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裏切りはすぐ傍に」(2009/07/02 (木) 20:24:12) の最新版変更点

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*裏切りはすぐ傍に ―――― 一連の出来事は刺激的だったが、それ以上に危険でもあった。 放送局を出た後、香川ら三人はショッピングセンターへ向かって歩き始めた。 理由は単純に、使えそうなものを調達するためだ。香川のデッキが奪われた以上、ライフルだけでは心細い。 先ほどデイパックを漁って見つけられたのは二着の黒い全身タイツに、あとは三枚のカードだけだ。 全身タイツが出てきた時はどうしようかと悩んだが、カードがアンデッドを封印するための――――そのうちの一枚は金居のカードであったのは不幸中の幸いだろうが。 兎も角、それだけでは変身や玉数に制限があり、尚且つそれを使い切ってしまったら身を守る手段がない。故に物が豊富にあるショッピングモールへと向かったのだった。 包丁のような武器はもとより、自転車などの移動手段。あとは医療道具などがあればいうことなしだ。食料も、できることなら確保しておきたい。 ふと、金居が立ち止まって辺りを見回し、やがて一点を見つめる――――その場所は、今から向かおうとしているショッピングモールだった。 何も気づかない香川と侑斗は率直に疑問を口に出す。というのも、二人が一般人並みの聴力しか持たないからだ。 「どうかしましたか?」 「いや、今何かが壊れるような音が……」 「そうか? 俺たちは何も……」 その時だった。目の前の建物から耳を塞ぎたくなる様な轟音と、凄まじい量の砂煙が現れたのは。 何もないところから火は出ない。それと同じように、自然に音や煙が出るわけもなく、中には誰かいる。それもとびきり派手な戦闘をかましているらしい。 即座に顔を見合わせ走り出す。放送局で温存していた体力をここで精一杯発揮したような気がした。 丁度ショッピングモールの側面にあたる場所に辿り着き、そのまま壁伝いに出来るだけ足音を立てずに進む。 もし戦いのどちらかが殺し合いに抗う者ならば見捨てては置けないが、両方が殺し合いに乗っているならば―――― 不安な考えを振り払うように、侑斗はゼロノスベルトを握り締める。脳裏に浮かぶのは、あのお節介ばかり焼く、掛け替えのない友の姿。 「デネブ……」 無意識につぶやくと同時に、新たなアクション――――侵入者が現れた。 ――FINAL VENT―― 聞き覚えがある電子音声に侑斗が、そして一際大きく香川が反応した。出口が近かったこともあってか、今の三人のいる場所からはその発信源がよく見えた。 扉を破って現れた白い怪物と、それに引きずられる鈍い灰色の怪物。忘れもしない、この島に来てから始めて出会った明確な悪――――ドラゴンオルフェノク。 「アイツ……ッ!」 「少し待ってください!」 今にも飛び掛ろうとする侑斗を押さえる香川。だが、彼の目は別の場所に向けられていた。ドラゴンオルフェノクではなく、もう一匹の怪物へ。 爪に引き摺られて行く先には新たな爪を構える、もう一匹の虎。中心部に輝くデッキは、紛れもなく自分がいた世界の物だ。 あの技は自分も見たことが――――いや、自分も受けたことがある。このままならあの爪が高々と体に突き刺さるはずだった。 しかし、ドラゴンオルフェノクは「さも当然のように」怪物の手から抜け出し、元の青年の姿へと戻る。 それを見た虎も同じように変身を解く。鏡のように砕けた仮面に隠された素顔は、紛れもなく長い間見てきた――――狂気に魅入られた教え子だった。 「東條、君……」 「東條……香川さんが言ってた、危険人物か!」 その名前にいち早く侑斗が反応する。金居は少し眉をひそめただけで、特に何も話さなかった。 向こうのほうはこちらに気づいていないのか見向きもしない。寧ろ目に入っていないという方が正しかったかもしれない。 東條は新たなカードデッキを構え、青年も今度は金色のベルトを取り出す。ゼロノスのベルトと似てはいるが、全く別のものだった。 デッキを突き出し、 コードを入力し、 そしてベルトへ装填する。 「変身ッ!!」 二人の口から発せられるのは、この島にいる人間の大半が聞き覚えのある言葉。再び装甲が二人の体を包む。 ベルトから金色の閃光が駆け巡り、背に作られるマントが孤高の王者として風格を見せる――――仮面ライダーオーガ。 犀を模した灰色の仮面と右肩の巨大な角。いかにも頑丈そうな鎧が鉄壁の防御を感じさせる――――仮面ライダーガイ。 もしも装着者が違ったならば、この力は誰かを守るために酷使されたかもしれない。だが、そうはならなかった。 そして二人のライダーは―――片方はいつものように、もう片方は少し違った形で―――悪になった。 「……ここは私が行きます、内部に他の方が居る可能性も考慮して、二人には内部の探索を頼みます。」 「ちょっ、待ってください! 変身もできないのに……」 生身で行こうとする香川を今度は侑斗が制止する。相変わらず金居はだんまりを決め込んでいた。 「変身が出来なくても、彼だけは私が止めないといけないんです。」 「だったら、尚更駄目だ! 今のあなたは冷静になりきれていない!」 「ですが!」 二人の口論にうんざりしたのか、ゆっくりと金居が手を上げる。それは「自分が行く」ということを指し示していた。 「……任せて、大丈夫ですか?」 「ああ、制限も解けた頃合だ、問題ない。」 多少頭が冷えた香川の問いかけに、含み笑いを浮かべながら答えた。しかし侑斗は納得していない様子で金居を見る。 その視線に気づいた金居は、より一層笑みを強くして皮肉を言った。 「まぁ、俺ならいなくなっても悲しみが少ないだろう?」 「ッ! おまええええええッ!!」 一瞬で掴みかかろうとした侑斗を軽くいなし、「冗談だ」と付け加える。もちろん侑斗はそのまま地面に激突した。 「本当に、任せていいのですね?」 「俺を信用しろ。じゃ、香川を頼むぞ、坊や。」 侑斗が言い返す前に金居の姿が軋み、本来の姿、バトルファイトで戦っていたころの姿に戻る。 ギラファノコギリクワガタの始祖――――カテゴリーキング、その名はギラファアンデッド。上級アンデッドの中でもさらに上位に入るアンデッドだ。 「東條君を、頼みます。」 「心配性なんだな、あんたも。」 互いに頷き、それぞれが行くべき場所へと足を進めていく。香川と侑斗の姿が見えなくなったのを見計らって、 「ククク……クハハハハハ!!」 金居は大声で笑い出した。もはやこれは自分に勝てと天が道を指し示しているとさえ思えてくる、それほどまでに上手く行っていた。 東條と同盟を組んだ直後に因縁のある香川との遭遇、さらには誤解の種と成り得る写真の入手に極めつけは早期の東條との合流。 すべてがうまく行き過ぎて恐ろしくなる……その薄ら寒さ、はたまた優越感と満足感のせいか。金居は中から入れ違いに出てくるもう一人の存在に気づかなかった。 ◆ 風のエルは困惑しながらも、自分の幸運を神――――或いは主に感謝した。 下水道を通って来たこともあり、敵と出会い体力を消耗することなく制限の時間まで無事に居られたことを。 暗がりから血を求め外に出てみれば、丁度いい具合に数人の人間らがいる場所へと出てこれたことを。 二人は戦闘中、三人の固まりの内二人は建物内へ入っていき残る一人は高笑いを上げている。葉っぱで切ったのだろうか、若干右手の先から血が覗いている。 それを見て、風のエルはまずその男……金居を標的からはずした。既に変身しているのもあるが、緑色の血は見ていて気味が悪い。 ただの人間なら迷わず襲っただろう、しかし今求めているのは赤い血、強き人間の血だ。人外の血はすべて飲み干した後にでも飲めばいい、それこそ気が向けばだが。 戦闘中の方は後で消耗しきった所を襲おう、まずは前菜の二人。気取られぬように窓から入るべきか。 剣を握り締め、音を立てずに窓を開け進入。内部を見回すがそれらしい人影は見えず、しばらく歩き回る。 その内、酷く損傷が激しい所にたどり着く。大方ここで戦闘があったのだろう、そうでもなければこんな壊れ方はしない。 ふと足元に目をやると、デイパックが落ちていた。しかしそれよりも傍らに倒れている人間のほうが興味を引いた。 息をしているところから見るとまだ生きているらしい。風のエルの口元が歪んだ笑みを浮かべる。 意識を失ってさえいればそれほど抵抗されずに血が飲める。男の体に手を伸ばし、そのまま片手でつかみ上げた。 それほど血色のいい顔をしているとはいい難いが、贅沢は言ってられない。首筋に嘴を突き立て、目を瞑る。 ――――嗚呼、いただきま……―――― しかしその時、風のエルの食事は思わぬ形で中断されることになる。 