EGO(後編)

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EGO(後編)


「確か桐矢君だっけ。 どうしたの、拾わないのかな……それ。
5のボタンを三回、ENTERを押せばお終いさ……それだけで君もなれるんだよ。
海堂君が成った仮面ライダーにねぇ……」

ドラゴンオルフェノクはラッキークローバーの一員であり、他のオルフェノクより当然村上との繋がりは強い。
三本のベルトの事は一通り聞き知っているドラゴンオルフェノクが何故か桐矢にファイズギアの使用法を口頭で説明し始める。
変身回数や時間に制限が掛けられているこの場では、三本のベルトだけに限らず、変身ツールを多く持つ事に越した事はない。
今まで幾度もなく潜って来た戦闘の末、当然その事はドラゴンオルフェノクも知っている。
ファイズギアはオーガギアよりは劣るものの、手に入れれば己の力となるというのに、ドラゴンオルフェノクはわざわざ桐矢に知らせる。
一番重要な変身条件の事は未だ口に出してはいないが、何故ドラゴンオルフェノクは敢えてこんな真似をするのか。
そんな疑問の目を周囲から集めながら、ドラゴンオルフェノクは話を続ける。
三田村を嗾けた時と同じように、何かを楽しむような目つきで。

「仮面ライダーとなって僕と闘うか、それともそのおもちゃを僕に渡して友達になるか選ばせてあげるよ。
誰の指示も受けずに、君の意思で……」

三田村の選択の結果を楽しんだように、ドラゴンオルフェノクは桐矢にも選択を迫る。
その行動の原動力となるものは純粋な興味。
自分がファイズの力を奪い、その力で叩き潰すのもいいが、それでは少し芸が無い。
手間と時間は掛かるが敢えて桐矢に選択を強いさせ、その結果を楽しむのもいいだろう。
変身するのであれば――いや、変身しようと自分に敵対する意思を見せるならば殺す。
命を請うのであれば今この場では特別に許し、所詮虫けらと等しい存在なので哀れに殺してやろう。
そんな思いを抱きながら、ドラゴンオルフェノクは口を開いていた。
依然、歌舞鬼は何かを思い悩んでいるように動きを見せず、ドラゴンオルフェノクも彼の方は一瞬見ただけで、直ぐに眼を逸らした。
勿論、歌舞鬼に全く興味がないわけではなかった。
海堂が沈黙した今、自分と闘ってくれそうな中で一番強いと思える歌舞鬼を無視する手はない。
だが、どうやら歌舞鬼は自分に向かって来ない事からあまり乗気ではないらしい。
また、一番手応えがありそうなのと最後に闘うのも悪くないとドラゴンオルフェノクは考えていたので今は歌舞鬼の事については保留と見なしている。
地に倒れ伏す海堂の数歩先まで歩いたドラゴンオルフェノクの後方には、コブラの姿が見えた。
自分が気絶した時に介抱された事もあり、コブラは桐矢には確かな恩がある。
しかし、コブラは一歩も動くことなく、事の成り行きを見守っているだけだった。

(冗談じゃない、北崎……さんを相手に回してでも桐矢を助けるのはデメリットがありすぎる……)

桐矢が死ぬ事に全く抵抗がないわけではないが、一歩間違えればドラゴンオルフェノクの怒りを買ってしまうかもしれない。
無意識の内に敬称をつけてしまった事にも特に抵抗はなかった。
そうなれば無事に済むわけも無く、みすみすそんな危険を冒す程、桐矢の命はコブラの中では重要ではなく、彼は確実に安全な手を取った。
何かを訴えるような眼で此方を向いてくる桐矢の視線が妙に痛い。
仕方ない。自分にはそこまでの力がないのだから、多少汚い手を使っても仕方ない筈。
声にならない呟きで自分の正当性を言い聞かせ、やがてコブラは桐矢から視線を外した。
そして、ドラゴンオルフェノクが新たな一歩を踏み出す。


「さあ、どうしょうか? ねぇ、桐矢京介君?」


両腕の爪を研ぎながら、ドラゴンオルフェノクが依然歩き続け、改めて問いかけを口にする。
未だ、間に海堂と歌舞鬼を挟んでドラゴンオルフェノクと桐矢は数十メートル以上も距離が開いている。
だが、段々とドラゴンオルフェノクの歩みは速くなっていき、既にもう話す事はないと示しているようだ。
思わず後ずさりする桐矢、直ぐにでも崩れてしまいそうな表情を浮かべて、彼はファイズギアを手に取り――


