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我想フ――――、」(2008/06/01 (日) 01:14:09) の最新版変更点

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*我想フ――――、 ---- 我想フ。 コノ世ハ何カガオカシイ、ト。 コノ世は何カガズレテイルト。 故ニ、我想フ――――、 ---- 「……バトルロワイアル、ねぇ。」 一人、町の中で愚痴る男……一文字隼人。その手に握られているのは、無骨なデザインの刀。 「剣……か。余り趣味じゃないんだけれどな。」 『それ』は遡る事戦国時代、一人の刀鍛冶が師の為に打った唯一にして最高の一本。 後に時代を超えて師の下に辿り着き窮地を救った『それ』は、猛士の刀と呼ばれた。 尤も、本来この刀が存在している世界に隼人は存在しておらず、その事を彼が知る由もないのだが。 他に使えそうな物は愛用の特殊マスクと、改造人間としての己が肉体。 そして……自分のすぐ傍に放置されていた、赤を基調とした奇妙なバイク。 何故放置してあったのかはさて置き、燃料自体は満タンらしい。しばらくは移動手段として使えそうだ。 燃料が切れたときは、何処かで補給するしかない。バイクが放置されているんだ、ガソリンスタンドだって設置しているだろう。 兎に角、剣の方は今の自分に必要ない物だ。そう思い刀と入れ違いにデイパックから携帯電話を取り出し、名簿を開く。 軽く眼を通すも……見知った名は自分と同じ改造人間の本郷猛、そして愛する女性こと緑川あすかの二名のみ。 (後は……こいつ、か。) ――――自分と同じ名、一文字隼人。 ◆ 隼人の後ろからその姿をじっと見つめる老人が一人。 その顔に刻まれたしわは、遠くから見てもただならぬ雰囲気を漂わせていた。 「フッ、あの男、見かけによらず隙を見せんな。」 一言呟き、右手の鞭を軽く撓らせる。 マントを棚引かせて笑うその姿は、一種の死神のようにも見えた。 そして、二人をまた別の場所から見つめる男性も一人。 片手には骨のついた肉を、もう一つの手には金色のパスを持っている。 目線を落とし、手に持ったその肉にかぶりつく。 ――――これから、皆さんに殺し合いをしてもらいます。 あの男は確かにそういった。時を越える列車を得て、神の路線を進むべき、この俺に。 言いなりになるのは多少癪だが、今はどうでもいい――――ただ、喰らい尽くすだけだ。 軽く男は辺りを見回す。視界に入るのは建物や荒野、鬱蒼と木々が茂る森に青々しい海。 「……まァ、また探すのも悪かねぇか。」 確証はない……でも男は信じていた。 この箱庭のどこかに――――――“アレ”がある、と。 ◆ 普通に考えれば同姓同名の別人なのだろうが……正直、自分でも珍しい名前だと思っている。 本郷の方も然りだ。故に益々分からなくなっていく。彼奴等は一体何なのか。 本当に同姓同名の他人なのか、それとも唯の偽者か、それとも常識で測れない何かか。 (考えても仕方がない、か。) 早々に考える事を放棄する。考えたところで、分からないものは分からないまま。 本来自分は考え事には向いていない。ああいうのはそれこそ本郷にでもさせておけばいい。 他に考えるべき事は――――この首に嵌っている面倒な機械。 軽く手で弄ってみる。それほど重量もなく、本当に起動するのかと疑いたくなるほどだ。 しかし、指先にじわりと広がっていく冷たさは、間違いなく本物だった。 何より全身が灰にされる場面を画面越しにだがこの目で見ている。信じずにはいられないだろう。 触ってみたところフレームに使われているのは金属、そこに用途不明の穴と突起が一つずつ。 この突起は赤いランプのような物だ。ついさっき、あの二人が死ぬときに目障りにも光っていた。 大方、未知の技術か何かを使ってこの首輪を管理しているのだろう、となれば解除には機械に詳しい人物が必要になる。 ……自分の常識? 思わず隼人は苦笑する。常識から外れた体になって、常識から外れた奴らのウジャウジャ居る戦いに巻き込まれて、今更常識も何もある物か。 兎も角、目で見ずに分かるのはこの程度。後はサンプルがあればもっと手っ取り早いが……それは後々どうにか探し出すしかない。 ちらりと、脳裏を見せしめにされた死体が掠めていく。