EGO(前編)

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EGO(前編)


どうしてこんな事になってしまったのだろうか。
何処にでも居そうな少年、三田村晴彦は誰に話すこともなく一人思う。
自分が属するショッカーとは違い、スマートブレインなる組織に気がつかぬ間に拉致。
その後、へんぴな孤島に送られふざけた殺し合いを強要されたこの現実。
たまったものではない。
声を大にしてありったけの抗議を口にしたい……それで事態が解決するのであれば。
喚くだけではどうしようもない事は今までの経験から嫌という程わかっている。
だから、結局は大きな不満を抱きながらこの状況に流されるしか出来ない。
たとえ改造手術を受けた、人外の存在――改造人間であっても今すぐ状況を打開するには全てが足りない。
どんな者でも、自分が苦渋を強いられたホッパーですらも己の実力でねじ伏せる力を始め、数え切れない要素が。
不足しているものが自分には多すぎる。

だが、その事について泣き言をいうのは既に通った道であり、今更どうこう言う事はない。
自分への恨み言はあの時、それこそ思い返せば飽きる程に募らせたから。
病気を患い、余命わずかと医者に宣告され、自分を取り巻く全てのものがどうしようもなく信じられなかった、あの灰色の入院生活の間に。
そんな時、すっかり濁り、先が見えなかった自分の人生に……光が差し込んだ。
原田美代子という今までの自分の人生にとって覚えがない、眩し過ぎた希望という光が生きる力を与えてくれた。
死ぬまで美代子さんと一緒に生きよう。
何ものにも換えられない、大切な存在のために自分はどんなものでも捨てる覚悟は既にショッカーの誘いを受けた時からある。

そのためにもどうにかしてこの場から抜け出す事が必要不可欠。
優勝するか他の人間と協力し、スマートブレインを屈服させ脱出するか……方法は幾らでもある。
そう。幾らでもあるのだ……あまり焦らずに、兎に角当面はこの殺し合いに生き残る事を第一に行動しよう。
幸運な事に今の自分には同行者が二人居て、一人は自分のように闘う力を持っていて至って順調だ。
たとえ、自分はその場の流れに完全に流されただけの結果であっても、自分の得になるようであればそれでいい。
なのに……一つだけ、どうしても不安な事がある。
もう二度と関わり合いを持ちたくなかった奴が、運命の悪戯のように自分の直ぐ傍に居る事が。
三田村に対し、絶えず言いようのない不安を与え続けていた。

「ねぇ、本当に僕の話聞いてる?」
「も、勿論……」

前方へ進む三田村と寄り添うように歩く北崎が可笑しそうに口を開いている。
しきりに口を動かし、いちいち三田村の反応を観察するかのように北崎は言葉を連ねる。
他愛もない、どうでもいいような雑談。
そんな北崎の言葉に対し適当に、それでいて彼の機嫌を損ねないように三田村は相槌をうつ。
三田村の額に短い線を引く一条の汗が彼の心の揺れを曝け出す。
北崎の名前は未だ知らないが、今の三田村には彼の本名についてはとても些細な事。
つい先程、行動を共にする羽目になった北崎の一言が聞こえる度に三田村は思わず恐怖を覚えていた。
今直ぐにでも北崎から逃げ出したい考えの方に気が向いてしまい、名前どころではない。
しかもその希望を実現出来そうにもない現状ではどうする事も出来ずに、三田村のストレスは蓄積する一方だ。

幾ら決意を固めても圧倒的な力の差は埋められない。
一度闘った事があり、自分では北崎に敵う筈もない事は既にわかっているため捨て身で闘う覚悟もない。
かといってこのまま北崎と共に行動をする事など嫌でしょうがなかった。
今のところ自分をどうこうしようとは思っていないらしい。
それでも北崎がいつまた自分を襲う可能性もあり、絶えず危険に怯えなくてはいけない。
勿論、そんな事は願い下げだ。
だが、他に良いと思える道もない事が三田村に重くのしかかり――

(一体どうすればいいんだよ……俺は……)

彼自身の決断を迷わせていた。


一方、三田村と北崎が歩く数メートル後方に位置する地点。
其処に彼らの同行者である二人の青年と少年――歌舞鬼と桐矢京介が居た。
特に話す事もないため、互いに無言のままに二人は彼らを追うように歩く。
いや、話題が見つからなかったためだけではないのかもしれない。
少なくとも、京介にとって歌舞鬼と話すよりも考え事の方を優先したかったから。

(北崎さんだっけか……。悪い人じゃなさそうだけど……何か引っかかるんだよな。
三田村さんも北崎さんと話す時、なんか不自然だし……)

数十分前に合流した北崎と簡単な自己紹介を行った京介。
自分の名前を北崎に教えた時、何故か不思議そうな様子を見せた北崎のあの顔が今でも眼に焼きついている。
まるで自分を疑うような眼つき。
やがてその疑惑に満ちた表情は北崎の顔から失せて、結局京介は何が何だがわからぬままに終わったのだが。