「う、うわあああああああああああああッ!!」


急に後ろを振り返り、逃げ出した。
脇目もくれず、桐矢の大きな叫び声で思わず後ろを振り返った歌舞鬼とも視線は合う事なく――

桐矢はこの場から逃げ出した。


「あーあ……期待外れだったなぁ……」

逃げてゆく桐矢の姿が小さくなっていくのを見届け、ドラゴンオルフェノクが心底つまらなそうな声を上げる。
自分が提示した選択は取らずに、ファイズギアを持ち逃げした桐矢。
今まで自分が一度も遊んだ事はないファイズギアは少し惜しかったが、最早、逃げるだけしかない桐矢に対する興味は失せきっている。
だが、あんな行動を取ったという事は桐矢もまたコブラと同じように自分に興味を抱いているという証明。
揺るぎようの無い事実だと思っていたがその事を再度認識出来た事にほんの少しだけ、桐矢への不快感が消えていった。
やがて、ドラゴンオルフェノクは最後のご馳走をいただこうと、視線を動かした。

(さぁ、君は楽しませてくれるのかなぁ?)

未だ実力の程を知らない、未知なる存在、歌舞鬼。
今もこの場に残っている事からして自分と闘うつもりなのだろう。
自分の遊び相手が未だ一人居る事がたまらなく嬉しく、ドラゴンオルフェノクは歌舞鬼の方へ向き直ろうとする。
そんな時だ。

「おらああああああああああああああッ!!」

突然、ドラゴンオルフェノクの足元から何かが飛び出すように現れ、彼を殴りつけた。
濁った白い塊のような何かがドラゴンオルフェノクの右頬を抉るようにぶつかり、大きな衝撃を生む。
不意に貰った一撃によりよろめくドラゴンオルフェノクはふと思う。
同じような事があり、とても不快な感じがしたあの時の事。
弱者である一条薫に一撃を貰ってしまったあの事を思い出し、ドラゴンオルフェノクは静かに怒りを燃やす。

「へっ、俺様を忘れてんじゃねぇぞ……この海堂直也をなぁッ!!」

一瞬の内にスネークオルフェノクへ姿を変え、渾身の一撃を叩き込んだ海堂に対して。

◇  ◆  ◇

自分は何故こんなところに立っているのだろうと海堂は思う。
世界一のミュージシャンを目指していたのに、ひょんな事からオルフェノクに使徒再生する事になったあの日から全ては変わってしまった。
そして今度は殺し合いとやらに巻き込まれ、今はこんな窮地に立たされている。
以前一緒に闘い、敵対関係ではなかったのに唐突に牙をむいてきた三田村。
木場から譲り受けた大切なファイズギアを勝手に手に取り、何処かへ逃げ出した桐矢。
闘った事もあるためか手を貸さそうとはせずに只、静観を決め込んでいる歌舞鬼。
北崎以外にこの場に明確な味方は居ない。
仲間と、友といえるような者は一人も居なく、何の因果か自分の状況を不利にさせる事しかしてくれない。

「まだやるんだ。もう、君には勝ち目はないと思うけど頑張るね。何がそこまで君を動かすのかなぁ……」

確かにそうだと海堂は密かに思う。
ファイズに変身し、一人でもやれるところまでやった。
だが、結果は伴わず今は身体中が痛みで軋み、頭は垂れ下がっており、オルフェノクの姿を維持するのがやっとの状態。
もう、先程打てたような拳は握る事も出来ず、はっきりいって事態はかなり深刻だ。
痛む身体に鞭を打つような思いでここまでやってきたというのに。
こんな事ではやってられない、たまったもんじゃない――
そう思い、ドラゴンオルフェノクに変身を解除されられた時、失いかけた意識を無理して掴まずに深い眠りに落ちる事もやろうと思えば出来た。
北崎の性格上、気絶していればつまらないとかそんな理由でやり過ごす事も出来たかもしれない。
だが、それは以前の話だ。


「言っただろ。俺はこれ以上見たくはねぇんだよ……死んでいく奴は、あいつのような奴はなぁ……」


思い出すのは赤茶色のへんてこな奴。
変な喋り方をして、少しばかしドンくさくて、それでいてちょっと人間じゃないあいつ。
何度でも思い出せるのはあいつの声。
馬鹿みたいに脳天気な声は苛立ちを覚えさせてくれた。
だが、それ以上に悪くない心地がした。
素直で、自分の話を真剣に聞いてくれたあいつ――モグラ獣人を海堂が忘れた事はない。
出来るものならば何も出来なかったあの自分をぶん殴ってやりたい気持ちが燃え滾る。
しかし、そんな事は無理なのはいうまでもない。
だから、せめて今だけは全力を尽くす。
自分の限界などは通り過ぎて――只、全身に力を込める。
たとえ、これ以上一歩も動けないとしても。