正確には、『元は死体だった物』だが。 全身が灰になっており、後には役目を終えた首輪しかない……こっそり持って行くか? ……いや、やめて置くべきだ。放送の最後で禁止エリアがどうとか言っていた……つまり、あそこも禁止エリアになっている可能性が高い。 わざわざ自分からそこに踏み込んでいくのはよほどの馬鹿かもしくは一種の病人しか居ないだろう。 携帯を操作して現在位置を調べる。どうやら、病院があることから察するにここは下方、G-4エリアらしい。 一先ずは禁止エリアでなくて安心だが、いつまでもここに居られる訳でもない。 幸いこちらには徒歩よりは速い足がある。禁止エリアに引っかかる事はないだろう。 ――――――さて、首輪についてはこの辺にしとくか。 首輪を弄っていた手を下ろし、全身の感覚を背後の建物に集中させる。 一人、いる。しばらく前から居たようだが……何も仕掛けてこない。機を窺っているのか? (……ここに呼ばれた以上、何かしらあると考えて間違いなさそうだな。) 一秒――――十秒――――三十秒――――一分。両者共に何の反応も起こさない。 「ククク……そこに居るんだろ、出て来いよ。」 耐えられなくなったのか、一文字が振り向かずに呼びかけた。その顔に浮かぶは余裕の表情。 ザッ、と地を踏みしめる音が一つである事から、いるのは一人だけだろう。 「俺としてはそっちの顔を見てみたいんだがね?」 「構わん、見たければ好きにするがよい。」 まさに即答だった。一秒もかからずに返ってきた答えに内心笑みを零し、ゆっくりと隼人は振り返った。 「……ッ!」 絶句。そこに立っていたのは、隼人もよく見覚えのある人物であり、かつ思いもよらない人物だった。 彼がまだショッカーに居た頃、三幹部として君臨していたその顔は片時も忘れたことがない。 「驚いたぜ……まさかあんたもここに居るとはな。」 「……? 小僧、何処かでわしと会ったか?」 声をかけたが、その反応にはどこか歯切れの悪いものがある。その返答だけで隼人は異変を感じ取った。 ――――何かが、おかしい。 幾ら見た目が年老いているとは言え、仮にも秘密結社ショッカーの幹部。呆けて自分の顔を忘れた……というのは考え辛い。 かといって、嘘を言っているようには見えない。というか、嘘をつく理由がない。 「オイオイ、人のこと改造しておいて、今更はい忘れましたなんて言わせないぜ?」 歩みながら近寄っていく。すると、疑問しか浮かべていなかった老人の眉がピクリと反応した。 「……小僧、名をなんと言う?」 「一文字隼人だ。ショッカーの幹部ってのは、自分が改造したやつのことも覚えてられないのかね?」 先ほどのお返しとばかりに、こちらも即答する。その言葉には軽く……いや、たっぷりと皮肉を込めて。 「……」――――――――――そして老人は、 「…………」――――――――――俯いて黙りこくったかと思えば、 「……ククク……」――――――――――声を押し殺したような笑いを出し、 「……ハァァァッ!!」――――――――――その手で、持った鞭を振るい上げた。 「ウォッ!?」 紙一重。もう少し反応が遅れればただでは済まなかっただろう。 一瞬でバイクに飛び乗り、エンジンを起動させて鞭の範囲内から逃げ出す隼人。 「チッ、外したか。」 その老人は舌打ちをした後、鞭を一振りし手元へと回収する。 「おい、これは何の冗談だ?」 対する隼人は紅いバイク、カブトエクステンダーに跨りながら明らかな怒りの表情を見せた。 「バカめ!貴様が一文字だと?嘘をつく相手を間違えたな!!  わしの知る一文字隼人はもっと屈強な男だ。貴様のような軟弱男などではないわッ!!」 一文字隼人。自分の名を持つもう一人の男……この爺さんの言っている事が正しいのならば、そいつは確かに存在するらしい。 ついでに言えば、そいつに会ったことのあるこの爺さんは俺のよく知る爺さんとは別の爺さんらしい。よくわからない話だが。 「しかし……」 だが、老人は顎に手を当てて考えるような仕草をする。 そして、言葉を一言一言選びながらこう言った。 「何処で知ったのかは知らんが、このわしがショッカーの幹部である事を知ったからには……死んでもらうぞ、小僧。」 瞬間、場の空気ががらりと一変する。 今まで談笑していたものから、殺意を込めた鋭い空気へと姿を変えた。 「冥土の土産に見せてやろう……ショッカー大幹部、死神博士の……」 おもむろにマントのホックを外し、端を両手で掲げる。 