「何をしている?」 ◆ ――STRIKE VENT―― 電子音声が名を言い終わる前に、オーガの拳が襲う。ガイの装甲が如何に強固といえど、帝王の力を手にした北崎の前では紙切れ同然だった。 漸く現れたメタルホーンも、大した傷も与えられぬまま角を折られる。だが、残った部分を振り上げて殴りかかった。 「ふふ……遅いよ。」 振り上げた瞬間にがら空きになった胴へ蹴りを叩き込む。歯軋りをする東條とは対照的に、北崎のテンションは留まる事を知らないかのように上がり続ける。 武器らしい武器は使用していないのに何者をも寄せ付けぬパワー、圧倒的なまでに誰よりも速いスピード。正しく王の力と呼ぶにふさわしい。 ――――そう、自分は今や王となった。古き者が上に立つ時代はもう必要ない、これからは王がすべての頂点に立つ。 オーガの手が赤い角を捕らえた。ミキミキと耳障りな音を立ててひび割れていく角を前に、北崎は快感に近い物さえ感じた。 ――ADVENT―― 再び響く電子音声。しかし音源はガイのメタルバイザーではなく、もっと後方からだ。 直後に聞こえた空気の切れる音。咄嗟にミッションメモリーを引き抜き、腰にある剣の柄へと差し込んだ。 ――Ready―― 何もない場所から現れる黄金の刀身。振り向きざまに自分に迫るものを切り裂いてから、それが幾つもの銃弾だと気づいた。 その剣、オーガストランザーをゆっくりと地面に下ろして、北崎は仮面の中で笑う。 「やっぱり使うんだ、仮面ライダーの力を。」 緑色の牛――――マグナギガに隠れてはいたが、一瞬で中身が誰なのか察しがついた。そもそもあのデッキを渡したのは自分なのだから。 「……。」 ゾルダの装甲で体を包んだ海堂が、返事の代わりに投げたのは……追撃の銃弾だった。今度は切り裂くまでもなく、軽く体を捻るだけで回避する。 一跳びで距離を詰め、ゾルダへと切りかかる。ガイほどではないがゾルダの装甲もそれなりに硬く、尚且つ長い射程距離があるため長距離戦は不利だと判断したのだ。 ――GUARD VENT―― しかし、その斬撃はゾルダに届くことはない。マグナギガの腹部を模した盾が出現し、ゾルダの体を包む。 「チィ……」 ――Exceed Charge―― 柄のスイッチを入れると、刀身が光り輝きながら伸びていく。それこそ天にまで届きそうな勢いでどこまでもどこまでも。それを見たゾルダは思わず目を丸くする。 「……そんなん、ありかよおおおお!?」 「砕け散れえええええ!」 ――CONFINE VENT―― 「僕を忘れて貰っちゃ困るなぁ。」 刀身が元の姿に戻ったかと思うと、突如右肩と脇腹が爆発する。立ち位置からしてゾルダがやったことでないのは確かだが、ガイも飛び道具を持っていないはず。 ふと視界に何かの影が映った。それは黒く焦げていたが、金属で出来たクワガタの顎だった。 いつの間にかガイの隣に立っている新たな異形。襲い掛からないところを見るとガイの味方のようだが――――いや、よく見るとクワガタに似ている気がする。 「王様に逆らうの? いけないなぁ。」 「王か……俺も一応、王と呼ばれていたものでね。」 そういって、ギラファアンデッドは再びその口元を歪めた。 ◆ 侑斗たちがそこにたどり着いたのは、半ば必然的なことだった。 元々通路を辿っていけばそこにたどり着くのだし、壁の損傷具合から見ても探りを入れるならそこからだった。 案の定、入ってみれば気絶している青年とそれを掴み――まるで食べようとしているかのように――佇む怪人という若干シュールな図ではあったが。 「何をしている?」 香川がライフルを構えると同時に風のエルが跳ね、侑斗のほうに飛び蹴りを入れる。衝撃で木場が振り落とされるが、目が覚める気配はない。 「グゥッ……」 壁に叩きつけられ、思わず床にデイパックを落としてしまう。香川は目でそれを追うが、何か違和感を感じた。 (デイパックが二つ……彼のでしょうか。) 数秒だけ思案した後、再び現実へと戻される。風のエルがこちらへと飛んできたのだ。ライフルで羽を撃つが回避されてしまう。 目の前で爪が煌き振り下ろされた。しかし香川の皮膚を切り裂く一歩手前で、その進行は止められる。 「香川さん! 彼を連れて早く離れて!」 風のエルを足止めしたのは侑斗だった。香川はすぐさま木場を抱えて、脱兎のごとく部屋の外へと駆け出していく。 それを確認した後、羽交い締めにしていた両腕を引き相手の背中へと突き出す。怯んでいる隙にデイパックへと手を突っ込むが、ベルトの気配はない。 落としたか、という考えが過ぎったがすぐ隣にもう一つのデイパックの姿を見て間違えただけだと気づく。さっと手を引き抜き、自分のデイパックを引き寄せる。 カラン、と何かが零れ落ちる。指でも引っ掛けて中身を落としてしまったのだろう。回収しようと手に取った侑斗の顔が驚愕に染まった。 何故ならそれは――――赤い、ゼロノスカードだったのだから。まだ自分が居たころはこれが必要なかったはず、なのにどうして。 「ウゥァァァァァァァッァァァッッ!!」 獣が唸る様な声を上げ、風のエルが立ち上がる。最早躊躇している余裕はなく、在るのはただこのカードが存在するという事実のみ。 ベルトを装着し、顔の横までカードを掲げて半回転。流れるような動きでベルトに差し込んで、呟く様に。 「変身。」 ――ALTAIR FORM―― 宙を舞い散る緑色の装甲が一つ一つ鎧を形作り、牛を模した電仮面が滑り込んで変身を完了する。 しかし今回は其れだけに留まらず、カードを引き抜き、赤い面を表にして再びベルトへ差し込んだ。 ――CHARGE&UP―― 電子音声が新たな変化の言葉を紡ぎ、その姿がゆっくりと――――まるで錆が広がるように、赤く染まっていく。 やがて全てが真っ赤に染まり、最後に電仮面が力を誇示するがごとく光輝く。 素早く組み立てたゼロガッシャーを突き立て、風のエルを指差す。それは自分が倒すという意思と意地と、そして決意の現れ。 「最初に言っておく――――錆びても、強い!」 ◆ 「君、しっかりしなさい!」 「うぅ……?」 香川の呼びかけに、案外早く男は答えた。恐らく先ほどの衝撃で既に意識が戻りかけていたのだろう。 聞きたいことは山ほどあるが、今は重要なことしか聞いている余裕がない。 「私は香川といいます。あなたの名前と殺し合いに乗っているかどうかを聞かせて下さい。」 男は小さな声で木場勇治と答え首を横に振った。殺し合いに乗っていなければ保護だ。 「次の質問です。あなたが持っているあのベルトは変身に使う道具ですね、あれは誰でも使用できますか?」 言った後に、これが自分が先ほど遭遇した場面に似ていることに気づいた。尤も、あれとこれでは随分と差異はあるが。 「……適合できる人じゃないと、変身できません。」 「そうですか、ではあなたは適合しているんですね。」 木場はしばしの沈黙の後、頷く。誰にでもわかる肯定のサインだ。 予測は出来ていたため衝撃は少なかったが、実を言うと誰でも使える物の方がよかった。デッキを持っていない今の自分は、戦力に成り得ない。 その時声が響いた。地の底から響く、禍々しい神の遣いの咆哮が。 「……今のは?」 「あなたを襲っている怪人がいました、今は私の同行者が戦闘中です。」 ここで嘘を言っても意味がないと、本当の事を言った。話し終えるのと、木場がファイズギアを掴むのは同時だった。 携帯を開いてコードを入力、ベルトに差し込んだ。しかし当のベルトは何の反応も見せず。 「ここでは変身制限がかかっています、殺し合いに少しでも平等性を持ち込むためでしょうが。」 軽くため息をついて、木場はベルトを仕舞って再び歩き出した。止めようとした香川の手を取って木場が答える。 「大丈夫です、俺はまだ戦えますから。」 振り返った木場の顔には、馬のような影がダブって見えた。 ◆ へルターとスケルターがオーガストランザーを捕らえ、その隙に鋭い蹴りを打ち込む。オーガの装甲の上からとはいえ北崎にもその蹴りの重さは伝わった。 ガイの拳がゾルダを打ち抜く。既に両者ともにアドベントカードを消費して、残るは二、三枚となっていた。 ――FINAL VENT―― 「俺の……勝ちだぁぁぁぁぁ!!」 現れたマグナギガの背にバイザーを突きつけ、引き金を引く。体の中から様々な弾丸が飛び出し、あたりを焼き尽く―――― ――CONFINE VENT―― ――――さなかった。マグナギガが消滅したかと思うと、ガイの回し蹴りが飛んでくる。 「カードは一枚だけじゃ、ないってね!」 自分が最初に殺した男の口調を真似ながら続けざまにアッパー、ひじ打ちと続けていく。先ほどはやられるばっかりの東條も、金居がもたらした情報には興奮せざるをえなかった。 曰く、「香川英行はこの建物内に居る」。 