「僕にはよくわからないなぁ。弱い奴が駄目なのに……まあ、良いさ。君がくだらない理由で闘ってるのだけは良くわかった……。
だから、もういいや。トドメをさすから……“仮面ライダー”の力でね」

どうして自分と出会う奴は良く飽きずにこんな事を言うのか。
心底興味がなさそうな表情でドラゴンオルフェノクはオーガギアを取り出す。
地のベルトと称され、その力は強大無比。
既に海堂はその力を、身を持って知っている。
自分一人、しかも満身創痍であるこの状況ではとても勝ち目は無い。
その事実を見越しているためドラゴンオルフェノクには溢れんばかりの余裕がある。
スネークオルフェノクの反応をわざわざ窺う余裕すらも。

「てめぇが……てめぇなんかが…………」

そんな時、ぽつりぽつりとスネークオルフェノクの口から小さな言葉が洩れる。
段々と大きくなる声につれて、スネークオルフェノクはついに顔を上げた。


「てめぇなんかが……仮面ライダーの名を口にするんじゃねえッ!!」


大声を上げるスネークオルフェノク。
予想外の言葉、仮面ライダーを嫌っていた筈であるスネークオルフェノクの言葉にドラゴンオルフェノクは声の大きさと相まって思わず驚く。
既にボロボロな身であるにも関わらず、その顔には大きな意思が宿ったように力強いもの。
ドラゴンオルフェノクの言葉に対して――反抗の意思を貫き通すように。


『困ってる人は絶対に見捨てないし、助けを求める人がいたらどこへだって飛んでいくんだ』

「仮面ライダーはなぁ……困ってる奴を助けて、どんな時でも助けを求めてる奴のところへ行くんだよ……!
だから、俺は決めた。仮面ライダーになることを……あいつを嘘つきにさせないためにもッ! 俺は、俺はああああああああああああああああッ!!」


幻聴の類なのだろうか。
何故か、あの時自分に向けて嬉しそうに語ったモグラの言葉が聞こえてくるような気がする。
モグラの言葉と自分が見つけた答えを合わせて――只、言葉を紡ぐ。
モグラが信じた仮面ライダーを、彼の意思を嘘で終わらせないためにも。
自分が証明させてやると誓ったスネークオルフェノク、いや海堂の意思には今も迷いはない。
ありったけの言葉になけなしの力を込める。
血が滲み始めた身体はもう少しだけ我慢してもらえ。
一秒でも長く意識を保つためにも
たった一人でも構わない。
誰かのために……誰かを助けてあげられるような存在に――


「俺は人間を守る! 守ってみせるぜ……一人も見捨てずに絶対になぁッ!!」


誰しも憧れるヒーローとなり、希望を分け与える。
その決意をドラゴンオルフェノクに叩きつけた。
呆気に取られたドラゴンオルフェノクの動きは暫し止まるが、やがて動き出した。

「くだらない。ああ……本当にくだらないなぁ!」

ドラゴンオルフェノクにとってつまらない御託を並べるスネークオルフェノク。
オーガに変身するのも気だるく、この場で邪魔なオーガギアは放り投げる。
既にフラフラな身であるにも、異様にしぶといスネークオルフェノクにトドメをさすべく右腕を向けた。
一直線にスネークオルフェノクの右胸に突き刺さろうとする右の尖爪。

だが、それがスネークオルフェノクの身体に届く事はなかった。

「そらあッ!」

スネークオルフェノクの後方から走ってきた一つの影が叫ぶ。
右腕に握られたものは一振りの刃。
その刃を渾身の力でドラゴンオルフェノクに向けて突き刺し、またも不意の一撃で彼は後方へ吹き飛ぶ。
地を転がる事となったドラゴンオルフェノクにコブラは慌てて駆け寄るが、乱暴に振り払われてしまう。

「なんのつもりかなぁ……?」

起き上がりながら憎憎しい声で口を開くドラゴンオルフェノク。
表情に浮かぶのは確かな苛立ち。
スネークオルフェノクにはもう反撃を行う力などないため、彼は違う。
そのためそんな方には向いていない。
ドラゴンオルフェノクが見つめる先は赤と緑の戦士。
海堂やモグラが思い浮かべる仮面ライダーとはまた違う戦士――いや、鬼。
戦国時代を己の力で生き抜いてきた男。
鬼と呼ばれ、慕われ、そして恐れられていた男。
鬼の名を持つ男がスネークオルフェノクを庇う様に前に出ていた。