そのまま自分の体を隠すように被り、瞬時に払いとって下の姿を見せた。 だが……中から出てきた姿は死神博士ではなかった。 全身に這い寄る触手や、純白の体表の中に見せるおぞましさは並の改造人間にはなく、距離のある隼人もそれは感じ取っていた。 「……真の姿をッ!来い小僧、この俺、イカデビルが相手だァッ!」 左腕から触手を変化させた鞭を唸らせ、隼人の方へと突撃して行く。 「おお怖い、あいつもやっぱり改造人間だったのか。」 言葉の内容とは裏腹に、隼人は恐れを微塵も抱いていなかった。 自分の上に立つ存在の改造人間、その力は未知数だ。少なくとも、今まで戦ってきた奴らとは比べ物にならない。 しかしここで退いては何が改造人間だ。いつか本郷に言ったように自分にも言い聞かせる。「もっと自信を持て、俺は改造人間じゃないか」、と。 冷静に二人の距離を計算し、出た結果は実に七十メートル。これだけ開いていれば、行動を終える前に向こうが着くことはあるまい。 ――――羽織ったジャンパーのチャックを開け、腰に手を据える。 ――――中心には紅く輝く風車。左の手でハンドルを握り、右の手で、ベルトを起動させる。 ――――刹那、全身が濃緑色のスーツに覆われた。背中にある鷲を模したマークは、激戦のためか薄く剥がれ落ちている。 ――――愛のために組織を裏切り、仲間と共に戦う事を選んだ戦士。仮面ライダー二号がそこにいた。 「グッ!?」 隼人の変化に伴いイカデビルが前進を止め、直後に鞭での攻撃に切り替えた。 鞭は真っ直ぐ飛んでいき、カブトエクステンダーの角に巻きついた。 「ククク……どうやら改造を受けたというのは本当のようだな……しかぁしッ!」 イカデビルが天を指差す。空から迫るは、怪しく光る幾つもの流星。 「本物の一文字はこんな物では終わらなかったぞォ!」 合図を出し、二号めがけて流れ星が続けざまに降り注ぐ。 二号はバイクを全速力で発進させようとするが、イカデビルの鞭がそれを許さない。 アクセルベタ踏みでハンドルを切るが、鞭によって阻まれてイカデビルの周囲をぐるぐると回るだけだ、動きは期待できそうにもない。 「……拙い!」 咄嗟に二号は考える。バイクを降りて逃げるのは無理だ、間に合わない。かといってバイクは動かない……。 ……ならば、こうするしかない! 「ウォォォォォォォッ!!」 「何!?」 突然バイクから飛び立ったかと想うと、二号はイカデビルへと飛び蹴りを放った。 イカデビルは少し驚いたようなそぶりを見せるが、即時に対処法を取る。ここに来る以前、仮面ライダー一号に打ち勝ったあの技を。 「キック殺しッッ!!」 二号の蹴りを掴み、力の限り明後日な方向へと投げ飛ばす。結果、二号のキックは力をぶつける場所を失って宙を舞う。 そのまま地に叩きつけられ、身動きが取れなくなって所で鞭が飛んできてエンド……のはずだった。 「かかったな。」 仮面の上から表情など分かるはずはない。だが、確実に隼人は不敵な笑みを浮かべていた。 何を馬鹿な、と振り返って嘲笑おうとした時、イカデビルは見てしまった。 ――――メラメラと燃えながら、自分に迫ってくる真っ赤な流星を。 「やったか……?」 数秒後、二号は左腕を押さえながら立ち上がった。どうやら落下の際衝撃を肩代わりしてもらったらしい。 隕石の落下した場所は、炎が燃え上がり煙を出している。イカデビルの生存は……微妙としか言いようがない。 「ゥゥゥゥゥゥウウウウオオオオオォォォォォォ!!」 直後、地の底から響くような唸り声と共にイカデビルが炎の中から出てきた。 流石に自分の能力で死ぬほど間抜けでもなければ、弱くもない。 だったら、拙い……と思案する。幾ら爆発に巻き込まれたといえ向こうはほぼ外傷無し。 そして自分は左腕が使い物にならないと来た、どちらが優勢かは、火を見るより明らかだ。 (今度こそ、万事休すか。) 隼人が自らの活躍に眼を向け、その意識を閉じようとした瞬間――――それは、やってきた。 「よぉ、楽しそうな事やってるじゃねえか。」 殺し合いの場には不釣合いなほどよく響く声。声質からして、壮年の男性のものだろう。 二人が困惑するのも構わず、声の主は自分のペースでことを進めていった。 「俺も混ぜてくれよ……変身。」 ――GAOH-FORM―― 電子音声が流れ、それを合図に声の気配がぱったりと消え去る。 