終わるのは遊び、始まるのは戦い(前編)

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nagasare

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終わるのは遊び、始まるのは戦い



 住宅街を駆ける人影が一つ。
 影の持つ二足によって一瞬毎に幾度と踏み締められるアスファルトが悲鳴を上げることは無い。ただ黙々と、疾走の行方を見守り続けるのみ。
 道路と住宅の佇む土地を分かつ錆一つ無い純白のフェンスは、影の駆ける意味を知らない。
 何故疲労を隠そうとも、癒そうともしていないのか。尋ねる術は無いが、興味をそそる行動ではあった。

 此処がリゾートの都市部であることを踏まえると、住宅街の一軒一軒がどの様な存在によって築かれたのかという事実を認識するのに多くの時間を必要とはしない。
 それを理解したところで、人影――海堂には何の意味も無いのだが。
 奇妙な程整ったその住宅配置は、主催者の威容を存分に見せ付け、参加者である自身との格の違いを海堂にまざまざと思い知らせるだけなのだから。
 理解したところで今更止まる彼では無いし、逆に発達した主催者、スマートブレインへの憎悪という名の猛毒が海堂を蝕んでいくだけ。
 ならば今は気にしない方が良いに決まっている。出来ることを一つ一つしていくことで、スマートブレインに対抗していく。これまでだって仲間達とそうやって来たのだから。
 故に、走り続ける。今出来ること――スマートブレインの言うがままに殺し合いに乗り、仲間を、罪の無い参加者達を傷付けている外道「仮面ライダー」の打倒を達成する為に。

 そう、「仮面ライダー」。この場所へ連れて来られる前の村上の話を海堂は思い出す。
 仮面ライダーについて知っていて当然とも言うべきあの口振り。まるで身近に存在しているかの様な口調。
 自分達オルフェノクは仮面ライダーでも何でもない。「それ以外の人智を越えた存在」の方だろう。
 では、仮面ライダーとは何か? 一人の戦士が海堂の脳にフラッシュバックし、薄暗い疑問に一筋の光明をもたらした。
 ――ファイズ。以前海堂も変身したことがある。アマゾンがモグラを殺した時の様に、裏切り者のオルフェノクと戦った。
 しかしながらファイズに現在変身している乾巧は参加者名簿に名前が無かった。
 それどころかその乾の仲間もいない。「仮面ライダーとそのお仲間の皆さん」と発言していたくせに。
 やはりファイズは仮面ライダーではないのか。そう思ったところでもう一つのベルト、カイザの存在を思い出す。

 あれとは既に一度戦っている……と思考したところで、ようやく海堂はこの地でカイザに変身していたのが以前乾巧に同行していたのと違う人物であったことに気付く。
 顔を必死に思い浮かべる。少しずつ記憶を引き出し、それが木場を狙ってきたスマートブレインのオルフェノクだったと気付く。
 一つの答えを自分なりに組み上げた海堂。「スマートブレインの刺客が仮面ライダーに変身している」。
 おそらくはファイズギアも再びスマートブレインに奪還され、刺客が使用しているのだろう、と。
 多々の矛盾が存在することは間違いないのだが、仮面ライダーを打倒する大義名分を生み出した時点で思考は閉じ終えられていた。

 海堂の走行速度が再び上昇する。スマートブレインの刺客がライダーだとすれば、仲間達が危ないと踏んだのだ。
 モグラ獣人という新たに得たばかりの仲間を失った今、これ以上大切な存在を失う訳にはいかない。
 木場、長田。同じ苦しみを味わってきた仲間達。
 彼らにもまた自身にとってのモグラの様な存在がいて、それを奪われたら?
 こんな場所でまで同じ苦しみを味わせはしない。必ず非道なライダー、怪人、スマートブレインの手から守り抜く。
 たった一人の決意表明。この広いフィールドでそれを実践できるのか。不安は拭えないが、怒りが絶えることはない。



 木場勇治に休む時間は無い。いや、彼が休みたがらない……というのが正しいか。
 動くことで、心の奥底へ寄生せんとする不安、憎悪、恐怖などの存在を押さえ付けられるならば。理想を手繰り寄せることができるのならば。
 ――動かないよりは、ずっと良い。