「悪いなぁ。ちょっくら遅くなっちまったが俺も混ぜてもらうぜ。今からこの歌舞鬼も一枚噛ませてもらう……“仮面ライダー”とやらのお話にな」

口を開いたのは歌舞鬼。
いつのまにか変身を終えて、鬼の姿となった歌舞鬼がドラゴンオルフェノクと対峙する。
音叉を変形させた鳴刀・音叉剣を右手に持ち、油断無く構える。

「やっぱり君も変身できるんだね。嬉しいなぁ……けど、わからないなぁ。なんで今頃になってそれを助けるの?」
「あーそれは簡単だ。簡単な答えだ、北崎」

ドラゴンオルフェノクが疑問に思うのも無理はない。
今まで全く行動を起こさなかった歌舞鬼が何故この場になって動いたのか。
しかもわざわざ不利な立場に立つったのかはドラゴンオルフェノクにとっていまいちわからなかった。
その言葉を受け、歌舞鬼は腕を首の高さくらいまで持っていき、首を一回転させて口を開いた。


「俺の使命もその海堂って奴と同じなんだよ。人間を守る……そうさ、それが俺の、俺達鬼の使命。俺はそれのために闘っているのさ」


思わずドラゴンオルフェノクの表情が歪む。
またもくだらない理由。
折角闘える力を持っているのに、わざわざその力を殺すような真似をするスネークオルフェノクと歌舞鬼。
気に入らない虫けら達を倒すために、ドラゴンオルフェノクは完全に立ち上がった。

「おい、てめぇ……取り敢えずはありがとよと言っておくがあのアマゾンって奴はどうした!?
ちゅーかお前ら一緒じゃねぇのかよ!? 俺はあいつに話があるんだ!」
「今は話してる場合じゃねぇ。後で話すからよ……悪いな」
「はぁ? 何が――」

言い争いを始めるスネークオルフェクと歌舞鬼。
そんな時、突然歌舞鬼はスネークオルフェノクの鳩尾に拳による一撃を叩き込む。
疲弊しきっていたため、崩れ落ちるように倒れ、変身が解除された海堂を歌舞鬼は抱きかかえる。
そのまま海堂の身体をおんぶの形で担ぎ、歌舞鬼は唖然としているドラゴンオルフェノクの方へ振り返って口を開く。

「悪いが勝負はお預けだ。こいつはもう闘えそうにもないんでね……あばよ!!」

そう言って歌舞鬼は全速力で駆けてゆく。
現代ではなく、自転車すらもない戦国時代で生まれた歌舞鬼。
身体能力は人一倍高く、鬼に変身している事もあって、海堂を担いでもその速度は決して遅くない。
何故かドラゴンオルフェノクは動こうとはせずに、やがて歌舞鬼は完全に逃げきった。

◇  ◆  ◇

息も絶え絶えに桐矢はファイズギアを抱え、走り続ける。
三田村を力づくで従わせる北崎の力。
自分を眺める北崎の視線に耐え切れなくなり、彼は逃走を選択した。
抵抗するなどもっての他だが、ファイズギアを渡して見逃して貰う手段も北崎から示されていたが、桐矢にはその考えはなかった。
後ろを振り返り、自分を追う人影が見えない事を確認し叙々に速度を下げ、荒くなった呼吸を落ち着けて心の中で思う。

(三田村さんには鬼のような力がある……けど、俺には何も無い。北崎が満足出来る力はないんだ。
そうだ。あのまま仲間になっても、きっと散々こき使われていつか殺されるだけだったんだよ……。
だったら、俺の行動は間違ってない筈だ。あの海堂っていう人には悪いコトをしたかもしれないけど……仕方ないさ。)

一時的では駄目だ。確実に自分の命が保障される選択を取らなければならない。
単独行動を取らざるを得ないというデメリットはあるが、それでも北崎の仲間になる事は桐矢にとって願い下げだった。
今となってはどこか頭のネジが外れているような感じだった北崎と今後上手くやっていく自信はない。
そのため、追跡されたらどうしようという不安はあったが逃げる事に対し、桐矢は抵抗がなく、自分の選択には後悔はなかった。
たとえ海堂を更に危険な状況に追い込んだ可能性があっても、自分の安全と比べれば目を瞑るしかない。
やがて一時の休憩を終えて、桐矢は歩き出す。