そして、京介が考える最大の疑問。
それは歌舞鬼が北崎を引き連れて自分達の元へ戻ってきた時、突然三田村が走り出した事だ。
一瞬しか見えなかったが三田村が浮かべた表情には確かな驚きと、どことなく怯えのような感情があったのを覚えている。
三田村の奇行に驚くと同時に京介が疑問を抱くのはごく自然な事といえるだろう。
精神に異常がある者でなければ意味もなくあんな行動はしない。
知り合ってから半日もたっていないため、三田村の事について知っている事は少ないが。
それでも彼がそこまで異常な行動を取るとはどうにも思えない。
只、見知らぬ北崎が目の前に現れただけであんなに取り乱すのであれば数時間前、眼を覚ました直後、自分を見た時にもそれ相応に驚いても可笑しくはない。
だが、三田村は特に変わりなく自分と会話を行ったため矛盾する。
ならば、考えつく事は一つ。
そう。それはとても簡単な事……簡単な事である筈なのだ。

(やっぱり三田村さんは北崎さんと何処かで会った事があるんだ……。
けど、二人とも初対面だって言ってた……これはどういう事なんだ、一体……)

三田村と北崎にはなんらかの面識があると推測する京介。
だが、当の二人は口を揃えて初対面だと話した事がそれを確信には至らせない。
三田村の目線が不自然に左右へ振れていた事は気になるが、それでも彼らが嘘を言っていたとは思えない。
そもそも、互いの面識の有無について嘘を言う必要はないのだから。
中途半端な嘘をつけば、折角築いた協力関係に溝が出来てしまうであろうし。
其処まで思考を張り巡らせた時、京介はふとある考えを思いつく。
頭では否定したい、思考の末に出した結論。
だが、今の状況を考えれば一番理にかなった一つのケースが京介に緊張の糸を強く張らせる。

(まさか、三田村さんは北崎さんに脅されているのか……?)

三田村のあの驚き様から考えて、あっても可笑しくはない。
恐ろしい結論に対し思わず息を呑み京介は只、視線を走らせる。
京介が見つめる先は、今もなお三田村に何かを話しかけている北崎一身のみ。
背丈から考えれば自分よりも年上に見えそうだが、浮かべる表情にはとても年上としての貫禄は見えない。
だが、今となっては北崎が浮かべる笑顔を京介は直視出来なかった。
恐怖。底知れぬ恐怖と気味の悪さが北崎との関わりを本能的に避けているのだろうか。
もし、本当に北崎が三田村を脅し、無理やり自分達は初対面だと偽らせているとしたら。
何のために? 決まっている、自分達に知られたら不味いからに違いない。
何故不味いのか? その理由を考え……京介の表情は再び曇り始める。
完全な確証は持てないが、一つだけわかる事がある。
それは北崎が危険な存在だという事だ。
三田村を力づくで口裏を合わせさせるなど……尋常な事じゃない。

(兎に角、俺だけじゃあ手に負えない。歌舞鬼さんと相談しないと……)

北崎に何かある事まで考えついたはいいが、決局自分には何かを為す力はない。
そのため、知恵を貰う意味でも、万が一のために力を貸して貰うためにも隣に居る歌舞鬼
に話をしてみよう。
そう考え、京介は歌舞鬼の方に首を回そうとする。

「よぉ、久しぶりだな」
「あれ? また来たんだね」

そんな時、歌舞鬼と北崎の声がほぼ同時に響いた。
二人が向く視線の方向は奇しくも同じ位置。
言葉を発しない三田村は二人が声をかけた先を心当たりがないような目つきで眺めている。
目線が自分に向いていなく、そもそも言葉の内容からして自分とは関係ない事なのだろう。
しかし、気にしないわけにもいかない。
彼ら三人にならって、京介も頭を動かし両目を凝らす。
その先に移るのは一つの影。京介には見覚えがない人物。
三田村にとって一度は成り行き上、共に闘った事があり、北崎と歌舞鬼とは以前に闘った
事がある男。
その男こそ蛇の力を持つ異形の者、オルフェノク。

「まーたおめぇらか……全く、俺様も運が悪りぃんだが良いんだがわかんねぇなぁ……」

海堂直也がその場に立ち、彼らの方を――主に北崎の方を睨みつけていた。
片腕に掴んでいるものは一本のベルト。
白銀で彩られたベルトに光が差し込み、まるで海堂の右手が輝きに包まれたような錯覚を見せる。
やがて、ベルトを――“三本のベルト”と称される内の一本、ファイズギアを腰に巻きつけ、徐に携帯電話を取り出す。
只の携帯電話ではない。ファイズフォンと名づけられたそれを操作し、手早くボタンを押していく。
数字の5が入力される度に電子音が鳴り、三回目の音が終わりを告げた後、enterと刻まれたボタンを打ってファイズフォンを閉じた。

