クライマックスは終わらない(後編)

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クライマックスは終わらない(後編)


身体中が馬鹿みたいに痛てぇ……。
こんな経験は久しぶりだな……。
もう、このまま少し休憩するか……?
それもいいかもしれねぇなぁ……。
きっとこのまま楽になれば、ちょっと眠れば直ぐに痛みも引くだろうしよぉ……。


『あれ、モモタロス? こんなところでなにやってんの? もしかして負けちゃった?
ハハハハハ! モモタロスってやっぱ弱いんだねー♪
だったら僕が代わって、闘ってもいいかな? 答えは聞いてない!』


はぁぁぁぁぁッッッ!?
おいおいおいおいおいおいーーーーー! なんであのハナタレ小僧の声が聞こえるんだ!?
しかも俺が負けただとぉー!?
馬鹿言うんじゃねぇ、このハナタレ小僧がッ!
俺が負けるわけねぇだろが!!


『やっぱりモモタロスは単純だよね~♪
ほら、クマちゃん! もう元気になったよ!!』
『うむ! 単純なヤツやな~。もっとこう、俺らみたいにクールにいかんとな!
それができんのなら強くなるしかないで、モモの字!
まぁ、俺のように泣ける強さはどーせ無理やろうし、お前には求めへん! だけど、ある程度の強さにはならんとな!』


なぁぁぁぁぁにいいいーーーーー!? こおぉぉの馬鹿グマ! てめぇも居るのかよ!?
というか、単純って言うんじゃねぇ!
大体てめぇらがクールとか有り得ねぇつーの!
しかも俺はてめぇより弱くねぇぞ!!

『おぉ~やっぱアホは良く吼えるのぅ。なぁ、カメのじ?』
『全くだね。先輩、今更僕達にそんな嘘、ハッキリ言って全然意味がないよ。
先輩の頭が少しばかし弱いコトはもう、僕達にはよくわかってるからさぁ。
先輩は本当に僕に良く釣られてくれるもんね、釣りがいがあるよ本当に」


おおおぉぉぉぉぉいッッッ! エロガメ! てめぇまでも居るってのか!?
俺の頭が弱い!? んなコトあるか! 俺はいっだって正直者なだけなんだよ!
いいか!? 言っておくが、俺はてめぇの悪趣味な冗談にいつも付き合ってるだけだ!
だから、てめぇの嘘に騙されてるわけじゃねぇぞぉぉぉーーー!!


『はいはい、そういうコトにしてあげるよ。先輩♪』
『しょっぱいヤツやなぁ、素直に認めればええものを』
『やーい、やーい♪ モモタロスの嘘つきー! しかも凄いヘタな嘘だしー♪』


うるせぇぞ! てめぇらぁぁぁぁぁーーーーー!!
それよりも、何だ? てめぇらはなんで此処に居る!?
俺に一体何のようだ!?


『ん? そういえばなんやったかな?』
『クマちゃ~ん、しっかり……アレ? そういえば僕達、何しに来たんだっけ?』
『二人とも、僕らがそんなコトでどうするのさ? 先輩、僕達はね……って、言う必要もないか。
もう、僕達の目的も終わったようなもんだしね』


はぁぁぁーーーーー?
よくわかんねーコト言いやがって……いや、待てよ。
ひょっとして、お前らアレか?
もしかして……


『ああ! 思い出したよ、カメちゃん! 確かにもう僕達、ぶっちゃけ意味なそうだよね~♪』
『なんや、リュウタに先を越されてしもうたか……いーや! 俺にもわかったで!
モモのじの調子を見ればもうよさそうやな!』
『その通りさ、二人共。それに先輩が考えてるコトもきっと正しいよ。
僕達は励ましに来たのさ。先輩がもう一度立ち上がれるように……ね』


へっ……この馬鹿野朗共が!
そんなコト言っても何も出ねぇし、ちっとも嬉しくねぇぞ!
それにお前らに言われなくても、俺は未だやれるぜ!


『モモタロス……ごめんね、僕には君に頑張れとしか言えないけど……それでも、頑張って。
最後まで諦めちゃ駄目だ……僕はそう思うよ』


おおおぉぉぉぉ!? 良太郎も居るのか!?
しかし、相変わらずすっとろいぜ、良太郎!
カメとクマとハナタレ小僧が一杯喋っちまったのに、今頃出てきてよぉ!
もう、殆ど話は進んじまったぜ!


