき、左腕とカードデッキを取り出し、カードデッキは懐に仕舞い込む。 これで突然の襲撃にも備えられるだろう。そして左腕は傷口とピタリと合う所で固定させる。 治癒能力が健在ならば、こうしておけば目覚めたときには接合されているかもしれない。そう上手くいくとは思えない、が… ともかく、今の状況でやれる事はやった。ガドルはそう判断し、身体を休めるため、ゆっくりと目を閉じた。 **状態表 【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:C-3保養所二階】 [時間軸]:ゴ・ジャーザ・ギのゲゲルを開始後 [状態]:左腕の肘から先を破損。右足部装甲破損。全身の負傷中。ぽかぽか。睡眠中。 [装備]:オルタナティブゼロのデッキ、基本支給品×1、首輪探知携帯、YAMAHAのT MAX [道具]:破損した左腕 [思考・状況] 基本行動方針:強き者と戦い、強くなる。 1:リントの戦士を倒す。 2:再びあの二人と戦う。 3:桜井侑斗と決着をつける。 4:戦闘を繰り返し、強くなる。 5:最終的にダグバを倒す。 備考 ※ガドルは自分にルールを課しているため、抵抗しないただのリントには攻撃しません。 ※バイク(YAMAHAのT MAX)は保養所の裏手に隠されています。 |062:[[泣く少年]]|投下順|064:[[果てなき願い]]| |061:[[コントラスト]]|時系列順|064:[[果てなき願い]]| |042:[[暗雲]]|[[ゴ・ガドル・バ]]|000:[[後の作品]]|
*休息 薄暗い道路をゴ・ガドル・バはバイクで走り抜ける。 バイクを従わせている腕は右腕のみ。左腕はというと…ガドルのバッグの中だ。 先ほどのゼロノスとの戦闘による傷を癒すため、ガドルは地図に記された保養所を目指していた。 病院に向かう事も考えたが、ある事実が病院に向かう事を断念させた。 ゼロノスと同行していた香川から、取引の代償として受け取った首輪探知機。 その首輪探知機が病院へと向かう道に多くの参加者がいる事を探知していた。 本来ならば多くの者と戦える事はガドルにとって願ったり叶ったりな事なのだが…なにぶん状態が悪い。 左腕の欠損もそうだが、全身に広がる疲労も無視できない。おまけに変身もできないのだ。 もっとも、完全に変身できないわけではない。香川から受け取った首輪探知機以外の代償、オルタナティブゼロのカードデッキ。 これを使えば戦う事自体は可能だろう。だがそれでは意味が無い。 (本来の力を出し切れぬ状況で戦い、それが何になる?その状態で勝っても負けても、得る物は悔いだけだ) ゴ・ガドル・バの目的はあくまでも強き者と戦い強くなる事。そしてダグバを倒す事だ。 その為の糧にならない、ただ自分の身を護るだけの戦いなど、ガドルには意味が無い。 だがダブルライダーやオルタナティブゼロ、ゼロノスとの戦い。彼らのような強き者との戦いは正にガドルが望む戦いそのものであった。 願わくば再び彼らと…いや、まだ見ぬ強き者とでもいいし、クウガでもいい。戦いたい、ガドルの本能はそう呟く。 だがその本能を理性で抑え、ガドルはバイクを北へと走らせる。空はいよいよ明るくなり、夜の時間は終ろうとしていた――           *   *   * 風と一体になるように、バイクは走る。 馬とは違う、その走り。ガドルは運転に慣れ余裕ができると、次第にこのバイクという物が中々良い物だという事を実感できるようになってきた。 単に移動手段として優れているだけではない。言葉にできないが、あえて言うならば浪漫という奴なのだろうか? (バダーが気に入るのも頷ける…) ゴ・バダー・バ。現代の馬ともいえるバイクを愛した彼は、自らのゲゲルにもバイクを使い、殺戮の限りを尽くした。 そんな彼もあと一歩という所で、クウガに敗れた。そう、敗れたはずなのだ。 だが彼の名前がダグバや自分の名前と共に名簿に載っていた事は事実。しかしそれがどうした。 何故だとかどうしてといった感情はない。あるのは自分が求める強き者が増えたという事だ。 彼の実力は十分理解している。同じ『ゴ』として、しのぎを削るのも悪くない。 強き者との戦いに思いを寄せるガドルを現実に呼び戻すかのように、場違いな音楽が流れ出す。 こんな音が鳴ったままでは参加者を呼び寄せてしまうかもしれない…ガドルはそう考え、バイクを止めてバッグを漁る。 その動作はまるで長年片腕であるかのように淀みが無く、ガドルの適応能力の高さを物語る。 