――Standing by――

簡単な英語。準備が完了した意味を指す英単語。
男性による低い電子音声が鳴り響き、何か回転音のようなものが続く。
薄ら笑いを浮かべる北崎以外の三人にはこれから何が起こるかはわかっていない。
特に歌舞鬼にとっては、少しだけ異国の言葉はわかるものの、所詮戦国時代の人間であり尚更な事。
しかし、その場の空気が、海堂が浮かべる真剣な眼差しが決して遊びではない事を物語る。
ゆえに北崎以外の彼らは眼を離さずにはいられない。
海堂が行う一つ一つの動作に隠された意味を探るように視線を走らせ、やがて彼がファイズフォンを滑らせるようにファイズギアに差し込んだのを確かに見た。
そして海堂は斜めから滑り込ませたファイズフォンを直角に倒す。

「変身!」

――Complete――

強く、意思を吐き出すように合図の言葉を紡ぐ海堂。
間髪入れずに、眩いほどに輝く赤の閃光が周囲へ拡散。
途端に再び電子音声が鳴り響き、ファイズギアを起点とし、真紅の線――フォトンブラッッドが海堂の身体を包むように走る。
それが辿る軌跡は一瞬の内に海堂の全身に浮かび始めたエネルギー流動経路――フォトンストリームのそれと同じ。
また、両方とも同じように真赤の輝きを迸らせる。
そして上下左右へ伸びていくフォトンブラッドが鎧ともいえる外部装甲を織り成す。
漆黒のスーツが海堂の全身を覆い、胸部には一際厚い銀の装甲、所々にフォトンストリームがはっきりと浮かぶ。
次第に彼の顔にもフォトンブラッドの束が包み始めた。

「先ずはてめえからだ! てめぇを放って置いたら何するかわかったもんじゃねぇからなあああーッ!
もう、誰も殺させねぇ……だから、俺様が倒す――」

既に黒の強化スーツを纏い終えた右腕を翳し、人差し指で指しながら北崎に言い放つ。
その言葉が言い終わるまでに、海堂の顔へ伸びていたフォトンブラッドが動作を完成する。
そう。中心部に明るい黄色で塗られた円のような――ギリシャ文字のΦを模したような目を持つ戦士。
主な装着者は違うものの、今まで数多くのスマートブレイン配下であるオルフェノクを倒してきた存在。
555――ファイズの名を持つ戦士に、いや――

「“仮面ライダー”である俺様がなッ!!」

“仮面ライダーファイズ”へ変身が完了した海堂が吼え、彼は走り出した。
自分の仲間である木場達と合流するために北上していたが、ファイズは闘いを選ぶ。
この場に居合わせた人物の中で、他の人間に対し、最も危害を加える可能性があると思われる男。
北崎を倒すべき敵として定めて。

「さっきとは違うね、何かあったのかな……」

一方、三田村からゆっくりと離れ、北崎が口を開く。
全力で走ってくるファイズとは対照的に、ひどくゆっくりとした歩調で歩いている。
確実に距離が近づいているが北崎には焦りなどない。あるはずもない。
何故なら自分自身を絶対の存在、何人も打ち倒せない存在だと傲慢とも思えるほどに自負しているから。
だから、北崎は余裕を貫く事が出来る。
オーガギアを使うか、それともオルフェノクの力を使うかの選択すらも今頃になって行える。
海堂が自分の事について言った事については特に言及せずに、三田村を始めとした彼ら三人が自分にどんな印象を持つかも北崎は意に介さない。
彼らは北崎の仲間でもなければ、彼らと仲たがいしないように自分を偽っていたわけではないから。
只、再びオルフェノクの力を使うためや変身するための時間を稼ぎたかっただけに過ぎない。
やがて決断し、北崎がゆっくりと口を開こうとする。

「まあ、どっちでもいいけどね。どうせ、君は死ぬんだから……」

やがて、北崎の顔になにかが浮かび、彼は時間が十分だった事を確信する。
複雑な模様、紋章のようなものが表面に現れて、北崎の表情が笑顔に移り変わる。
その紋章はどことなく龍の顔を模したものであり、一瞬真っ黒に塗りつぶされたかと思うと、それははっきりとしたものになった。
同時に北崎の全身を鋼の装甲が現れ始め、彼を最凶のオルフェノク――ドラゴンオルフェノクへ姿を変え終える。
暴龍。悪魔……様々な言葉で形容できるその禍々しい躯体は見る者に恐怖と威圧を与え、三田村は思わず後ずさった。
そんな三田村の反応を見て、ドラゴンオルフェノクは心なしか満足そうに顔を動かし――

「この僕によってね」

迫りくるファイズの元へドラゴンオルフェノクは歩き続ける。
まるでファイズを歓迎するように、両腕を開いて、彼を歓迎するかのように。
それぞれ驚愕の色に染まった三田村、京介、歌舞鬼が見守る中、ファイズとドラゴンオルフェノクの闘いが、再び始まる。

◇  ◆  ◇

(さて、どうするかな)