生きているという情報だけでもうれしいのに、今こうやって戦っているすぐそばに居るなんて。 無意識のうちに拳にも力が篭り、今の東條はさしずめ水を得た魚のようにも見えた。 ――FINAL VENT―― 「アハハハハ!!」 笑い声とともに、ガイがメタルゲラスに乗って突進していく。ヘビープレッシャーだ。 もう防ぐ術も避ける体力も残されていない。その角は真っ直ぐゾルダへ向かい、そのカードデッキを打ち砕いた。 「ア……ガ……」 変身が解け、倒れ伏す海堂。この乱戦の中で最初にリタイアしたのは、彼だった。 「何だ、最初に落ちちゃ……ッ!?」 北崎の言葉が途中で淀む。 ――ADVENT―― 遅れて電子音声。しかし、最早その意味は必要なかった。 「GAAAAAAAAA!!」 既にそれを聞く北崎の体は、メタルゲラスによってどこかへと運ばれていったのだ。 それから程なくして、ガイの装甲が砕け散る。オーガを逃がしたのは、自分の変身制限の時間が迫っていたからだった。 東條は落ちていたへルターを拾い上げ、ギラファの方へと歩み寄る。 「ああ、すまな――――」 その言葉は最後まで声に出されなかった。なぜなら、 「金居さん……あなたも、『ある程度の力を持つ参加者』ですよね。 」 「な、何故……ガアアアッ!!」 東條が振り下ろしたへルターによって、ギラファ……変化のとけた金居の腹部が、切り裂かれていたのだから。 傷口から血が溢れるように出てくる。東條の顔を見ると、やはり彼は笑っていた。 「先生を見つけてくれてありがとうございます……それでは、死んでください。」 「そんな……俺は………負けな…」 まるで糸が切れた人形のように金居は自分の血の中に倒れこむ。緑色の血は生暖かくて少しぬるりとした。 消え行く意識の中で金居は思った――――自分はいったい、どこで選択を誤ったのだろうかと。 頭の中に様々なことが駆け巡る。ダグバの超常的な力を見たこと、東條と手を結んだこと、侑斗や香川と合流したこと―――― (……侑斗とは、誰だったか?) 疑問が脳を掠めた瞬間、首筋に冷たいものが押し当てられたのを感じた。 金居の遺体から首輪を取った東條はバイクに跨り、走り出そうとする。 一度だけショッピングモールを振り向くが、香川は最後と決めたのだからと言い聞かせる。後ろ髪引かれる思いでアクセルを踏み、走り出した。 直後、何か足りないような違和感を感じたが、香川がまだ生きているという興奮がすぐにそれをかき消した。 **状態表 【G-5 北東部 ショッピングセンター近く】【午前】 【東條悟@仮面ライダー龍騎】 [時間軸]:44話終了後 [状態]:中程度のダメージ。疲労中程度。2時間変身不可(タイガ、ガイ) [装備]:カードデッキ(タイガ、ガイ)、「凱火」(Valkyrie Rune) [道具]:基本支給品×2、特殊支給品(未確認)、サバイブ烈火@仮面ライダー龍騎、首輪(芝浦、金居) [思考・状況] 基本行動方針:全員殺して勝ち残り、名実共に英雄となる 1:『ある程度の力を持つ参加者を一人でも多く間引く』 2:できれば最後の仕上げは先生(香川)にしたい 3:殺した奴の首輪をコレクションするのも面白い。積極的に外す 。 4:木場(名前は知らない)に自分が英雄であることを知らしめる為、自らの手で闘って殺す。 備考 ※東條はまだ芝浦の特殊支給品(サバイブ烈火)を確認していません ※東條がどこへ行くかは後続の書き手さんに任せます。 ◆ その時、もう一つの戦いも終わろうとしていた。 パーフェクトゼクターの斬撃をかろうじてゼロガッシャーで防ぐ。 足払いで体制を崩させ顔面めがけて何発も拳を叩き込む。ゼロフォームの力は、アルタイルとは比べ物にならないほどだった。 ゼロガッシャーをサーベルからボウガンへと組み替え、その引き金を引く。だがその瞬間、風のエルがパーフェクトゼクターを投げた。 切っ先が丁度ガッシャーを持つ手にぶつかり、取り落としてしまう。その隙に風のエルは近づき、ゼロノスの体を踏みつけた。 「グゥ……」 息を押しつぶしたような声が漏れるが、今の風のエルにとっては興奮を誘うスパイスでしかなかった。 床に転がっているパーフェクトゼクターを拾い上げ、振り下ろそうとして――――左手首ごと、再び落とした。 「……?」 風のエルが訳も分からず困惑していると、扉の向こうから新たな異形が転がり込んでくる。 馬を模したその異形は、壁に突き刺さった剣――先ほど扉の向こうから投げた――を引き抜く。その姿は、どことなくドラゴンオルフェノクと似通っていた。 「桜井君! その人は味方です!」 姿は見えないが香川の声に間違いない。無言でその異形と顔を見合わせ、頷きあう。 まず異形が走り出し、斜めがけに風のエルの体を切り裂く。突然の衝撃に後退する風のエルに、追い討ちをかけるように攻撃が続く。 蹴り、正拳、ひじ打ち、アッパー。目まぐるしい勢いで放たれたそれらは一つもはずすことなく命中した。 「グォゥァァァッ!!」 咆哮とともに風のエルの目が見開かれる。 宙に飛ぶ体を捻り、壁を蹴って異形――――ホースオルフェノクに向かって飛び掛った。 その過程でパーフェクトゼクターを拾いなおし、渾身の力を込めて振り下ろす。 「ッ!」 「片腕を落としたところで……頭に……」 二本の剣で鍔迫り合いをしながら、風のエルが滴る自分の血を啜った。見るのも不快な笑みを浮かべながら、残った右手に力を込める。 「乗るなぁッ!!」 ――KABUTO POWER―― 剣から流れた電子音声が赤い光として刀身を包む。ボタンに手が触れたのはまったくの偶然だったが、風のエルにとってはこれ以上ない幸運だった。 ホースオルフェノクの魔剣に亀裂が入り、そこから赤い光が入り込んでいく。 ――HYPER BLADE―― 目が眩むほどの閃光と共に、魔剣ごとホースオルフェノクの体を切り裂いた。 瞬間、ホースオルフェノクの視界が暗転し、体がよろめく。 ――――闇の中で手が伸びてくる。それはまるで、自分を引きずり込もうとしているようで―――― 「うわあああああッ!!」 恐怖のあまり声を裏返しながら左腕の盾でその手を防ぐ。鈍い音がし、その「手」が床に落ちる。 ブラフ、と気づいた時にはもう目の前まで赤い光が迫っていた。 「ハァッ!!」 間一髪、ゼロガッシャーが行く手を阻み、振り払う。流された勢いで再び鬩ぎあう剣と剣。 しかし今回はゼロノスに光が見えた。ベルトからカードを引き抜いてゼロガッシャーへと差し込む。 ――FULL CHARGE―― 電子音声が響き、ボウガンの先にエネルギーを集めて、引き金を引いた。緑色のエネルギーが飛び出して風のエルを貫く。 貫かれた箇所から新たな血が噴出して、床の色を変えた。 「グァァァァァッ!!」 風のエルが叫び声をあげるが、ゼロノスの攻撃はこれで終わらない。 再びサーベルモードに組みなおし、カードを差し込む。今度は刃の先にエネルギーが集まり収束する。 空気を振るわせるほどの細かい振動が、刃の切れ味を増していく。 もう一度さっきの技を――――と風のエルがボタンに手を伸ばしたときには、既に手遅れだった。 ―― FULL CHARGE ―― 「おぉりゃぁぁああああッッ!!」 そのまま、ゼロ距離から風のエルの腹部を切り裂いた。一瞬の間もなくその体は窓ガラスに直撃し、丁度出口から反対側へと飛び出る。 二つの衝撃波に吹き飛ばされた風のエルは、自分が水に落ちる音を感じながら意識を手放した。 **状態表 【G-5 北東部 ショッピングセンター近くの川】【午前】 【風のエル@仮面ライダーアギト】 [時間軸]:48話 [状態]:頭部にダメージ。全身に大程度の負傷・行動原理に異常発生。左手首欠損。2時間能力発揮不可。 [装備]:パーフェクトゼクター [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:優勝して帰る。 帰還した暁には、主に未知の力を報告。 1:「仲間」を持つ「強き者」を狙う。 2:人を殺すことに、快楽を覚えた。 3:アギトの力、及びそれに似た力を持つ者との戦闘は避ける。 [備考] ※デネブの放送、および第一回放送を聞いていません。 ※首輪の制限時間について考え始めました。 ※ショッピングセンター内に風のエルの左手首が落ちています。 ◆ 「大丈夫ですか?」 「ああ、助かったよ。」 お互いに変身を解いた木場と侑斗は握手を交わした。 これから聞くことはたくさんあるが、まずは礼を言うのが道理というものだ。 「どうやら収まったみたいですね。」 扉の影から香川が出てくる。少し埃まみれになっているように見えたのは、気のせいだろうか。 「とりあえず木場さん、あなたのあの変身……聞かせていただけますね?」 「はい、俺は……」 木場が自身の変身、オルフェノクについて話し始めようとした、その時。 