(三田村さん、歌舞鬼さん……俺を見捨てるなんて。三田村さんは未だわかるけど、歌舞鬼さんは……失望したよ。
今度はもっと親切で頼りになる人を捜さないとな……このベルトで闘ってくれる人を)

自分に救いの手を差し伸べてくれなかった三田村と歌舞鬼に静かな怒りを燃やす。
特に歌舞鬼は何もせずに、只ボーっとしていただけ。
胸の奥底で沸々と湧き上がってくる苛立ち。
最早、わざわざ会いに行くこともないだろう。
色々とお世話になったりしたが缶詰の事などこちらも色々と教えてあげたので、ある程度の恩は返せた筈。
歌舞鬼達との合流は考えずに、桐矢は新たな合流者、ファイズギアを使って自分を守ってくれる人物を捜すために歩き続ける。
やはり咄嗟に思い浮かぶのは鬼に変身できるヒビキ。
未だ接点はあまり作れてはいないが、接触する価値はあるため、当面はヒビキを第一目標と定めた。
咄嗟に手に入れたファイズギアをしっかりと確認するように見つめる。
鬼のような存在、“仮面ライダー”という存在にさせてくれる変身ツール。
自分でも試してみようと思ったが、変身の際に流れるフォトンブラッドが電流のように見えどうにも怖くて桐矢には出来なかった。
決意を乗せた足を踏み込み、桐矢は歩きながらふと思い出す
北崎と自己紹介をした時にふと小さな声で彼が呟いた名前を。
まるで自分の顔を探るような目つきで呟いた名前を。

桜井侑斗という名が何故か桐矢には引っかかっていた。



【桐矢京介@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:F-6北東部】
[時間軸]36話、あきらに声を掛けた帰り
[状態]:やや疲労、軽い擦り傷、僅かな人間不信 、
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料紛失) ラウズカード(スペードの10、クラブの10) 、ファイズギア
【思考・状況】
基本行動方針:生き残る
1:取り敢えず今は何処かへ逃げる。
2:激しい恐怖(特にダグバ、ゾルダ、ドラゴンオルフェノクに対して)
3:アマゾンが心配。
4:響鬼が助けてくれることへの僅かな期待。
5:誰かにファイズギアの使用法を教え、その人物に保護してもらう。(出来ればヒビキが良い)
6:海堂に対して罪悪感。三田村と歌舞鬼、特に歌舞鬼に対して怒り。
7:桜井侑斗って誰だ?
【備考】
※自分を助けてくれた男性(水城)の生存の可能性は低いと予想
※食料は移動中に紛失しました。
※ファイズギアの装着者の条件は知りません。
※何処へ行くか次の書き手さんにお任せします。



「皆居なくなっちゃったね……」

海堂を担ぎ、逃げていく歌舞鬼を追う事なく、ドラゴンオルフェノクはオーガギアを回収しながら呟く。
ドラゴンオルフェノクが彼らを追わなかった理由は単に、気が削がれたから。
それ以外に特に理由はない。
海堂と歌舞鬼との決着は後回しと考え、既に桐矢の事はほとんど意識してはいなかった。
やがて変身を解除し、人間の姿に戻る北崎。
そんな北崎を見て、コブラも同じようにマスクを外し、元の三田村へと戻る。
結局、この場では使う事がなかったオーガギアを手で回しながら、北崎は三田村の方を振り向いた。

「じゃあ、三田村君。取り敢えず何処かでちょっと休憩しようか。次の相手と遊ぶためにね」

己の力に絶大な自信を持つ北崎だが、流石に少しは疲労を感じているのだろう。
休憩を持ちかける北崎に三田村は驚きながらも頷く。
北崎が自分と闘えと言うと思っていたため、三田村にとっては幾分マシな条件といえる。
北崎の力は強大で恐ろしい。だが、逆を返せばその力が自分に向けられずに、共に闘う事となったらこれほど心強い事はない。
信頼関係もへったくれもない関係だが、未だ40人は居ても可笑しくないこの状況では兎に角生き残る事を優先するべき。
そう考えると今は北崎との同行も我慢出来ないような事ではなかった。
やがて、心なしかホッとしたような表情を浮かべ三田村は歩き出す。
歩き出した北崎の後を追うように三田村は少し、足を速めた。
そんな時、北崎が再び口を開く。