ファイズとドラゴンオルフェノクの拳や爪がぶつかり、火花を散らす中、歌舞鬼は思考を張り巡らす。
歌舞鬼が考える事。それはいうまでもなく、自分が今どうするかについて。
只の人間ではなく、変身音叉・音角で鬼へと変身できる音激戦士の一人である歌舞鬼。
少し腰を引きながら、凝視している京介とは違い、歌舞鬼には鬼の力を使う事で目の前の闘いに介入出来る。
身体の感じから察するに、今は鬼になる事になんら問題はない。
だが、歌舞鬼は一向に動こうとはしなかった。

(北崎はやばい奴だったみたいだが……かといってあっちの海堂って奴も俺の事を恨んでるだろうしなぁ……)

今もなお、闘い続けるファイズとドラゴンオルフェノク。
ドラゴンオルフェノクの正体である北崎とは知り合って間もなく、向こうから襲ってくるのであれば闘う覚悟は当然ある。
歌舞鬼にはこんなところでむざむざ死ぬつもりなど毛頭ないからだ。
しかし、今はファイズとの闘いに集中……いや、楽しんでいるように見えて自分には関心はなさそうなため、特に北崎と争う理由もない。
ファイズの方はというと、装着者である海堂と歌舞鬼の仲はとても良いものではない。
なにせ、歌舞鬼の同行者であるアマゾンがモグラ獣人を斬殺し、それが発端となり実際に闘った経験もある。
海堂は今もなお自分の事を恨んでいると歌舞鬼は思っていたため、彼が自分ではなく北崎との闘いを選んだ事は少し意外だった。
理由は海堂にとって北崎はそれほどまでにも因縁が深い相手なのだろう。
闘う前に叫んだ言葉から察するに、他人を守るために北崎との闘いに挑んだと思える海堂。
その動機は立派なものだと歌舞鬼は人知れず胸中で小さく呟く。

「くっ!」

ドラゴンオルフェノクの右の爪を袈裟に振り下ろした斬撃が直撃し、ファイズが後方へ吹き飛ぶ。
赤白い火花が、ファイズが感じ取った痛みを現すかのように胸部を斜めに走ってゆく。
同時に歌舞鬼は再度確信する。
北崎の実力は海道のそれを遥か上へいく事を。
このままでは海堂は負けるだろう。長年の戦闘の経験から歌舞鬼はそう結論づけた。
だが、依然として歌舞鬼は万が一己の身に危険が及ぶ時を見越し、音角を握るだけで何も行動は起こさない。

「歌舞鬼さん! あの赤い人を助けた方がいいんじゃ……」
「いや、あいつとは一度闘った事があるからな。俺の事を良くは思ってないに違いねぇ。下手に手を出しちまったら、後々面倒だ。
ここはもう少し様子でも見ておこうぜ……」

心配そうに掛けてきた京介の言葉にも頷こうとはしない。
そもそも、どちらが生き残ろうかなど歌舞鬼には関係がないのだから。
そう。自分の命を優先させるためにも――
そこまで考えて歌舞鬼はふと思いたつ。
とても根本的な事を。

(だがよぉ、生き残ってどうする……? たとえあの世界へ戻れたとしても……)

魔化魍と闘える自分を化物と見なし、拒絶した汚い大人どもに嫌気がさして鬼に、人間に見切りをつけた歌舞鬼。
だが、無垢な心を持つ存在――子供を愛する心は捨てきれずに、知り合って間もない少年、アスムを庇い、その命を散らした。
厳密には一度死んだ身かどうかは歌舞鬼にとってはわからない。
しかし、きっと自分は一度死んだのだろうと歌舞鬼は確信している。
なにせあの距離だ。今も鮮明に思い出せる最後の光景。
響鬼にやられ、明日夢に襲い掛かろうとしたヒトツミに喰われたあの記憶を思い違える筈もない。
勿論、その行為には一片の後悔がない。
最期の最期で魔化魍から一人の少年を守りきる事が出来たのだから。
だが、自分は何の因果か再び生を受け、こんな場所で立っている。
望んではいなかった。別にあのまま自分の短い人生を終えても良かった。
また、鬼として人間達を……汚い大人立達も守るか、それとももう一度魔化魍として生きるか。
そんな決断はもうしたくはなかった。また、道を間違ってしまうような事は御免だったから。
けど、折角再び手に入れた命。それをみすみす捨てるにはどうにも気が引ける。
かといってその命で何かを為す事も特にない。

――自分は一体何のためにこの場に居る

今まで後回し、後回しにしていた疑問への答え。
その答えが出せそうで出せない自分がどうにもみっともない存在に見える。
自分がやりたい事すらも見つけられないとは……こんなに自分は弱い存在だったのだろうかとすらも思える。
自分よりも若い明日夢は幼馴染を救うために村中の人間から敵に回しても、鬼である自分達に助けを願う道を取ったというのに。
何が鬼だ。何が歌舞鬼だ。
自分は焦りや不安を他人に気取られぬように必死に隠した、ちっぽけな臆病者でしかない。
濁流のように流れていく自嘲の波に飲まれ、思わず握り拳を握ってしまう。

(俺は……俺は……!)

