※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。


辺りは未だ闇に包まれ、冷たい夜の空気に覆われていた。
周囲の木々が不気味なオブジェのようなシルエットを作り、見るものの不安を掻き立てる。
その中を歩く、知的な印象を持つ中年の男性と年若い青年――俯いた顔に明るい茶の前髪が影を落としている。

「大丈夫ですか、桜井君?」
振り返り、様子を伺う香川の声に、侑斗は顔を上げる。
「……はい」
返事を返し、足に力を込めた。

その後も言葉を交わす事なく、歩みを進める二人の顔は険しい。先ほどの交戦で受けた疲労とダメージは決して少ないものではない。
だが、立ち止まる訳には行かない。目の前で自分を庇い果てた男、一条薫の想いを胸に、侑斗は星空を見上げる。
遥か遠くの宇宙から届くロマンティックな輝きは彼の心をわくわくさせてくれる。―――いつもであれば。
今は違う。どこかまがい物のようなこの夜空ではなく、何故か無性に、青空が見たかった。
澄み渡った、美しい青空を。


※※※

丘を進み、川を渡って少しした辺りの開けた場所に出たとき、香川がある事に気付いた。
見下ろせば南方へ広がる市街地に舞い上がる砂塵。かすかに聞こえる爆発音、銃声。
紛れもなく、戦闘が起こっている。

「香川さん!」
続いて気付いた侑斗が香川の判断を仰ぐ。
龍の怪人を追うために中心部を目指す。そして一条の仇を討ち、この戦いを止める事。これが二人の目的だ。
しかし、眼下に見える、今起こっている戦いを見過ごす事も出来ない。
香川は頷き、二人は丘を下っていった。


※※※

「! 待ってください、桜井君」
市街地にほど近い森の中まで来た所で、香川が唐突に足を止める。
手にした首輪探知機能に反応があったのだ。茂みに身を隠し、侑斗が携帯の画面を覗き込むと、確かに二つの赤い点が見て取れる。
変身に関して、何らかの制限が掛かっている事が分かった以上は慎重にならざるを得ない。
寄り添うようにして動かない点を見つめ、二人は息を呑む。
この首輪を付けた者たちが、ゲームに乗っている、あるいは、殺戮を楽しむ―――あの龍の怪人のように、力を持った存在だったら。
侑斗は拳を握り締める。未だ名も知らない青年の、せせら笑う声を思い出す。

『誰かが僕の力で苦しんで、悶えて、死んでいく……僕はそんな光景を何度も見て、そしてこれからも見たいんだ』

そして、一条の声も―――

『……俺も闘う。
 お前達から人間を守るために……一警察官として、一人の男として……』
『そして、俺は――――
 五代と同じ、一人の人間だッ!!』

「一条さん……ッ」
思わず、侑斗の唇から呟きが漏れる。
それを聞いた香川が、携帯の画面から目線を外し、侑斗を見つめていた。
侑斗がそれに気付き、はっとした様子で香川の顔を見返す。
香川の表情にははっきりとした緊張が見て取れるものの、眼鏡の奥の目は飽くまで冷静だ。
侑斗はまるで熱くなっている自分を咎められているような気持ちがした。
それでも一瞬の逡巡の後に、侑斗は口を開く。

「俺は……この戦いを止めたい」
その目には、彼の意思を継ぎ、この殺し合いを止めてみせるという強い決意が宿っていた。
香川は静かに頷く。彼も同じ気持ちだった。指導者としての冷静さを失う事なく、その熱さを抱えていたのだ。
「行きましょう。幸いこちらは探知機能のおかげで先手を取る事が出来ます。警戒は必要ですが……」
二人は再び歩き出す。戦いの音は、もう聞こえなくなっていた。


※※※

程なくして、二人は首輪の持ち主を見つけることが出来た。力なく木にもたれかかり、目を閉じている男性。
その周囲には折れた木の枝、所々焼け焦げているようにも見える。

「おい、大丈夫か!」
「桜井君、待ってください。あれを……」

すぐさま駆け寄ろうとする侑斗を香川が制する。香川が示したものを見て、侑斗は息を呑んだ。
男の袖口からこぼれる、夜目にも鮮やかな緑色の体液。男が人ならぬものであるという証だった。

