謎 罪 弔い

    

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謎 罪 弔い


その部屋は、複数の蛍光灯が天井に設置されていた。
細長い筒状の明かりは、広い空間に置かれている白いテーブルと棚、そして電子機器を照らしている。
電気によって生まれた光は、床に散らばっている埃の存在も知らせていた。
しかし、今この場にいる男達の中で、それに気を止める者はいない。
彼らは皆、テーブルに並べた複数の書類に意識を集中させているからだ。

「……ふむ」

高級感が溢れる純白のスーツと、漆黒のマントに身を包む白髪の老人、死神博士は呟く。
彼は先程、保養所の前で遭遇した二人組の男が手にしていた、首輪に関する書類を全て読み通した。
その中には、首輪の内部構造と思われる図と、それの解説と思われる文章が所々に書かれている。
だが、解除の方法に関する部分までは記されていなかった。
そして二つ目に、研究所で発見したと言われているファイル。
この中にも詳細なデータは残されておらず、この島で行われたと思われる実験に関する簡単な記述しか存在しない。
スマートブレインが首輪の解除を阻止するために、具体的な答えが残された書類は全て破棄したのだろうか。
死神博士の脳裏にその思考が浮かんだが、すぐに否定する。

(やはり、解せんな……)

真摯な瞳で羅列された文字を見ながら、心中で呟いた。
僅かなヒントになるような書類でも、殺し合いを行う前に処分するはず。
実は主催側が確認を怠った場所があり、そこにこれらのデータが残されていた。
などという都合の良い事態が起こるはずがない。
ましてや、ショッカー大幹部として多くの作戦を立ててきた自分や、IQ600を誇る本郷猛までもが参加者として選ばれているのだ。
先程の放送で呼ばれた、十面鬼ゴルゴスや牙王のような狂人ならばともかく、それなりに頭の働く者がこれを見つけては、解析するに違いない。
そしてもし、その参加者の仲間にスマートブレインを打倒しようと企てる者がいたらどうなるか。
考えるまでもない。その時点でこのゲームが成立しなくなるだろう。
これではまるで、スマートブレインの方から参加者同士で協力し、殺し合いを打倒しろと勧めているようなものだ。

(それでは……何のために儂らをこの島に集めた? 殺し合いをしろと言いながら、矛盾している)

だが、もしもこれらもスマートブレインが仕掛けた罠の一つだったとしたら。
ファイルを発見した途端に、その情報が一瞬で主催側に伝えられる。
そしてその参加者には、他と比べて必要以上に厳重な監視が付けられてしまう。
このような大がかりな殺し合いを開くことの出来る組織ならば、それを行う装置を用意していたところでおかしくはない。
結果、これらの書類に書かれた首輪の構図や実験の内容自体が、ダミーという可能性が充分にある。
もし仮に内容が真実だったとしても、手にした瞬間に必要な施設を使用不可能にさせるかもしれない。
例えば、自分達が今いるこの大学や、これから向かおうとしている研究所の電力が全て止められてしまう。
いや、それだけならまだいい。
最悪の場合、これらの建物をミサイルで参加者もろとも、破壊するといった手段も取りかねないだろう。
そうなると、書類を手に入れた時点で既に、ゲームオーバーの危機が目前まで迫っていることになるはずだ。
死神博士の明晰な頭脳によって、様々な可能性が導き出されていく。

「イブキさんっ……!」

仕立ての良い黒いスーツを着た男、北條透のメモを取る手は震えていた。
つい先程、携帯電話から発せられた、スマートブレインによる三度目の放送が知らせた死者の情報によって。
その殆どが彼の知らない名前だったが、二番目に呼ばれた名前が問題だった。
和泉伊織。
スマートブレインによって見知らぬ内に拉致されてから、この島で初めて出会った青年。
アギトとはまた別の力を持ち、鬼と似た姿に変わってアンノウンや乃木と戦った。
その彼が、この戦いによって犠牲となった。
葦原涼や風谷真魚、首輪の解除の為に別行動を取っている長田結花や城光、イブキが探していた桐矢京介が呼ばれなかったのは幸いだが、何の慰めにもならない。
スマートブレインから告げられた残酷な事実によって、北条の心は乱れていく。
それでも彼は、禁止エリアとなった場所を必死にメモとして残した。
悲しみに溺れて必要な情報を聞き逃し、それが原因で死ぬことは絶対に避けねばならない。