音源の正体は携帯であり、何やら女の声が聞こえてきていた。 その声は煩わしいが、内容が内容だったので、ガドルは一語一句漏らさぬように、その放送を聴いた。           *   *   * 放送を聴き終え、ガドルは息を一つ吐くと、空を見上げた。空は明るく、これから一日が始まる、そんな思いも過ぎるが… (この空を見ることなく、絶えた者もいるのだな…) ガドルにとっては電車の情報は興味を引くものではない。禁止エリアの情報も、少なくとも今の自分の場所を考えると関係ないと言える。 だが死亡者の情報は…この中に或いは強き者がいたかもしれない、そう考えると惜しく感じた。 出会うことなく絶えてしまった者達を想いつつ、ガドルは携帯を操作する。 携帯を取り出したついでに首輪探知機を使用し、辺りの状況を確認する事にしたのだ。 一つ、反応があった。 ガドルは辺りを、いや、反応があった方向だけを見つめる。だが人のいる気配はない。 しかし地面にほんの少しだけ違和感を感じ、ガドルはその場へゆっくりと近づく。 近づくにつれ違和感の正体がはっきりする。周りの土と比べると、その場所だけ何かを埋めたようになっているのだ。 しばらく悩んでいたが意を決し、携帯を懐に仕舞い込み、土を掘る。 一度掘り返したのだろうか?意外なほど土は柔らかく、右腕だけでも簡単に掘り起こす事ができた。 眠っていたのは、男だった。所々に火傷のような傷があり、中でも胸にできた傷は特に痛々しい。恐らくはこの傷が致命傷となったのだろう。 だがそれほどの傷を負って死んだにも拘らず、男の顔は…自分を貫き通した顔をしていた。 (…強き者であったのだな、貴様も。先の放送のどれかが、貴様の名前なのだろう…) ガドルはしばらく男の顔を見つめた後、周りの土を再び男に被せ、掘り起こす前と同じ状態にする。 (貴様と戦えなかった事が惜しい。せめて…貴様と戦い、生き残った者とは、戦ってみたいものだ) ガドルは何事も無かったかのようにバイクの元へ戻り、再びエンジンをかけて走り出す。 本来なら首輪の反応等無視し、まっすぐ保養所へと向かうべきだったのだろう。 だが強き者が数多くこの地にいる。その事実がガドルの精神を高揚させ、傷ついた肉体に少なからず、影響を与えていた。           *   *   * しばらくバイクを走らせると灰色の建物が見えてきた。派手な看板等は無く、質素な印象を受ける。 地図と照らし合わせ、この建物が目指すべき保養所だということがなんとか確認できた。 バイクは建物の裏手へと運んでおく。こうしておけば少なくとも表から見た限りでは誰かが中にいると即座に気づかれる事はないだろう。 ガドルはバイクを隠すとバッグだけを手に持ち、再び保養所の表へと戻る。 (…うん?) 来たときには保養所自体に目が行き気がつかなかったが、よくよくみるとあたりにはタイヤの跡がいくつか残されている。 中には地面が削れたような跡もあり、どうやらこの場所で戦闘が行なわれたらしい。 もしかしたら、この施設内に残っているかもしれない。この戦闘を行なった参加者が… ガドルはオルタナティブゼロのカードデッキをいつでも取り出せるようにし、警戒しながら中へと踏み込んだ。 ロビーはこざっぱりとしていて、ソファーや小さなテーブル、そんな中で目を引くのは古ぼけた大時計といった所か。 外とは裏腹に中は随分と綺麗なものだ。中も多少は荒れていると考えていたガドルは拍子抜けした気分だった。 そのままガドルは一階を探索し…探索を終える頃には警戒心をすっかり解けていた。 右手に握られた首輪探知機のおかげだ。一階を探索している間、常に探知機の反応を見ていたが、結局一度も反応する事は無かった。 探索中、誰かがいた形跡はあったが、あいにくこれといった物は見つからない。随分前にこの場を後にしたらしい。 階段をギシギシと軋ませながら、二階へ移る。その右手には探知機は無い。 既に安全と分かったという事もあるが、電池の減りが思っていたよりも早く、乱用は禁物のようだ。 ガドルは階段に一番近い部屋を選び、ドアを開ける。質素ではあるが、陽の光が差し込み、悪くはない部屋だ。 バッグを部屋に放り出し、座り込む。このまま休んでもよかったが、先ほど一階を探索している間に見かけた浴場―― (…一度味わってみるのも悪くはない、か) ガドルは部屋にあった備え付けの浴衣を手に取り、階下の浴場へと歩を進めた。 浴場の入り口は二つあったが、なんとなく青いのれんが掛けられた方を選ぶ。 