「そうだ。もっと友達を増やしても面白いかも。君のようなのをあと一人か二人ぐらい……あんまり一杯居ても邪魔くさいから」

他人をそこらに生える草木のように話す北崎に三田村は相槌をうつ。
相変わらず傲慢な態度だなと思うと同時に、三田村は北崎の考えに疑問を抱く。
確かに生き残るために仲間を増やすのは良いかもしれない。
だが、自分達は優勝を目指している。
始まりの地で村上は優勝できるのはたった一人と言っており、最終的に一人を決めなくはていかず、幾ら仲間を増やしても意味はないのではと三田村は思う。
いや、そもそも優勝を目指すならあの場だけなら兎も角、北崎が自分を仲間に引き入れたのも良くわからない。
いつかは闘わなければならない事を忘れて、気の赴くままに口を開いていたのだろうか。
そんな疑問を胸に潜めていると北崎が言葉を続けた。

「それで最後は僕達が闘い合うんだ。仮面ライダーの力を一杯手に入れて、闘って闘って……決めようよ。
本当に最強の存在をさ」

思わず三田村の血の気が引く。
やはり北崎は最終的には自分を逃すつもりはないらしい。
来るべき北崎との闘いはどうしようもなく怖いが、要は最後の最後で北崎に打ち勝てば良いのだ。
勝率は限りなく低いが、この状況で一人になり、優勝を目指すよりかは未だマシな条件。

「……わかった」

生き残るためにも三田村は決意を固めて北崎に返答する。
口ではそんな事を言うが、気が変わりいつ襲い掛かっても可笑しくはなそうな北崎への恐怖を必死に抑えて。
依然、ひどく掴みどころのない笑顔を向けてくる北崎。
そんな彼と行動を共にする事を三田村は受け入れた。
これからどんな運命が自分を待っているのか。
その三田村の疑問は誰にも答えられるものではなかった。
少なくとも今のところは。



【三田村晴彦@仮面ライダー THE FIRST】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:F-6南エリア】
[時間軸]:原作での死亡直前から
[状態]:全身に中度の疲労、胸に強い痛み、北崎に対する強い恐怖 、二時間コブラへ変身不可能
[装備]:特殊マスク、鞭
[道具]:基本支給品・不明支給品×1
【思考・状況】
基本行動方針:彼女を救いたい。
1:望みを叶える為にも、バトルロワイヤルに生き残るしかない。
2:生き残るために今は北崎に逆らわず、彼と行動を共にする。
3:いざとなれば迷わない……はず。
4;桐矢、海堂に僅かな罪悪感。
【備考】
※変身制限がある事をなんとなく把握しました(正確な時間等は不明)

【北崎@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:F-6南エリア】
[時間軸]:不明。少なくとも死亡後では無い。
[状態]:全身に疲労。頭部、腹部、両腕にダメージ。背部に痛み。ドラゴンオルフェノクに二時間変身不可。
[装備]: オーガギア
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを楽しんだ上での優勝。
1:今のところは三田村を引き連れて行動し、最終的には闘う。また、三田村のような人間をもう一人か二人手下にするのも面白いかも。
2:五代雄介、「仮面ライダー」なる者に興味。
3:桜井侑斗、香川英行とはまた闘いたい。
4:ゾル大佐、橘朔也と会ったら今度はきっちり決着をつけ、揺ぎ無い勝利を手にする。
5:「仮面ライダー」への変身ツールを集めたい。
6:木場勇治はどうせだから自分で倒したい。海堂直也と歌舞鬼はいつか倒す。
7:三田村晴彦は面白い。玩具的な意味で。桐矢はもうどうでもいい。
8:取り敢えず放送まで何処かで休む
※変身回数、時間の制限に気づきましたが詳細な事は知りません。
※桐矢京介を桜井侑斗と同一人物かどうかほんの少し疑問。
※どこへ向かうかは次の書き手さんにお任せします。



(助かったのかぁ……俺は……)

歌舞鬼の背中に揺られ、殆ど失いかけた意識の中海堂は自分が生きているのを実感する。
身体の節々が大きな悲鳴を上げているが致命傷は無い。
取り敢えず勝ち取った幸運を噛み締め、今後自分がやるべき事を確認する。
先ずは手荒な方法で自分を助けてくれた歌舞鬼とやらを一発ぐらいなぐり、話を聞く。
モグラを殺したアマゾンの事を聞き、やつの場所を聞き出す。
そしてその後はファイズギアを持っていった桐矢を見つけて……いや、木場達との待ち合わせの約束もあった。
北崎達も放って置くわけにもいかない。
……やる事が多すぎだ。昔の自分なら直ぐに厄介事は放り出したのに……可笑しなもんだ。
小さく自嘲し、やがて海堂は一つの決断を行った。