「なるほど……な」

嗄れたような声が、北条の耳に入る。
振り向くと、未だに死神博士が深刻な表情を浮かべたまま、自分の所持していた書類を見つめていた。
この老人は聞くところによると、技術者としての高い腕と知識を持っているらしい。
まさか彼はこの短時間で、設計図に書いてあった謎についての推理を終えたのだろうか。
微かな期待を胸に抱きながら、北条は口を開こうとする。
しかしそれより先に、死神博士の同行者である男、影山瞬が口を開いた。

「あの、死神博士。何か分かったんですか」
「少し黙らんか」
「あ……す、すみませんっ!」

死神博士の冷たい言葉を受けた影山は、狼狽したような表情を浮かべる。
それっきり、彼は一気に黙り込んだ。
もしほんの少しでも、死神博士の機嫌を損なうようなことをしては、その瞬間に命を奪われかねないだろう。
それに今は、先程の戦いから行動を共にするようになった、乃木という男に関しての警戒もしなければならない。
その男は現在、死神博士や北条と一緒に書類を眺めている。

(そういえばあいつ、何で俺がZECTだってこと知ってたんだ……?)

ふと、影山は考えた。
どうも、あの男は自分のことを知っていたらしい。
もしや、加賀美新と同じようにZECTのメンバーなのだろうか。
いや、それならば自分を傷つけるようなことはしないはずだ。それにあのような男がいるという話など、聞いたことがない。
それならば、何故。

(ま、まさかあいつ……ワームなのか!?)

思考を巡らせている内に、影山は一つの結論に至る。
ワーム。それは七年前、渋谷に落下した隕石から姿を現した生命体。
それは人間の姿に化けることが出来る擬態能力を持ち、社会の影に隠れて人々を襲っていた。
まさかそんな奴まで、この戦いに参加しているのか。
思えばあの間宮麗奈も、やたらとZECTの内部を探っていたような行動を見せていた。
あの女から組織の情報をワームに流していたのなら、自分がメンバーであると知られていても当然だろう。
ならばこの乃木という男も、首輪の解析を果たすために自分達を利用し、終わったら切り捨てるに違いない。

(冗談じゃない……こんな所で死んでたまるか!)

だがどうすればいいのか。
今、この場で死神博士に相談することも出来ない。かといって、隠れてやったところで知られる可能性もある。
でもこのまま放置していたら、間違いなく最後には三人揃って殺される。
仮にも影山はZECT本部直轄の精鋭部隊、シャドウのリーダーとなった男だ。
何かしらの対策を立てることなど、容易だった。だが肝心の手段が思いつかない。
新しく出来た生命の危機を前に、影山は恐怖と焦燥に駆られていた。
そんな彼の様子をよそに、死神博士と北条の二人はテーブルに並べた多くの書類を、ひたすら見比べている。

「それで、死神博士。何かお気づきになられたでしょうか」
「…………あまりにも、出来すぎているとは思わないか」
「え?」

北条は、死神博士の言葉によってぽかんとしたような表情を浮かべてしまう。

「この戦いを仕組んだスマートブレインが、このような物を会場に残したりするか?」
「では、ここに書かれていることは全て、嘘であると……?」
「そうは言わん。あくまで、可能性だ」

死神博士による冷たい言葉が、北条の焦りをより一層強めた。
これらのデータさえあれば、必ず脱出できるという楽観的な憶測をするつもりはない。
しかし、脱出における唯一のヒントが全て偽物だった、などという説を突きつけられては平静を失ってしまう。
もし死神博士の説が本当なら、研究所でも感じていた不安は的中ということだ。

(やはり、私たちがこうすることも……スマートブレインにとっては予想済みなのか……?)

