牙と軍人と輝く青年

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牙と軍人と輝く青年



「まずまず…といったところか」
F-4北部、整地された道とは離れた野原で、体の調子を確かめながら一人の男が呟いた。
辺りの景色は所々が焦土と化しており、図らずとも戦闘の跡を匂わせる。
他の場所と比べて僅かに窪んで見えるのは、相当な衝撃がその地に舞い降りた証拠だろう。
その中心部で、無骨な顔立ちをした男――牙王は、休息を取っていた。

激しい動きをしたせいで腹が減ったという理由もあるが、何よりは体のダメージが決して無視できないレベルであったからである。
それに加えて、今はカードデッキもベルトも使えない状態。
下手に動き回ろうものなら、戦闘になったときに圧倒的に不利だ。
以上の事を鑑み、まずは体力の回復と制限解除を待つことにした。
それがどれほど退屈であるか、わかっていながら。

「ふん、そろそろいいだろう」
太陽が先ほどよりかなり上に昇っている。
再変身にどれほどの時間が必要かはわからないが、これだけ時間がたっているならいけるだろう。
そう踏んで、牙王は腰を上げた。
食い散らかした食料を足で跳ね除け、辺りを見回しつつ思考する。
――どこへ向かうべきか。

先ほど自分と戦闘した男、あれくらいの獲物をみすみす逃したくはない。
純粋な力の競り合いで負けるなど、考えもしなかったことだ。
あのまま全力で続けていたら、恐らく久しぶりに楽しめる、いい勝負になっただろう。無論、負けるつもりは毛頭無いが。
しかし、と考える。
妙なモンスターに連れられ、高速で戦線を離脱したヤツを探し出す方法はあるのだろうか。
ただでさえ制限を気にし、体力の回復にもかなりの「時間」を使った跡である。

「誰でもいい…とっとと喰らわんと気が済まん」
自分にとって、もっとも嫌う暇を持て余したのだ。
相手を選んでいる余裕など、今の自分にはない。
となると――あの男との戦闘前に見えた、あの二人を追ってみるとしよう。
そう考え、二人が逃げたであろう方角に歩を進める。
あれから相当経ってはいるが、他にあてはない。
言葉通り、獲物を求めた獣のように、牙王は歩き始めた。


   ###############


少し白みがかっていた空は青みを帯び、澄んだ色に満ちていた。
上で威勢を放つ太陽も、心なしかいつもより輝いて見える。
足で草を踏みしめるたび、青臭い匂いが鼻を刺激する。
目の前の川は、周りの状況などまるで関係なく、穏やかに流れ続けた。
橘とゾル大佐は、そんな風景の中で休憩していた。

「少し休まないか?このまま当ても無く進む訳にもいかないし…何より疲れた」

きっかけは、橘がそう提案したからである。
制限のかかった状況でよく言えたものだと、呆れ半ばで少し関心し、ゾル大佐はそれを受け入れた。
確かに先ほど襲われたばかりであったが、同胞の援護もあり、追撃の様子はない。
ならば敵に遭遇する危険を冒して動き回るのは、せめて制限が解けてからの方がいいだろう。
少しづつ回復してはいるが、砲撃による痛みも相当なものだ。
今は休んだほうがいい。
そう考えた上での結論である。

(しかし…制限は変身におるものだけではないようだな。忌々しい)
改造人間である自分なら、この程度の負傷なら問題ないはずだ。
にも関わらず、いつもより治癒が遅い。これでは一般人と大して変わらないだろう。
他にどのような落とし穴があるかわからない。
状況は思ったより深刻だ。やはりもっとよく考えて、動くほうがいいだろう。
「橘、これからの基本的な方針だが―――」
隣でもの難しい顔をしている橘に声をかける。
この男、人間にしては相当頭が切れる方のようだ。
自分一人で考えるより、二人で話し合った方がより良い結論を導き出せるだろう。
そう思ったのだが…
「橘?」
横に座る男は、相変わらず難しい顔で考え事をしている。
ゾル大佐の言葉も耳に入らず、聞き流しているようだ。
(この男…)
橘の態度に、ゾル大佐は思わず眉を顰める。
先ほど市街地から離れる折にも、このような態度を取っていた。
周りが見えぬ程大事なことを考えているのかも知れないが、それにしても酷い。
目の前の状況がまったく理解できていないと言えるほど、上の空なのだ。

「橘!!貴様いい加減にせんか!!」
怒号が響き渡る。それでも、周りに気を使った声量だったのだが。
突然真横から届いた叱咤の声で、橘はびくりと身を竦める。
そして我に返ったような顔で、ゾル大佐を見返した。
「あ、あぁ…すまない大佐。ちょっと考え事をしててな…」
「ほう…考え事と申すか」
橘の言葉を復唱し、ゾル大佐は立ち上がる。
腕を組みつつ、橘を見下ろす形で言葉を紡いだ。
「私の言葉を無視できるほど、大事な考え事なのだな?話してみろ」