罠を警戒し、様子を伺いながら男に近づく。
至近距離にありながら全く動きを見せないもう一つの首輪の反応が気がかりだったが、香川が周囲をくまなく見回してもそれらしき者は見当たらない。

「気絶してるみたいです」
男の傍らに屈みこんだ侑斗が言う。自分達が目撃した市街地での戦いの当事者の一人であるという事は間違い無いだろう。

「そのようですね。……失礼」
側に落ちていたデイパックに目が止まり、香川はもしやと思い開けてみる。中には食料、水などの基本的な支給品と―――
煤けた首輪が入っていた。
香川は嘆息する。反応の出所が解ってひと安心……という所だが、この男が首輪を所持しているという事。
それはつまり、彼が何者かを手に掛けた可能性があるという事に他ならない。

「桜井君、これを」
手にした首輪を侑斗に見せると、はっと目を見開いた。この事の意味が解ったのだろう。
「もう一つの反応はどうやらこれの様です。……どうやって彼がこれを手に入れたのかは解りませんが」
香川は男を見下ろす。
「彼がもしゲームに乗っているのなら、許す訳には行きません。人間ではない事は明白ですし、その可能性が高い」
侑斗は香川の言葉に固唾を呑んだ。
香川が―――おそらく男の持ち物なのだろう―――ライフルを手に取る。
「……待ってください」
侑斗が制止の声を掛ける。可能性があるというだけで無防備な相手を始末する気には到底なれなかった。
甘い事は重々承知している。持っている首輪。市街地で行われていただろう戦闘。緑色の血。
この男が本当にゲームに乗っていたら?香川の言うとおり、ここで手を打つのが最善なのかもしれない。だが。

「殺すのは話を聞いてからでも遅くないでしょう?何か役に立つ情報を持ってるかも知れない」
もう一つの理由。侑斗は知っている。
人ならぬ身でありながら、彼のために心を砕いてくれた存在を。


※※※

ひんやりとした川風が金居の頬を撫でた。薄く目を開けると、乾いて瞼に張り付いた血が引き攣るような感覚をもたらす。
状況を把握する前に、若い男の声が耳に入ってくる。
「香川さん、気付きました」

(香川……?東條が言っていた奴か……)
痛む体をどうにか起こそうとして気付いた。自分の上着で後ろ手に縛られている。
目の前には若い男と、髪を後ろに撫で付けた中年の男。おそらくこちらが香川だろう。
さらさらと水の音が聞こえ、自分が気を失った森の中ではない事を理解する。辺りはうっすらと明るくなり始めていた。

「……助かった、と言うべきかな」
「それはどうでしょうか」
香川の傍らには、金居が装備していたはずのライフルとデイパックが置かれている。
自分を見るその目には明らかな警戒の色が浮かんでいる。賢明な事だ。

「おい、お前。あそこで何があったんだ。知ってる事を話せ。それに……」
若い男が言う。目線は着衣に付いた緑色の血に注がれていた。
金居は片頬で笑うと言った。

「ああ。俺は敵じゃない……お前達に協力しよう」


※※※

金居は香川と若い男――桜井侑斗と言うらしい――に、自分の世界の事を簡単に聞かせた。
自分が生物の始祖であるアンデッドという存在だという事、アンデッドは自らの種の繁栄のために他のアンデッドと戦っている事。
仮面ライダーと敵対しているという事は意図的に伏せた。
この二人が何らかの戦闘力を持っている可能性は高く、自分が圧倒的に不利な状態である今、軽率な発言は出来ない。
金居の話を聞いた二人はいささか驚いた様ではあったが、疑っている様子はない。
どうやら異なる世界から連れて来られたという事を既に理解しているようだ。
金居は続ける。ここから脱出するための方法を探しているうちにゲームに乗った者に襲われ、戦いに巻き込まれたと。