「ガアアアッ!!」 部屋の中に、耳を劈くような金居の悲鳴が入ってきた。 ◆ 男達が居た。 目の前にはある男の遺体。全身が緑色に染まっているが、所々見せる金が本来の色だと主張していた。 切り落とされた首からは生気が感じられず、空ろな眼は何も写さなかった。 一人はいまだ迷っているのか複雑な表情をしていた。 一人はベルトを持った腕を震わせることしか出来なかった。 一人は地に膝を着けて、ただただ後悔していた。 ゆっくりとその体にカードを差し込み手を離す。男が歪み、周りの緑色を巻き込みながらカードの中へと収まっていく。 全てが消えた後――――残ったのはダイヤのキングが刻まれたカードだけだった。 &color(red){【金居@仮面ライダー剣 封印】} &color(red){【残り40人】} **状態表 【G-5 北東部 ショッピングセンター前】【午前】 【香川英行@仮面ライダー龍騎】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:G-5エリア】 [時間軸]:東條悟に殺害される直前 [状態]:深い後悔、強い決意。全身に中程度のダメージ、中程度の疲労。 [装備]:神経断裂弾(2発)、シグザウアー SSG-3000 [道具]:煤けた首輪、双眼鏡 [思考・状況] 1:殺し合いの阻止 2:侑斗の生存を優先。 3:北崎(名前は知らない)を倒す。 4:東條、北崎(名前は知らない)、ガドル(名前は知らない)を警戒 5:五代雄介に一条薫の死を伝える。 6:侑斗を生存させるため、盾となるべく変身アイテム、盾となる参加者を引き入れる。 [備考] ※変身回数、時間の制限に気づきましたが詳細な事は知りません。 ※剣世界の事についておおまかな知識を得ましたが、仮面ライダーやBOARDの事など金居が伏せた部分があります。 ※首輪の損傷具合は不明です。 ※死者の蘇生に対する制限はスマートブレイン社の詭弁。首輪はそう簡単には外せないと考えています。 【桜井侑斗@仮面ライダー電王】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:G-5エリア】 [時間軸]:最終回直後 [状態]:深い後悔、強い決意。ハナ、デネブの無事に安堵。全身に中程度のダメージ、中程度の疲労。2時間変身不能(ゼロノス) [装備]:なし [道具]:基本支給品×2、ゼロノスカード6枚(内二枚赤カード)、ラウズカード(封印済み:ダイヤK 空:クラブQ、ジョーカー)     ショッカー戦闘員スーツ×2@仮面ライダー、ディスクアニマル(ニビイロヘビ)、戦国時代のディスクアニマル(イワベニシシ) [思考・状況] 1:殺し合いの阻止 2:香川と行動しつつ仲間との合流を目指す 3:自分と同じ顔をした少年(桐矢)への疑問。保護が必要ならそうする。 4:北崎(名前は知らない)、ガドル(名前は知らない)を倒す。 5:五代雄介に一条薫の死を伝える。 6:金居の死に後悔。木場と情報交換。 [備考] ※変身回数、時間の制限に気づきましたが詳細な事は知りません。 ※剣世界の事についておおまかな知識を得ましたが、仮面ライダーやBOARDの事など金居が伏せた部分があります。 【木場勇治@仮面ライダー555】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:G-5エリア】 [時間軸]:39話・巧捜索前 [状態]:全身に中程度の打撲。他人への僅かな不信感。全身に疲労大、背中等に軽い火傷。二時間変身不可(ファイズ、ホースオルフェ) [装備]:ファイズギア [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:主催者及びスマートブレインの打倒、脱出 1:金居の死に困惑。 2:長田、海堂、加賀美の捜索 3:首輪の解除 4:死神博士、ゴルゴス、牙王、東條(名前は知らない)に警戒 。影山はできれば助けたい。 5:事情を知らない者の前ではできるだけオルフェノク化を使いたくない ※備考 ※第一回放送を聞き逃しています。 ◆ 北崎は憤怒していた。王たる自分に対するあの仕打ちに。 途中でメタルゲラスが消失したのは制限のためと気づいたが、それでも大分元の場所より離れてしまった。 変身も既に解けてしまい、バイクも向こうに放置したままだ。今から戻っても誰も居るまい。 このイライラは――――次に出会う参加者にぶつけよう。王の力は手の内にある。 何人たりとも自分には届かない……だが出来れば仮面ライダーがいい、強いものをさらに強い力でねじ伏せるのは心地がいいものだ。 東條の顔を記憶に刻み込んで北崎は笑った。次に会うときが最後だ、と。 **状態表 【???】【午前】 【北崎@仮面ライダー555】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:???】 [時間軸]:不明。少なくとも死亡後では無い。 [状態]:全身に疲労。頭部、腹部にダメージ。背部に痛み。オーガ、ドラゴンオルフェノクに2時間変身不可。 [装備]: オーガギア [道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~1個) [思考・状況] 基本行動方針:殺し合いを楽しんだ上での優勝。 1:次にあった奴にイライラをぶつける 2:五代雄介、「仮面ライダー」なる者に興味。 3:桜井侑斗、香川英行とはまた闘いたい。 4:ゾル大佐、橘朔也と会ったら今度はきっちり決着をつけ、揺ぎ無い勝利を手にする。 5:「仮面ライダー」への変身ツールを集めたい。 6:木場勇治はどうせだから自分で倒したい。 ※変身回数、時間の制限に気づきましたが詳細な事は知りません。 ※桐矢京介を桜井侑斗と同一人物と見なしています。 ※三田村晴彦の生死に興味を持っていません。 ※どこへ向かったかは後続の書き手さんにお任せします。 ◆ 海堂が目を覚ました時、そこには誰も居なかった。 ゾルダのカードデッキを壊され、変身が避けたところまでは覚えている。そこから先はおぼろげにしか覚えていない。 犀、金色のクワガタ、緑色の血、男の絶叫――――じっくり現場を見ては居ないが、海堂にもそれくらい想像できた。 あの犀のライダーは――何故かは知らないが――自分の仲間を殺したのだ。今一度ライダーの外道さが判った気がする。 傍らに放置したあったバイクに凭れ掛かり、空を見上げる。まぶしすぎるくらいに照りつける太陽。しかしこの下では、今も殺し合いが続けられているのだ。 殺された者のために、ライダー達を倒す。それが残された者の、使命だと思ったから。 **状態表 【G-5 北東部 ショッピングセンター近く】【午前】 【海堂直也@仮面ライダー555】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:G-5エリア】 [時間軸]:34話前後 [状態] :体の各部に中程度の打撲。激しい怒り、2時間変身不可(スネークオルフェノク) [装備]:カワサキのZZR-250 [道具]:無し。 [思考・状況] 基本行動方針:「仮面ライダー」を許さない。 1:仮面ライダーを倒す。 2:ライダー(アマゾン、歌舞鬼、オーガ、ガイ)の危険性を伝える。 3:まだ対主催。 ※ 澤田の顔はわかりますが名前は知りません。また、真魚の顔は見ていません。 ※ モグラ獣人の墓にはガーベラの種が植えられています。 ※ 第一回放送は知っている名前がモグラのみ、ということしか頭に入っていません。 ※ 変身制限について知りました。 ※ゾルダのカードデッキは破壊されました。 |069:[[ステッピング・ストーン]]|投下順|071:[[希望と絶望と偽りの顔(前編)]]| |068:[[歩むべき道は果てしなく]]|時系列順|072:[[感情(前編)]]| |054:[[知略と決意のとき]]|[[桜井侑斗]]|074:[[Weak and powerless]]| |054:[[知略と決意のとき]]|[[香川英行]]|074:[[Weak and powerless]]| |054:[[知略と決意のとき]]|&color(red){金居}|---| |052:[[イプソ・ファクト(後編)]]|[[風のエル]]|077:[[blood]]| |065:[[終わるのは遊び、始まるのは戦い(後編)]]|[[木場勇治]]|074:[[Weak and powerless]]| |065:[[終わるのは遊び、始まるのは戦い(後編)]]|[[北崎]]|080:[[出たぞ!恐怖の北崎さん]]| |065:[[終わるのは遊び、始まるのは戦い(後編)]]|[[海堂直也]]|074:[[Weak and powerless]]| |065:[[終わるのは遊び、始まるのは戦い(後編)]]|[[東條悟]]|082:[[東條悟のお料理教室]]|