構えを解かずに、周囲に気を配る二号。だが、それらしい気配は何処にもない。 「変身……貴様も仮面ライダーか!?」 対照的に、イカデビルは右手の鞭を振り乱し、声の主を探す。 右か、左か、前か、後ろか―――――― 「何処を見ている?」 ――――――上かッ! イカデビルが天を見上げて叫ぶ。その先には星空をバックに飛ぶ何者かの影。 すぐさまその場から跳躍し、後方の建物に飛び込む。 二号はすぐさま腕に力を入れるが、直後にこれが無意味である事を悟る。 ゴォンッ!! イカデビルの跳躍からワンテンポ遅れて、轟音と共に金色の異形が地面ごとその場所を抉り取る。 後もう少し動くのが遅かったらどうなっていた事か……イカデビルは背筋が冷えるのを感じた。 二号も飛び出さなくて正解だった。あの勢いと威力をまともに受けては、幾ら改造人間といえどただではすまない。 「……フン。」 片手で剣を引き抜き、その異形が二号とイカデビルを交互に見比べ、首の骨を鳴らす。 金色の外装、全身に散りばめられた牙の意匠。その名は―――――― 「どうした?始めないのならこっちから行かせてもらうぜ?」 ――――――その名は、牙王。その牙は、全てを喰らうためにこそ存在する。 **状態表 【深夜】【市街地G-4エリア 病院の付近】 【死神博士@仮面ライダー(初代)】 【1日目 現時刻:深夜】 【現在地:市街地G-4】 [時間軸]:一号に勝利後。 [状態]:若干疲労、擦り傷程度の傷多数、イカデビルに変身中。  [装備]:鞭 [道具]:支給品一式、ランダム支給品×1~3 [思考・状況] 基本行動方針:打倒本郷、及び一文字。 1:目の前の男を倒す。 2:仮面ライダーを倒す。 3:ゾル大佐?そいつは後回しでいい! ※F隼人の事を一文字だとは信じていません。 ※流れ星は一戦闘に六発まで使用可、威力はバイクがあれば割と余裕に回避できる程度。  尚、キック殺しは問題なく使えます。 【一文字隼人@仮面ライダーTHE FIRST】 【1日目 現時刻:深夜】 【現在地:市街地G-4】 [時間軸]:FIRST終了後。 [状態]:左腕に強い衝撃、仮面ライダー二号に変身中、カブトエクステンダー起動中。 [装備]:特殊マスク、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト [道具]:支給品一式、猛士の刀@仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼 [思考・状況] 行動方針:バトルロワイアルからの脱出 1:誰だこの男は? 2:老紳士に対処。 3:本郷、及びあすかとの合流。 4:俺や本郷と同じ名前……偽者か、それとも? 5:余裕があれば首輪を回収に行く。 [備考] ※死神博士の事を自分を改造した老紳士だと思っています。 ※FIRST終了後の参戦のため、風見志郎の存在を知りません。 ※カブトエクステンダーはキャストオフできないため武装のほとんどを使えません。  今の所、『カブトの資格者』のみがキャストオフできます。 ※猛士の剣は現在誰が持っても切れ味の悪いただの剣ですが、  本来の持ち主である日高の手に渡れば、あるいは――――? ※首輪について:  金属製のフレームに吸音用の穴と紅いダイオードが一つ。詳細不明。  さほど重くなく、表面にはスマートブレインのロゴがプリントされている。   無理に外そうとしたり禁止エリアに入ると起動、装着者は灰になる。 【牙王@仮面ライダー電王】 【1日目 現時刻:深夜】 【現在地:市街地G-4】 [時間軸]:最終決戦前。 [状態]:健康、仮面ライダー牙王に変身中。 [装備]:ガオウガッシャー [道具]:マスターパス、支給品一式、ランダム支給品×1~3、食べかけの骨付き肉 [思考・状況] 基本行動方針:全て喰らい尽くした上で優勝 1:おもしろいじゃねえか。 2:手始めに目の前の二人を片付ける。 3:ガオウライナーを取り戻して村上も喰う。 ※会場のどこかに時の列車(予想ではガオウライナー)が隠されていると推測しています。 |013:[[仮面ライダーの称号]]|投下順|015:[[蠢く甲蟲]]| |013:[[仮面ライダーの称号]]|時系列順|015:[[蠢く甲蟲]]| ||[[一文字隼人(R)>一文字隼人(リメイク)]]|025:[[牙と知恵 Devil-Action]]| ||025:[[死神博士]]|[[牙と知恵 Devil-Action]]| ||025:[[牙王]]|[[牙と知恵 Devil-Action]]|