首輪から感じる鉄の感触から、全身が凍り付くような錯覚に陥ってしまう。
同時に、キリキリと音を立てながら胃が痛むのを感じた。
正直な話、嘘なら嘘と確定して欲しい。その方が、全てを諦めて楽になることが出来るのだから。
勿論、そのようなことが許されないのは分かっている。ここで投げ出しては、亡くなったイブキに申し訳が立たない。
何より、自分を助けるためにあの未確認生命体第四号や光が動いているのだから。
彼らの意志を無駄にしてはならない。

「とにかくまずは、首輪について調べることが先決だ」
「そうですね……」

死神博士の言葉に応えることで、北条は落ち着きを取り戻す。
彼は工場で見つけた設計図に、再び目を向けた。

「死神博士、一つよろしいでしょうか」
「言ってみろ」
「この設計図の所々に書かれた『オルフェノク』とは……スマートブレインに関係することでしょうか」
「オルフェノク?」

彼らの間に、影山の声が入り込む。
それに反応した死神博士と北条の二人は、視線をそちらに向けた。

「どうかしたのですか」
「いや……俺、最初にそいつといたし」
「え?」

影山の言葉を聞いて、北条は疑問の表情を浮かべる。

「失礼ですが、どういうことか教えていただけませんか」

北条の言葉通りに影山は、オルフェノクという存在に関して話し始めた。
主催者によってこの会場に拉致されてから出会った、木場勇治という男。
同じオルフェノクである、長田結花と海堂直也。
彼が持つ、スマートブレインが生み出したベルトによって変身する、ファイズというライダー。
元々は普通の人間だったが、ワームと近い能力を持つ灰色の怪人、オルフェノク。
そして、そのオルフェノク達によって、このスマートブレインという企業が構成されていることを。

「…………これが、俺が知ってる全てだ」

影山が説明を終えるのと同時に、この部屋にいる者達は皆深刻な表情を浮かべていた。
特に北条は、彼の伝えた情報を一句漏らすことなくメモ帳に残している。
その一方で、死神博士は苦い表情で呟いた。

「あの男もスマートブレインと同じ、オルフェノクだったとはな……」

あの海岸でゴルゴスを相手に、影山と組んで戦っていた木場という男が、主催者と同じオルフェノクだった。
それを知っていたなら、何かしらの策を練ることが出来たかもしれない。
そしてあの銀色のベルトの技術も、戦力に出来た。
今更ながら、ゴルゴスや牙王のような愚か者と組んだことに、死神博士は後悔を覚える。
だが、過ぎたことを悔やんだところでどうしようもない。
放送では、木場勇治という名前が呼ばれなかった。ならば運がよければ再び遭遇し、戦力に出来る可能性はある。
しかし、それは限りなく低いと想定しなければならない。放送では、一文字隼人の名が再び呼ばれた。
これが示すことはただ一つ。
自分の知る一文字も、この島で遭遇した一文字と名乗った優男も、両方死んでいるということだ。
あの一文字が何故、自分のことを知っているのかは最後まで分からなかったが、もはやどうでもいい。
問題なのは、戦力の可能性となる男が、また一人減ったことだ。
これでは、スマートブレインを打倒する際に不安が増える。
あの乃木という男も、それなりの実力者かもしれないが、いつ裏切るか分かったものではない。

(それに、奴がオルフェノクなら、スマートブレインの手先という可能性もある……)