*裏切りはすぐ傍に ―――― 一連の出来事は刺激的だったが、それ以上に危険でもあった。 放送局を出た後、香川ら三人はショッピングセンターへ向かって歩き始めた。 理由は単純に、使えそうなものを調達するためだ。香川のデッキが奪われた以上、ライフルだけでは心細い。 先ほどデイパックを漁って見つけられたのは二着の黒い全身タイツに、あとは三枚のカードだけだ。 全身タイツが出てきた時はどうしようかと悩んだが、カードがアンデッドを封印するための――――そのうちの一枚は金居のカードであったのは不幸中の幸いだろうが。 兎も角、それだけでは変身や玉数に制限があり、尚且つそれを使い切ってしまったら身を守る手段がない。故に物が豊富にあるショッピングモールへと向かったのだった。 包丁のような武器はもとより、自転車などの移動手段。あとは医療道具などがあればいうことなしだ。食料も、できることなら確保しておきたい。 ふと、金居が立ち止まって辺りを見回し、やがて一点を見つめる――――その場所は、今から向かおうとしているショッピングモールだった。 何も気づかない香川と侑斗は率直に疑問を口に出す。というのも、二人が一般人並みの聴力しか持たないからだ。 「どうかしましたか?」 「いや、今何かが壊れるような音が……」 「そうか? 俺たちは何も……」 その時だった。目の前の建物から耳を塞ぎたくなる様な轟音と、凄まじい量の砂煙が現れたのは。 何もないところから火は出ない。それと同じように、自然に音や煙が出るわけもなく、中には誰かいる。それもとびきり派手な戦闘をかましているらしい。 即座に顔を見合わせ走り出す。放送局で温存していた体力をここで精一杯発揮したような気がした。 丁度ショッピングモールの側面にあたる場所に辿り着き、そのまま壁伝いに出来るだけ足音を立てずに進む。 もし戦いのどちらかが殺し合いに抗う者ならば見捨てては置けないが、両方が殺し合いに乗っているならば―――― 不安な考えを振り払うように、侑斗はゼロノスベルトを握り締める。脳裏に浮かぶのは、あのお節介ばかり焼く、掛け替えのない友の姿。 「デネブ……」 無意識につぶやくと同時に、新たなアクション――――侵入者が現れた。 ――FINAL VENT―― 聞き覚えがある電子音声に侑斗が、そして一際大きく香川が反応した。出口が近かったこともあってか、今の三人のいる場所からはその発信源がよく見えた。 扉を破って現れた白い怪物と、それに引きずられる鈍い灰色の怪物。忘れもしない、この島に来てから始めて出会った明確な悪――――ドラゴンオルフェノク。 「アイツ……ッ!」 「少し待ってください!」 今にも飛び掛ろうとする侑斗を押さえる香川。だが、彼の目は別の場所に向けられていた。ドラゴンオルフェノクではなく、もう一匹の怪物へ。 爪に引き摺られて行く先には新たな爪を構える、もう一匹の虎。中心部に輝くデッキは、紛れもなく自分がいた世界の物だ。 あの技は自分も見たことが――――いや、自分も受けたことがある。このままならあの爪が高々と体に突き刺さるはずだった。 しかし、ドラゴンオルフェノクは「さも当然のように」怪物の手から抜け出し、元の青年の姿へと戻る。 それを見た虎も同じように変身を解く。鏡のように砕けた仮面に隠された素顔は、紛れもなく長い間見てきた――――狂気に魅入られた教え子だった。 「東條、君……」 「東條……香川さんが言ってた、危険人物か!」 その名前にいち早く侑斗が反応する。金居は少し眉をひそめただけで、特に何も話さなかった。 向こうのほうはこちらに気づいていないのか見向きもしない。寧ろ目に入っていないという方が正しかったかもしれない。 東條は新たなカードデッキを構え、青年も今度は金色のベルトを取り出す。ゼロノスのベルトと似てはいるが、全く別のものだった。 デッキを突き出し、 コードを入力し、 そしてベルトへ装填する。 「変身ッ!!」 二人の口から発せられるのは、この島にいる人間の大半が聞き覚えのある言葉。再び装甲が二人の体を包む。 ベルトから金色の閃光が駆け巡り、背に作られるマントが孤高の王者として風格を見せる――――仮面ライダーオーガ。 犀を模した灰色の仮面と右肩の巨大な角。いかにも頑丈そうな鎧が鉄壁の防御を感じさせる――――仮面ライダーガイ。 もしも装着者が違ったならば、この力は誰かを守るために酷使されたかもしれない。だが、そうはならなかった。 そして二人のライダーは―――片方はいつものように、もう片方は少し違った形で―――悪になった。 「……ここは私が行きます、内部に他の方が居る可能性も考慮して、二人には内部の探索を頼みます。」 「ちょっ、待ってください! 変身もできないのに……」 生身で行こうとする香川を今度は侑斗が制止する。相変わらず金居はだんまりを決め込んでいた。 「変身が出来なくても、彼だけは私が止めないといけないんです。」 「だったら、尚更駄目だ! 今のあなたは冷静になりきれていない!」 「ですが!」 二人の口論にうんざりしたのか、ゆっくりと金居が手を上げる。それは「自分が行く」ということを指し示していた。 「……任せて、大丈夫ですか?」 「ああ、制限も解けた頃合だ、問題ない。」 多少頭が冷えた香川の問いかけに、含み笑いを浮かべながら答えた。しかし侑斗は納得していない様子で金居を見る。 その視線に気づいた金居は、より一層笑みを強くして皮肉を言った。 「まぁ、俺ならいなくなっても悲しみが少ないだろう?」 「ッ! おまええええええッ!!」 一瞬で掴みかかろうとした侑斗を軽くいなし、「冗談だ」と付け加える。もちろん侑斗はそのまま地面に激突した。 「本当に、任せていいのですね?」 「俺を信用しろ。じゃ、香川を頼むぞ、坊や。」 侑斗が言い返す前に金居の姿が軋み、本来の姿、バトルファイトで戦っていたころの姿に戻る。 ギラファノコギリクワガタの始祖――――カテゴリーキング、その名はギラファアンデッド。上級アンデッドの中でもさらに上位に入るアンデッドだ。 「東條君を、頼みます。」 「心配性なんだな、あんたも。」 互いに頷き、それぞれが行くべき場所へと足を進めていく。香川と侑斗の姿が見えなくなったのを見計らって、 「ククク……クハハハハハ!!」 金居は大声で笑い出した。もはやこれは自分に勝てと天が道を指し示しているとさえ思えてくる、それほどまでに上手く行っていた。 東條と同盟を組んだ直後に因縁のある香川との遭遇、さらには誤解の種と成り得る写真の入手に極めつけは早期の東條との合流。 すべてがうまく行き過ぎて恐ろしくなる……その薄ら寒さ、はたまた優越感と満足感のせいか。金居は中から入れ違いに出てくるもう一人の存在に気づかなかった。 ◆ 風のエルは困惑しながらも、自分の幸運を神――――或いは主に感謝した。 下水道を通って来たこともあり、敵と出会い体力を消耗することなく制限の時間まで無事に居られたことを。 暗がりから血を求め外に出てみれば、丁度いい具合に数人の人間らがいる場所へと出てこれたことを。 二人は戦闘中、三人の固まりの内二人は建物内へ入っていき残る一人は高笑いを上げている。葉っぱで切ったのだろうか、若干右手の先から血が覗いている。 それを見て、風のエルはまずその男……金居を標的からはずした。既に変身しているのもあるが、緑色の血は見ていて気味が悪い。 ただの人間なら迷わず襲っただろう、しかし今求めているのは赤い血、強き人間の血だ。人外の血はすべて飲み干した後にでも飲めばいい、それこそ気が向けばだが。 戦闘中の方は後で消耗しきった所を襲おう、まずは前菜の二人。気取られぬように窓から入るべきか。 剣を握り締め、音を立てずに窓を開け進入。内部を見回すがそれらしい人影は見えず、しばらく歩き回る。 その内、酷く損傷が激しい所にたどり着く。大方ここで戦闘があったのだろう、そうでもなければこんな壊れ方はしない。 ふと足元に目をやると、デイパックが落ちていた。しかしそれよりも傍らに倒れている人間のほうが興味を引いた。 息をしているところから見るとまだ生きているらしい。風のエルの口元が歪んだ笑みを浮かべる。 意識を失ってさえいればそれほど抵抗されずに血が飲める。男の体に手を伸ばし、そのまま片手でつかみ上げた。 それほど血色のいい顔をしているとはいい難いが、贅沢は言ってられない。首筋に嘴を突き立て、目を瞑る。 ――――嗚呼、いただきま……―――― しかしその時、風のエルの食事は思わぬ形で中断されることになる。 「何をしている?」 ◆ ――STRIKE VENT―― 電子音声が名を言い終わる前に、オーガの拳が襲う。