『うぅぅ……酷いよ、モモタロス。僕、ウラタロス達と一緒に最初から居たのに……』
『気にしたらあかんで、良太郎! 男は黙って背中で語ればいいんや!』
『クマちゃん、よく意味わかんないよー?』
『まぁまぁ、良太郎、取り敢えずご愁傷様だね。それよりも……やれるよね?
先輩?』


ああ、勿論だ!
俺をボコボコにしてくれたあいつ……そういえば名前知らなかったな。
うーん……なんか、トンボみてぇなヤツだったからトンタロスでいいや。
うし! 決定! あいつの名前はトンタロスだ!
俺はあのトンタロスに仕返ししなくちゃなんねぇしな!


『トンタロス……相変わらずセンスなさすぎだよ……。まぁ、いいか。
だったら見せてやりなよ、先輩!』
『そうや! モモのじ、男に二言はないで!』
『モモタロスー、普段見せられないカッコいいところを見せるチャンスだね!』
『頑張って……モモタロス、あの人に見せてやろうよ……!』

へっ! なんだか、悪口も言われたような気がするが今日の所は見逃してやる!
そうさ、やってやるぜ……あのトンタロスに見せてやる!
あいつの両目を引ん剥いてでも、見せてやるぜ!


『僕らの!』
『俺らの!』
『僕達の!♪』
『僕達の……!』


俺達の――――――――を!


◇  ◆  ◇


V3は思考を走らせる。
先程、赤い鬼――――モモタロスと名乗った鬼には充分ダメージを与えた。
恐らく、暫くは意識が、いや、それどころかもう絶命しているかもしれない。
ショッカーによって強化改造を受けた、V3の力は尋常なものではない。
だが、歩を進めるV3はどうしても、気を抜く事が出来なかった。

「……しぶといな」

そう。たった今、モモタロスが再び立ち上がったから。
しかし、先程の戦闘でモモタロスが武器として使用していたディスカリバーは、今は彼の腕の中にない。
ディスカリバーはモモタロスから数十メートルも離れた位置に転がっている。
モモタロスが取りに行こうと動いても、それよりも先にV3は彼を捕える自信がある。
そもそも、立ち上がったモモタロスはV3の眼からでは既にフラフラで、そんな動きは出来そうにない。
しかしだ。
どうにも、油断が出来ないとV3は本能的に感じていた。
そう。モモタロスが自分を食い入るように見つめる瞳が、彼から感じる気迫のようなものが。
異常な程に、強大なものになっているような気がしてならなかったから。

「……おい、トンタロス。てめぇに見せてやるぜ……!」

V3は『トンタロス』という不可解なワードに疑問を抱く。
もしや、自分の事を言っているのか?
そんな疑問が抱くが、それはどうでもいい。
それよりも、問題なのはモモタロスを倒す事。
そして、モモタロスが意味深げに呟く言葉の意味も少し気にはなるが。

「俺とあいつらを繋げてくれるもの……俺に強さを与えてくれるものをな……!」

言葉を吐き捨て、モモタロスがある方向へ勢い良く飛び込む。
モモタロスの予想以上の動きにV3は舌打ちをし、咄嗟に身構える。
だが、モモタロスが飛び込んだ先はV3の方でもなければ、ディスカリバーの位置でもない。
やがて、モモタロスが手に取ったもの――それは彼が持っていたデイバック。
先程、V3キックを受けた時、モモタロスの身体から離れ、且つ未だ碌に内容は確認していない。
そして、モモタロスは急いでデイバックを漁り始める。


「だから、良く見とけ! 俺のカッコいい姿を!」


モモタロスにはディスカリバー以外の支給品は知らない。
だが、中に何が入っているかまるでわかっているかのようにモモタロスは何かを探す。
V3は直ぐには襲い掛からず、モモタロスの行動をじっと眺める。
その真意は計り知れない。
――そして、やがてモモタロスが目当てにしていたものが。
――何故だか、絶対に入っている筈とモモタロスが信じて疑わなかったものが。
――モモタロスにとってとても馴染み深いものが
モモタロスの両腕にしっかりと握られる。