(とにかくあれだ。今は少しだけ寝るか……少し、少しだけな……)

今は休もう。
どうやら歌舞鬼も自分をやすませようと何処かへ持たれかけられるように下ろしているようだ。
そして消え行く意識を手放し、海堂は一時だけ眠りに耽ろうとする。
やるべき事、やりたい事は一杯あるので一時だけ。
そう願った海道だったが――



何かがチクッと胸の辺りに当たったかと思ったその瞬間。




何かが自分を貫き、そして自分の身体から水のようなものが抜けていく心地がし――





海堂の意識は深い闇の底に沈み、二度と彼が目を覚ます事はなかった。



【海堂直也@仮面ライダー555:死亡確認】

【残り36人】



◇  ◆  ◇


音叉剣を既に物言わぬ海堂の胸に、丁度心臓のあたりから引き抜き歌舞鬼は変身を解除する。
苦しまないように一思いに刺したせいか、それとも既に声を上げる元気がなかったせいか海堂の最後の抵抗はなかった。
浮かべる意思は見えない。
感情が無さ過ぎる冷めた表情で海堂の亡骸を凝視する歌舞鬼。
やがて固く閉じていた口を開き、歌舞鬼は海堂に向かって言葉を発し始めた。

「悪いな。恨み言なら俺が地獄に落っこちた時にな……まあ、当分行く気はねえけどよぉ……。
この殺し合いとやらに優勝するつもりだからなぁ」

当然、木に持たれかける様に腰を落とした海堂からは何も返ってこない。
その事に対し特に気落ちする事もなく、歌舞鬼は立ち上がり、その場を後にする。
目的地はない。市街地に向かうのもいいが、絶対に行かないといけないというわけでもない。
只、この殺し合いに優勝するために他の参加者と接触するために歌舞鬼は歩き出す。
そう。海堂が命を賭けて闘った姿を見て――
現実の非常に絶望し、この殺し合いに乗る事を決めた歌舞鬼はしっかりと前へ前へと一歩を踏み出す。

(一人残らず人間を守る……結局、そういう奴から死ぬんだよ。そんな上手い話は夢のようなもんだ。釣り合う力もないのに、大きなコトを言う奴はな
だから、海堂はあんなにボロクソにやられた。俺が茶々をいれなけりゃあ間違いなく死んだ……
俺は、そんなコトは御免だ……また、何も出来ねぇ内に死ぬのはよぉ)

海堂が言った言葉は確かに素晴らしい事だと思う。
魔化魍を全て一掃し、全ての人間を守る事が出来たらどんなに良い事か。
だが、そんな事は無理なのだ。
幾ら大きな意思があっても力が伴ってなければ意味が無い。
世界はそれほどまでにやさしくは出来てはいない。
只、途中でぶち当たった壁に阻まれて無残に力尽きるようなもの。
その事を、見事に身を張って見せてくれた海堂を見て歌舞鬼は改めて自分の考えが正しかった事を思い知り、そして残念に思う気持ちが僅かにあった。
何度も何度も打ち倒されても立ち上がり、闘い続ける海堂を見て、歌舞鬼にもほんの小さな希望が叙々に生まれていった。

――この男は自分が出来なかった事をやり遂げる事が出来るかもしれない。

自分を人と見なさず、見下した大人どもの存在がどうしようもなく気に障り、自分が断念した使命。
そう。先程、ドラゴンオルフェノクに対し言った自分の使命を諦めずに成し遂げようとする海堂。
そんな彼の姿が以前の自分と、あの時自分に打ち勝った響鬼と何故か被った。
海堂と共に自分もかつて追い求めた理想を追うか。
たとえ再び険しい道を辿る事となっても――
そんな想いを馳せながら闘いを見守り、海堂がファイズの変身を解除した時、助けに行くか歌舞伎は悩んでいた。
一度、本当に最期の最期だけしか満足いく事しか出来なかったあの一度目の人生を送るきっかけとなった、使命への挫折。
その大きすぎる使命を目指して、自分は再び道を間違える事なく進む事が出来るのか。
選択は歌舞鬼にとって難しいものであり、それは桐矢を守る行動にも支障をきたした。

(結局高望みしすぎたのさ……俺も海堂も。京介を、子供一人すら守れなかった俺は特にな)

