「闇の中で唯一光る」(2008/05/06 (火) 01:30:10) の最新版変更点
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*闇の中で唯一光る
歳は30を過ぎて、普段は理知的で常に冷静な表情を保つ天才科学者、香川英行は呆気にとられた表情をして段崖にて夜闇の海原を前に立ち尽くした。
脳裏を過ぎるのは、つい先程までの出来事。
自分は神崎志郎の目的とライダーバトルを阻止の為に動いていた。その過程で神崎唯の抹殺を狙い、城戸真司らと対立し―。その果てに密かに恐れてい
た愛弟子東條悟の暴走に見舞われて…。デストワイルダーに引きずられ、あと数メートルで串刺しにならんとする自分。香川が覚えているのはそこまでだった。
なぜ今の様な状態に至ったのか、現時点では分かりそうもない。
それでも彼は持ち前の冷静さを取り戻しつつあった。香川の信念は変わらない。此処が大勢の命を踏みにじる殺し合いの場なら、全力で打破を目指すだけだ。『大を救う為には小の犠牲をいとわない』というリアリズムを胸に秘めて。
☆ ☆ ☆
(クソッ、何がどうなってんだッ)
海にほど近い民家で、桜井侑斗は心中で激しく毒付いた。カイとの最終決戦を終え、本来の時代に帰る筈だったのに気が付けばこの狂気のフィールドへの「招待」である。未来の自分からゼロノスカードを託され、ゼロノスに変身し、この世のものとは信じがたいイマジンと戦い続けるという数奇な運命を体験した侑斗ではあるが、このような事態に陥ることなど予想出来ようか。 名簿にある繋がり深い者達の名前。家族同然だったデネブ、未来の愛娘ハナ、戦友野上良太郎と共に電王として戦い抜いたモモタロス。そして野望の果て消滅した筈の牙王。野上良太郎の名前がなかったことだけは、ー侑斗らしく顔には出さなかったが彼の救いになった。普段大小様々な不幸に見舞われた彼を、運命の神がいるのならば、ここぞという時に救ったのだろうか。
万感の思いをはせつつ、逸る気持ちを抑えながら、支給品を確認し、思案する。
(確かに使いきったゼロノスカードが6枚もか…。支給品も謎ならさっきのあいつは一体…)
侑斗がもう一つ気にかけたのは、先の会場で見た一人の少年のことだ。
状況が状況だけにハッキリ覚えている訳ではないが…。彼は確かに自分と同じ顔をしていた。それが何を意味するのだろうか。
思考に更ける侑斗が潜んでいた民家が唐突にノックされた。
香川の支給品はある点においては、当たりの部類に入っていたかも知れない。携帯のGPSに付随された首輪探知機能である。適用範囲は500メートルだがそれでも十分だった。
「この民家ですか」
香川は自分に最も近くにいる参加者に接触を図ることにした。もちろんリスクは決して少なくない。だが今の香川一人の力ではバトルロワイアルを潰し得ないし、万が一この先にいる人物が殺し合いに乗った者ならば―。オルタナティブ・ゼロの力を使いその芽を刈り取る覚悟と自信もあった。
ついに香川はその人物がいるであろう部屋のドアをノックした。
「!? 誰だッ?」
中から聞こえたのは二十歳前後と思われる若い男の声。
「清明院大学の香川英行です。この殺し合いには乗っていません。貴方もそのつもりなら私に協力して頂けないでしょうか」
そう言うと保険として片手にデッキをにぎりドアを開け、そして見た。腰にベルトを巻きカードを構える桜井侑斗の姿を。
「最初に言っておきます。俺も殺し合いをするつもりはありません」
☆ ☆ ☆
両人が相手が殺人者である場合を想定したので、緊張が走ったが、互いに殺し合いの阻止が目的のため、戦闘を仕掛けあうこともなく、情報交換が行われた。
「なるほど。すなわち貴方は回数限定でゼロノス、私達の知るライダーにも似た存在に変身し、イマジンなる怪物と戦った。そしてこの場にいるデネブ、ハナさん、モモタロスは信頼でき、牙王は殺し合いを行う可能性がある、と」
香川の確認に侑斗は普段遣う機会の少ない敬語で答えた。
「そうなりますね。で、東條悟、コイツが危険人物って訳ですか」
香川は黙って頷いた。互いから聞き出した情報は各々大きく浮き世ばなれしていたが、そのことは自身に当てはまるためなんとか信じることが出来た。もちろん二人は全てのことを語った訳ではない。香川は『大を救う為に小を犠牲』にする信念を侑斗に説いたがそのために一人の少女を殺めようとしたことは語らなかった。侑斗はカードの枚数は伝えたが、それが未来の自分に関する記憶と引き替えだとは言わない。そのことで誰かに同情の目で見られるのは厭だったし、そもそも未来の自分はもう消えた筈だから――。