ガイの装甲が如何に強固といえど、帝王の力を手にした北崎の前では紙切れ同然だった。 漸く現れたメタルホーンも、大した傷も与えられぬまま角を折られる。だが、残った部分を振り上げて殴りかかった。 「ふふ……遅いよ。」 振り上げた瞬間にがら空きになった胴へ蹴りを叩き込む。歯軋りをする東條とは対照的に、北崎のテンションは留まる事を知らないかのように上がり続ける。 武器らしい武器は使用していないのに何者をも寄せ付けぬパワー、圧倒的なまでに誰よりも速いスピード。正しく王の力と呼ぶにふさわしい。 ――――そう、自分は今や王となった。古き者が上に立つ時代はもう必要ない、これからは王がすべての頂点に立つ。 オーガの手が赤い角を捕らえた。ミキミキと耳障りな音を立ててひび割れていく角を前に、北崎は快感に近い物さえ感じた。 ――ADVENT―― 再び響く電子音声。しかし音源はガイのメタルバイザーではなく、もっと後方からだ。 直後に聞こえた空気の切れる音。咄嗟にミッションメモリーを引き抜き、腰にある剣の柄へと差し込んだ。 ――Ready―― 何もない場所から現れる黄金の刀身。振り向きざまに自分に迫るものを切り裂いてから、それが幾つもの銃弾だと気づいた。 その剣、オーガストランザーをゆっくりと地面に下ろして、北崎は仮面の中で笑う。 「やっぱり使うんだ、仮面ライダーの力を。」 緑色の牛――――マグナギガに隠れてはいたが、一瞬で中身が誰なのか察しがついた。そもそもあのデッキを渡したのは自分なのだから。 「……。」 ゾルダの装甲で体を包んだ海堂が、返事の代わりに投げたのは……追撃の銃弾だった。今度は切り裂くまでもなく、軽く体を捻るだけで回避する。 一跳びで距離を詰め、ゾルダへと切りかかる。ガイほどではないがゾルダの装甲もそれなりに硬く、尚且つ長い射程距離があるため長距離戦は不利だと判断したのだ。 ――GUARD VENT―― しかし、その斬撃はゾルダに届くことはない。マグナギガの腹部を模した盾が出現し、ゾルダの体を包む。 「チィ……」 ――Exceed Charge―― 柄のスイッチを入れると、刀身が光り輝きながら伸びていく。それこそ天にまで届きそうな勢いでどこまでもどこまでも。それを見たゾルダは思わず目を丸くする。 「……そんなん、ありかよおおおお!?」 「砕け散れえええええ!」 ――CONFINE VENT―― 「僕を忘れて貰っちゃ困るなぁ。」 刀身が元の姿に戻ったかと思うと、突如右肩と脇腹が爆発する。立ち位置からしてゾルダがやったことでないのは確かだが、ガイも飛び道具を持っていないはず。 ふと視界に何かの影が映った。それは黒く焦げていたが、金属で出来たクワガタの顎だった。 いつの間にかガイの隣に立っている新たな異形。襲い掛からないところを見るとガイの味方のようだが――――いや、よく見るとクワガタに似ている気がする。 「王様に逆らうの? いけないなぁ。」 「王か……俺も一応、王と呼ばれていたものでね。」 そういって、ギラファアンデッドは再びその口元を歪めた。 ◆ 侑斗たちがそこにたどり着いたのは、半ば必然的なことだった。 元々通路を辿っていけばそこにたどり着くのだし、壁の損傷具合から見ても探りを入れるならそこからだった。 案の定、入ってみれば気絶している青年とそれを掴み――まるで食べようとしているかのように――佇む怪人という若干シュールな図ではあったが。 「何をしている?」 香川がライフルを構えると同時に風のエルが跳ね、侑斗のほうに飛び蹴りを入れる。衝撃で木場が振り落とされるが、目が覚める気配はない。 「グゥッ……」 壁に叩きつけられ、思わず床にデイパックを落としてしまう。香川は目でそれを追うが、何か違和感を感じた。 (デイパックが二つ……彼のでしょうか。) 数秒だけ思案した後、再び現実へと戻される。風のエルがこちらへと飛んできたのだ。ライフルで羽を撃つが回避されてしまう。 目の前で爪が煌き振り下ろされた。しかし香川の皮膚を切り裂く一歩手前で、その進行は止められる。 「香川さん! 彼を連れて早く離れて!」 風のエルを足止めしたのは侑斗だった。香川はすぐさま木場を抱えて、脱兎のごとく部屋の外へと駆け出していく。 それを確認した後、羽交い締めにしていた両腕を引き相手の背中へと突き出す。怯んでいる隙にデイパックへと手を突っ込むが、ベルトの気配はない。 落としたか、という考えが過ぎったがすぐ隣にもう一つのデイパックの姿を見て間違えただけだと気づく。さっと手を引き抜き、自分のデイパックを引き寄せる。 カラン、と何かが零れ落ちる。指でも引っ掛けて中身を落としてしまったのだろう。回収しようと手に取った侑斗の顔が驚愕に染まった。 何故ならそれは――――赤い、ゼロノスカードだったのだから。まだ自分が居たころはこれが必要なかったはず、なのにどうして。 「ウゥァァァァァァァッァァァッッ!!」 獣が唸る様な声を上げ、風のエルが立ち上がる。最早躊躇している余裕はなく、在るのはただこのカードが存在するという事実のみ。 ベルトを装着し、顔の横までカードを掲げて半回転。流れるような動きでベルトに差し込んで、呟く様に。 「変身。」 ――ALTAIR FORM―― 宙を舞い散る緑色の装甲が一つ一つ鎧を形作り、牛を模した電仮面が滑り込んで変身を完了する。 しかし今回は其れだけに留まらず、カードを引き抜き、赤い面を表にして再びベルトへ差し込んだ。 ――CHARGE&UP―― 電子音声が新たな変化の言葉を紡ぎ、その姿がゆっくりと――――まるで錆が広がるように、赤く染まっていく。 やがて全てが真っ赤に染まり、最後に電仮面が力を誇示するがごとく光輝く。 素早く組み立てたゼロガッシャーを突き立て、風のエルを指差す。それは自分が倒すという意思と意地と、そして決意の現れ。 「最初に言っておく――――錆びても、強い!」 ◆ 「君、しっかりしなさい!」 「うぅ……?」 香川の呼びかけに、案外早く男は答えた。恐らく先ほどの衝撃で既に意識が戻りかけていたのだろう。 聞きたいことは山ほどあるが、今は重要なことしか聞いている余裕がない。 「私は香川といいます。あなたの名前と殺し合いに乗っているかどうかを聞かせて下さい。」 男は小さな声で木場勇治と答え首を横に振った。殺し合いに乗っていなければ保護だ。 「次の質問です。あなたが持っているあのベルトは変身に使う道具ですね、あれは誰でも使用できますか?」 言った後に、これが自分が先ほど遭遇した場面に似ていることに気づいた。尤も、あれとこれでは随分と差異はあるが。 「……適合できる人じゃないと、変身できません。」 「そうですか、ではあなたは適合しているんですね。」 木場はしばしの沈黙の後、頷く。誰にでもわかる肯定のサインだ。 予測は出来ていたため衝撃は少なかったが、実を言うと誰でも使える物の方がよかった。デッキを持っていない今の自分は、戦力に成り得ない。 その時声が響いた。地の底から響く、禍々しい神の遣いの咆哮が。 「……今のは?」 「あなたを襲っている怪人がいました、今は私の同行者が戦闘中です。」 ここで嘘を言っても意味がないと、本当の事を言った。話し終えるのと、木場がファイズギアを掴むのは同時だった。 携帯を開いてコードを入力、ベルトに差し込んだ。しかし当のベルトは何の反応も見せず。 「ここでは変身制限がかかっています、殺し合いに少しでも平等性を持ち込むためでしょうが。」 軽くため息をついて、木場はベルトを仕舞って再び歩き出した。止めようとした香川の手を取って木場が答える。 「大丈夫です、俺はまだ戦えますから。」 振り返った木場の顔には、馬のような影がダブって見えた。 ◆ へルターとスケルターがオーガストランザーを捕らえ、その隙に鋭い蹴りを打ち込む。オーガの装甲の上からとはいえ北崎にもその蹴りの重さは伝わった。 ガイの拳がゾルダを打ち抜く。既に両者ともにアドベントカードを消費して、残るは二、三枚となっていた。 ――FINAL VENT―― 「俺の……勝ちだぁぁぁぁぁ!!」 現れたマグナギガの背にバイザーを突きつけ、引き金を引く。体の中から様々な弾丸が飛び出し、あたりを焼き尽く―――― ――CONFINE VENT―― ――――さなかった。マグナギガが消滅したかと思うと、ガイの回し蹴りが飛んでくる。 「カードは一枚だけじゃ、ないってね!」 自分が最初に殺した男の口調を真似ながら続けざまにアッパー、ひじ打ちと続けていく。先ほどはやられるばっかりの東條も、金居がもたらした情報には興奮せざるをえなかった。 曰く、「香川英行はこの建物内に居る」。 生きているという情報だけでもうれしいのに、今こうやって戦っているすぐそばに居るなんて。 無意識のうちに拳にも力が篭り、今の東條はさしずめ水を得た魚のようにも見えた。 ――FINAL VENT―― 「アハハハハ!!」 笑い声とともに、ガイがメタルゲラスに乗って突進していく。ヘビープレッシャーだ。 もう防ぐ術も避ける体力も残されていない。その角は真っ直ぐゾルダへ向かい、そのカードデッキを打ち砕いた。 「ア……ガ……」 変身が解け、倒れ伏す海堂。この乱戦の中で最初にリタイアしたのは、彼だった。 「何だ、最初に落ちちゃ……ッ!?」 北崎の言葉が途中で淀む。 ――ADVENT―― 遅れて電子音声。しかし、最早その意味は必要なかった。 「GAAAAAAAAA!!」 既にそれを聞く北崎の体は、メタルゲラスによってどこかへと運ばれていったのだ。 それから程なくして、ガイの装甲が砕け散る。オーガを逃がしたのは、自分の変身制限の時間が迫っていたからだった。 東條は落ちていたへルターを拾い上げ、ギラファの方へと歩み寄る。 「ああ、すまな――――」 その言葉は最後まで声に出されなかった。なぜなら、 「金居さん……あなたも、『ある程度の力を持つ参加者』ですよね。 」 「な、何故……ガアアアッ!!」 東條が振り下ろしたへルターによって、ギラファ……変化のとけた金居の腹部が、切り裂かれていたのだから。 傷口から血が溢れるように出てくる。東條の顔を見ると、やはり彼は笑っていた。 「先生を見つけてくれてありがとうございます……それでは、死んでください。」 「そんな……俺は………負けな…」 まるで糸が切れた人形のように金居は自分の血の中に倒れこむ。緑色の血は生暖かくて少しぬるりとした。 消え行く意識の中で金居は思った――――自分はいったい、どこで選択を誤ったのだろうかと。 頭の中に様々なことが駆け巡る。ダグバの超常的な力を見たこと、東條と手を結んだこと、侑斗や香川と合流したこと―――― (……侑斗とは、誰だったか?) 疑問が脳を掠めた瞬間、首筋に冷たいものが押し当てられたのを感じた。 金居の遺体から首輪を取った東條はバイクに跨り、走り出そうとする。 一度だけショッピングモールを振り向くが、香川は最後と決めたのだからと言い聞かせる。後ろ髪引かれる思いでアクセルを踏み、走り出した。 直後、何か足りないような違和感を感じたが、香川がまだ生きているという興奮がすぐにそれをかき消した。 **状態表 【G-5 北東部 ショッピングセンター近く】【午前】 【東條悟@仮面ライダー龍騎】 [時間軸]:44話終了後 [状態]:中程度のダメージ。疲労中程度。2時間変身不可(タイガ、ガイ) [装備]:カードデッキ(タイガ、ガイ)、「凱火」(Valkyrie Rune) [道具]:基本支給品×2、特殊支給品(未確認)、サバイブ烈火@仮面ライダー龍騎、首輪(芝浦、金居) [思考・状況] 基本行動方針:全員殺して勝ち残り、名実共に英雄となる 1:『ある程度の力を持つ参加者を一人でも多く間引く』 2:できれば最後の仕上げは先生(香川)にしたい 3:殺した奴の首輪をコレクションするのも面白い。積極的に外す 。 4:木場(名前は知らない)に自分が英雄であることを知らしめる為、自らの手で闘って殺す。 備考 ※東條はまだ芝浦の特殊支給品(サバイブ烈火)を確認していません ※東條がどこへ行くかは後続の書き手さんに任せます。 ◆ その時、もう一つの戦いも終わろうとしていた。 パーフェクトゼクターの斬撃をかろうじてゼロガッシャーで防ぐ。 足払いで体制を崩させ顔面めがけて何発も拳を叩き込む。ゼロフォームの力は、アルタイルとは比べ物にならないほどだった。 ゼロガッシャーをサーベルからボウガンへと組み替え、その引き金を引く。だがその瞬間、風のエルがパーフェクトゼクターを投げた。 切っ先が丁度ガッシャーを持つ手にぶつかり、取り落としてしまう。その隙に風のエルは近づき、ゼロノスの体を踏みつけた。 「グゥ……」 息を押しつぶしたような声が漏れるが、今の風のエルにとっては興奮を誘うスパイスでしかなかった。 床に転がっているパーフェクトゼクターを拾い上げ、振り下ろそうとして――――左手首ごと、再び落とした。 「……?」 風のエルが訳も分からず困惑していると、扉の向こうから新たな異形が転がり込んでくる。 馬を模したその異形は、壁に突き刺さった剣――先ほど扉の向こうから投げた――を引き抜く。その姿は、どことなくドラゴンオルフェノクと似通っていた。 「桜井君! その人は味方です!」 姿は見えないが香川の声に間違いない。無言でその異形と顔を見合わせ、頷きあう。 まず異形が走り出し、斜めがけに風のエルの体を切り裂く。突然の衝撃に後退する風のエルに、追い討ちをかけるように攻撃が続く。 蹴り、正拳、ひじ打ち、アッパー。目まぐるしい勢いで放たれたそれらは一つもはずすことなく命中した。 「グォゥァァァッ!!」 咆哮とともに風のエルの目が見開かれる。 宙に飛ぶ体を捻り、壁を蹴って異形――――ホースオルフェノクに向かって飛び掛った。 その過程でパーフェクトゼクターを拾いなおし、渾身の力を込めて振り下ろす。 「ッ!」 「片腕を落としたところで……頭に……」 二本の剣で鍔迫り合いをしながら、風のエルが滴る自分の血を啜った。見るのも不快な笑みを浮かべながら、残った右手に力を込める。 「乗るなぁッ!!」 ――KABUTO POWER―― 剣から流れた電子音声が赤い光として刀身を包む。ボタンに手が触れたのはまったくの偶然だったが、風のエルにとってはこれ以上ない幸運だった。 ホースオルフェノクの魔剣に亀裂が入り、そこから赤い光が入り込んでいく。 ――HYPER BLADE―― 目が眩むほどの閃光と共に、魔剣ごとホースオルフェノクの体を切り裂いた。 瞬間、ホースオルフェノクの視界が暗転し、体がよろめく。 ――――闇の中で手が伸びてくる。それはまるで、自分を引きずり込もうとしているようで―――― 「うわあああああッ!!」 恐怖のあまり声を裏返しながら左腕の盾でその手を防ぐ。鈍い音がし、その「手」が床に落ちる。 ブラフ、と気づいた時にはもう目の前まで赤い光が迫っていた。 「ハァッ!!」 間一髪、ゼロガッシャーが行く手を阻み、振り払う。流された勢いで再び鬩ぎあう剣と剣。 しかし今回はゼロノスに光が見えた。ベルトからカードを引き抜いてゼロガッシャーへと差し込む。 ――FULL CHARGE―― 電子音声が響き、ボウガンの先にエネルギーを集めて、引き金を引いた。緑色のエネルギーが飛び出して風のエルを貫く。 貫かれた箇所から新たな血が噴出して、床の色を変えた。 「グァァァァァッ!!」 風のエルが叫び声をあげるが、ゼロノスの攻撃はこれで終わらない。 再びサーベルモードに組みなおし、カードを差し込む。今度は刃の先にエネルギーが集まり収束する。 空気を振るわせるほどの細かい振動が、刃の切れ味を増していく。 もう一度さっきの技を――――と風のエルがボタンに手を伸ばしたときには、既に手遅れだった。 ―― FULL CHARGE ―― 「おぉりゃぁぁああああッッ!!」 そのまま、ゼロ距離から風のエルの腹部を切り裂いた。一瞬の間もなくその体は窓ガラスに直撃し、丁度出口から反対側へと飛び出る。 二つの衝撃波に吹き飛ばされた風のエルは、自分が水に落ちる音を感じながら意識を手放した。 **状態表 【G-5 北東部 ショッピングセンター近くの川】【午前】 【風のエル@仮面ライダーアギト】 [時間軸]:48話 [状態]:頭部にダメージ。全身に大程度の負傷・行動原理に異常発生。左手首欠損。2時間能力発揮不可。 [装備]:パーフェクトゼクター [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:優勝して帰る。 帰還した暁には、主に未知の力を報告。 1:「仲間」を持つ「強き者」を狙う。 2:人を殺すことに、快楽を覚えた。 3:アギトの力、及びそれに似た力を持つ者との戦闘は避ける。 [備考] ※デネブの放送、および第一回放送を聞いていません。 ※首輪の制限時間について考え始めました。 ※ショッピングセンター内に風のエルの左手首が落ちています。 ◆ 「大丈夫ですか?」 「ああ、助かったよ。」 お互いに変身を解いた木場と侑斗は握手を交わした。 これから聞くことはたくさんあるが、まずは礼を言うのが道理というものだ。 「どうやら収まったみたいですね。」 扉の影から香川が出てくる。少し埃まみれになっているように見えたのは、気のせいだろうか。 「とりあえず木場さん、あなたのあの変身……聞かせていただけますね?」 「はい、俺は……」 木場が自身の変身、オルフェノクについて話し始めようとした、その時。 「ガアアアッ!!」 部屋の中に、耳を劈くような金居の悲鳴が入ってきた。 ◆ 男達が居た。 目の前にはある男の遺体。