「……つまり、俺は人間に仕組まれたつまらんゲームに乗るつもりなどはない、という訳だ」

ただし、障害になるような参加者を殺すことにためらいはないが。
腹の中を隠して言葉を切った金居に、少し間を置いた後に香川が口を開く。

「……一つ聞きたい事があります。失礼ながら気絶している間に君の荷物を改めさせてもらったのですが……」
言いながら香川が取り出したのは、煤けた首輪だった。

「これは一体どうやって?」
「拾ったのさ。既に殺されていた奴から失敬した。必要な事もあるだろうと思ってな。俺は手を下しちゃいないぜ」

これは嘘ではない。疑わしげな香川に金居は肩を竦めてみせる。
「欲しければやってもいいが?見たところあんたは学がありそうだ」

これは東條が香川の事を『先生』と呼んでいた事、――おそらく大学生だろう――から導き出した結論だ。
ならば香川がこの首輪の解除に関して有効な手立てを考え出す事もありえなくはない。
BOARDのライダーシステムに合成アンデッド、人工アンデッドなどを作り出す人間の科学技術も馬鹿には出来ない。
―――人間そのものの脆弱さを補うためだと思えば、滑稽ではあるが。
「……解りました、これはもらっておきましょう」
香川が再び首輪をしまいこむ。側でじっと話を聞いていた侑斗の顔に、ふと金居の目が止まる。
この男は、放送局にいた時に見た白い姿の怪物に襲われていた人物ではなかったか。

「……なんだよ?」
顔を見られている事に気が付いた侑斗が眉をひそめて金居を睨む。
その尊大な態度に、哀れっぽく逃げ惑うあの姿を重ねる事が出来ず、金居は他人の空似だろうと判断をする。
「いや、何でもないさ。それより、そろそろ腕を解いてくれてもいいんじゃないか、坊や」
「ぼっ……坊やぁ!!?」
いきり立つ侑斗を一瞥して、金居は思う。
東條が香川を殺したがっている以上、自分が彼と約束を交わした事は言わない方がいいだろう。

(この二人は利用できなくもない。今は情報が必要だ)
幸い、自分と東條が組んでいる事は誰も知らない。

(さて、今の所約束は守るが……あちらは上手くやってくれるかな?)
東條の、妙に熱のこもった、暗い瞳を思い出す。


※※※

三人は再び中心部に向かうことに目標を定め、移動を始める前に一息つく事にした。
金居のデイパックに道具一式が入っていたおかげで、インスタントながらもコーヒーのかぐわしい香りが辺りに立ち込める。
湯気を立てるコーヒーに口を付けながら、香川は思案する。

(この金居という男は信用できるとは言いがたいですね……首輪も拾ったと言うが、どうにも疑わしい)
アンデッドという自分の知識に無い存在であるという事も、香川の警戒心を掻き立てた。
金居は辛うじて無事だった眼鏡に付いた緑の血をぬぐい、掛けなおしている。
その向こう側の怜悧な瞳が、抜け目なく周囲を観察しているように香川には思えた。

(桜井君には悪いが、あまり長い道連れにはしたくない)
龍の怪人を倒すために戦力が必要だと訴えた侑斗は、一口飲んだコーヒーの苦さに顔をしかめている。
随分熱くなっていた様だが、先程よりは落ち着いているようだ。
砂糖の袋を手に取ると、侑斗はそれを一さじ、二さじ、三さじ……と、どんどんコーヒーに入れていく。
香川は僅かに眉をひそめたが、すぐに思い直す。思考力を保つためには、脳に糖分を補給させる事が重要だ。
侑斗から砂糖を受け取り、一さじだけカップに入れる。