自分への苛立ちに歯軋りする音すらも気に障る。
そんな時、金属が擦れる様な一際大きい音が響き、歌舞鬼ははっと顔を上げた。
見れば再びファイズがドラゴンオルフェノクから一撃を貰い、火花を散らしながらよろけている。
かと思いきやファイズは崩れそうな体勢を持ち直し、右拳をドラゴンオルフェノクの喉笛を抉る様に走らせた。
対してドラゴンオルフェノクは少し体勢を傾け、左腕を翳す。
拳が突き刺さった場所から鈍い音が起こり、一瞬硬直するファイズとドラゴンオルフェノクの二人。
苦し紛れの一発ではなく、十分に踏み込んだ上に放ったファイズの一撃は軽い一撃ではない。
だが、あまりにも短い一瞬が過ぎたと思うや否やドラゴンオルフェノクはファイズの腕を振り払い、右腕を滑るように叩き込む。
ファイズは瞬く間に宙を舞う事になり、やがて背中から地へ落ちる事となった。

(決局、こうなるって事か……)

もう、誰も殺させない。
そう言って、ドラゴンオルフェノクに立ち向かったファイズこと海堂。
だが、歌舞鬼の目の前で起きている現実では海堂が明らかに劣勢。
大層な理想を……以前、歌舞鬼が信じたような理想を掲げた海堂が叙々に消耗していくの事を。
歌舞鬼は只、どこか諦めと期待が混じったような目つきで眺めていた。

◇  ◆  ◇

「やっぱり、君だけじゃあ無理なんだよ。木場勇治と二人がかりでも僕を倒せなかった君なんかじゃねぇ……」

オルフェノクの力を行使し、ファイズとの闘いに身を投じた北崎。
戦況は歌舞鬼が察したようにドラゴンオルフェノクの方が優勢。
幾ら三本のベルトの一本であり、オルフェノクの王の守護を定められた存在の一体だとしても当然の事ながら最強ではない。
今までファイズと同等以上の存在であるカイザ、デルタとも闘い、二人がかりでも三人がかりでもドラゴンオルフェノクを倒すに至ってはいない。
この殺し合いでも木場勇治が変身したファイズ、海堂が変身したスネークオルフェノクのコンビでも倒しきれなかった。
そう。単体のファイズなどでは元より勝算などある筈もないのだ。
ドラゴンオルフェノクをその事を知っており、万が一にも自分が負けるわけがないと踏んでいる。
事実、つい先程もファイズの右ストレートを左腕により受け止め、そのまま右腕を突っ込ませファイズを後方へ飛ばした。
圧倒的な力。お前の力など通じないといわんばかりに力を奮うドラゴンオルフェノクに焦りなどない。
だが、そんなドラゴンオルフェノクには小さな違和感があった。

「けど、やっぱり気のせいじゃない……何か変わってる。海堂君だっけ?
なんだか変な言い方だけど、前の君とは違うね……一体どうしたのかな」

左腕を撫でながらドラゴンオルフェノクが訝しげに言葉を発する。
思わず洩らした言葉に嘘はない。
決してファイズを認めたわけではないが、ドラゴンオルフェノクは彼が以前とは違うと感じていた。
先程貰った右拳による左腕への打撃がいやに熱を帯び、ドラゴンオルフェノクの胸の奥底で疑問と興味、そして若干の怒りが湧き上がる。
格下と見下していた存在に小規模でありながらも、自分が痛みを思い知らされるのは納得がいかない。
零した疑問に対するファイズの答えを聞き終えてから、さっさと殺してしまおうと思い、ドラゴンオルフェノクはいつでも動き出せるように少し腰を落とす。
流れた時間は極めて一瞬でしかない。
受けたダメージのわりには周囲の予想以上にファイズは機敏な動きで立ち上がる。


「そんなコト……わざわざ言うまでもねぇ! 大体なぁ、てめぇなんかには理解出来ねぇんだよッ!!」


ドラゴンオルフェノクに言い放つファイズ。
そしていつの間にかファイズの右腕には握られているものが一つ。
先端が円筒の形状を模った物体――ファイズポインターにミッションメモリーをセット。
徐に体勢を落として、右脚に備えられたホルスターにファイズポインターを装填し、脚の向きと同じになるように倒す。
バックルに横向きで収まるファイズフォンを開き、ENTERキーを押し込み、勢い良く閉じる。

―― Exceed charge ――

新たに響く電子音声と共にフォトンブラッドがバックルからフォトンストリームへ駆け巡る。
ファイズの右太腿を通り抜け、右脚へ赤い流動が辿りつき、ファイズポインターの先端部で動きを止めた。
次にファイズがそれに続くように腰を落とし、地を蹴って走り出す。

