『Chosen Soldier』

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『Chosen Soldier』


――時計の針は、午前2時を回ったところだった――
本郷猛は、かつて秘密結社「ショッカー」の尖兵として
その手を悪に染めていた。
その戦いに意味などはなく、ただ命令のままに。ただ、組織の命令を受けた人形のように。
だが、彼は変わった。「変身」したのだ。
舞い散る雪の結晶に出会う事で。空っぽの人形から、意志を持った戦士へと変わることが出来た。
今の俺はどうだろうか?本郷は思う。
何もかも、失ってしまった。大切にしていた研究も、平穏な生活も。
何もかもが、もう遠くへ消え去ってしまった。
だが、一つだけ。一つだけ失っていないものがある。
――「知らなかったぜ…俺ってマジでいい奴だったんだな。」――
唯一の「友」がすべてを失くしたこの胸の中で輝き続けていることに気付く。
今はどこで何をしているのかふと、思い返す。


風見志郎、一文字隼人と共にショッカーの作戦を潰した本郷が目を覚ました場所は、異質な空間だった。
周りには複数の人間、異人。中には不気味な雰囲気を放つ者までいる。
-どう考えても、普通じゃない。なんなんだ、一体!?-
悪い予感は的中した。主催者らしき男が言うには、ここに集まった連中で
殺し合いをしろ…という。生き残れば、願いはどんなものでも叶える。
本郷は静かに拳を握った。その甘美な筈の願いは、彼には何の意味もないからだ。
彼にとって「命」に代えられるものなど何もない。その命を弄ぶ、このゲーム。
中には殺し合いに乗る参加者もいるだろう。だが、必ず自分と同じ意志を持った人間もいる筈だ。
「戦いを止める。何であろうと、俺は、こんな事は必ず阻止してみせる」
本郷の答えは、最初から決まっていた。
美しい命を守る――それが彼の唯一残された使命なのだから。


「…あ!!」
ふらつきながら歩く本郷の前方から大声が聞こえた。
どうやら、この先の道には先客がいたらしい。
一人ではないことが、普通ならば安堵できる筈だ。
だが、今の状況では向こう側にいる人間が必ずしも自分と同じ側に
立っていると考えるのは早計過ぎる。
闇夜の月に照らされて男の輪郭がぼんやりと見えてきた。
警戒もせず、男はこちらへ走ってくる。
「おーい!!おいってば!」
本郷はこの男の大声に、大げさに後ずさる。
「え……あ…あの、」
本郷が言葉を言い終えるまでもなく、ポケットを指差し再び男は興奮した
様子で飛びついてきた。
「このデッキ!?やっぱりあんた仮面ライダーだな!!
それにこいつは…蓮の。ナイトのデッキだろ…。
どうしてあんたがこれを持ってるんだ?
そういや、俺のは…この変なベルトが入ってたんだけどさ。
何に使うんだ、これ?まさか姿勢矯正ベルトとかじゃないだろうし…」

彼は俺が基本支給品から取り出した物に目がいったようだ。
彼の持っていた支給品の中には、銀色に光るベルトが見える。
これが何に使うのかはよく分からない。まさか、ダイエット器具か何かだろうか。
俺には黒色の薄いこのカードケースに何の意味があるのかは知らないが、彼には
これが何なのかが分かるらしい。
「仮面…ライダー?何のことか分からないですけど…これはこの支給品に
入っていただけで。あ、僕は本郷…本郷猛っていいます。よ、宜しく。」
彼は僕がこの戦いに巻き込まれた経緯を説明すると、何とか理解したようでそのまま黙ってしまった。
しかし、なんでこんなところで俺は見知らぬ相手に自己紹介をしてしまってるんだろう。
自分でも、何故かはよく分からない。
自己紹介を済ませると、今度は俺のことを警戒しているらしい。
なんだか、丁寧に挨拶したのが逆に疑われてるらしい。
俺は男の肩を叩き、小さく首を振った。
「心配しないで下さい。僕は、あなたと戦う意志はないですから。」
男はその言葉を聞くと、飛び上がり俺に顔を近づけた。
――ち、近い。顔が、近い。
「ほ、本当!?そうだよな!!俺もなんでこんなところに来たかはわかんないけどさ。でも、よく分からないけど止めたいんだ。
俺は、こんな戦いは・・・そうだ。自己紹介しなきゃな。
俺は城戸真司!」
興奮したように茶髪の青年、城戸は語り始めた。自分が何者で、何をしてきたのか。
話を聞くに、彼も仮面ライダーという戦士に変身して怪物たちと戦っているらしい。
俄かには信じられない話だが、こちらも似たようなことをしてきている以上、完全に作り話とも思えない。