*我想フ――――、 ---- 我想フ。 コノ世ハ何カガオカシイ、ト。 コノ世は何カガズレテイルト。 故ニ、我想フ――――、 ---- 「……バトルロワイアル、ねぇ。」 一人、町の中で愚痴る男……一文字隼人。その手に握られているのは、無骨なデザインの刀。 「剣……か。余り趣味じゃないんだけれどな。」 『それ』は遡る事戦国時代、一人の刀鍛冶が師の為に打った唯一にして最高の一本。 後に時代を超えて師の下に辿り着き窮地を救った『それ』は、猛士の刀と呼ばれた。 尤も、本来この刀が存在している世界に隼人は存在しておらず、その事を彼が知る由もないのだが。 他に使えそうな物は愛用の特殊マスクと、改造人間としての己が肉体。 そして……自分のすぐ傍に放置されていた、赤を基調とした奇妙なバイク。 何故放置してあったのかはさて置き、燃料自体は満タンらしい。しばらくは移動手段として使えそうだ。 燃料が切れたときは、何処かで補給するしかない。バイクが放置されているんだ、ガソリンスタンドだって設置しているだろう。 兎に角、剣の方は今の自分に必要ない物だ。そう思い刀と入れ違いにデイパックから携帯電話を取り出し、名簿を開く。 軽く眼を通すも……見知った名は自分と同じ改造人間の本郷猛、そして愛する女性こと緑川あすかの二名のみ。 (後は……こいつ、か。) ――――自分と同じ名、一文字隼人。 ◆ 隼人の後ろからその姿をじっと見つめる老人が一人。 その顔に刻まれたしわは、遠くから見てもただならぬ雰囲気を漂わせていた。 「フッ、あの男、見かけによらず隙を見せんな。」 一言呟き、右手の鞭を軽く撓らせる。 マントを棚引かせて笑うその姿は、一種の死神のようにも見えた。 そして、二人をまた別の場所から見つめる男性も一人。 片手には骨のついた肉を、もう一つの手には金色のパスを持っている。 目線を落とし、手に持ったその肉にかぶりつく。 ――――これから、皆さんに殺し合いをしてもらいます。 あの男は確かにそういった。時を越える列車を得て、神の路線を進むべき、この俺に。 言いなりになるのは多少癪だが、今はどうでもいい――――ただ、喰らい尽くすだけだ。 軽く男は辺りを見回す。視界に入るのは建物や荒野、鬱蒼と木々が茂る森に青々しい海。 「……まァ、また探すのも悪かねぇか。」 確証はない……でも男は信じていた。 この箱庭のどこかに――――――“アレ”がある、と。 ◆ 普通に考えれば同姓同名の別人なのだろうが……正直、自分でも珍しい名前だと思っている。 本郷の方も然りだ。故に益々分からなくなっていく。彼奴等は一体何なのか。 本当に同姓同名の他人なのか、それとも唯の偽者か、それとも常識で測れない何かか。 (考えても仕方がない、か。) 早々に考える事を放棄する。考えたところで、分からないものは分からないまま。 本来自分は考え事には向いていない。ああいうのはそれこそ本郷にでもさせておけばいい。 他に考えるべき事は――――この首に嵌っている面倒な機械。 軽く手で弄ってみる。それほど重量もなく、本当に起動するのかと疑いたくなるほどだ。 しかし、指先にじわりと広がっていく冷たさは、間違いなく本物だった。 何より全身が灰にされる場面を画面越しにだがこの目で見ている。信じずにはいられないだろう。 触ってみたところフレームに使われているのは金属、そこに用途不明の穴と突起が一つずつ。 この突起は赤いランプのような物だ。ついさっき、あの二人が死ぬときに目障りにも光っていた。 大方、未知の技術か何かを使ってこの首輪を管理しているのだろう、となれば解除には機械に詳しい人物が必要になる。 ……自分の常識? 思わず隼人は苦笑する。常識から外れた体になって、常識から外れた奴らのウジャウジャ居る戦いに巻き込まれて、今更常識も何もある物か。 兎も角、目で見ずに分かるのはこの程度。後はサンプルがあればもっと手っ取り早いが……それは後々どうにか探し出すしかない。 ちらりと、脳裏を見せしめにされた死体が掠めていく。正確には、『元は死体だった物』だが。 全身が灰になっており、後には役目を終えた首輪しかない……こっそり持って行くか? ……いや、やめて置くべきだ。