体勢もあり、かなりの威圧感がゾル大佐にはあった。
そのため、橘も少し萎縮する。
これは明らかに怒っている。
確かに、自分の態度はまずかった。大佐が怒るのも当然だろう。
橘は、失敗した、と思う。
擬似人格とはいえ、対策を考えられない間は普通に接するべきだった。
しかも、自分に対する質問も急所を突かれた形である。
(どうする?下手に隠すのもまずいな…)
橘は、自分があまり嘘をつくのが得意ではない事をわかっていた。
普通の人よりは上手いのかも知れないが、目の前の男には恐らく通じないだろう。
普段も隠し事がばれたりしたが、まさかこんな状況でもやってしまうとは。
橘は、心の中で苦笑いをする。

「どうした。答えられぬか」
ゾル大佐は、黙ったままの橘に返事を促す。
未だ俯いて一言も発さないということは、迷っているのだろう。
それだけ重要な考え事だったのだと、ゾル大佐は確信する。
(内容はどうあれ、聞いておくべきだな)
このままうやむやにしても、橘はまた同じミスを繰り返すかも知れない。
いや、そもそも隠し事を抱えたままの男と共に行動すること自体、危険だ。
自分を討つ計画を立てているかも知れない、と考えさせられたこともあるのだ。
こんな挙動不審では足手まといにしかならないというのもあるが。
(もし話さないようなら…始末するしかないな)
戦力を削がれるのは惜しいが、自分が死んでしまっては元も子もない。
そう思い、気取られないよう、いつでも殺せるように体勢を整える。
と、その時。

「実は…この殺し合いの場に対する、一つの考えが浮かんだんだ」
だんまりだった橘がようやく口を開いた。
そのため、ゾル大佐も構えを解く。
思ったよりも実になる情報かも知れない。
内容にほんの少し興味を抱き、質問する。
「どういうことだ?」
「この、主催者が用意したフィールド…仮想空間のものじゃないのかと思うんだ」
肝心の部分である、ここだけを敢えて話す。
それを前提にした、ゾル大佐という存在への推測、フェイクである参加者の数などは隠したまま。
橘にとっては、一種の賭けだった。
内通者であるゾル大佐にこれを話せば、もしかしたら殺されるかも知れない。
真実に気づいたものに対して、何らかの処遇があると考えるのは当たり前のことだ。
しかし、話さなければどのみち殺されていただろう。
この男―――擬似人格は、恐らくそういう性格…いや、設定だ。
腹を括り、少し曖昧に状況を把握しかけてる、ということにする。
後はこれが吉と出るか凶と出るかだが…

当のゾル大佐は、突然出てきた余りに突飛な話に首を傾げていた。
「仮想空間…?夢の中のようなもの、と言いたいのか?」
「あぁ、そうだ」
自分の疑問に、まるで当然だとも言いたげな返答が来る。
余計に訳が分からなくなってきた。なぜ、この男はこれほどの自信を持って言えるのだろうか。
何か確信に足る判断材料があったとしか思えないが…
今まで殆ど共に行動してきたが、そのようなものは無かったはずである。
少なくとも、自分の視点では。

「橘、なぜそう思う?」
未来から来たこの男には、違うのかも知れない。
容易に確信出来るというのなら、それなりの理由があるのだろう。
だが、返って来た答えは、あまりに稚拙すぎた。

「でなければ、説明がつかない。少なくとも、現実には不可能としか思えない技術が使われているしな」
半分は嘘だった。もう少し噛み砕いて説明すれば、ゾル大佐が内通者だと言わざるを得ない。
だから、今は敢えてこういう言い方を選ぶ。
橘はそうする事で、自分のゾル大佐に関する推測を隠そうとした。
しかし…

「橘…失望したぞ。もう少し使える奴だと思ったのだがな…」
「な、何!?」
諦観さえ漂う顔で、ゾル大佐は橘を見下していた。
橘は、どういう事か図りかねていた。
なぜ、こんな反応を取るのか?何か説明にまずい部分があったのか?
焦りを感じ、橘は立ち上がる。
「どういう意味だ」
なるべく冷静を装いながら、ゾル大佐に問いかけた。
呆れた顔のまま、ゾル大佐は答えた。
「自分の理に合わぬ出来事は全て、夢の世界のもの、か…。便利な脳みそをしているな、貴様は」
顔色一つ変えずに言われ、橘は腹が立った。
先ほどの説明ではそう思われても仕方がないのだが、頭に血が上った状態でそれが分かる筈もない。
「馬鹿にするな!他にもちゃんと考えた上で、出した結論だ!!」

「他に考察があるのだな?」
橘は、その言葉で一瞬にして頭が冷えた。
と同時に、血の気が引く思いをした。
(この男…俺が何か隠しているのを知っていて…!?)
やられた、と思った。
大佐という階級は伊達ではなかった。この男、人の上に立つものとしての洞察力は、確かなもののようだ。
主導権を完全に握られた。
(俺では、適わない…)
そう思い、顔を伏せて橘は地面を見つめる。
話すか話さないか。恐らく、もう選択肢はないだろう。
だが、もし殺されるとしてもただでやられはしない。
そう覚悟を決めて、目の前の男を内通者だと暴いてやろうとした時だった。

