ステッピング・ストーン

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ステッピング・ストーン

 乃木の視線に晒された北條は、居心地の悪さに思わず身をすくめた。
 どうにも首筋にちりちりとした怖気を感じるのは、相手の殺気があまりに強烈だからに違いない。正直な所、以前はその手の迷信じみた物言いを本気にしたことはなかったのだが、アンノウンと戦い、アギトと戦い、今また得体の知れない存在と戦うことになって、まんざら慣用句に過ぎないわけでもなさそうだと思うようになった。
 もっとも、妄想じみた考えにとらわれるほど精神が不安定になっているからこそ、そう感じるのかも知れないが。

 分析機のコンソールに置かれた赤いバラが視線を誘う。
 これが研究所の花壇に咲いていなければ、ケージの中身との比較検討もできず、科学に疎い彼が所見もどきをひねり出すこともできなかっただろう。そうなれば乃木は彼に見切りをつけていたかも知れない。ある意味彼の命の恩人のようなものだが、その色の毒々しさは彼の心を苛立ててやまない。
 北條は深く息をつくと、手元のファイルに目を落とした。
 解析結果はとりあえずファイルに挟んであるが、これ以上見ても彼には何も推測がつかない。

          *

 今の彼は同時に二つのことを成し遂げることを求められている。
 一つは、乃木に無能だと見なされないこと。
 彼が首輪の解析を進められないと判断すれば、乃木は即座に彼を殺すだろう。相手は未確認生命体と同様、人間に害を成す類の生物だ。役立たずと見なした人間に情けをかけるとは考えられない。
 もう一つは、乃木にすべてを知られないこと。
 狡兎死して走狗煮らるの諺があるように、もはや手を借りずとも首輪を解除できると判断されれば、自分は処分されるだろう。すぐさま処分されないにしても、盾か交渉材料にされるのが関の山だ。
 情報を小出しにして相手の興味を引きつけ、自分に利用価値があることを繰り返し思い出させるーーーー別に難しいことではない。常々、上層部相手にやっていることと同じだ。出世がかかっているか、命がかかっているかの違いだけで。
 そう考えながら、ページを繰る。
 問題は、この書類を見ても、彼には『誰にでもわかる情報』以上のことがわからないということだった。
 鉱石ラジオくらいなら作れないこともない。むしろコイルに導線を綺麗に巻くことにかけては大抵の人間より上手くやれる自信はある。が、それは才能というよりは性分に由来するものであり、彼が機械について正確に理解出来るということを意味しない。
 だからたとえ真実であった所で、この機械が灰化作用をどうこうするという結果だけをレポートに書かれても彼にとってはさしたる価値がない。分析結果をつきあわせてなんだか正しいような気がしてもそれは直感にすぎない。
 結局、普段は科捜研が結果に加えて所見を出してくれるから仕事になっているだけなのだ。生物学や化学の知識など通り一辺倒のことしか知らない彼一人では、満足な推理も始まらない。こんな場所でそのことを思い知ることになるとは、屈辱的だ。
 とはいえ、そこで諦めるわけにはいかなかった。
 中身がわからないなら外側から、つまり機械の来歴から攻めて行けばいい。むしろ真実にたどり着く道が遠い方が時間を稼げる。
 彼は立ち上がると、壁の見取り図を確かめた。
「何を探している」
「手がかりですよ」
 乃木の誰何をはぐらかし、目的の部屋にむかって歩き出す。
 冷たい目をした乃木がそれに続いた。