(まずは好感触といった所でしょうか。そして興味深いのは『ゼロライナー』の存在。何らかの条件が揃えば主催への反撃と脱出の手段になりうる……と言うのは現時点では希望的観測が過ぎますね…)
(カード、いや命を失わないですむ相手だったのは幸運だった。そして早いとこデネブ達と合流しないとだな。デネブ、勝手にくたばんなよ…)
☆ ☆ ☆
二人は民家を離れ北へと足を進める。大学の施設に興味を感じた香川の提案だった。
侑斗はふと天を仰ぎ見る。星空。その中にはベガ、アルタイル、デネブの輝きも見えた。しかし侑斗にはそれがひどく冷たく、人工的で限りない闇に支配された何かに思えた。
**状態表
【香川英行@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:深夜】
【現在地:E-2 大学へ伸びる道路】
[時間軸]:東條悟に殺害される直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(オルタナティブゼロのデッキ) 、首輪探知携帯
[思考・状況]
1:殺し合いの阻止
2:大学へ向かいつつ考察を行う
3:東條を警戒
【桜井侑斗@仮面ライダー電王】
【1日目 現時刻:深夜】
【現在地:E-2 大学へ伸びる道路】
[時間軸]:最終回直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品 ゼロノスカード6枚
[思考・状況]
1:殺し合いの阻止
2:香川と行動しつつ仲間との合流を目指す
3:自分と同じ顔をした少年(桐矢)への疑問
|003:[[人か?野獣か?密林にいた凄い奴!]]|投下順に読む|005:[[歪んでいる時間の道]]|
|003:[[人か?野獣か?密林にいた凄い奴!]]|時系列順に読む|005:[[歪んでいる時間の道]]|
||[[香川英行]]|021:[[戦士]]|
||[[桜井侑斗]]|021:[[戦士]]|
*闇の中で唯一光る
歳は30を過ぎて、普段は理知的で常に冷静な表情を保つ天才科学者、香川英行は呆気にとられた表情をして段崖にて夜闇の海原を前に立ち尽くした。
脳裏を過ぎるのは、つい先程までの出来事。
自分は神崎志郎の目的とライダーバトルを阻止の為に動いていた。その過程で神崎唯の抹殺を狙い、城戸真司らと対立し―。その果てに密かに恐れてい
た愛弟子東條悟の暴走に見舞われて…。デストワイルダーに引きずられ、あと数メートルで串刺しにならんとする自分。香川が覚えているのはそこまでだった。
なぜ今の様な状態に至ったのか、現時点では分かりそうもない。
それでも彼は持ち前の冷静さを取り戻しつつあった。香川の信念は変わらない。此処が大勢の命を踏みにじる殺し合いの場なら、全力で打破を目指すだけだ。『大を救う為には小の犠牲をいとわない』というリアリズムを胸に秘めて。
☆ ☆ ☆
(クソッ、何がどうなってんだッ)
海にほど近い民家で、桜井侑斗は心中で激しく毒付いた。カイとの最終決戦を終え、本来の時代に帰る筈だったのに気が付けばこの狂気のフィールドへの「招待」である。未来の自分からゼロノスカードを託され、ゼロノスに変身し、この世のものとは信じがたいイマジンと戦い続けるという数奇な運命を体験した侑斗ではあるが、このような事態に陥ることなど予想出来ようか。 名簿にある繋がり深い者達の名前。家族同然だったデネブ、未来の愛娘ハナ、戦友野上良太郎と共に電王として戦い抜いたモモタロス。そして野望の果て消滅した筈の牙王。野上良太郎の名前がなかったことだけは、ー侑斗らしく顔には出さなかったが彼の救いになった。普段大小様々な不幸に見舞われた彼を、運命の神がいるのならば、ここぞという時に救ったのだろうか。
万感の思いをはせつつ、逸る気持ちを抑えながら、支給品を確認し、思案する。
(確かに使いきったゼロノスカードが6枚もか…。支給品も謎ならさっきのあいつは一体…)
侑斗がもう一つ気にかけたのは、先の会場で見た一人の少年のことだ。
状況が状況だけにハッキリ覚えている訳ではないが…。彼は確かに自分と同じ顔をしていた。それが何を意味するのだろうか。