 海岸線沿いに通っている都市南部の道路には、浜風が直に吹き付ける。
 やがてそれが島の北へ向けて吹き抜けていくことを思うと、木場は声に出すこと無く尋ねていた。

「仲間達は無事ですか」――――と。

 それはこの島にいる海堂や長田のことであり、彼を裏切った影山のことでもある。
 更に言えば、この会場の外にいるファイズギア正装着者のことでもあった。

 今、木場が所有しているのはファイズギアのみ。支給品の携帯をまだ持っていたなら、放送で会場内の仲間の安否を知れた筈。
 ファイズギアが自分の下ではなく、「彼」のところに戻っていたなら――彼の無事を確信することもできた。
 支給品の紛失とギアの所持という二点から、会場内外の「仲間達」の安否を確かめることも、無事だという確信を持つこともできないのが歯痒い。
 故に、最優先事項はそれを把握することに外ならない。もっともそこに存在する動機は、マイナス思考から来るものではあるのだが。
 どうしても「無事であることを一刻も早く知りたい」という思いより、「悲報を知るなら早い内に」という思考が先行してしまうのだ。
 もちろん木場が彼らに望んでいるのは「生存」の二文字。ただ、自身が酷い目にあってきた以上、彼らもまた同じ目に会っているのではないか、と考えるのは至極当然だった。

 不安の肥大化に合わせる様に吹き付けた疾風が、木場の目を細めさせる。
 太陽が辺りの暗さを払拭することはあっても、心の闇を浄化することはない。
 むしろ陽光の中に佇む闇は、漆黒の中で蠢いていた時のそれよりも存在感を増している。


 道を踏み外すつもりはないという意思通り、舗装路を道なりにひたすら進む。
 大きく口を開きながらも、満足に呼吸ができていない事実が辛い。
 海を臨む海岸沿いに、狭苦しさも何もある筈ではないのに。
 気を紛らわせる為に一歩毎に重ねる葛藤が、心への暗黒の侵略に対する仮初めの防壁にはなってくれている。
 これまでと同レベルの苦難が姿を変えた闇ならば、おそらくは防いでくれるだろう。

 問題は、それを上回る悪夢を見た時。例えば――

 ――これまでを上回る人間の汚さを目の当たりにした時。

 ――何かを喪失した時。

 それらを媒介して闇が誕生したならば、易々と防壁は破られ、おそらく心は侵食される。
 理解していてもその未来を切り捨てられない自身を木場は憎む。
 枷となっていた闇はこれまで抗ってきた努力を認めるべく、己が木場の真なる原動力となるのを心待ちにしている。
 その局面まで辿り着いた時初めて、木場は自分にとある権利が与えられているということに気付くのだろう。
 全てのオルフェノクに等しく与えられた、その権利に。




 海堂がショッピングセンターへと辿り着いたのに深い意味は無い。
 ただ道なりに駆け抜けて、たまたま目についたから足を踏み入れただけなのだ。
 敢えて理由というものを添えるのであれば、病院や放送局といったものと同列の扱いでわざわざ地図に表記されており、誰かしらの参加者とは接触できるのではないか、と思考した為であろう。
 自動ドアをくぐり、文字通り「入店」する。
 明かりが付いていないということは、やはり無人なのだろう。ご丁寧にドアを開けてくれたのは助かったが。

 もしモグラが隣にいたなら、どんな反応をするのだろうか。
 時は戻らないというのに、そんなことを考える自分を海堂は激しく嫌悪する。

 それでも店内を散策していく内に、少しずつ冷静になっていく自分に海堂は安堵する。
 小奇麗に並べられた売り物。清潔感漂う壁、柱、床。精神の安定には丁度良かった。
 ただその一方で不安が生まれる。出口へ近づくに連れて、辺りに荒れが目立ち始めたのだ。
 しかし気配は無い。ならば原因は――――
 一つの疑問は、確信へと姿を変えた。


「……こいつぁ…………!!」


 海堂は言葉を失う。視界の片隅で沈黙する、砂混じりの灰が原因である。傍らに眠る鉢植えの存在が、妙に痛々しく感じる。

 それが自分と同じ、同じ参加者の遺したものだと脳が判断するまで、長くはかからなかった。
 床に無造作に散らばった物品や陳列棚、それらの破片は整理されたまま無人となったであろう店内の光景ではなく、明らかに戦闘が行われたことを示す痕。
 そして山と盛られた灰は、その戦いの勝敗が決定済ということを意味していた。
 辺りにはデイパックも、首輪も無い。持ち去られた、ということなのだと海堂は結論づける。更にそれを行った存在、戦闘の勝者が何者であるかも、同時に。
 息が荒くなる。肩が上下に大きく揺れ、焦点がブレていく。視界の灰が歪み、一つの映像を繰り返し再生し続ける。
 数時間前に体験した、二度と味わいたくない耐え難き悪夢。
 ショッピングセンター内の静寂を背に、身体中が小刻みに震える。
 握りしめられた拳は、怒りをぶつける対象が存在しないことを嘆き、空を切ることすら許さない主の心情を察している。

 震えが収まると同時に、海堂がその場に崩れ落ちる。同時に両膝を、次いで両手が床に密着。
 ひんやりとした感触がそれらを襲うが、心まで冷やすことはない。むしろ、焼け石に水といったところだろうか。