影山の話によれば、あの木場という男はスマートブレインに対抗しようと考えているようだ。
だが、それはあくまでも表向きの姿。
本当は、スマートブレインがこの殺し合いを煽るために派遣した、兵士の一人。
あるいは、自分達のようにスマートブレインに対抗する集団に侵入し、動きを伝えるスパイであることも考えられる。
既にその名が呼ばれた海堂直也はともかく、長田結花に対しても警戒をしなければならない。

「まさか、彼女がオルフェノクだったなんて……」

北条は驚愕の表情を浮かべながら、呟く。
第四号や光と一緒に、自分を助けるため青い薔薇や首輪のサンプルを探している少女。
そんな彼女が、スマートブレインと同じオルフェノクであることが、信じることが出来なかった。
だが、もしも影山の言葉が真実だったとしたら。
自分が遭遇したときに見せた、あの弱気な態度は只の演技で、本当はスマートブレインの手先という可能性もある。
そうなれば、同行している第四号や光の身が危ない。
しかし、今は何も出来ない。

「人間ではないと思っていたが、まさかそのような存在だったとはな……」

漆黒のコートで身を包む長髪の男、乃木怜治は口を開く。
長田結花とは、確か研究所でカードデッキを使って騎士を思わせる白いライダーに変身し、イブキと呼ばれた男と組んで自分に抗った弱者だった。
武器を首に突きつけた際、あの顔に黒い模様が一瞬だけ浮かんでいたのを、乃木は思い出す。
それが意味するのは、ワームとは別の人間ではない種族、オルフェノクであることの証拠だろうか。
そういうことなら、北条だけでなく長田も手元に置いておくべきだったかもしれない。
いや、あのような弱い者では大した手がかりは得られないだろうし、何より足手まといだ。
ここまでの放送で呼ばれなかっただけでも、奇跡かもしれない。
だが今はそんなことよりも、優先する事項が存在する。
自身を縛り付けている、この首輪だ。

「諸君、オルフェノクを警戒するのもいいが……それよりも優先することがあるのではないか?」

乃木の語りによって、この部屋にいる他の三人が振り向く。
それに合わせるように、彼は言葉を続けた。

「俺としたことが、肝心なことを忘れていた。首輪の手がかりは、先程の療養所とやらにあったことを」
「それは、ここに書かれているアンプルのことですか」

北条は乃木に答えるように、首輪の設計図を手に取る。
だが、彼は肯定の意志を見せない。

「そうではない。もっと単純なこと……これだよ」

乃木は右手の人差し指で、自らの首筋を指した。
その先にあるのは、この島にいる者全てに付けられている、銀色の首輪。
それを見た死神博士は、瞬時に意味を察した。

「……なるほどな」
「そういうことだよ、死神博士」
「確かに、そちらへ戻れば手に入るな」
「ならば急ぐぞ。道が禁止エリアとやらになるまでのリミットが近づいてる」

そう言うと、二人は席から立ち上がる。
会話に参加していない北条と影山は、いまいち状況が飲み込めなかった。
そんな彼らの方に、死神博士は振り向く。

「何をしている。お前達も来い」
「あの、死神博士。これから一体……」
「時間がない、早くしろ」

北条の問いかけに答えることなく、死神博士は部屋の出口に向かって歩き出した。
それを見た彼は、テーブルに広がっていた書類を急いで纏め、デイバッグにしまう。
持ち主の内面を現すような黒という色を持つ、死神博士と乃木の背中を見失わないように、北条と影山も外へ向かった。



空からは太陽の光が失われ、光を放つ星の数が増えていく。
だが、戦場という場所でそれに気を止める者は、誰一人としていない。
夜の闇が空の光を奪うことにより、辺りに冷たい風が吹き始めた。
冷気は肌にまとわりつき、歩く者の体温を奪っていく。
けれども、その足は止まらない。
一歩進むごとに、自身の胸が痛みを増していくのを、北条は感じていた。
それに合わせるように呼吸が荒くなるが、懸命に押さえる。
北条の脳裏に浮かぶのは、自分達を守るために命を捨てた青年、城戸真司の姿。
先程の放送で、イブキと共にその名が呼ばれた彼の身体は、既に動けるような状態ではなかった。
それにも関わらずして、その身を犠牲にして自分達を助けるために戦い、死んだ。
出来ることなら、綺麗さっぱり忘れてしまいたい数時間前の出来事。
だが、それは許されないことだ。
もし忘れるようなことがあれば、それは彼に対する侮辱以外の何者でもない。