     ――full charge――

一つの電子音声が、そう遠くない場所から聞こえた気がした。


   ###############


「橘、伏せろ!!」
突然、ゾル大佐がそう叫びながら覆いかぶさって来た。
何事か、と思考する前に、金色の光が真上を通り過ぎた。
ソレはそのまま高速で右から左に滑り、空中に浮かび上がると、何かに合体する形で収まった。
ゾル大佐が上から退き、急いで立ち上がった橘が目にしたものは、一度自分達を襲った男だった。

鰐のような仮面に、胸と両肩の牙が特徴的な外見を象っている。
銅を基調とした輝くような装甲は、太陽の光を受けて少し白く見えた。
先ほど飛ばした金色の物体―――剣の切っ先は、しっかり固定されているらしく、それで肩をぽんぽんと叩いていた。

「よう…また会ったな」

何気ない言葉が、自分達を威嚇しているようにも聞こえた。
得体の知れない悪寒が、全身に走る。
体中から滲み出ている雰囲気は、只それだけでもプレッシャーを与えていた。
橘は、さながら、蛇に睨まれた蛙のような気分になった。

「貴様…我々を追ってきたのか?」
「さぁな」
ゾル大佐の言葉を、さらりと牙王が受け流す。
その態度が示すものは、こちらと話すつもりは一切ないということ。
それは、ゾル大佐のみならず、橘でさえも認識できるものである。
恐らく、先ほどの攻撃も牽制などという生易しいものではないのだろう。
相手は戦闘意欲に呑まれた獣。交渉は不可。そう判断すると同時に、ゾル大佐は戦闘態勢を取る。

すると、牙王が急に動きを止める。
別に阻止してもよかったのだが、どうせ殺すなら少しでも楽しませてもらいたい。
牙王は、そう考えて敢えて猶予を与えたのだ。
(なめられたものよ!)
心中、相手を毒づき、ゾル大佐は吠えた。

「うぉぉぉぉぉオオオオオン!!」

空気を震わすような声が辺りに響き渡り、ゾル大佐の体が変化していく。
流れるような黄金の毛が全身を多い、牙と爪が雄雄しく伸びる。
腰に自らの信仰する組織の紋章の付いたベルトを纏い、黄金狼男は現れた。

二本の足でしっかりと大地を掴み、黄金狼男は相手を睨みつける。
仮面の下で、牙王もまた、品定めをするかのように、黄金狼男を見据えていた。


     ###############


そんな状況のなかで、橘は一人立ち尽くしていた。
今起こった状況に、まだ頭が追いついていなかったのだ。
(どういう事だ?まさかあいつもゾル大佐の呼び寄せた始末者か?)
多分、そうなのだろう。ここの会場の仕組みに気づいた者が出た以上、その者を放っておくはずがない。

だが、まだ不可解な点がある。
なぜ、直接自分を始末しないのだろうか。

(なぜわざわざ大佐と対峙する?これも演技か?いや…)
どうせ殺すのなら、今更自分の前で演技をする必要性があるとは思えなかった。
では、周りにいるかも知れない参加者への配慮?
それも違う。呼び寄せる事が出来るのなら、周りの状況の把握ぐらいは容易いはずだ。
つまり、誰も見ていないタイミングで行動に移す。それがもっとも手っ取り早いはずである。
それでなくとも、大佐の追求は完璧なものだった。
襲撃が偶発的でない限り、あのような絶妙な中断は主催にとって不利でしかない。
(…何がいったいどうなっている…!)
自分の立てた仮説に、絡めとられる。
状況を把握できない焦りから、思考がますます深くなる。

―――何か重大なことを見落としている気がする―――

そんな違和感が体中を駆け抜けるが、答えにはたどり着けなかった。
(くそ!何か変だ…まるで…根本的なところが…)
橘のなかで、今までの自分を見直すために、重要な事に考えが辿り着きそうな時、
「橘!何をぼさっとしている!!」
ゾル大佐の大声で思考が中断する。
我に返り、前を向くと、少し離れた位置で黄金狼男が叫んでいた。
どうやらまた、彼の呼びかけを無視してしまっていたらしい。
慌ててバックルを取り出し、変身しようとして―――

「がはっ!」

―――蹴り飛ばされた。


    #######################


睨み合いの均衡を破り、二人が互いの距離を一気に詰めた時、牙王が飛び込んだのは橘の方向だった。
こちらを狙ってくるとばかり思っていた黄金狼男は、大きく体勢を崩す。
(殺しやすい方から討つつもりか!?)
それが正解かどうかは分からないが、そんなことはどうでもいい。
ともかく、橘の逃げる隙を作らねばならない。
相当接近されたにも関わらず、あの男は何故か微動だにしないのだ。

激しい憤りを感じつつ、指から弾丸を発射する。
飛び道具があるとは予測出来なかった牙王は、背中に幾つか直撃を受け、少々もたつく。
その際に注意を促したのだが、余りにも遅かった。
橘が行動に移るよりも早く、牙王の飛び蹴りが炸裂する。
無理な体勢からの攻撃であるが故に大した威力はないだろうが、それで十分だったようだ。
まともに受けた橘は、大きく吹き飛び、木に背中をしたたか打ちつけた。
そのまま下に落ち、頭を落として黙り込んだ。