「ちくしょう……モグラ……モグラァ……」

 灰に降り積もる憎悪と悲哀の結晶は、容赦なく残ったそれを崩していく。
 それでも膨れ上がる怒り。憎しみ。感情と肉体の離別を感じながらも、それを止める為に、ゆっくりと、確実に、右膝を持ち上げる。
 続けざまに持ち上げる左膝。じっくりと、確実に、心を落ち着かせて。
 ようやく左足が持ち上がり、二つの足裏が床を踏み締める。この感情を何処に向ければ良いのか。

 その思考が答えを見つけだすより早く、床に転がった陶器の破片を砕く足音が静寂を破った。



「残念だなぁ……僕も、混ざりたかったのに」



 余裕を痛い程に、憎たらしい程に感じさせる軽い足取りで、荒れたフロアを縫う様にして。北崎という名の少年は海堂の視界に入り込み、笑顔を見せた。

「てめぇ…………」

 反射的に海堂は北崎を睨み据える。混ざりたかった? こいつは狂っている。間違いなく。
 解かれた拳を一瞬で再度握りしめ、歩み寄る存在に視線を固定する。


「そんな怖い顔をしないでよ。……どうなの……そこで灰になってる奴は強かったのかい?」
「何を言ってやがる…………」


 強かった? 答えられる筈がない。海堂がこの場を訪れた際、既に謎の参加者は灰と化していたのだから。
 なら何故そんなことを聞く? 理由は唯一つだろう。北崎は海堂が参加者を手に掛けたのだと判断したのだ。


「そうなんだ……思い出すのも嫌なくらい、強かったんだね。もっと早くここに来れば良かったよ」
「……………………」


 周辺の荒れ具合。北崎はそこから激戦を想像する。かなりの兵が関与していたのだろう、と。
 事実その推測は正しい。既に灰と化したその存在ならば、間違いなく北崎を喜ばせることができた筈だった。……もちろん海堂の知る所では無いが。
 しかし海堂は誤解を解こうとはしない。このままだと自分が何をするか分からない。感情を押さえ付けるので精一杯だ。

「でも……そんなに強かったなら、それに勝った君はもっと強い……そうだよね?」

 北崎は笑顔のままポケットに手をねじ込み、長方形を取り出す。そしてそれを銀の天井に向けて放り投げた。
 ただ呆然とその軌跡を見つめながら、海堂はその正体を知ろうと目を凝らす。
 深緑が視覚に焼き付き、床に転がる無機質な音を聴覚が捉え、触覚がその硬さを認識した。

「ちょっと君の力を試させてよ……それ、使っていいからさ」

 金で形作られた猛牛の紋章と、海堂の視線が一つになる。
 北崎に飽きられた「玩具」。ゾルダのカードデッキである。
 刹那、見上げた視線の果てで少年の笑みが深まる。笑顔を紋様が染め上げ、少年は邪龍へと転身した。
 その灰を基調としたカラーリングの異形、オルフェノク。この場に来て初めての同属との邂逅は、海堂にとって最悪のものであった。

「どうしたの……戦ったばかりじゃ力が出せないでしょ? それをそこに翳して使えば、仮面ライダーになれるんだ。早くしてよ」
「……今、なんて言いやがった」

 ショーウィンドウを指差しながら話す北崎の言葉に中に並べられた一つの単語に、思わず海堂が反応する。自身でも驚くほど、冷静に。

「しょうがないなあ……もう一度言うよ。それを使って変身してよ。仮面ライダーにね」

「……ふざけんな」


 カラン、という音を立ててデッキが灰と隣り合わせになる様に床へ落ちる。


「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!」


 怒りが爆ぜ、海堂の身体が発光する。ライダーであり心底この殺し合いを楽しむ眼前のオルフェノク。
 こんな連中の為に、モグラの様な被害者がこれからも生まれていく。誰が認めるものか。
 二人目のオルフェノク――蛇の名を冠す存在へと、海堂は姿を変えていた。


「へぇ、オルフェノクなんだ……でも、あまり強く見えないなぁ」


 少々期待外れ、といった仕草でもってドラゴンオルフェノクは歩みだす。
 一歩、二歩とその歩幅は広がっていき、瞬く間に両者の距離は一メートル程度まで縮まった。
 向かってくるスネークオルフェノクの右拳を左腕で弾き、灰に染まった爪を振るう。

「グッ!!」

 袈裟懸けに振り下ろされた爪が火花を撒き散らす。
 スネークオルフェノクはその重みに思わず呻くが、構わず突き出し始めていた左拳を唸らせる。

「ウラァ!!」

 しかし、厚い胸板を越えるのにその殴撃は余りにも力不足。
 受けたダメージに比べてその戦果は明らかに乏しい。それでも、後悔はしない。
 更に左足で地を蹴り、最大限の体重を乗せて一度弾かれた右腕による打撃を再行使する。
 ドラゴンオルフェノクが一歩引き下がるが、先程スネークオルフェノクがして見せた様に構わず反撃をしてみせる。
 アッパー気味に繰り出されたその一撃は、二度目の大きな火花と共にスネークオルフェノクに宙を舞わせた。