逃げてゆく桐矢を見て、自分の無力さに打ちひしがれ歌舞鬼は更に選択が遅れた。
やはり自分には全ての人間を守るなど大それた事は出来ない。
結局歌舞鬼は最期まで手出しできなかった。
魔化魍のように暴力を振りまく存在であるドラゴンオルフェノク。
そんな奴に最期まで戦士として闘い抜いた海堂を殺させたくはない。
だが、もう既に海堂の身体はボロボロで生きていればこれ以上に傷つく事もあるかもしれない。
腕が飛ばされ、足が千切れ、全てを失うかもしれない。
だったら、だったら――
自分の手でいっそ静かに眠らせてやりたい。
そう思い、歌舞鬼は己のエゴの下に彼を助け、そして音叉剣で眠りに落ちた海堂を刺殺した。

(いや、本当の理由はそれじゃあねぇ……そうだ。俺は海堂を殺して、踏ん切りをつけたかったんだ……。
大きな決意を持った海堂を殺して、もう後戻りできないようにするために……俺の世界に戻って魔化魍だけでも叩くためにな……)

自分が勝手な理由で海堂を騙まし討ちにしたのはわかっている。
だから、もう迷いはしない。
海堂の命を蹴落とした分もこの命は最期まで使い切ってみせる。
やるべき事も既に決め終えた。
先ずはこの殺し合いに優勝し、元の世界に戻る。
ヒトツメやオロチが破壊の限りを尽くしているあの戦国の時代に舞い戻り、全ての片をつける。
ヒビキを始めた7人の鬼と再び闘う事になっても気にする事はない。
只、自分が魔化魍の側についた事で苦しんだ人々のためにも、全ての罪を拭うためにこの身を費やす。
命を散らす事には恐れは無い。
寧ろ、既に生を終えた身でもあるので、全てを終えてから敢えて散らそうと思う気持ちすらある。
只、また何も出来ないで終わる結末を迎える方が怖い。
それが一度短い人生を終えて、最期まで人間を守ると言い続けた一人の男を見て、歌舞鬼が出した結論。
自分の力と相談した末、自分にはこの場に居る全ての人間の命を救う事は無理だと思い、それならば自分の世界に居る魔化魍だけは倒そうと考えた結果。
歌舞鬼は決意を秘め、歩き出す。

「さて……これからが本当の闘いだな」

ヒビキが相手でも構わない。再び騙まし討ちをしても厭わない。
アマゾン、三田村、桐矢は気にはなるが既に自分の道は一つ。
出会ってしまえば殺す事になってかもしれない――そんな事を思い、歌舞鬼は出来れば彼ら三人には会いたくないと思う。
そして北崎。
彼とやりあえば消耗は必至だが、優勝するためには仕方ない――
海堂のデイバックを担ぎ、そして今までのゴタゴタで確認していなかった自分の支給品を握り締めて歌舞鬼は当ても無く彷徨い始める。
説明書はどうやら特別に自分にも読めるようにしてくれたらしく、使い方は大体覚えた。
そう。それは歌舞鬼の新たな力。
かつて自分の幸せを掴むために奔走し、そして最期の最期で本当の幸せを掴み、消えていった男が使った力――

インペラーのカードデッキを強く握り締め、歌舞鬼は改めて殺し合いに身を投じた。



【歌舞鬼@劇場版仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:F-5南部】
[時間軸]:響鬼との一騎打ちに破れヒトツミに食われた後
[状態]:健康 二時間変身不可能(歌舞鬼)
[装備]:変身音叉・音角、音撃棒・烈翠
[道具]:基本支給品×3(ペットボトル1本捨て)、歌舞鬼専用地図、音撃三角・烈節@響鬼、GK―06ユニコーン@アギト、ルール説明の紙芝居、インペラーのカードデッキ@龍騎
【思考・状況】
基本行動方針:優勝し、元の世界に戻って魔化魍と闘う。そして最後は……
1:アマゾン、桐矢、三田村とは出来るだけ会いたくないが気になる。
2:子供は殺さない……?
3:北崎はいつか倒す。
【備考】
※カードデッキの使い方は大体覚えました。
※何処へ向かうかは次の書き手さんにお任せします。



083:EGO(前編) 投下順 084:夢路
083:EGO(前編) 時系列順 084:夢路
083:EGO(前編) 海堂直也 ---
083:EGO(前編) 歌舞鬼 092:鬼³
083:EGO(前編) 三田村晴彦 098:金色の戦士(前編)
080:EGO(前編) 桐矢京介 096:
080:EGO(前編) 北崎 098:金色の戦士(前編)
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