          *

 埃っぽい部屋の中には一面無造作に段ボール箱が重ねられている。北條はその中から適当なものを選んで手に取り、伝票を読んだ。
 品名欄には「シリンジポンプ」と書かれている。例によって彼の知らない単語だったが、それは問題ではない。
 知りたいのはーーーー送り主の住所だ。
 施設名とともに印字された住所を地図と引き合わせると、ちょうどここから西にある地域が該当することがわかる。ちょうどそこにある工場に、何か手がかりがあるかも知れない。
 彼は乃木を振り返った。
「ちょっと散歩をする気はありませんか?」
「どうした。気がめいって来たか?ならば殺してやってもいいんだぞ」
 嘲笑する台詞にも一向に動じないのは、今の彼に自信がある証拠だった。
「水源を見つけ出すには、川の流れをたどるしかありません」
「流れを見つけた、と言うことかな?」
 その問いに、言葉ではなく不敵な笑顔で答える。乃木は続けて訊ねた。
「しかしここを移動して、君を助けに誰かが戻って来たらどうなるかな。俺としても、せっかくの獲物を見逃したくはないのだが」
 相手は乗った、と北條は確信する。
「誰かが来るとしても、その前に放送が行われる必要があります。そして放送が行われれば、我々のところにも届くはず。でなければ放送の意味がありませんからね」
 畳み掛けたのは、自分の優位を固めるためだ。口を挟ませる間も与えず、一気に舌鋒を振るう。
「放送が行われてから、改めてここに戻ってくればいいんです。ここと工場の間には電車が走っている。出遅れることはないでしょう」
 乃木がしばし考えるように黙っていたのは最後のプライドだろう。やがて追う行に頷くのを見て、北條は内心ほくそ笑む。
「なるほど。改めて迎え撃つもよし、集まった者たちが殺し合うのを高みの見物と洒落込むのもいい」
 言うことがいちいち物騒だが、それを気にしている余裕などはない。北條は今一度地図を確かめ、近くの駅に向かおうと歩き出した。
 平常心を保っているように取り繕って入るが、内心は急流の中で飛び石を踏むような恐ろしさもある。一度足を滑らせれば最後、二度と戻れないことは明らかなのだから。
 それでも、対岸にーーーーあるいは水源にたどり着かなければならない。それが、今の彼が置かれた状況だった。そのことを、彼はしっかりと意識している。
 ただ一つ、彼を急かす流れの底知れぬ深さに関しては、今だ知り得てはいなかったが。

状態表

【乃木怜治@仮面ライダーカブト】
【1日目 昼】
【現在地:B-7 研究所】
[時間軸]:43話・サソードに勝利後(カッシスワーム・グラディウス)
[状態]:健康。
[装備]:カードデッキ(王蛇)
[道具]: 携帯電話、その他基本支給品×3(乃木、イブキ、結花)、ゼクトマイザー、トランシーバーC
[思考・状況]
1:首輪解除のため、北條透と仲間の諸君をもう少し泳がせる。
2:ゲームの早期決着。
3:ZECTの諸君に関しては、早めに始末をつける。
【備考】
※ライア・ガイのデッキが健在の為、王蛇のデッキには未契約のカードが2枚存在します。
※ユナイトベントは本編3体の場合しか発動しません。
※変身にかけられた時間制限をほぼ正確に把握しました。
※天道について知っている訳では無いので、「カブトの資格者」が死んだことを知りません。

【北條透@仮面ライダーアギト】
【1日目 昼】
【現在地:B-7 研究所】
[時間軸]:最終話
[状態]:精神的に疲労。 現状に関する若干の恐怖。 主催に対する多大な不安。
[装備]:なし。
[道具]:携帯電話、地図、マグライト、研究所のファイル
【思考・状況】
基本行動方針:無事に帰還し、スマートブレインを摘発する。
1:スマートブレインの危険性を懸念。
2:乃木をうまくだまくらかし、救出を待つ。
3:工場に向かって実験道具の手がかりを探す。
4:長田結花を保護すべき民間人と認識。
5:友好的な参加者と合流、敵対的な参加者を警戒。
【備考】
※首輪の外見についてはほぼ正確に把握しました。ただし、肌に触れている部分を除きます。
※研究所の設備は基礎的な科学知識さえあれば扱える程度にマニュアル化されているようです。
 ただし、あくまで分析結果が自動で出るだけで所見はついてきません。
※ファイルにまとめられた実験資料には、ネズミの灰化実験に
 青いバラとケージに取り付けられた装置が関わっているという結論のみが明記されていました。
※ファイルの内容の真偽は未確認ですが、北條はとりあえず真実であるという前提で行動しています。

068:歩むべき道は果てしなく 投下順 070:裏切りはすぐ傍に
075:牙と軍人と輝く青年 時系列順 071:希望と絶望と偽りの顔(前編)
068:歩むべき道は果てしなく 乃木怜治 090:肯定/否定――my answer
068:歩むべき道は果てしなく 北條透 090:肯定/否定――my answer
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