「どうしたの……全然面白くないよ?」

 床に打ち付けられ、転がりまわるスネークオルフェノク。体勢を立て直す間もなく、腹部を最大限の力で踏み付けられてしまう。
 その動作が五回程繰り返されたところで、ドラゴンオルフェノクが行動を蹴撃に切り替える。
 再び転がることになったが、距離が離れた今が好機。もっとも起き上がりやすい体勢になるタイミングで回転を停止させ、素早く立ち上がる。
 同じオルフェノクだというのに、こうも力量に開きがある。本当に神様は不平等な奴だと海堂は思う。

「うるせぇぇぇぇぇ!」

 懸命に拳を突き出すが、それはいとも容易く受け止められてしまう。
 その直後、三度にわたって大爪によるスネークオルフェノクへの侵略が開始される。
 まず一撃目。上段から右爪をドラゴンオルフェノクが振り下ろす。到底押さえられる攻撃ではない。
 スネークオルフェノクは左足で床を蹴りながら、右足を軸とした半回転でそれを避ける。
 ドラゴンオルフェノクの視点から見ると、左へと回避したことになる。
 左という回避方向を選択した理由として、左腕による追撃が予想できていたことが挙げられた。
 両腕で爪による突撃という名の二撃目を阻止する。舌打ちを耳にして、スネークオルフェノクの両腕に力が篭る。
 この行動が間違っていない、という確信を得たに等しいからだ。

 事実、有効な方法であったかも知れない。 ――北崎の力量が、戦闘時における余裕の持ち方が海堂と同程度まで低かったならばの話だが。
 目標を失い、中断された一撃目がギリギリのコースで弧を描く。
 振りを素早く、ブレを減らし、体重を乗せ。横振りという三撃目へ転化した右腕を、現体勢で出せる最大の力で叩き付ける。
 それでも本来のドラゴンオルフェノクが出せる力の五割にも満たない威力。
 いつの間にか行動目的を「攻撃の阻止」から「左腕の拘束」へ変えてしまっていたスネークオルフェノクを引き剥がすには、十分すぎた威力だったのだが。
 両腕を拘束に回したが為にがら空きとなった腹部に深い圧迫感と衝撃を覚えながら、後ずさるスネークオルフェノク。
 踏み止まれるタイミングを敢えてパスし、更に後方まで下がったのは、ドラゴンオルフェノクの追撃を本能が回避しようとした為だろう。
 肉弾戦だけでどうにかなると万に一つでも踏んでいたのがここまでのアドバンテージを取られた最大の要因とようやく海堂は気付く。
 虚空に出現させた剣で一度空を切り、感覚を持ち直す。ドラゴンオルフェノクとの間に広げた間合いは、最早半分まで縮まっていた。

「出し惜しみは、君ができる立場じゃあないかな…………さぁ、来てみなよ!!」

 言葉通りスネークオルフェノクが剣を片手に向かってくる事実に、北崎は心から歓喜する。

(それでいいよ。最後まで諦めずに向かって来て……それを正面から、叩き潰してやる)

 ドラゴンオルフェノクが振り下ろされた剣を受け止めると、一層高い音が辺りに響き渡った。



 海岸沿いの舗装路を西から東へ進むと、やがて市街中央へと到達することになる。
 その際右……つまるところ南を臨むと、視界には港が広がる。
 おそらくはここから自分達参加者が各エリアに連れて行かれたのだろうと木場は推測した。
 それが分かったところで、脱出への道を構築できるという訳ではない。ただ、きっかけになれば良いと思う。
 少なくとも現状において、逃げ場所が存在していない以上、道を切り開く為の手段はゲームという名の殺し合いに立ち向かうことのみ。
 ほとんどの参加者は立ち向かっているのだ。ただゲームを「打倒」しようとしているか、ゲームに「勝利」しようとしているかという部分においてのみ異なるだけで。
 現在は抑えてこそいるものの、隙を見せれば木場の闇は即座に彼へと語りかけてくる。

 ――いい加減迷うのは止めにしろ、と。

 言葉の表面だけで言うならば、それには木場自身も心底同意している。迷えば迷う程、理想への吊橋は崩壊を早める。その前に渡り切らねばならないというのに。
 しかし闇に従う訳にもいかなかった。闇が推奨する行為は、早急に吊橋を渡ることではなく、吊橋を渡るという行為自体を否定しろ、ということなのだ。
 今は仮初めの壁で防いでいるだけの邪念と、なんとか決別したい。そんな望みのきっかけ。
 それを生み出せただけでも、港に立ち寄った意味があるかも知れない。