放送の最後で禁止エリアがどうとか言っていた……つまり、あそこも禁止エリアになっている可能性が高い。 わざわざ自分からそこに踏み込んでいくのはよほどの馬鹿かもしくは一種の病人しか居ないだろう。 携帯を操作して現在位置を調べる。どうやら、病院があることから察するにここは下方、G-4エリアらしい。 一先ずは禁止エリアでなくて安心だが、いつまでもここに居られる訳でもない。 幸いこちらには徒歩よりは速い足がある。禁止エリアに引っかかる事はないだろう。 ――――――さて、首輪についてはこの辺にしとくか。 首輪を弄っていた手を下ろし、全身の感覚を背後の建物に集中させる。 一人、いる。しばらく前から居たようだが……何も仕掛けてこない。機を窺っているのか? (……ここに呼ばれた以上、何かしらあると考えて間違いなさそうだな。) 一秒――――十秒――――三十秒――――一分。両者共に何の反応も起こさない。 「ククク……そこに居るんだろ、出て来いよ。」 耐えられなくなったのか、一文字が振り向かずに呼びかけた。その顔に浮かぶは余裕の表情。 ザッ、と地を踏みしめる音が一つである事から、いるのは一人だけだろう。 「俺としてはそっちの顔を見てみたいんだがね?」 「構わん、見たければ好きにするがよい。」 まさに即答だった。一秒もかからずに返ってきた答えに内心笑みを零し、ゆっくりと隼人は振り返った。 「……ッ!」 絶句。そこに立っていたのは、隼人もよく見覚えのある人物であり、かつ思いもよらない人物だった。 彼がまだショッカーに居た頃、三幹部として君臨していたその顔は片時も忘れたことがない。 「驚いたぜ……まさかあんたもここに居るとはな。」 「……? 小僧、何処かでわしと会ったか?」 声をかけたが、その反応にはどこか歯切れの悪いものがある。その返答だけで隼人は異変を感じ取った。 ――――何かが、おかしい。 幾ら見た目が年老いているとは言え、仮にも秘密結社ショッカーの幹部。呆けて自分の顔を忘れた……というのは考え辛い。 かといって、嘘を言っているようには見えない。というか、嘘をつく理由がない。 「オイオイ、人のこと改造しておいて、今更はい忘れましたなんて言わせないぜ?」 歩みながら近寄っていく。すると、疑問しか浮かべていなかった老人の眉がピクリと反応した。 「……小僧、名をなんと言う?」 「一文字隼人だ。ショッカーの幹部ってのは、自分が改造したやつのことも覚えてられないのかね?」 先ほどのお返しとばかりに、こちらも即答する。その言葉には軽く……いや、たっぷりと皮肉を込めて。 「……」――――――――――そして老人は、 「…………」――――――――――俯いて黙りこくったかと思えば、 「……ククク……」――――――――――声を押し殺したような笑いを出し、 「……ハァァァッ!!」――――――――――その手で、持った鞭を振るい上げた。 「ウォッ!?」 紙一重。もう少し反応が遅れればただでは済まなかっただろう。 一瞬でバイクに飛び乗り、エンジンを起動させて鞭の範囲内から逃げ出す隼人。 「チッ、外したか。」 その老人は舌打ちをした後、鞭を一振りし手元へと回収する。 「おい、これは何の冗談だ?」 対する隼人は紅いバイク、カブトエクステンダーに跨りながら明らかな怒りの表情を見せた。 「バカめ!貴様が一文字だと?嘘をつく相手を間違えたな!!  わしの知る一文字隼人はもっと屈強な男だ。貴様のような軟弱男などではないわッ!!」 一文字隼人。自分の名を持つもう一人の男……この爺さんの言っている事が正しいのならば、そいつは確かに存在するらしい。 ついでに言えば、そいつに会ったことのあるこの爺さんは俺のよく知る爺さんとは別の爺さんらしい。よくわからない話だが。 「しかし……」 だが、老人は顎に手を当てて考えるような仕草をする。 そして、言葉を一言一言選びながらこう言った。 「何処で知ったのかは知らんが、このわしがショッカーの幹部である事を知ったからには……死んでもらうぞ、小僧。」 瞬間、場の空気ががらりと一変する。 今まで談笑していたものから、殺意を込めた鋭い空気へと姿を変えた。 「冥土の土産に見せてやろう……ショッカー大幹部、死神博士の……」 おもむろにマントのホックを外し、端を両手で掲げる。 そのまま自分の体を隠すように被り、瞬時に払いとって下の姿を見せた。 