「おやおや、酷い有様だねぇ……」

戦闘で歩いていた乃木が呟く。
大学より離れた一同はようやく、戦場となった保養所の跡地にたどり着いた。
本来なら休息の場として用いられるはずのそこは、戦いによって瓦礫の山と化している。
無惨に破壊された建物、地面に無造作に散らばったコンクリートの破片、焼け跡が残る土。
それらの痕は、仮面ライダー龍騎へと変身した城戸真司が、四人を守るために戦った証だった。
自分達のために戦った真司の姿を思い出し、北条と影山は唇を噛み締める。
一方で、死神博士と乃木は平然とした表情で、足を動かした。
だが、それはすぐに止まった。

「ククク……やはり戻って正解だったようだ」

満足げな笑みを漏らす、乃木の声が聞こえる。
それは瞬時に、北条と影山の耳に入った。
死神博士は何の表情も浮かべずに、デイバッグから鎌を取り出す。
自らの背丈ほどの長さを持つ銀色の凶器は、持ち主の冷酷な思想を現すかのように、冷気を放っていた。

「あの、どうかしたのですか」
「これを見たまえ」

瓦礫によって、足の踏み場が少ない道を進む北条に答えるように、乃木は指を差す。
言われるままに、そちらへ振り向いた。
その直後、北条の目は大きく見開かれることになる。

「まさか……!」
「そういうことだよ、北条君」

乃木はあっさりと言い放つが、彼の耳には聞こえていない。
息を呑む北条の瞳は、既に遺体となった真司の姿を捉えていた。
瞳は開くことを感じさせず、唇からは赤黒い血が微かに漏れている。
その身体は戦いによって多くの傷が付けられ、胸には大きな穴が空いていた。
四肢から流れた血液は、真司の身体を容赦なく濡らし、辺りに鉄のような匂いを漂わせている。
警察官という職業に就いている以上、死体の現場は何度も見てきた。
初めは嫌悪感を覚えたものの、経験を積むごとに慣れが生じ、精神が乱れることはないはずだった。
だが、今回は違う。警察官でありながら一般市民を守れなかったという罪悪感が、より一層沸き上がった。
そして、ここに訪れた意味を北条は気付く。
死神博士と乃木の二人は、真司の首輪を回収しようとしているのだ。
その死神博士は今、巨大な鎌をその手に持っている。
北条は真司を庇うように、前へ立った。

「待ってください」
「何のつもりだ、北条」

死神博士は怒りの目線で睨み付けるが、北条は全く怯んでいない。
それは、病院で鳥の怪人への攻撃を邪魔した城戸の言動を彷彿とさせるもので、死神博士に苛立ちを感じさせた。
そんな二人の様子を見て、乃木は鼻で笑う。

「北条君、分かっているのかね。彼は既に死んだ身だ、死体に拘って何になる」
「分かっています、私たちには首輪が必要だと言うことを。ですがっ……!」
「所詮、君はその程度ということか」

力強い目線を向ける北条の言葉を、乃木はあっさりと遮った。

「先程も言っただろう。一刻も早くこの首輪を解除することが、我々が彼に出来る唯一の手向けであると」
「貴方の言うことは正しいです。でも……!」
「ならば何故邪魔をする? 君のやっていることは、彼の行動を無駄にするのと同じだ」

一言一言が、北条の心を抉っていく。
乃木の言い分は正論だ。真司の首輪を得ることさえ出来れば、手がかりが得られる。
だが、それは彼の死を冒涜するに等しい。
いくら死人だからと言って、必死に戦ってくれた真司の身体をこれ以上、傷つけることは出来なかった。

「それに、彼は何のために我々を逃がした? 何のために戦った? その程度のことも理解できないとは……」
――俺が……道、開きます!