「うつけ者が!一体なにをやっているのだ!」
思わず口に出し、吹き飛ばされた橘に駆け寄ろうとする。
今は戦力が少しでも欲しい状況だ。叩き起こしてでも役には立ってもらうつもりだった。
しかし牙王が振り返り、こちらに対して始めて構えらしいものを見せた。
黄金狼男は急ブレーキをかけ、バックステップを踏む。
直後、最後に踏み込んだ位置に鋭い斬撃が走る。
牙王が剣を降り抜いた瞬間、顎に向かって拳を放つ。
が、空いてるほうの手で力任せに弾かれる。

「何っ!」
黄金狼男は意表を突かれ、声を上げる。
しっかりと腰を入れたはずの拳が、剣を振った直後の相手に防がれたのだ。
驚きを隠せるはずもない。
そのまま牙王は、弾いた手を引き、同時に静止していた剣を薙ぐ。
合わせて黄金狼男も身を引くが、リーチも相まって間に合わない。
「くっ!」
一閃。火花を散らしつつ、剣が通り過ぎる。
胸元を掠り、痛みが走った。
が、黄金狼男もただで引くには至らない。
弾かれた腕を、下がると同時に引き、牙王の側面を引き裂いた。
「チッ…!」
横っ腹に入り、牙王も声を漏らす。
致命傷には程遠いが、いい当たりなのは間違い無い。
同時に距離を取り、出方を伺う。

「まだだ…お預けをされた分、もっと楽しませてもらわないとなぁ」
囁くようでいて、ハッキリと耳に届く声で牙王が言う。
待たされた分、漸くありつけた戦闘という食事は、相当の快感を牙王にもたらせた。
更に、手ごたえのある相手に会い、徐々に高まってきたテンションにより、牙王のコンディションは最高と言えるものに近くなっていた。
「ふん、思ったよりはやるな。だがここまでだ」
傷の深さを確かめつつ、黄金狼男が呟く。
この程度の傷なら問題ない。だが別の部分で不安があった。
敵が眼前にいる以上、虚勢を張るより他はないのだが、体調は万全とは言えなかった。
直前までの橘との化かし合い、さらに橘の不手際による戦力の低下は、精神を大いに消耗させた。
ストレスにより、動きに粗が目立つ。
戦闘にも、いつもの集中力が働かない。
自覚出来ているからこそ、余計に焦り始めた。

(このままだとジリ貧だな。やはりあやつをどうにかして加担させねば…)
ちら、と横目で橘を見やる。
先ほどの体勢のまま、動いていないようだ。
脳震盪でも起こしたのかも知れない。
しかし、起こすのは容易なはずだ。
一連の出来事をみる限り、あの程度では深く失神するはずはないと、黄金狼男は断定していた。
勘の要素も含むが、修羅場を潜り抜けて来た自分の判断を信じてそう考えた。
放っておいてもじき目覚めるだろう。
それほど、奴の眠りは浅い。
だが…
(通してはくれんだろうな、恐らく)
相手はどうにも掴みづらい男だったが、敵が増えるのをただで見逃しはしないだろう。
それどころか、隙を突いて橘を殺しにかかる可能性もある。
今橘に死なれては困る。そう黄金狼男は考える。
何か隠しているのは確実だが、あの男にはまだまだ利用価値がある。
それに――今だけとはいえ――自分の部下をみすみす殺されるのは、軍人としての誇りが許さない。
(まったく、世話のやける男よ…!)
とにかく、目を覚ますまで時間を稼ぐしかないだろう。
そう決めて、黄金狼男は目線を牙王に戻す。
牙王はゆっくりと間合いを詰めてきており、もうニ・三歩も歩けば互いの射程に入るだろう。
そこで牙王は足を止め、無言で剣を構える。
黄金狼男もゆっくりと、ファイティングポーズを取る。
数秒の後―――互いに足の力を入れ、地面が爆ぜた。


   #####################


「……うっ……」
腹と背中に鈍痛を感じつつ、橘は目を覚ます。
少し霞む頭で、たった今起こした自分の失態を理解する。
(失神していたのか?俺は…)
突き飛ばされた後、視界が真っ白になったところまでは覚えている。
だが、気づいたら自分は座り込んでいた。
この場面転換では、そうとしか考えられない。
未だぼんやりした意識に喝を入れるため、頭を振る。
顔を上げると、目の前に金色の体毛が映った。
驚き、視線を上にやると、自分に背中を向けて、牙王と対峙する黄金狼男が見えた。
「た、大佐!?」
橘が、驚愕した声を上げる。
黄金狼男は、その声に反応し、僅かに後ろを振り向く。
「ようやく目を覚ましたか…この大うつけが…」
息を荒げて、黄金狼男は答えた。
体のあちこちには切り傷が目立ち、ベルトも中心部が砕けていた。
左腕で抑えている右肩からは、とめどなく血が流れ出している。
まさに満身創痍といった風体で、立っているのもやっとだろう。
橘が立ち上がり、向こう側を見ると、牙王が黙ってこちらを見ていた。
どうやら、自分が気絶してから、少なくとも何分かは経っているらしい。
橘はそう考え、浮かび上がった疑問を、堪えきれず黄金狼男にぶつける。