 木場は再び、北へと曲がっていく道路へと進路を預ける。一見無策だが、円滑な行動に不可欠な支給品の一切を失っている以上、この方法が一番効率的だ。
 都市部の中央ならばある程度参加者に出会う機会も多い、と木場は考えたが、そういう訳でもないらしく、東條との戦闘以降新たな出会いは無かった。
 故に振り子のごとき思考は均等に揺れ続け、こうして幾度も木場は葛藤しているのだが。


 平淡な道中、左右に連なる建物に行き着く。
 入口の前に停車してあるバイクに、デイパックの存在を認めるが、手を出す木場の性格ではない。奪うどころか、中身の確認にすら至らなかった。
 木場がデイパックから得るものは、「この建物内に参加者がいる」という情報だけ。
 そしてそれを最大限に生かす決意を固める。吉と出るか、凶と出るかは別にしてだ。
 迷わず入店する木場。背後からもう一台のバイクが迫っていたことなど、知る由もない。



 昼間だというのに余りにも弱い店内の明るさは、僅かにだが木場を不快にさせた。
 照明の大多数は沈黙し、非常灯が威勢を放つ現状は昼時という営業時間帯における本来のショッピングセンターにはあまりにも似合わないもの。
 けれども、それだけでは不快という感情を生み出すには弱い。数瞬おいて、己に感情をもたらした真の要因を木場は知ることになる。

 炸裂音。二つの凶器同士、あるいは一つのそれが何かに接触したことで響いたのだと判断するとともに、何故これほどに大きな音に入店してから今まで気付かなかったのか自問する。
 自答はせず、すぐに駆け出す。遠くない――――というよりは、近いのだ。
 木場が走行に合わせて肩掛けしていたファイズギアを腰に巻き付け終えたタイミングは、炸裂音の原因である剣を構えた蛇を模した異形と、それを強固な手甲で防ぐ龍人の姿を認めた瞬間と同時だった。




「ウラァ!!」

 スネークオルフェノクの剣がドラゴンオルフェノクの腹部を薙ぎ払い、軽い炸裂音と共に火花が散る。
 正に一瞬だった輝き。火花はドラゴンオルフェノクの前進によって掻き消え、続けて突き出された凶爪がスネークオルフェノクを突き飛ばす。
 尻餅をつく形になり、相手がこれまで以上に復帰への時間が掛かることをドラゴンオルフェノクは悟る。

「残念だよ……本当に、さ…………あれ?」

 自分へと止めを刺そうとしたドラゴンオルフェノクが足を止め、視線を逸らす。
 そんな不自然な光景に思わず、スネークオルフェノクもまた起き上がることを忘れ、顔を見上げる。

「ああ、君は確か…………」

 緩やかに言葉を並べる北崎は、その場に出現した第三者に見覚えがあった。そう、確か以前抹殺を命じられたターゲットの――――

「木場…………」

 腰に白銀のベルト――ファイズギアを備え、左手に対応ツール――ファイズフォンを握り、ドラゴンオルフェノクを睨み付けていたのは、紛れも無く海堂の大切な仲間、木場勇治である。
 木場が左手首をスナップさせたのに合わせて、ファイズフォンが展開。
 コード入力の為用意されたボタン群の中央に位置する「5」を続けざまに三度押し、更に上部に位置するENTERキーへと親指を滑らせた。
 準備が完了したことを示す電子音が静寂を再び裂き、閉じられたファイズフォンが手の中で表裏を入れ替える為に回転させられる。


「ふぅん……」
「おいおい…………」


 動作の完了を面白気に待つドラゴンオルフェノクと、驚愕した趣のスネークオルフェノク。
 それらの視線の先、木場は「六つ」の眼が見守る中で、冷静に口を開く。

「……変身」

 ――――Complete――――

 ゆっくりと斜めから差し込まれたファイズフォンが真横に押し倒され、電子音が鳴り止むのを待たずして閃光を発した。
 ファイズギアから溢れ出る紅の輝きが光線を形取り、木場を包む様にして体中を駆け巡る。
 刹那、紅色に染まったミッションメモリーがより一層輝きを増し、光線を軸に銀の装甲を形成した。
 黄色に輝く複眼、装甲間を駆ける紅の光は輝き続け、時間にやや不釣り合いな薄暗さのショッピングセンターにしばしの間光を授けることとなる。
 ファイズへの変身が完了したことを示していた。
 ようやくスネークオルフェノクが立ち上がり、神妙な面持ちでファイズに近寄る。

「なんでそれをオメェが使ってるんだよ、おぃ!!」

 ここに来る前、スマートブレインの刺客が変身する「仮面ライダー」の一人であろうと認識したばかりの存在。
 ただその光景を見ただけなら「木場が俺達を裏切った」で切り捨てられる疑問だが、ファイズはドラゴンオルフェノクに戦意を剥き出ししている様に思えた。
 間違いなく二人の敵は共通しており、海堂は木場が敵とは判断できなかった。