(それに、この首輪探知機能も何時まで持つかわからない)
先ほど見た携帯電話の画面。電池の残量を示すアイコンのバーが一つ減っていた。特殊な機能はどうやら通常よりも電力を食うらしい。
香川の驚異的な記憶力により、名簿や地図などは完璧に頭に入っている。同行者がいる限り放送も問題はないだろう。
これまでより一層の注意力が必要になるだろうと考え、今は静かに情報を整理する事にする。
金居を見ると、やはり大量の砂糖をコーヒーに入れていた。


夜明けは近い。
だが、コーヒーの闇の中、思惑は交わることなく、心の底で小さな渦を作って回り続けている。


状態表

【早朝】【F-3】

【香川英行@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:早朝】
【現在地:F-3中央部:川のほとり】
[時間軸]:東條悟に殺害される直前
[状態]:強い決意。全身に中程度のダメージ、中程度の疲労
[装備]:神経断裂弾が発射可能なライフル
[道具]:基本支給品×1 オルタナティブゼロのデッキ 、首輪探知携帯、煤けた首輪、不明支給品0~2(確認済み)
[思考・状況]
1:殺し合いの阻止
2:北崎(名前は知らない)を倒すため、中心部へ向かう
3:東條を警戒
4:五代雄介に一条薫の死を伝える。
5:金居は信用できない。
[備考]
※変身回数、時間の制限に気づきましたが詳細な事は知りません。
※剣世界の事についておおまかな知識を得ましたが、仮面ライダーやBOARDの事など金居が伏せた部分があります。
※神経断裂弾の残りの弾数、首輪の損傷具合は不明です。


【桜井侑斗@仮面ライダー電王】
【1日目 現時刻:早朝】
【現在地:F-3中央部:川のほとり】
[時間軸]:最終回直後
[状態]:深い悲しみ、強い決意。少し落ち着いた。全身に中程度のダメージ、中程度の疲労
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、ゼロノスカード5枚、不明支給品1~3(確認済み)、一条の支給品0~1(未確認)
[思考・状況]
1:殺し合いの阻止
2:香川と行動しつつ仲間との合流を目指す
3:自分と同じ顔をした少年(桐矢)への疑問
4:北崎(名前は知らない)を倒すため、中心部へ向かう
5:五代雄介に一条薫の死を伝える。
6:金居は気に食わないが戦力が必要。坊やって言うな!
[備考]
※変身回数、時間の制限に気づきましたが詳細な事は知りません。
※剣世界の事についておおまかな知識を得ましたが、仮面ライダーやBOARDの事など金居が伏せた部分があります。


【金居@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:早朝】
【現在地:F-3中央部:川のほとり】
[時間軸]:45話終了後
[状態]:全身に動けないほどではないがかなりのダメージ、鼻血は止まった、疲労はやや回復
[装備]:なし 
[道具]:基本支給品×2、コーヒーセット、特殊支給品0~2(香川・金居確認済み)
[思考・状況]
1:可能な範囲で殺し合いの内幕をさぐる。
2:橘とは会いたくない、というか知り合いに会いたくない。
3:東條が参加者を減らしてくれる事に期待。
4:利用できる参加者は利用し、障害となる参加者は状況によっては殺害する。
5:この二人を利用して上手く生き残る。
6:香川英行が首輪を解除する方法を思いつくのではと期待。
[備考]
※香川・侑斗と簡単な情報交換を行いました。しかし、仮面ライダーとの敵対や東條と約束を交わした事など、自分に不利になる情報は伏せました。
※ライフル・首輪を香川に譲渡しました。
※桐矢と侑斗は別人だと認識しています。


036:本郷猛変身不可能!! 投下順 038:蜂の乱心!!
036:本郷猛変身不可能!! 時系列順 038:蜂の乱心!!
021:戦士(後編) 香川英行 042:暗雲
021:戦士(後編) 桜井侑斗 042:暗雲
028:それぞれの場合/NEXT STAGE 金居 042:暗雲
|新しいページ|検索|ページ一覧|RSS|@ウィキご利用ガイド | 管理者にお問合せ
|ログイン|
  
- (T: - /Y: - )

投下順に読む

時系列順に読む

死亡者リスト

支給品一覧

その他




リンク





更新履歴