片腕だけで器用に衣服を脱ぎ去り、棚の中に置いてある篭へと放り込んでいく。 ガラガラとガラスの戸を開けると青い空が見えた。露天風呂、という奴だろうか。 ヒンヤリとした石の感触を素足に感じ、ガドルはキョロキョロと辺りを見渡し、目当ての物を見つける。 こういう所ではまず身体を清めるもの、と記憶している。この状況で気にする必要があるかどうかは別として。 流し場にいくつか置いてある木製の椅子に腰を下ろし、目の前の鏡を見つめる。 自然と鍛えられ、盛り上がった筋肉が外気に震えている。 左肘から先は欠損し、注意深く見ればそこかしこに小さな傷もできている。 ガドルは左肩にできた切り傷にそっと触れてみる。自身の治癒能力はある程度制限されてはいるが、健在のようだ。 時間さえ掛ければ、あるいは左腕を接合する事も可能かもしれない、そんな事を考えつつ蛇口を捻り、桶にお湯を溜める。 お湯に浸したタオルに石鹸を滲み込ませ、なるべく傷口には触れないようにしながら身体にこすり付けていく。 今度は別の蛇口を捻る。シャワーから勢いよくお湯が飛び出し、身体に纏わりついた汚れや垢を泡と一緒に流していく。 そのまま頭を濡らし…手が止まる。目の前には二つボトルがあり、恐らくどちらかがシャンプーと呼ばれる物なのだろう。 だがもう一つは?仮に間違えた所で何の問題も無いとは思うが…ガドルは悩んだ末に両方とも使い、髪を泡立て、洗い流していく。 身体を清め終わったガドルは立ち上がり、風呂へと向かう。確かに身体を清めるのは悪くはない、が―― (分からん、何故単なるお湯に身体を浸ける事をリント達は好むのだろうか?) 右足をゆっくりとお湯へと浸ける。多少熱く感じるが、我慢できないほどではない。 そのまま左足。しばらくそうして仁王立ちをしていると、少しずつだが身体に熱がこもってくる。 そのまま腰を下ろし、風呂の中の段差に座り込む。下半身は完全に浸かりきった形だ。 (なるほど…確かに、悪くはないな) 多少傷口に沁みるが、緊張が解される感覚が心地よい。左手の負傷が無ければ全身を浸からせていた所だろう。 しかしこの心地よさ。もしも全身を浸からせていたらあまりの心地よさに眠ってしまうのではないだろうか。 「おぉ~……」 思わず声を漏らし、ガドルは初めての温泉を堪能した。 少々長湯しすぎたようで、ガドルは多少のぼせてしまっていた。 もやもやとする頭で浴場を抜け、身体を乾いたタオルで拭いていく。 (風呂とは心地よいが、危険だな…) そう心に刻み込みつつ、浴衣に着替え、二階の部屋へとふらふらとした足取りで戻っていく。 部屋にたどり着き、扉を閉めた所でついに限界を向かえ、バタリと倒れこんでしまう。 這いずるようにバッグの側まで近づき、左腕とカードデッキを取り出し、カードデッキは懐に仕舞い込む。 これで突然の襲撃にも備えられるだろう。そして左腕は傷口とピタリと合う所で固定させる。 治癒能力が健在ならば、こうしておけば目覚めたときには接合されているかもしれない。そう上手くいくとは思えない、が… ともかく、今の状況でやれる事はやった。ガドルはそう判断し、身体を休めるため、ゆっくりと目を閉じた。 **状態表 【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:C-3保養所二階】 [時間軸]:ゴ・ジャーザ・ギのゲゲルを開始後 [状態]:左腕の肘から先を破損。右足部装甲破損。全身の負傷中。ぽかぽか。睡眠中。 [装備]:オルタナティブゼロのデッキ、基本支給品×1、首輪探知携帯、YAMAHAのT MAX [道具]:破損した左腕 [思考・状況] 基本行動方針:強き者と戦い、強くなる。 1:リントの戦士を倒す。 2:再びあの二人と戦う。 3:桜井侑斗と決着をつける。 4:戦闘を繰り返し、強くなる。 5:最終的にダグバを倒す。 備考 ※ガドルは自分にルールを課しているため、抵抗しないただのリントには攻撃しません。 ※バイク(YAMAHAのT MAX)は保養所の裏手に隠されています。 |062:[[泣く少年]]|投下順|064:[[果てなき願い]]| |061:[[コントラスト]]|時系列順|064:[[果てなき願い]]| |042:[[暗雲]]|[[ゴ・ガドル・バ]]|086:[[おふろでやりたいほうだい]]|

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