全身が緑色に染まっているが、所々見せる金が本来の色だと主張していた。 切り落とされた首からは生気が感じられず、空ろな眼は何も写さなかった。 一人はいまだ迷っているのか複雑な表情をしていた。 一人はベルトを持った腕を震わせることしか出来なかった。 一人は地に膝を着けて、ただただ後悔していた。 ゆっくりとその体にカードを差し込み手を離す。男が歪み、周りの緑色を巻き込みながらカードの中へと収まっていく。 全てが消えた後――――残ったのはダイヤのキングが刻まれたカードだけだった。 &color(red){【金居@仮面ライダー剣 封印】} &color(red){【残り39人】} **状態表 【G-5 北東部 ショッピングセンター前】【午前】 【香川英行@仮面ライダー龍騎】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:G-5エリア】 [時間軸]:東條悟に殺害される直前 [状態]:深い後悔、強い決意。全身に中程度のダメージ、中程度の疲労。 [装備]:神経断裂弾(2発)、シグザウアー SSG-3000 [道具]:煤けた首輪、双眼鏡 [思考・状況] 1:殺し合いの阻止 2:侑斗の生存を優先。 3:北崎(名前は知らない)を倒す。 4:東條、北崎(名前は知らない)、ガドル(名前は知らない)を警戒 5:五代雄介に一条薫の死を伝える。 6:侑斗を生存させるため、盾となるべく変身アイテム、盾となる参加者を引き入れる。 [備考] ※変身回数、時間の制限に気づきましたが詳細な事は知りません。 ※剣世界の事についておおまかな知識を得ましたが、仮面ライダーやBOARDの事など金居が伏せた部分があります。 ※首輪の損傷具合は不明です。 ※死者の蘇生に対する制限はスマートブレイン社の詭弁。首輪はそう簡単には外せないと考えています。 【桜井侑斗@仮面ライダー電王】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:G-5エリア】 [時間軸]:最終回直後 [状態]:深い後悔、強い決意。ハナ、デネブの無事に安堵。全身に中程度のダメージ、中程度の疲労。2時間変身不能(ゼロノス) [装備]:なし [道具]:基本支給品×2、ゼロノスカード6枚(内二枚赤カード)、ラウズカード(封印済み:ダイヤK 空:クラブQ、ジョーカー)     ショッカー戦闘員スーツ×2@仮面ライダー、ディスクアニマル(ニビイロヘビ)、戦国時代のディスクアニマル(イワベニシシ) [思考・状況] 1:殺し合いの阻止 2:香川と行動しつつ仲間との合流を目指す 3:自分と同じ顔をした少年(桐矢)への疑問。保護が必要ならそうする。 4:北崎(名前は知らない)、ガドル(名前は知らない)を倒す。 5:五代雄介に一条薫の死を伝える。 6:金居の死に後悔。木場と情報交換。 [備考] ※変身回数、時間の制限に気づきましたが詳細な事は知りません。 ※剣世界の事についておおまかな知識を得ましたが、仮面ライダーやBOARDの事など金居が伏せた部分があります。 【木場勇治@仮面ライダー555】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:G-5エリア】 [時間軸]:39話・巧捜索前 [状態]:全身に中程度の打撲。他人への僅かな不信感。全身に疲労大、背中等に軽い火傷。二時間変身不可(ファイズ、ホースオルフェ) [装備]:ファイズギア [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:主催者及びスマートブレインの打倒、脱出 1:金居の死に困惑。 2:長田、海堂、加賀美の捜索 3:首輪の解除 4:死神博士、ゴルゴス、牙王、東條(名前は知らない)に警戒 。影山はできれば助けたい。 5:事情を知らない者の前ではできるだけオルフェノク化を使いたくない ※備考 ※第一回放送を聞き逃しています。 ◆ 北崎は憤怒していた。王たる自分に対するあの仕打ちに。 途中でメタルゲラスが消失したのは制限のためと気づいたが、それでも大分元の場所より離れてしまった。 変身も既に解けてしまい、バイクも向こうに放置したままだ。今から戻っても誰も居るまい。 このイライラは――――次に出会う参加者にぶつけよう。王の力は手の内にある。 何人たりとも自分には届かない……だが出来れば仮面ライダーがいい、強いものをさらに強い力でねじ伏せるのは心地がいいものだ。 東條の顔を記憶に刻み込んで北崎は笑った。次に会うときが最後だ、と。 **状態表 【???】【午前】 【北崎@仮面ライダー555】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:???】 [時間軸]:不明。少なくとも死亡後では無い。 [状態]:全身に疲労。頭部、腹部にダメージ。背部に痛み。オーガ、ドラゴンオルフェノクに2時間変身不可。 [装備]: オーガギア [道具]:基本支給品一式、不明支給品(0~1個) [思考・状況] 基本行動方針:殺し合いを楽しんだ上での優勝。 1:次にあった奴にイライラをぶつける 2:五代雄介、「仮面ライダー」なる者に興味。 3:桜井侑斗、香川英行とはまた闘いたい。 4:ゾル大佐、橘朔也と会ったら今度はきっちり決着をつけ、揺ぎ無い勝利を手にする。 5:「仮面ライダー」への変身ツールを集めたい。 6:木場勇治はどうせだから自分で倒したい。 ※変身回数、時間の制限に気づきましたが詳細な事は知りません。 ※桐矢京介を桜井侑斗と同一人物と見なしています。 ※三田村晴彦の生死に興味を持っていません。 ※どこへ向かったかは後続の書き手さんにお任せします。 ◆ 海堂が目を覚ました時、そこには誰も居なかった。 ゾルダのカードデッキを壊され、変身が避けたところまでは覚えている。そこから先はおぼろげにしか覚えていない。 犀、金色のクワガタ、緑色の血、男の絶叫――――じっくり現場を見ては居ないが、海堂にもそれくらい想像できた。 あの犀のライダーは――何故かは知らないが――自分の仲間を殺したのだ。今一度ライダーの外道さが判った気がする。 傍らに放置したあったバイクに凭れ掛かり、空を見上げる。まぶしすぎるくらいに照りつける太陽。しかしこの下では、今も殺し合いが続けられているのだ。 殺された者のために、ライダー達を倒す。それが残された者の、使命だと思ったから。 **状態表 【G-5 北東部 ショッピングセンター近く】【午前】 【海堂直也@仮面ライダー555】 【1日目 現時刻:午前】 【現在地:G-5エリア】 [時間軸]:34話前後 [状態] :体の各部に中程度の打撲。激しい怒り、2時間変身不可(スネークオルフェノク) [装備]:カワサキのZZR-250 [道具]:無し。 [思考・状況] 基本行動方針:「仮面ライダー」を許さない。 1:仮面ライダーを倒す。 2:ライダー(アマゾン、歌舞鬼、オーガ、ガイ)の危険性を伝える。 3:まだ対主催。 ※ 澤田の顔はわかりますが名前は知りません。また、真魚の顔は見ていません。 ※ モグラ獣人の墓にはガーベラの種が植えられています。 ※ 第一回放送は知っている名前がモグラのみ、ということしか頭に入っていません。 ※ 変身制限について知りました。 ※ゾルダのカードデッキは破壊されました。 |069:[[ステッピング・ストーン]]|投下順|071:[[希望と絶望と偽りの顔(前編)]]| |068:[[歩むべき道は果てしなく]]|時系列順|072:[[感情(前編)]]| |054:[[知略と決意のとき]]|[[桜井侑斗]]|074:[[Weak and powerless]]| |054:[[知略と決意のとき]]|[[香川英行]]|074:[[Weak and powerless]]| |054:[[知略と決意のとき]]|&color(red){金居}|---| |052:[[イプソ・ファクト(後編)]]|[[風のエル]]|077:[[blood]]| |065:[[終わるのは遊び、始まるのは戦い(後編)]]|[[木場勇治]]|074:[[Weak and powerless]]| |065:[[終わるのは遊び、始まるのは戦い(後編)]]|[[北崎]]|080:[[出たぞ!恐怖の北崎さん]]| |065:[[終わるのは遊び、始まるのは戦い(後編)]]|[[海堂直也]]|074:[[Weak and powerless]]| |065:[[終わるのは遊び、始まるのは戦い(後編)]]|[[東條悟]]|082:[[東條悟のお料理教室]]|

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