「話は後だ、海堂。 ……今は…………」

 肩へと掛けられたスネークオルフェノクの腕を解き、ドラゴンオルフェノクへとファイズは向き直る。
 この場へと連れて来られる前、既に木場はファイズとしてドラゴンオルフェノクに敗北している。
 その強さ、危険性を知っているがためにここで倒すと誓う。
 放置すれば間違いなく、被害者が出るだろう――いや、既に出ているのかも知れない。
 そして、ここで目の前の悪を討てずしてスマートブレインを打倒などできるのか。答えはNOだ。
 これは自分が闇に打ち勝てるということを証明する為の戦いでもあるのだから。

「木場勇治……かぁ。君はそっちの吼えるだけの奴とは違って、楽しませてくれるのかな?」

 ドラゴンオルフェノクが両手を合わせる。あたかもそれは新しい友達と初めて遊ぶ時の期待に胸膨らませた子供の様で。
 ファイズは戦慄を覚え続けるのを嫌い、ドラゴンオルフェノクに殴りかかる。
 続け様に三発の拳を叩き込んだところで、力量を計るかの如く大きなモーションで振り上げられた爪が、ファイズの頭上に向けて降下する。
 隙だらけのモーションであったが故に回避は容易だった。一歩下がっての左足が、振り下ろされた爪と入れ替わる様にしてドラゴンオルフェノクへ向かう。
 平然と腹部でもって迎え撃たれ、左足裏は一切の妨害無くドラゴンオルフェノクの腹部に接触した。
 直撃。しかし手応えは皆無で、すぐに左足を離す。少し腰を落としながら再び踏み込み、左右の脇腹目掛けてのコンビネーション。
 それでもクリーンヒットの感触が得られないという事実は、改めてドラゴンオルフェノクの装甲の堅牢さを物語らせるものだ。
 ならば守りの薄い場所を狙う。左足で踏み込み、腰を捻りながら握りなおした右拳に力を加え、顔面目掛けて放つ。

「あーあ……」

 一撃が通れば確かにダメージは通ったかも知れない。しかしそれはあくまで通ったらの話。
 ファイズは右ストレートをドラゴンオルフェノクの左腕によって容易く遮られ、自身の意図していた攻撃をそっくりそのまま返されることになる。
 頬に走る確かな痛みに思わず顔を下げる。ファイティングポーズは決して解かないが、あっさりと戦意が落ちたことは否めない。

「君もこの程度? こんなのばっかじゃアレも宝の持ちぐさ…………」
「ウラッァァァァァ!!!!」

 ドラゴンオルフェノク追撃に入る直前、ほんの僅かに隙を見せたところへとスネークオルフェノクが切り込む。
 これまでで一番盛大な火花が散ると共に、ドラゴンオルフェノクが仰け反る。そこへ渾身のタックルを受け、遂に後ずさった果てに膝をつく。
 ファイズがスネークオルフェノクを見上げ、それに答えるかの様な視線の一致を木場は体で感じ取る。

「確かに今はどうでもいいわな。 ……とりあえず、オメェはマシな仮面ライダーみたいで安心したぜ、木場」
「海堂…………」

 スネークオルフェノクは剣先をドラゴンオルフェノクに向け、更に続ける。

「こいつはどの道倒さなきゃなんねぇ……ちゅうことで、こいつを倒したら俺様に話を聞かせてもらうからな」
「……ああ、勿論」

「一人ずつじゃつまらないし、丁度いいかな」

 ゆっくりと立ち上がったドラゴンオルフェノクにファイズとスネークオルフェノクが挑みかかる。
 先行したファイズの拳を片腕で捌き、もう一方でスネークオルフェノクの剣と相対する。
 手の甲で受け止め、鍔迫り合いに近い形へと発展。下側に回りこませ、剣を持ち上げると、空いた片腕の襲撃。
 ストロークの短さから威力が不十分だった為、スネークオルフェノクの動きを鈍らせたに留まる。
 後方へ回り込んだファイズのことを考えるとそのまま追い詰める訳にも行かず、鈍っている間にターゲットを切り替える。
 仲間を過信しすぎたか、単なる慢心か。ファイズの攻撃動作は威力重視の隙だらけで、向き直ったばかりのドラゴンオルフェノクでも簡単に対処可能であった。
 ファイズの胸を覆う装甲が火花によって瞬く。数度に渡って動作を繰り返したことによってファイズが倒れこむ。
 至近距離から背部へスネークオルフェノクが一太刀浴びせるものの、意に介さない。
 ならば再び突撃して……などということを海堂が思考し、数歩下がった上でドラゴンオルフェノクへと走り出す。
 ここで急に反転したドラゴンオルフェノクがスネークオルフェノクの首を押さえ込み、宙へと持ち上げた。