「ハッ!」

何歩かの助走を経て、大きく右脚を踏み込んだ瞬間、フォトンブラッドが一際大きな真紅の輝きを放ち、ファイズは宙へ大きく跳んだ。
一回転を行い、両脚を両腕で構えたドラゴンオルフェノクの方へ向け、ファイズポインターから線状に形成したフォトンブラッドを飛ばす。
やがて両腕を交差させたドラゴンオルフェノクの目の前で、斜め上から突き刺さるようにフォトンブラッドがドリル状に変化。
それはマーカーポインターとなり、ドラゴンオルフェノクを補足する。
そして宙へ跳んでいたファイズの右脚裏の先端部がフォトンブラッドにより赤く発光し――


「うおおおおおおおおおおおおおッ!!」


真紅の渦へファイズは右脚を向けて、右飛び蹴りを行いながら飛び込む。
螺旋を描くように廻るマーカーポインターに合わせ、蹴り貫く様にファイズの蹴りがドラゴンオルフェノクに直撃。
“クリムゾンスマッシュ”がドラゴンオルフェノクの両腕とぶつかり、火花を散らす。
伸ばしきったファイズの右脚が赤の閃光を生み、喰らいつくように侵攻を押し通す。
そしてマーカーポインター越しにお互いの視線が重なり、互いに相手を押し切るために力を込めた。
そんな時、ふと一瞬、ほんの一瞬だけドラゴンオルフェノクは視線を逸らして――

ドラゴンオルフェノクの身体が後方へ蹴り飛ばされた。

どこか怪しげな笑みを暴龍の仮面で隠しながら。

◇  ◆  ◇

クリムゾンスマッシュは目標の身体を貫き、φの紋章が浮かぶ事で本当の完成とする。
よって今しがたファイズが放ったクリムゾンスマッシュは完全ではない。
地に降り立ち、ファイズはドラゴンオルフェノクを仕留め切れなかった事に後悔を覚えた。
だが、それでも手応えがあったのも事実。
自分一人でもここまでドラゴンオルフェノクを追い込む事が出来た事は自然とファイズに闘志を湧き上がらせる。
そう。自分の蹴りを受け、ドラゴンオルフェノクは数十メートル先で今も立ち上がれないでいるのだから。

(いける……いけるぜ……!)

休む暇は与えない。折角巡って来た好機をしっかりと手繰り寄せる。
このまま、押し切ってドラゴンオルフェノクを倒そうとファイズは歩き出す。
自分が充分に近づくまでにドラゴンオルフェノクの足止めをするために、バックルからはファイズショットを取り出し、右手に持つ。
多少卑怯じみた闘い方になんとなく気が引けるがそうも言っていられない。
何せ相手の力は強大であり、その事は既に身を持って体感している。
複数ではいざ知らず、自分一人でここまでやれたのは海堂自身が最も驚いていた。
これを逃せばチャンスは遠のく、だから今は兎に角、仕留めるしかない――そう考えた時、何かが海堂の中で引っかかった。

――手応えが無さ過ぎる。

数時間前の自分とは違う事を海堂は確信している。
あの時の自分とは違い、今ははっきりと仮面ライダーの存在を受け入れている。
今の自分とあの時の自分が同じ条件で闘えば、背負ったものの違いからきっと今の自分が勝つだろう。
決して自惚れでは無い自分の力――だが、それにもしてこの状況は可笑しいと海堂は思わずにはいられなかった。
未完成ながらもクリムゾンスマッシュを撃ち込みはしたが、それまでの戦況は自分の劣勢。
少しは効いているようであったが、相変わらず堅牢な外殻に覆われ、強靭な肉体から猛攻を繰り出すドラゴンオルフェノクは脅威そのもの。
そんなドラゴンオルフェノクがこれほどまでにも容易く地に倒れ伏すのか。
いや、考えにくい。もしや今も動きを見せないのは演技なのだろうか……何のために。
真意を探るように視線を飛ばすファイズ。
その時、ドラゴンオルフェノクは頃合を見透かしたように顔を上げた。

「参ったな……強い強い、本当に強いよ……僕なんかじゃあ君には勝てないや」

ファイズに良い気分はしない。
只、疑問が膨れ上がるだけだ。
今までの言動、実力からドラゴンオルフェノクがこんな事を言うとは信じられない。
更に強まった疑問がファイズの歩みを止めてしまう。

「腕もヒリヒリするし、困ったなぁ……これ以上痛い思いはしたくないしね……。
でも、君に負けるのも嫌だなぁ……そこで僕は考えたんだ」

依然浮かび上がる裸体の北崎の実像。
周囲の視線を一斉に集めているが特に動じる様子もない。
気味の悪い笑みを見せながら紡ぐ言葉には所々、嘘が混じっているように見える。
また、その言葉に隠された真意はいまいち要領を得ず、ファイズを始め誰にも計り知れてはいない。
そしてドラゴンオルフェノクは言葉には不釣合いな余裕を見せて次の句を続けた。
とても、嬉しそうな無邪気極まりない笑顔を浮かべながら。