乃木の言葉を聞いた途端、真司の言葉が北条の脳裏でフラッシュバックする。
彼は強い意志が込められた瞳を向け、致命傷の傷を負ったにも関わらずして戦い抜いた。
それは何のためか。
この理不尽な殺し合いを強制する、スマートブレインを打倒するため。
その思いを自分達に託し、彼は散った。
そんな真司のために出来ることは、一つしかない。

「そうでしたね……私としたことが、本来の目的を見失っていました。申し訳ありません」
「やれやれ……」
「ですが、一つだけお願いがあります……せめて、彼の遺体だけは埋葬させてください」

北条は、死神博士と乃木に告げる。
これが彼に出来る、せめてもの弔いだった。
死体損壊の行為を見過ごすなど、許されるはずがない。
自分は警察官だから、尚更だ。
だが、このような相手の前では不可能となる。
ならばせめて、真司を弔うだけでもしなければならない。
それが生き残った自分に出来る、唯一のことだ。

「貴様、そのような勝手が許されるとでも……」
「待て」

今にも怒り出しそうな死神博士を、乃木は制止する。

「勝手にしたまえ。だが、長引くようなら……分かっているな」
「……そのつもりです」

北条は乃木に一礼すると、その場から離れる。
そんな彼を死神博士は睨み付けるが、すぐに真司の方に振り向いた。
元々はカイが生み出した最強のイマジン、デスイマジンの武器である鎌が、その手で輝きを放っている。
死神博士は真司の首筋を目がけて、横に薙ぎ払った。
刃は皮膚に食い込み、血管と神経を次々と切り裂いていく。
数秒の時間も経たない内に首が切断され、頭部と胴体が分離していった。
それによって、生気の感じられない真司の頭は地面に転がる。
その瞬間だった。
突如、真司の遺体から色を失っていく。青白い肌は、徐々に灰色に染まっていった。
そして、もう動くことのない真司の身体は崩れ落ちていく。
あとには、血だまりの中に沈む灰の山が残っているだけになった。
これは首輪を参加者から奪ったことで、起こってしまった現象。
北条と影山の二人は苦い表情を浮かべる一方で、死神博士は首輪を手に取った。





(ただの灰に対して下らない感情を持つとは……やはり、人間とは愚かなものだ)

灰になった真司を埋葬している北条と影山に対して、乃木は冷ややかな目線を向けている。
既に何の役にも立たない死人のために、わざわざ動くとは。
保養所の近くで遭遇したときもそう。
あの状況下で、邪魔にしかならない怪我人を助けようとした。
そして、安い言葉を少し投げただけで、信念を簡単に曲げる。
改めて乃木は、人間という種族がいかに愚かであるかを、認識する。
そんな彼の横顔を、死神博士は睨んでいた。

「乃木よ……何故、奴の勝手を許した」
「あのまま言ったところでどうせ聞きはしない、長引くのは御免だからね」
「奴らが無駄に時間を食ったらどうする」
「その時は、彼らの首輪も貰うだけだ」

乃木はあっさりと言い放つ。
対する死神博士は、苛立ちが混ざった溜息を口から漏らすしかない。
こんな下らないことで時間が潰されることが、何よりも耐え難かった。
身勝手なゴルゴスや牙王よりはまだマシかもしれないが、それでもストレスを覚える。

(そういえば……牙王と共に戦っていたあの男の死体がないな)