「同じ手は通用しないと思うよ……僕くらい、強くないとね」
「……ちっ…………く……しょう……がぁ…………」

 拘束の力は緩まる所か強まる一方で、今にもスネークオルフェノクの息の根を止めてしまいそうである。
 何度か蹴り飛ばしてみるが、力が入らない蹴りは当たっているのかすらどうか分からないものまで含まれていた。
 到底拘束を解くに値する反撃ではない。更に持ち上げる位置が高まり、声が遠のいていく。
 北崎は一秒にも満たない思考の中で判断する。これで一人目は――――


「…………ッツ!!」


 背後に焼きつく痛み。一点だけを、正確に攻めてくる痛覚。ドラゴンオルフェノクは拘束の解除を決定する。
 数十センチ持ち上げられていたスネークオルフェノクは着地に失敗、座り込みながら息を整える。

 決断してからの行動は見事なものであった。
 即座に横へステップし、あわよくば自身を焼く物質がスネークオルフェノクへと照準を切り替えることすら狙って。
 ドラゴンオルフェノクの接近に際し、ファイズが銃型に形状を切り替えたファイズフォンへのコードを入れなおす。
 「103」から「106」への転化。すなわち、フォンブラスターが光線を長時間照射するシングル・モードから、連射を行うバースト・モードへの切り替え。

 ――Burst Mode――

 五連射される光弾。一発目が胸板に着弾するが、当然単発でのダメージは互いに想定していない。
 二発目。通ればおそらくは影響が出始めると判断。右腕に薙ぎ払われる。
 まるで自分が直撃を受けたのではないかと勘繰ってしまう威圧感。その持ち主は三発目を左腕でガードする。
 それでも、無茶な動きから残り二発の直撃は確実。そこで認識の違いが道を分かつのだ。
 三発直撃させれば追撃の隙が生み出せ、尚且つその隙を突けると自身を過大評価――いや、相手を過小評価が正しいが――したのが木場。
 この程度の銃撃、適当に遇えば支障なしと判断したのが北崎。

 どちらの方がドラゴンオルフェノクの力を正しく把握していたのか。
 ドラゴンオルフェノクは怯まない。フォンブラスターが銃声を紡ごうとしたものの、あまりにも遅すぎた追撃。
 火花を散らした上で投げつけられ、スネークオルフェノクの前まで転がり続けたファイズ。
 両者の様子が、全てを物語っていた。

 この場における現局面に至るまでの攻防が、目の前の敵にとっては遊びだったことをファイズはようやく認識する。
 本来ならばより早期にその事実を得ることはできた筈だ。
 ファイズは、木場はドラゴンオルフェノクに温存している真の力がまだ残されていることを知っていたのだから。
 呻き声を漏らす自分を尻目に立ち上がる、スネークオルフェノクをファイズは臨む。
 改めて考え直すと、海堂との、信頼できる仲間との共闘により、自軍を過大評価しすぎていた節もやはり潜んでいた。
 今回のパートナーが誰であるかと考えれば、そう思うのも無理は無い。影山と組んでいた時よりはまともな連携を展開する自信もあった。
 事実互いにフォローをしながら対抗してきたつもりだが、結果はこれ。現実は無情だ。

 じりじりと詰まる間合いに、再び圧迫感を催す。
 物事にはスペック差などと違い、どう抗っても覆し様の無い差があることを痛感した。
 明らかに「遊び」で戦っていた状態のドラゴンオルフェノクを討ち果たせなかったのだ。
 ここから相手が段々とボルテージを上げてくるのか、一気に潰しにくるのか。それは判定できない。
 付け入る隙だった慢心という名の急所を見逃した以上、これは負け戦というべきだろう。
 それも、ファイズがドラゴンオルフェノクの特殊能力を知り、スネークオルフェノクの精神が燃え滾っているままでるが故に、撤退という二文字は選択肢すら用意されていない。
 二人が選べる選択肢は二つのみ。
 一、ここから逆転し、ドラゴンオルフェノクを打ち倒す。
 二、二人で仲良く死ぬ。

 思考が提示した選択肢の内、二人は即座に「二」の選択肢を切り捨てる。
 守らなければならない人が、救い出さなければならない人が、導かなくてはならない人がいるから。
 面倒みなきゃならない奴が、絶対に許してはならない奴等が、安心をさせてやりたい奴がいるから。