「で、本郷さんには協力して欲しいだよ。ライダーの戦いを止める為に!!
こんなことで争うなんて間違ってるだろ!!絶対に・・・あんなことを、ライダー同士の戦いを繰り返しちゃいけないんだよ。いろいろあったけど・・・俺も。
そのデッキも、俺の友達のなんだ。そいつ、無愛想で強情で、でもほっとけなくて。
俺、そいつと約束したんだ。絶対、死なないってさ。だから、力を貸して欲しいんだ。」
彼の瞳は、真っ直ぐ自分を見据えていた。そこに、迷いは無い。
俺は彼を信じる事にした。絶対に、彼を死なせはしない。
「僕にも、あなたと同じような親友がいました。あいつも、強情で口は悪いけど・・・でも僕にとってはかけがえの無い親友です。会えたらいいですね、また・・・その人と。」
お互いに、同じ思いを馳せる友がいる。
ならば、その友に再び会えるように生き抜くだけだ。


城戸真司は、暴走するミラーモンスターの大群へ突撃する間際からの記憶を失くしていた。
気が付けば、そこへ見知らぬ者達が集められた場所。
自分が何故、ここにいるかさえ分からないまま勝手にゲームの内容が説明された。
「2人」の命を見せしめにして。
真司は、少なくともライダー達の戦いにも「願い」がありそれが自分だけの力でどうにか出来ないことはこれまでの戦いで分かっていた。
だが、それでも結衣の命を賭けた行動を見た真司にはあの2人の「死」がとてつもなく許せなかった。
――結衣ちゃんは・・・もう誰も傷付けたくないから。だから、自分を・・・――
「結衣ちゃん、蓮。俺、もう誰も死なせないよ。絶対に。」
真司は、親友達の名を呟きゲームの舞台へと進んでいった。

城戸さんが言うには、彼は過去にもこの争いに似たものを経験しているらしい。
彼の親友、秋山蓮。彼と約束した「絶対に死なない」という約束。
俺は、彼の言葉に心底感動していた。こんな状況でも、目の辺りから涙が溢れそうになるのを堪えている自分がいる。滑稽だと自分でも思う。
だが、そんな自分が自分で嫌いにはなれない。むしろ、そんな不器用な自分を変えずに生きてこれたことを誇りに思う。
「…確かに。僕も、ずっと戦ってきました。自分を追う奴等と。
僕は、その中で沢山の命を守る為に同時に奪っても来た。今回は、出来れば…命を奪いたくはない。」
城戸さんは小さく頷くと先に道を歩き出した。
――彼も、僕も。こんな戦いは止めなきゃならない。絶対に――
本郷は、照らされる月夜を見上げながら不意に友を思った。
――今はお前はどこで何をしてる?
俺がいなくても一人で・・・いや、大丈夫だよな。
お前は、不死身だって。俺は、お前の言葉を信じるよ――
「一文字・・・元気でいてくれよ。」
本郷は夜道を歩きながら、友の名を呟いた。


状態表

【本郷猛@仮面ライダーTHE-NEXT】
【1日目 現時刻:深夜】
【現在地:A-3 大学前】
[時間軸]:THE-NEXT終盤(ショッカー基地壊滅後)
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:ディパック(ナイトのデッキ)
[思考・状況]
1:男(城戸真司)と共に行動する。
2:戦いを止める。

【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:深夜】
【現在地:A-3 大学前】
[時間軸]:劇場版終盤(レイドラグーンへの特攻直前)
[状態]:健康
[装備]:龍騎のデッキ
[道具]:ディパック(デルタギア)
[思考・状況]
1:本郷と出会ったことによる安心と決意。
2:戦いを止める。


001:Fiat Lux 投下順 003:人か?野獣か?密林にいた凄い奴!
001:Fiat Lux 時系列順 003:人か?野獣か?密林にいた凄い奴!
本郷猛(R) 018:吼える
城戸真司 018:吼える

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