「友達が居れば良いのさ。僕と一緒にどんな敵でも闘ってくれる味方が、いや友達が居たら君にも負けないよ……絶対にね。
だからさぁ――」

ドラゴンオルフェノクの表情には怒りのようなものはない。
只、この状況を楽しんでいるだけ。
別に助けを求めるほどに彼は窮地に立たされているわけではなく、普段の彼にはそもそもそんな気はない。
だが、今の彼には興味をそそられるものがあった。
ファイズの見違えた力よりも大きな興味を引き付けられるもの。
それを使って遊んでみたかったため、彼は一種の賭け事に興じていた。
そう。たった今、自分が言ったように協力を求めるために彼は口を開こうとする。


「君は助けてくれるよね? 僕達は友達なんだから……」


彼が言う友達に、この場で知り合った友達に――


「ねぇ、三田村君?」


三田村晴彦に顔を向けて、そう言い放った。
急に話を振られて、身震いを起こすように反応した三田村の表情には確かな感情があった。
真正面からドラゴンオルフェノクの、北崎の実像の視線で射抜かれ、三田村が自ずと浮かべたもの。
それはいいようのない恐怖。
逆らったらどうなるのか……それすらも想像出来ない程に北崎の笑みからは無邪気な悪意しか感じられない。
だが、かといって三田村にはファイズと面識はないため、彼を倒す理由はないのだ。
無闇に敵を増やすべきではない。
冷静に考えたらそれが正しい選択の筈。

しかし、三田村はある選択を行う。
取り出した蛇の仮面を被り、青いノースリーブのコートを多数の金具で着込み、黒と青を基調とした怪人。
ショッカーの改造人間、コブラへと姿を変えて――

「――くっ!」

一直線にファイズの方へ向かった。
コブラの仮面の下に浮かべた表情に映ったもの。
それは北崎への隠しようの無い恐怖でしかなかった。


(これで良かったんだ……これで)

走りざまにファイズの身体を掴み、その勢いを殺さずに自分の身体もろとも転がるように身を投げながらコブラは思う。
一瞬、そのまま北崎から逃げようと思った。
事実、直ぐに踵を返し、全力で駆け出せばこの場から逃げ出せたかもしれない。
だが、コブラはどうしてもその選択が取れなかった。
友達のわけがない。
こっちはこれ以上関わりあいを持ちたくはない事をわかっているだろうに。
それでも、さも助けるのが当然かのように不気味に笑いかけてくる北崎は恐怖の対象であり、逃げても無駄な気がしてしまった。
逃げても必ず捕まえる――そう言われている気がして、気つけば駆け出していた。
コブラがこの場で行う事は何よりも自分の命を優先させる事。
ならば、その場しのぎのためにも強い方につくと、結果からすれば極めて単純な動機で彼は北崎の願いを聞き入れた。

「なっ! てめぇは!?」

何度か声を聞く度にファイズが一度共に闘った男だとコブラは知った。
だが、あの時の共闘は只、目的が同じだっただけの事。
別にファイズに牙を向く事に対し、コブラには躊躇いはなかった。
自分と闘った時の姿とは別の姿を持ち、しかも強力無比なその力を奮う事が出来る北崎。
最早、三田村には北崎に刃向かって勝利を収める気はなどなく、そんな事は無理な事だと確信した。
だから、三田村は動いた。
ファイズの恨みを買うよりも、北崎の怒りを誘ってしまう事を避けるために。

「悪く……思うなよ」

そのために何度か地で転がった後、ファイズを横へ突き飛ばし、コブラが低い声で唸る。
直ぐに立ち直り、後頭部に付けられた鞭のようなものを手に取り、立ち上がろうとするファイズに構える。
北崎の恐怖を必死で抑えているためか、若干声が裏返っているがその挙動には油断はない。
ショッカーの改造人間として、多くの裏切り者を始末してきたコブラ。
既に血で汚れきってしまい、何より共に愛し合った美代子のために覚悟など当の前に出来ている。
何人にも、どんなものでもその願いは阻止できない。
自分が生き残るためにもファイズを倒すべき敵として定め、コブラは一気に駆け出し始める。

「ふふ、嬉しいなぁ……三田村君が僕と一緒に闘ってくれるなんてさ。こうなったら僕も頑張るしかないのかな」

電子音声が鳴り響いた後、立ち上がったファイズは右腕にファイズショットを携え、取り敢えずはコブラを沈黙させるために、引き金を引く。
ファイズショットによる光弾の渦を掻い潜り、ファイズの方へ突っ込んでいくコブラを見て、ドラゴンオルフェノクがようやく腰を上げる。
少し気だるそうな言葉とは裏腹に実像が浮かべるのは嬉しそうな笑顔。
この場で見つけた面白い玩具である三田村が、命令を与えただけで自分の意のままに動いてくれる。
自分に抵抗する事は無駄であり、従わなければ待つものは死あるのみ。
そんな認識を他人に植え付けさせるには、圧倒的な力を持たなければ無理な事。
しかし、ドラゴンオルフェノクにはやり遂げる事が出来た。
わかりきっていたが、自ずと己の力の高さが証明された事に思わず胸が高まる。
敵を叩き潰す楽しみとはまた変わった、それでいて同程度程の喜びが支配し、それはモチベーションすらもあげていく。