死神博士は、保養所で戦っていたカブト虫のような怪人に変身した男の姿がないことに、気付いていた。
あの時、仮面ライダーに変身した城戸の蹴りを受けて、発電機に叩きつけられたはず。
絶叫が聞こえたので即死したと思っていたが、まさか生きていたとは。
だが、そんなことは関係ない。
牙王と組んでいたからどうせ、奴も戦うことしか頭にない愚か者なのだろう。
そんな輩など、放っておけば良いだけだ。仮に遭遇したなら、乃木と戦わせればいい。
奴の戦力を計るのに、ちょうどいいだろう。上手くいけば、相打ちに出来る可能性もある。
死神博士と乃木が立つ場所から少し離れた位置では、北条と影山の二人がようやく、遺体の埋葬を終えた。
彼らの目前では、不自然に盛り上がった小さな赤い山が存在する。
その下では、この悲しい戦いの犠牲となった城戸真司が眠っていた。

「私の身勝手に付き合わせてしまって、申し訳ありません……」
「いや、別に言いさ……」

二人は言葉を交わし合うが、すぐに沈黙してしまう。
あれから影山も埋葬を手伝ってくれたので、スムーズに終わらせることが出来た。
だが、北条の気が晴れることはない。
真司を埋葬したところで、自分の行為が許されるとは思っていなかった。

――元々アホ男とは思ってたけど、私が間違いだった あんたはドアホよ

不意に、かつて小沢澄子より突きつけられた言葉が脳内で蘇る。
いつの頃か、アギト殲滅の計画を立てた時のことだ。
もしもこの場に彼女がいたら、死神博士や乃木を前にしたとしても、真司の遺体を守っただろうか。
そして、一般人を犠牲にして助かってしまった自分のことを、殴るに違いない。
口を開けば暴言や挑発しか出ない小沢だが、今だけはそんな性格が羨ましく思える。

(この程度のことしか出来ずに申し訳ありません……ですが、私は貴方の無念を晴らして見せます)

北条は、自分達を守るために戦った真司に言葉を送った。
影山と共に短い黙祷を捧げると、これ以上の失態は重ねないと決意する。
真司を犠牲にした罪は、一生消えることはない。
言い訳も、弁解も、正当化も自分には許されない。
そして、絶対にこの足を止めてはならない。
スマートブレインを打倒するまでは。



状態表




【1日目 夜】
【現在地:C-3】

【共通参考】
1:これから大学へ戻り、首輪の解析を進める予定です
2:木場と結花の正体に気付きました

【死神博士@仮面ライダー(初代)】
【時間軸】:一号に勝利後。
【状態】:擦り傷程度の傷多数、 一時間変身不可(イカデビル)
【装備】:鞭
【道具】:基本支給品一式、デスイマジンの鎌@仮面ライダー電王、ハイパーゼクター、首輪(真司)
【思考・状況】
基本行動方針:この殺し合いをショッカーの実験場と化す。
1:一刻も早く大学に戻る。
2:集団を結成し、スマートブレインに対抗する。
3:影山のような役立たずはいずれ切り捨てる。
4:木場勇治、長田結花を警戒。
5:首輪を外す方法を研究する。施設の候補は研究所か大学。
6:未知のライダーシステムおよびハイパーゼクターの技術を可能な限り把握する。
7:乃木に対して不信感。刃向かうようなら始末する。
8:北条に若干の苛立ち。
※一文字隼人(R)の事を一文字隼人(O)だとは信じていません。
※流れ星は一戦闘に六発まで使用可、威力はバイクがあれば割と余裕に回避できる程度。
 尚、キック殺しは問題なく使えます。
※変身解除の原因が、何らかの抑止力からではないかと推測しています。
※風間と城戸の所持品、カブト世界、 龍騎世界について把握しました。
※ハイパーゼクターはジョウント移動及び飛行が不可能になっています。マニュアルはありません。
※木場と結花の事を、スマートブレインが送り込んだ刺客であると考えています。
※ガドル(名前は知らない)が生きていることに気付きました。
【考察まとめ】
1.首輪の100%解析は不可だが、解除することは可能。
2.首輪を外せるのは罠で、タイミングが重要。
3.時空を超越して逃げても、追跡される。
4.会場に時の列車はない。あるとしてもスマートブレインの手の中。
5.ガオウから聞いた、デンライナーの持ち主は干渉を避けるために既に死んでいる可能性が高い。
6.ハイパーゼクターはカブトムシ型ゼクターで変身するライダーの強化アイテム。
7. この島では2ヶ月ほど前になんらかの異変が起きた。
8.首輪の設計図や研究所のファイルは、首輪の解除と同じで罠。