「大佐…もしかして、俺を庇って…?」
「とっとと変身せんか!来るぞ!」

返事らしい返事は来ず、またもや叱咤を受ける。
橘は黄金狼男から視線を牙王に移す。
牙王は、パスのようなものを指先だけで、頭上に構えていた。
危険を感じ、橘はポケットからカテゴリーエースのカードとバックルを取り出すが―――
「遅い」

     ――full charge――

牙王がパスをこぼれ落とす。
パスがベルトを通過した瞬間、フリーエネルギーがチャージされ、剣先に伝わる。
剣――ガオウガッシャーの先端が回転し、金色の軌跡を残しながら分離した。
残った柄を横なぎに振ると、それに合わせて剣先も螺旋を描きながら、高速で移動した。
目の前の獲物を全て喰らい尽くすために。

(オリハルコンゲートで…だめだ!間に合わない!)
迫り来る剣先を前に、橘は考える。
相手の言葉どおり、全てが遅かったようだ。
だが、と橘は思う。
これは仮想空間なのだから、脱落するだけなのではないか。
これでここから抜けれらるのなら、そのあと現実から連れてこられているであろう参加者たちを、救い出すほうが建設的だろう。
少しも抵抗出来なかったのは残念だが、借りは現実で返してやる。
そう結論づけ、回避を諦めた次の瞬間だった。

「うお!?」

何かに突き飛ばされ、地面を転がる。
ひじを突いて自分の立っていた場所をみると、そこに黄金狼男がいた。
黄金狼男は自分の無事を確認すると、どこかやり遂げた顔をしているように見えた。
そして、そのまま――胴体を、閃光に貫ぬかれた。


 ####################


オーラソードは黄金狼男を切り裂いた後、一度上空に舞い上がり、急降下を始めるべく一瞬動きを止めた。
狙いは、たった今難を逃れたばかりの男、橘。
牙王は一撃で決めるべく、思い切り柄を振り下ろした。
「ぬぅ、おおおおおお!!」
だが、突然の銃撃により、狙いは大きく外れる。
まだ動けたらしい、黄金狼男によるものだった。
剣先は軌道を大きく逸らし、水しぶきを上げながら川に突き刺さる。
胸に受けた集中射撃により、牙王が膝を突くと同時に、ガオウガッシャーに剣先が戻る。
そして、黄金狼男も、ゆっくりと地面に倒れ伏した。

「お、おい!しっかりしろ!!」
その光景をみた橘が、黄金狼男に駆け寄る。
上体を抱き起こし、傷を確認する。
胴体の中心部には見事に風穴が空き、血と火花が辺りに激しく飛び散っていた。
最早演技も何もあったものではない。明らかに致命傷だ。
「大佐、なぜ俺を庇ったんだ!なぜだ!!」
橘は悲痛な顔で、虫の息と化している黄金狼男に呼びかける。

誰かが自分を助け、その代わりとして死のうとしてしまっている。
例え相手が擬似人格でも、その事実は橘には重く圧し掛かっていた。
「自分の部下も守れずに…何が、軍人か…」
息も絶え絶えに、黄金狼男が応える。

その言葉を聞き、橘は自分の愚かさを理解した。
(この男は、作られた命なんかじゃない!むしろ、俺なんかよりずっと立派な…)
軍人だった。目の前の男は、紛れも無い生身の軍人。
根拠など存在しない。ただ、自分がそう信じたいだけかも知れない。
それでも、橘は確信する。
そう、考えてみれば簡単なことだったのだ。
コンビニや携帯電話を知らないという振る舞い。
過去からやってきたという、改造人間。
怪しすぎるのだ。普通、こういう事はばれないようにしなければ意味が無い。
こんな人物と共に行動すれば、疑わない方がむしろおかしいだろう。
もしここが確かに仮想空間なら、そんな人物を見張りにやっても何のメリットも無いはずである。
(なぜ、こんな事に気づかなかったのだろうか…)

―――自分の理に合わぬ出来事は全て、夢の世界のもの、か…―――

ほんの少し前に言われた言葉が、フラッシュバックする。
そして、自分がいかにこの状況に大して真剣に応対してなかったのか、思い知らされた。
(…すべて、俺の現実逃避だったのか…)
自分の愚考が、目の前の男を死に追いやっている。
そう気づいた途端、橘は自己嫌悪でどうしようもなくなった。

「大佐…俺は、馬鹿だ…!俺は…現実逃避をしていただけでなく、あんたを疑って…!」
震える声で橘が呟く。
体力の低下で変身が解け、元の姿に戻ったゾル大佐が、橘を見据えて、口を動かした。
「逆…だな」
「え?」
言葉の意味がわからず、橘は思わず聞き返す。