だが……中から出てきた姿は死神博士ではなかった。 全身に這い寄る触手や、純白の体表の中に見せるおぞましさは並の改造人間にはなく、距離のある隼人もそれは感じ取っていた。 「……真の姿をッ!来い小僧、この俺、イカデビルが相手だァッ!」 左腕から触手を変化させた鞭を唸らせ、隼人の方へと突撃して行く。 「おお怖い、あいつもやっぱり改造人間だったのか。」 言葉の内容とは裏腹に、隼人は恐れを微塵も抱いていなかった。 自分の上に立つ存在の改造人間、その力は未知数だ。少なくとも、今まで戦ってきた奴らとは比べ物にならない。 しかしここで退いては何が改造人間だ。いつか本郷に言ったように自分にも言い聞かせる。「もっと自信を持て、俺は改造人間じゃないか」、と。 冷静に二人の距離を計算し、出た結果は実に七十メートル。これだけ開いていれば、行動を終える前に向こうが着くことはあるまい。 ――――羽織ったジャンパーのチャックを開け、腰に手を据える。 ――――中心には紅く輝く風車。左の手でハンドルを握り、右の手で、ベルトを起動させる。 ――――刹那、全身が濃緑色のスーツに覆われた。背中にある鷲を模したマークは、激戦のためか薄く剥がれ落ちている。 ――――愛のために組織を裏切り、仲間と共に戦う事を選んだ戦士。仮面ライダー二号がそこにいた。 「グッ!?」 隼人の変化に伴いイカデビルが前進を止め、直後に鞭での攻撃に切り替えた。 鞭は真っ直ぐ飛んでいき、カブトエクステンダーの角に巻きついた。 「ククク……どうやら改造を受けたというのは本当のようだな……しかぁしッ!」 イカデビルが天を指差す。空から迫るは、怪しく光る幾つもの流星。 「本物の一文字はこんな物では終わらなかったぞォ!」 合図を出し、二号めがけて流れ星が続けざまに降り注ぐ。 二号はバイクを全速力で発進させようとするが、イカデビルの鞭がそれを許さない。 アクセルベタ踏みでハンドルを切るが、鞭によって阻まれてイカデビルの周囲をぐるぐると回るだけだ、動きは期待できそうにもない。 「……拙い!」 咄嗟に二号は考える。バイクを降りて逃げるのは無理だ、間に合わない。かといってバイクは動かない……。 ……ならば、こうするしかない! 「ウォォォォォォォッ!!」 「何!?」 突然バイクから飛び立ったかと想うと、二号はイカデビルへと飛び蹴りを放った。 イカデビルは少し驚いたようなそぶりを見せるが、即時に対処法を取る。ここに来る以前、仮面ライダー一号に打ち勝ったあの技を。 「キック殺しッッ!!」 二号の蹴りを掴み、力の限り明後日な方向へと投げ飛ばす。結果、二号のキックは力をぶつける場所を失って宙を舞う。 そのまま地に叩きつけられ、身動きが取れなくなって所で鞭が飛んできてエンド……のはずだった。 「かかったな。」 仮面の上から表情など分かるはずはない。だが、確実に隼人は不敵な笑みを浮かべていた。 何を馬鹿な、と振り返って嘲笑おうとした時、イカデビルは見てしまった。 ――――メラメラと燃えながら、自分に迫ってくる真っ赤な流星を。 「やったか……?」 数秒後、二号は左腕を押さえながら立ち上がった。どうやら落下の際衝撃を肩代わりしてもらったらしい。 隕石の落下した場所は、炎が燃え上がり煙を出している。イカデビルの生存は……微妙としか言いようがない。 「ゥゥゥゥゥゥウウウウオオオオオォォォォォォ!!」 直後、地の底から響くような唸り声と共にイカデビルが炎の中から出てきた。 流石に自分の能力で死ぬほど間抜けでもなければ、弱くもない。 だったら、拙い……と思案する。幾ら爆発に巻き込まれたといえ向こうはほぼ外傷無し。 そして自分は左腕が使い物にならないと来た、どちらが優勢かは、火を見るより明らかだ。 (今度こそ、万事休すか。) 隼人が自らの活躍に眼を向け、その意識を閉じようとした瞬間――――それは、やってきた。 「よぉ、楽しそうな事やってるじゃねえか。」 殺し合いの場には不釣合いなほどよく響く声。声質からして、壮年の男性のものだろう。 二人が困惑するのも構わず、声の主は自分のペースでことを進めていった。 「俺も混ぜてくれよ……変身。」 ――GAOH-FORM―― 電子音声が流れ、それを合図に声の気配がぱったりと消え去る。 構えを解かずに、周囲に気を配る二号。だが、それらしい気配は何処にもない。 「変身……貴様も仮面ライダーか!?」 