【乃木怜治@仮面ライダーカブト】
[時間軸]:43話・サソードに勝利後(カッシスワーム・グラディウス)
[状態]:全身に小程度の火傷、疲労、一時間変身不可(カッシス、王蛇)
[装備]:カードデッキ(王蛇+ドラグレッダー)
[道具]: 携帯電話、その他基本支給品×3(乃木、イブキ、結花)、ゼクトマイザー、トランシーバーC
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームの早期決着及びスマートブレイン打倒
1:首輪解除のため、北條透と仲間の諸君をもう少し泳がせる。
2:主催者側に対して嫌悪感。
3:ZECTの諸君に関しては、接触した次第早めに始末をつける。
4:死神達を利用する。
【備考】
※ライア・ガイのデッキが健在の為、王蛇のデッキには未契約のカードが2枚存在します。
※変身にかけられた時間制限をほぼ正確に把握しました。
※ZECTライダー資格者に関しての認識は「(TV版)ライダーの外見・名称」「(TV版)資格者の外見」を知っている程度です。
※ドラグレッダーと契約しました。ユナイトベントは発動しません。



【北條透@仮面ライダーアギト】
[時間軸]:最終話
[状態]:精神的に疲労。 現状に関する若干の恐怖。 主催に対する多大な不安。 真司に対する後悔の念。
[装備]:なし。
[道具]:携帯電話、地図、マグライト、研究所のファイル、首輪の設計図。
【思考・状況】
基本行動方針:無事に帰還し、スマートブレインを摘発する。
1:スマートブレインの危険性を懸念。
2:乃木をうまくだまくらかし、救出を待つ。
3:工場に向かって実験道具の手がかりを探す。
4:長田結花の正体に驚愕。
5:友好的な参加者と合流、敵対的な参加者を警戒。
【備考】
※首輪の外見についてはほぼ正確に把握しました。ただし、肌に触れている部分を除きます。
※研究所の設備は基礎的な科学知識さえあれば扱える程度にマニュアル化されているようです。
 ただし、あくまで分析結果が自動で出るだけで所見はついてきません。
※ファイルにまとめられた実験資料には、ネズミの灰化実験に
 青いバラとケージに取り付けられた装置が関わっているという結論のみが明記されていました。
※ファイルの内容の真偽は未確認ですが、北條はとりあえず真実であるという前提で行動しています。
※首輪の設計図は一部分を除き、ほぼ全ての構造が載っています。また、走り書き程度にメモも残されています。
※オルフェノクである結花に、若干の警戒を抱いています。


【影山瞬@仮面ライダーカブト】
【時間軸:33話・天道司令官就任後】
【状態】:全身に若干の疲労。顔面に斜めの傷。背中に軽い裂傷。 ザビーを失った悲しみ。 真司に対する罪悪感。
【装備】:ザビーブレス
【道具】:ラウズカード(◆J)
【思考・状況】
基本行動方針:とりあえず死神博士についていく
1:ザビーを返してくれよぉ……
2:乃木に恐怖。
※風間と城戸の所持品、龍騎世界について把握しました。
※乃木の正体は、ワームであると推測しています。





※C-3 保養所前に灰化した真司の遺体が埋葬されています。

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死神博士
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