「貴様は…優秀すぎるのだ。もう、少し…馬鹿になったほうがよい」

橘は、衝撃に目を見開く。
脳裏に、いつかの光景が鮮明に映し出された。
自分の先輩であり、嫉妬から自分を襲った男。

元BARDO隊員・桐生 豪。

真剣勝負の後、アンデッドにより命を落とした彼が、自分を責める橘に向けた遺言。
奇しくも、ゾル大佐の言葉は、その遺言に酷似していた。

ふと、後ろで物音がした。
ゾル大佐が振り返ると、牙王がゆっくりと立ち上がるところだった。
少し、肩で息をしているが、目立った外傷は無いようだ。
「効いたぜ…今の弾はな」
胸をはたき、牙王が囁いた。
杖代わりにしていた剣を一度振り、二人に歩み寄る。
「橘…ここは退け…!」

ゾル大佐が、視線を下に向けている橘に声をかける。
おそらく、迷いのあるこやつでは、自分と同じ轍を踏むだろう。
ならせっかく拾ってやった命、無駄されては困る。
ここは逃げ延びてもらわねばならん。そう思ったのだ。

しかし、橘は首を振る。
ゾル大佐が怒声を上げる暇も無く、勢いよく立ち上がり、後ろを向く。
その瞳は、真っ直ぐに牙王を捕らえていた。
「俺の責任は…俺自身が取る!!」
大佐を見捨てて逃げるなど、今までの自分が生み出した責任を放棄するも同義。
そんな事をするくらいなら、死んだほうがましだ。
(この男を…倒す!)
決意を胸に秘め、チェンジスタッグのカードをバックルに押し込む。
バックルの横から無数のカードが流れ出て、橘の腰に巻きつく。
一週すると、一つ一つが完全に結合し、ベルトが出現した。
体を横に向け、腰に右手を当て、左腕を斜め上に突き上げる。

「変身!!」
―― TURN UP ――

掛け声とともに、右腕を前方に回転させ、左腕はガッツポーズを取る。
回転させた右腕でバックルを引き、チェンジスタッグが反転すると、オリハルコンゲートが現れた。

「うぉぉぉぉぉぉおおお!」

叫び声と共に、ゲートを潜る。
紅い装甲が体を包み、右手に銃が現れる。
顔は、決して砕けはしない意思を表した、ダイヤとクワガタをモチーフとした仮面に覆われる。
全てを食らう牙を撃ち崩すために―――仮面ライダーギャレンが、走り出した。


  #######################


降り注ぐような銃弾を、牙王が剣で弾く。
そのまま一気に距離をつめ、袈裟懸けに切り払う。
だが、剣先は空を切り、ギャレンは牙王の視界から消える。
避けた先を突き止める前に、上からの連続する射撃に居場所を悟らされる。
飛び上がり、牙王の真後ろに着地する前に、連射で牽制をされたのだ。
ギャレンが着地する。体勢を整えるより早く、牙王が振り向きざまに剣を振るった。
右肩の装甲に直撃し、いとも簡単に切り裂かれる。

(相当の馬鹿力だな…だが!)
斬られた反動で体を回転させ、連撃を避ける。
牙王の腹に蹴りを喰らわせ、ギャレンが後ろに下がった。
だがギャレンが退いた距離よりも深く踏み込み、牙王が真上から剣を振り下ろす。
派手な土煙を上げ、剣先が地面にめり込んだ。
牙王は、今の一撃で仕留めたと思った。
だが――

「がっ!」
避けずに懐に飛び込み、装甲の薄い部分にギャレンが銃を突き刺す。
そのままゼロ距離で連射を叩き込んだ。
激しい連打の音と共に、牙王の体が折れ曲がる。
そのままの体勢でラウズカードを取り出し、勝負を決めにかかる。
しかし、牙王の右足から繰り出された蹴りが横腹に入り、中断される。

「調子にのるなよ!」
側転で何とか転倒を免れたギャレンに、牙王が突撃してくる。
剣を片手に持ち替え、牙王は縦・横と剣を振るが、いずれも紙一重でかわされた。
だが、そこまでは予測済み。
ギャレンが避けた方向に自由な左手でアッパー気味の拳を打ち込む。
クリーンヒット。ギャレンは体を回転させながら、宙を舞う。
「終わりだ」
牙王は腰に力を入れ、落ちたところを真っ二つに叩き斬ろうと深く構えた。

    ――Bullet――

だが、妙な電子音声と共に、先ほどよりも威力の高い銃弾に襲われた。
ギャレンも飛ばされることを予測し、カードを抜いていたのだ。
先ほどまで両手で振っていた剣を、片手で扱った理由。
それを即座に理解するのは、ギャレンにとって容易なものだった。
ノーガードだった牙王はまともに銃弾を受け、体をよろつかせる。

着地したギャレンは、一瞬で距離を詰めた。
ラウザーを腰に収め、右拳を牙王の左頬に打ち込み、そのまま振りぬく。
続けて左拳で、右拳を打つ。
往復で揺さぶられ、牙王がたたらを踏む。
そのまま追撃を加えようとするが、ギャレンの腹に衝撃が来る。
見ると、牙王の膝が腹に突き刺さっていた。ギャレンも追撃叶わず後ろにふらつく。