「全力でね」

ファイズとコブラの闘いをじっと見つめながら、ドラゴンオルフェノクも駆け足気味に歩き出す。
別に自分を助けてくれたコブラに応えるわけではない。
只、自分も遊びたいから。
いつ壊れてもいい、自分の玩具と一緒に遊びの輪に混ざりたかったから。
そのためにドラゴンオルフェノクは再び、闘いへ身を任せ始めた。

◇  ◆  ◇

コブラが鞭を奮い、ファイズがファイズショットで乱射し、ドラゴンオルフェノクが執拗にファイズに向け、両腕を向ける。
三者入り乱れて次々と各々の立ち位置が変わってゆくのが闘いの進行の早さを現す。
互いの拳や獲物、光弾がぶつかる度に零れ落ちる火花は、その闘いが果てしなく現実味が帯びたものだと見る者に認識させるように咲き乱れていた。
機敏な動きで動き回る三人。
終わりが見えそうにない闘いが続く中、唐突にその闘いに区切りが訪れた。

「そろそろ決めようよ、三田村君」
「わ、わかった!」

二対一の闘いを強いられ、心なしか足元がふらついている様に見えるファイズ。
そんなファイズから少し距離を取り、ドラゴンオルフェノクが直ぐ傍に立っていたコブラに声を掛ける。
いささか過剰気味に反応するコブラは腰を落とし、一気に地を駆け出す。
右腕に持つものは今まで使用していた一本の鞭。
右腕を使い、鞭を右に左に振るい、ファイズの身体へ叩きつける。
此処に来るまでの疲労、そしてドラゴンオルフェノクとコブラによる戦闘の末、疲弊しきったファイズの動きは最早精彩を欠いたもの。
避わす事は出来ず、少し腕を立てただけで碌な抵抗も行えず、鞭による打撃を受けるがままとなるファイズ。
数度の衝撃、伴う火花とファイズの叫び声が彼に確実なダメージを与えている事がわかる。
やがて、コブラが振るっていた鞭を手元に戻した時には、ファイズの装甲の至る所に不自然なへこみが現れた。

「ッ! まだまだあああッ!!」

蓄積した疲労により両脚にかかる負荷がいつも以上に重く感じてしまう。
だが、多少前屈みになりながらも、ファイズは立ち続ける。
そしてファイズショットをバックルに戻し、ファイズポインターを再び右手に握り締める。
フォトンブラッドをエネルギーに換え、敵に叩き込むクリムゾンスマッシュに回数制限はない。
この場で最も危険な存在であり、以前自分と共に闘ったコブラを脅していると思われるドラゴンオルフェノク。
もしかすれば奴を倒せばコブラの戦意も喪失するかもしれないとファイズは踏み、腰を落とす。
もう一度クリムゾンスマッシュを蹴り込もうとファイズポインターを右脚に装填しようとするが、急にファイズの身体が宙へ浮き上がった。

「チェックメイト……ってやつだね」

いつのまにか距離を詰めたドラゴンオルフェノクが救い上げる様に腕を振り上げる。
衝撃により声にならないような嗚咽を漏らし、ファイズの身体が宙へ飛んだ。
吹き飛ぶ途中でファイズギアが外れ、ファイズより更に後方へ飛んでいく。
変身を解除され、元の姿へ戻った海堂がファイズギアを手繰り寄せるように腕を突き出すが敢え無く空を切る事となる。
二度、三度とファイズギアが地面と擦れる音が甲高く響き、ある方向へ滑るように流れていく。
ドラゴンオルフェノクの元でもなく、コブラの元でもない。
装着者を失ったファイズギアが幾度かの回転を終え、やがて止まった。


「……え?」

本能的に危険から逃れようとしていたのだろう。
歌舞鬼よりも更に後ろ斜めの位置を陣取っていた桐矢の目の前にファイズギアが転がった。
ファイズフォンも健在であり、オルフェノクの記号を持つ者ならば今直ぐにでも変身を行える。
だが、桐矢はファイズギアの装着者の条件は知らず、それどころか変身の仕方もわからない。
海堂がやってみせたのを見ただけであり、携帯のどこか同じボタンを三回押し、最後に別のボタンを押し、バックルに差し込むぐらいだ。
自分にとっては無用の長物でしかないファイズギアを桐矢は目を見開いて凝視する。
そんな時声が響いた。無邪気な声が全員の耳に。


082:東條悟のお料理教室 投下順 083:EGO(後編)
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078:零れ落ちる闇 海堂直也 083:EGO(後編)
080:出たぞ!恐怖の北崎さん 歌舞鬼 083:EGO(後編)
080:出たぞ!恐怖の北崎さん 三田村晴彦 083:EGO(後編)
080:出たぞ!恐怖の北崎さん 桐矢京介 083:EGO(後編)
080:出たぞ!恐怖の北崎さん 北崎 083:EGO(後編)
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