思考に更ける侑斗が潜んでいた民家が唐突にノックされた。
香川の支給品はある点においては、当たりの部類に入っていたかも知れない。携帯のGPSに付随された首輪探知機能である。適用範囲は500メートルだがそれでも十分だった。
「この民家ですか」
香川は自分に最も近くにいる参加者に接触を図ることにした。もちろんリスクは決して少なくない。だが今の香川一人の力ではバトルロワイアルを潰し得ないし、万が一この先にいる人物が殺し合いに乗った者ならば―。オルタナティブ・ゼロの力を使いその芽を刈り取る覚悟と自信もあった。
ついに香川はその人物がいるであろう部屋のドアをノックした。
「!? 誰だッ?」
中から聞こえたのは二十歳前後と思われる若い男の声。
「清明院大学の香川英行です。この殺し合いには乗っていません。貴方もそのつもりなら私に協力して頂けないでしょうか」
そう言うと保険として片手にデッキをにぎりドアを開け、そして見た。腰にベルトを巻きカードを構える桜井侑斗の姿を。
「最初に言っておきます。俺も殺し合いをするつもりはありません」
☆ ☆ ☆
両人が相手が殺人者である場合を想定したので、緊張が走ったが、互いに殺し合いの阻止が目的のため、戦闘を仕掛けあうこともなく、情報交換が行われた。
「なるほど。すなわち貴方は回数限定でゼロノス、私達の知るライダーにも似た存在に変身し、イマジンなる怪物と戦った。そしてこの場にいるデネブ、ハナさん、モモタロスは信頼でき、牙王は殺し合いを行う可能性がある、と」
香川の確認に侑斗は普段遣う機会の少ない敬語で答えた。
「そうなりますね。で、東條悟、コイツが危険人物って訳ですか」
香川は黙って頷いた。互いから聞き出した情報は各々大きく浮き世ばなれしていたが、そのことは自身に当てはまるためなんとか信じることが出来た。もちろん二人は全てのことを語った訳ではない。香川は『大を救う為に小を犠牲』にする信念を侑斗に説いたがそのために一人の少女を殺めようとしたことは語らなかった。侑斗はカードの枚数は伝えたが、それが未来の自分に関する記憶と引き替えだとは言わない。そのことで誰かに同情の目で見られるのは厭だったし、そもそも未来の自分はもう消えた筈だから――。
(まずは好感触といった所でしょうか。そして興味深いのは『ゼロライナー』の存在。何らかの条件が揃えば主催への反撃と脱出の手段になりうる……と言うのは現時点では希望的観測が過ぎますね…)
(カード、いや命を失わないですむ相手だったのは幸運だった。そして早いとこデネブ達と合流しないとだな。デネブ、勝手にくたばんなよ…)
☆ ☆ ☆
二人は民家を離れ北へと足を進める。大学の施設に興味を感じた香川の提案だった。
侑斗はふと天を仰ぎ見る。星空。その中にはベガ、アルタイル、デネブの輝きも見えた。しかし侑斗にはそれがひどく冷たく、人工的で限りない闇に支配された何かに思えた。
**状態表
【香川英行@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:深夜】
【現在地:E-2 大学へ伸びる道路】
[時間軸]:東條悟に殺害される直前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(オルタナティブゼロのデッキ) 、首輪探知携帯
[思考・状況]
1:殺し合いの阻止
2:大学へ向かいつつ考察を行う
3:東條を警戒
【桜井侑斗@仮面ライダー電王】
【1日目 現時刻:深夜】
【現在地:E-2 大学へ伸びる道路】
[時間軸]:最終回直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品 ゼロノスカード6枚
[思考・状況]
1:殺し合いの阻止
2:香川と行動しつつ仲間との合流を目指す
3:自分と同じ顔をした少年(桐矢)への疑問
|003:[[人か?野獣か?密林にいた凄い奴!]]|投下順に読む|005:[[歪んでいる時間の道]]|
|003:[[人か?野獣か?密林にいた凄い奴!]]|時系列順に読む|005:[[歪んでいる時間の道]]|
||[[香川英行]]|021:[[戦士(前編)]]|
||[[桜井侑斗]]|021:[[戦士(前編)]]|
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