「とっとと喰われちまえよ…楽になるぜ…!」
ギャレンの耳に牙王の声が届くと同時に、牙王の激しい連撃が来る。
右・上・斜め上・左・右・下。
型も何もなく、ただ力任せに、鋭く振り回される。
まるで一種の暴風のように、牙王はギャレンを押し込んでいた。
銃で受けるか避けるかを繰り返すギャレンを、牙王は容赦なく追い詰める。

「とどめだ!」
隙を見せたところに、牙王が渾身の力を込めて剣を振る。

  ――UPPER――

またもや、電子音声と同時に牙王は不意を喰らう。
防戦一方に見せかけ、大振りの一撃がくるのをギャレンは待っていた。
膝蹴りを受けた直後に抜いたカードを用意して。

顎にまともに入った一撃は、牙王を無様に吹き飛ばした。
空中で受身を取り、牙王は下を見やる。
     ――DROP――
一つ目のカードがスラッシュされる。
ギャレンはまだカードを用意している。牙王は、相手が勝負を決めるつもりだと悟る。
     ――FIRE――
二つ目のカードがスラッシュされる。
持っていたガオウガッシャーを投げ飛ばし妨害するが、いとも簡単に避けられる。
     ――GEMINI――
三つ目のカードがスラッシュされる。
牙王が着地し、先ほど投げたガオウガッシャーを拾うと同時に振りぬくが、ギャレンは後方に飛び去り、避けると同時に距離を取った。


     ――BURNING DIVIDE――

カードコンボ発生。
カードの紋章が背後に浮かび上がり、ギャレンに飛び込んでゆく。
同時に足のつま先に火がともり、ギャレンは跳躍する。
「おおおおおおおおおおおお!!」
牙王は太陽を背に、飛び込んでくるギャレンが、二人に増えたように見えた。
だが、錯覚ではなかった。ギャレンは、確かに分身していた。

「大佐ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」

自分の責任を、全て自分で負うという証。
心に再び灯った、消して過ちを繰り返さないという、志しを秘めた炎。
そして散り行く運命であろう者に贈る、魂の叫び。
全てを込めた全身全霊の蹴りは、牙王を遥か遠くに吹き飛ばした。

その、餞と呼ぶには余りにも荒々しい一連の所業は―――

    「よくやった、橘…」

―――確かに、伝わった。


   #################


変身を解き、まだ息のあるゾル大佐に、橘は駆け寄った。

「大佐…俺は…」
「もう、何も言うな」
ゾル大佐は、少しずつ血の気が無くなっていく顔で言った。
相当つらいはずだが、そんな素振りは一切見せない。
改めて、凄い男だと橘は思う。
もし自分があんな勘違いをしていなければ、こんなことにはならなかっただろう。
そう思うと、とても胸が痛い。
「橘よ…一つ、頼みがある…」
ゾル大佐が途切れ途切れで言葉を紡ぐ。
もう長くはないのだろう。橘は、必死に聞き届けようと、耳を傾ける。
「あぁ…なんだ、大佐」
「死神博士、という男に…伝言を、頼む」
そう言うと、ゾル大佐は深く息を吸い込む。
橘は、自分が酷い顔をしているのを自覚しつつ、懸命に大佐の一挙一動を見守る。

「ショッカーを…後を、任せた。そう伝えてくれ」

橘は、何度も頷く。嗚咽で声が出せそうにないため、そうするより他になかった。
それを見て、ゾル大佐は満足そうに微笑を漏らす。
そして、突然立ち上がる。

「大佐!無理はよせ!」
橘が静止するが、ゾル大佐は意に介さない。


最後の力を振り絞り、地面をしっかり踏みしめて歩く。
「このまま朽ちて死ぬのは御免であるからな…最後は、美事に散らせてくれ」
言葉の指す意味は理解出来なかったが、何か拘りがあるのだろう。
橘は溢れる涙をぬぐい、しっかりとゾル大佐を見つめる。
ゾル大佐もまた振り返り、橘を見つめ返す。

ゾル大佐は足を綺麗に揃え、両手をしっかり腰に当て、橘に向かって叫ぶ。
「橘!回れ、右!」
橘は突然の事に目を丸くするが、すぐに顔を引き締め、言われたとおり、後ろを向く。
「そのまま、進め!決して振り返るな!」
命令通り、歩き始める。道中、置きっぱなしだったデイパックを拾いながら。
その時、大佐の分が無かったと気付いたのは、後になってからだった。
無言で橘は、前だけを見て歩く。
後ろで、大佐が敬礼をしているのは、何故だか気づいていた。


橘が見えなくなった瞬間、ゾル大佐は崩れ落ちる。
足に力が入らない。体の力が抜けていき、死期を悟る。
(ふん…自分の誇りを守るためとはいえ、少々らしくなかったな…)
絶対に生き残るつもりだったのだが、部下を守るためとはいえ命を落としてしまうとは。
自分もどうやらその程度の男だったらしい。
だが、何故だかゾル大佐の心は充実感で溢れていた。
死ぬ直前にこんな思いが出来るのは、ある意味幸福なのかもしれない。
ゾル大佐は、膝をついたまま、両手を大きく空に広げた。