「ちょっとだけ痛かったよ。でもそろそろ、遊びは終わりに……ッ!!」
「喰らいやがれぇぇぇ!!!!」


 不意打ちという形で今再びゴングが鳴り響く。咆哮と共に投げ付けられたスネークオルフェノクの剣が唸りを上げて空気を二分していく。
 残り僅かの慢心、油断といった要素を全て消費させる可能性があるのはスネークオルフェノクも分かっている。
 その決意に呼応したファイズが横たわるフォンブラスターを再び握り締め、放つ。
 波状攻撃がドラゴンオルフェノクの行動を遅延させている隙に、両脚を揃えて飛翔。
 左膝を曲げ、対照に右脚を突き出す。海堂が、スネークオルフェノクが憎む「仮面ライダー」を象徴する技に類似したモーション。
 渾身のジャンプキックが頭部に炸裂し、一時的な思考の停止。それを再覚醒させたのは、音と色。
 一定のリズムを刻む電子音が一層高い音程になった瞬間。
 ファイズの腰から一定のスピードで動き始めた紅の閃光が、手甲に辿り着いて瞳に瓜二つな黄色の輝きを放った瞬間。

 正に「気合一閃」とでも評すれば良いのだろうか。
 チャージを終えたファイズショットでもって放つ現状における最高の殴撃――グラン・インパクト。
 左腕を限界まで伸ばし――――その正面からの一撃がドラゴンオルフェノクの腹部に突き刺さる。
 下手な小細工を挟まなかった為に、対応の余地を残さなかった。

 数歩後ずさるドラゴンオルフェノクに染まり浮かび上がる紅色の「Φ」の紋章は、ファイズ達に勝利を――――


「アッハッハ…………面白い、面白い」


 ――――齎さなかった。「面白い」という言葉の内容とは裏腹に退屈そうな口調でドラゴンオルフェノクが呟くと、発生した紋章はあっさり掻き消えた。
 次の瞬間、存在が失せていた筈の眼前に、再び悪魔が顔を出す。驚愕したファイズのボディを火花で染め上げ、反転。
 スネークオルフェノクが異常に気付いた時には、三度に渡る痛みが全身を駆け巡っていた。

 ――――Exceed Charge――――

 拡散した装甲から、ドラゴンオルフェノクが高速移動を開始したと判断したファイズがEnterキーを押す。
 再チャージ。当然見逃される訳も無く、再反転が行われる。
 正面から迫る刺突。ファイズはギリギリまで体を反らし――――躱してみせた。
 更に追撃をガード。チャージが再完了したことを理解。
 ファイズが初撃を阻止できたのは、ザビーとの戦闘を通して高速戦闘に対する対処法をある程度自分で固めていたからだ。
 ドラゴンオルフェノクは装甲を薄くしている現状において、技を受ける危険性を察知する。
 かなりの痛手となるのは間違いない。だからこそ、相手にしない選択を行う。
 目障りなもう一匹――スネークオルフェノクを先に始末し、その上で正面から残ったファイズを打ち倒す。

 ドラゴンオルフェノクは最後の反転を行い、連撃の果てに姿を元に戻す。
 このプランが脆くも崩れ去ったのは、想定より早くスネークオルフェノクが接近していたことだ。
 当然高速での攻撃を防ぐスキルがある訳では無い。ドラゴンオルフェノクの侵略による被害は、瞬く間に全域へと達する。
 しかし距離が短縮されたことで、そこに第三者の介入する余地が生まれた。
 即ち、止めの阻止。庇いに入ったファイズがスネークオルフェノクを貫こうと突き出された凶爪を受け止める。
 そしてこの一瞬、ファイズショットがチャージ済みであるという事実を北崎は排除していた。
 仮にここでクリーンヒットを浴びたとしても、自分は倒れない。最大限の自身を胸に、もう一方の腕をファイズへと叩き込む。
 同タイミングで放たれたグラン・インパクトとの交差。両者が後方へ吹き飛ぶ。

 違いはドラゴンオルフェノクが受身をとって床に倒れこんだのに対して、ファイズが壁に思い切り打ち付けられたことだろう。
 変身が解け、叩きつけられた衝撃から木場はそのまま意識を失う。

「おい、木場、木場ぁ!!」
「どうやら僕の勝ちみたいだね。面倒だから……このまま殺してあげるよ」

 九死に一生を得たスネークオルフェノクが叫び、ドラゴンオルフェノクが立ち上がる。
 その場の二人は勝者が誰か判断を終える。

 終えた後に鳴り響いた電子音の存在は、この形での決着を望まない者が存在することを意味した。

 ――――FINAL VENT――――



状態表



064:果てなき願い 投下順 065:終わるのは遊び、始まるのは戦い(後編)
064:果てなき願い 時系列順 065:終わるのは遊び、始まるのは戦い(後編)
049:すべてのうつくしいものから 木場勇治 065:終わるのは遊び、始まるのは戦い(後編)
051:戦いの決断 北崎 065:終わるのは遊び、始まるのは戦い(後編)
053:二匹の蛇は何を唄う 海堂直也 065:終わるのは遊び、始まるのは戦い(後編)
057:闇の中では 東條悟 065:終わるのは遊び、始まるのは戦い(後編)

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