対照的に、イカデビルは右手の鞭を振り乱し、声の主を探す。 右か、左か、前か、後ろか―――――― 「何処を見ている?」 ――――――上かッ! イカデビルが天を見上げて叫ぶ。その先には星空をバックに飛ぶ何者かの影。 すぐさまその場から跳躍し、後方の建物に飛び込む。 二号はすぐさま腕に力を入れるが、直後にこれが無意味である事を悟る。 ゴォンッ!! イカデビルの跳躍からワンテンポ遅れて、轟音と共に金色の異形が地面ごとその場所を抉り取る。 後もう少し動くのが遅かったらどうなっていた事か……イカデビルは背筋が冷えるのを感じた。 二号も飛び出さなくて正解だった。あの勢いと威力をまともに受けては、幾ら改造人間といえどただではすまない。 「……フン。」 片手で剣を引き抜き、その異形が二号とイカデビルを交互に見比べ、首の骨を鳴らす。 金色の外装、全身に散りばめられた牙の意匠。その名は―――――― 「どうした?始めないのならこっちから行かせてもらうぜ?」 ――――――その名は、牙王。その牙は、全てを喰らうためにこそ存在する。 **状態表 【深夜】【市街地G-4エリア 病院の付近】 【死神博士@仮面ライダー(初代)】 【1日目 現時刻:深夜】 【現在地:市街地G-4】 [時間軸]:一号に勝利後。 [状態]:若干疲労、擦り傷程度の傷多数、イカデビルに変身中。  [装備]:鞭 [道具]:支給品一式、ランダム支給品×1~3 [思考・状況] 基本行動方針:打倒本郷、及び一文字。 1:目の前の男を倒す。 2:仮面ライダーを倒す。 3:ゾル大佐?そいつは後回しでいい! ※F隼人の事を一文字だとは信じていません。 ※流れ星は一戦闘に六発まで使用可、威力はバイクがあれば割と余裕に回避できる程度。  尚、キック殺しは問題なく使えます。 【一文字隼人@仮面ライダーTHE FIRST】 【1日目 現時刻:深夜】 【現在地:市街地G-4】 [時間軸]:FIRST終了後。 [状態]:左腕に強い衝撃、仮面ライダー二号に変身中、カブトエクステンダー起動中。 [装備]:特殊マスク、カブトエクステンダー@仮面ライダーカブト [道具]:支給品一式、猛士の刀@仮面ライダー響鬼と7人の戦鬼 [思考・状況] 行動方針:バトルロワイアルからの脱出 1:誰だこの男は? 2:老紳士に対処。 3:本郷、及びあすかとの合流。 4:俺や本郷と同じ名前……偽者か、それとも? 5:余裕があれば首輪を回収に行く。 [備考] ※死神博士の事を自分を改造した老紳士だと思っています。 ※FIRST終了後の参戦のため、風見志郎の存在を知りません。 ※カブトエクステンダーはキャストオフできないため武装のほとんどを使えません。  今の所、『カブトの資格者』のみがキャストオフできます。 ※猛士の剣は現在誰が持っても切れ味の悪いただの剣ですが、  本来の持ち主である日高の手に渡れば、あるいは――――? ※首輪について:  金属製のフレームに吸音用の穴と紅いダイオードが一つ。詳細不明。  さほど重くなく、表面にはスマートブレインのロゴがプリントされている。   無理に外そうとしたり禁止エリアに入ると起動、装着者は灰になる。 【牙王@仮面ライダー電王】 【1日目 現時刻:深夜】 【現在地:市街地G-4】 [時間軸]:最終決戦前。 [状態]:健康、仮面ライダー牙王に変身中。 [装備]:ガオウガッシャー [道具]:マスターパス、支給品一式、ランダム支給品×1~3、食べかけの骨付き肉 [思考・状況] 基本行動方針:全て喰らい尽くした上で優勝 1:おもしろいじゃねえか。 2:手始めに目の前の二人を片付ける。 3:ガオウライナーを取り戻して村上も喰う。 ※会場のどこかに時の列車(予想ではガオウライナー)が隠されていると推測しています。 |013:[[仮面ライダーの称号]]|投下順|015:[[蠢く甲蟲]]| |013:[[仮面ライダーの称号]]|時系列順|015:[[蠢く甲蟲]]| ||[[一文字隼人(R)>一文字隼人(リメイク)]]|025:[[牙と知恵 Devil-Action]]| ||[[死神博士]]|025:[[牙と知恵 Devil-Action]]| ||[[牙王]]|025:[[牙と知恵 Devil-Action]]|

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