「ショッカー軍団、バンザァァァァイ!!」

叫ぶと同時に内部から火花が一際大きく散り、大爆発を引き起こした。
その轟音は青空に響き渡り、彼が命を捧げた、地獄の軍団まで届いたように思えた。


 #######################


橘は、ゾル大佐と来た道を、今までの自分を振り返りながら、進んでいた。
償いなんて言えないかも知れない。だが、大佐の分まで絶対に生き延びる。
そう心に決め、橘は歩き続ける。
後ろで何かが聞こえた気がしたが、決して振り返らなかった。




【ゾル大佐@仮面ライダー(初代) 死亡】
【残り37人】

状態表


【橘朔也@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:E-4エリア南部から移動中】
【時間軸】:Missing Ace世界(スパイダーUD封印直後)
【状態】:悲しみ。顔・背中・腹部に打撲。 ギャレンに2時間変身不能。生きる決意
【装備】:ギャレンバックル
【道具】:基本支給品一式、ラウズカード(スペードJ、ダイヤ1~6、9)、レトルトカレー、特殊支給品×?
【思考・状況】
基本行動方針:主催者を打倒する為、勝ち残る。
1:とりあえず市街地から離れる?
2:ゾル大佐への責任を取る。
3:死神博士にゾル大佐の遺言を伝える。
備考
※自分の勘違いを見直しました。仮想現実と考えるのはやめることにしています。
※牙王の生死を確認していませんが、死んだものと考えてます。


   #####################


全身に感じる倦怠感を無視し、牙王は歩いていた。
何もないところでただ黙っているより、歩いているほうが気が紛れるからだ。
ただ黙って過ごすのは一度経験している。
あれではむしろ判断力が悪くなるだけだと判断し、牙王は痛む体に鞭を打ち進んでいた。

あの時、紅いライダーが放った蹴りをガオウガッシャーで防いだはいいが、衝撃に耐え切れず折れてしまっていた。
さらに、貫通してきた脚は胸の装甲に接触すると、見事にそこを砕き、ダメージを深刻なものとした。
剣も装甲もどうせ次変身するときには直っているのだからどうでもいい。
だが、あそこまでやられるとは予想外だった。
この様子だと、骨の一本や二本は持っていかれてるのかも知れない。
「あいつ、まさか…」

ゼロ距離で撃ったときも、空中から集中射撃を行ったときも、全て同じ部分に当たっていた。
最後の蹴りも、恐らくそこにぶち当たったのだろう。
狙ってやったとしたら、恐ろしい腕前だ。

「…面白い。次は必ず殺してやる…」
重い体を引きずり、牙王は呟く。
あの狼は恐らく仕留めたが、紅いヤツにはしてやられた。
橘と呼ばれていたその男の、顔と名前をしっかりと頭に刻み込む。
また機会があれば、今度こそ喰らうつもりでかかる。

二つ分の荷物を握り締める。
あの時、飛ばされた方向に、橘とゾル大佐が置いていたデイパックがあった。
装甲に持ち手が絡め取られ、その内の一つが偶然ついて来たのだ。
荷物が増えるのは億劫だが、中にある食料は大して消費されていない。
どうせだからと貰って行き、ただ思うままに牙王は進む。
行くあてもなく、それでいいとさえ思いつつ。


状態表


【牙王@仮面ライダー電王】
【1日目 現時刻: 午前】
【現在地:D-4エリア北部】
【時間軸】:最終決戦前。
【状態】:全身打撲、疲労、あばら一本骨折、ガオウに2時間変身不可。
【装備】:ガオウベルト
【道具】:マスターパス、基本支給品一式×2、ランダム支給品1~3(未確認)、リュウガのデッキ、コンビニから持ってきた大量の飲食料(少量消

費)、特殊支給品×?
【思考・状況】
基本行動方針:全て喰らい尽くした上で優勝
1:適当に歩き回り、参加者を喰らう。最終的にゴルゴス、死神、影山も喰う。
2:一文字、ハナ、加賀美新、風間大介、天道総司を倒したと思われる参加者を喰らう
3:機会があれば煩わしい首輪を外す。
4:ガオウライナーを取り戻して村上も喰う。
5:紅いライダー(ギャレン)にまた会った時に借りを返す。
※会場のどこかに時の列車(予想ではガオウライナー)が隠されていると推測しています。
※何処へ向かうかは次の人にお任せします。
※木場の生存には未だ気づいていません
※ゾル大佐のデイパックを偶然奪いました。



※ゾル大佐の遺体は跡形も無くなりました。爆心地に首輪ぐらいは残っているかも知れません。


074:Weak and powerless 投下順 076:キックの鬼
074:Weak and powerless 時系列 069:ステッピング・ストーン
059:全てを喰らう牙 橘朔也 079:restart
059:全てを喰らう牙 牙王 086:おふろでやりたいほうだい
059:全てを喰らう牙 ゾル大佐 ---

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