「そして……俺の――――」


モモタロスはフラフラの身体に鞭を打ち、大きな丸い模様が一つ、そして赤、青、黄、紫の色のスイッチが付いた一本のベルトを両手に掴む。
すぐさま、モモタロスはそのベルトを腰に巻きつけ、赤いスイッチを押す。
モモタロスにとって聞き親しんだ電子音が周囲に鳴り響く。
その軽快な電子音は来るべき闘いへの合図。
そして、モモタロスにカッコいい闘いを招きよせてくれる神秘の音色。
鳴り響き続ける電子音をしっかりと聞きとめ、モモタロスは腰を落とし、右肩を引き、右腕を少し高く上げた。
上げられた右腕にはいつの間にか握られたものが一つ。
モモタロスは右腕に握ったパスカードのようなもの――『ライダーパス』をベルトの――『デンオウベルト』の中心部に翳すように滑らせる。


「変身をッ!!」


――SWORD FORM――


響き渡るモモタロスの咆哮、電子音声と共に、落とした腰を上げ、ライダーパスが完全にデンオウベルトの前を通り過ぎる。
瞬間、デンオウベルトから銀色の眩い粒子のようなものが四散し、直ぐにモモタロスの身体を覆うように包み、彼の身体に強化スーツを纏わせた。
更に、モモタロスの周りにレールのようなものが浮かび、赤、青、黄、紫の奇妙な形をした金属片がそれらの上を走る。
やがて、モモタロスの全身に、金属片が各々変形を行いながら次々とぶつかり、彼の外部装甲を織り成す。
変形した金属片によって形成された装甲に銀と黒、そして燃えるような真紅の色が宿る。
最後に変形し、モモタロスの顔面にへばりつき、変形した金属片の成れの果て――電仮面が左右に開き、桃のような仮面を形成した。
そう。その桃の電仮面こそが変身の終着点の印。


「俺、ようやくこの姿で参上ッ!!」


どんな時の干渉をも受けない存在である特異点――野上良太郎、そして彼に協力するイマジン達だけに成る事が許された存在。
時の運行を守る使命を帯び、時の列車で時の流れを見守り続ける戦士――電王
仮面ライダー電王・ソードフォームへの変身が終わったという証。
両手を前後に開き、ポーズを取りながら、モモタロスは――いや、電王は声高らかに名乗りを上げる。

「いいか!? 言い忘れたが俺に前振りはねぇ! あるのはクライマックスだけだ!!」

右の人差し指で構えを取るV3を指差し、電王はお決まりの台詞を叫ぶ。
言うや否や、両腰に装備された部品を取り出し、連結。
使い慣れた一振りの剣――デンガッシャーを造り、電王はそれを右腕に握り締める。
デンガッシャーを肩に担ぎ、電王が強固な意志を漂わせながら、V3を睨む。

「行くぜ、行くぜ、行くぜ! ここからが本番だぜッ!!」

やがて電王はデンガッシャーを握り締めながら、地を踏み鳴らすように、怒涛の勢いで疾走する。
対して、V3も腰を落とし、電王の侵攻に対応しようと構えた。
やがて、二人の距離が近づき、電王のデンガッシャーが大気を切り裂く。
袈裟掛けに振り下ろされたデンガッシャーを、V3は何度もやったように避け――

「グッ!?」

てはいなかった。
タイミングに狂いはなく、身体を後に引く事により、紙一重で避けたつもりだったV3。
だが、ほんの少し、それでいて確実にV3の身体をデンガッシャーが掠り、小規模ながらの火花を散らし、V3に小さな痛みを味わわせる。
自分の感覚が狂っていたのだろうか?
そんな疑問を抱くV3に更に電王は返した刃で、逆横一閃に斬りかかる。
直ぐに思考を断ち切り、今度こそデンガッシャーの軌道から逃れるため、後ろ脚を引く――

「へっ! 遅いぜ! 今の俺には……てめぇはトロすぎんだよ! トンタロスッ!!

「これは……!」

だが、またしても上手くはいかない。
咄嗟に回避は不可能とV3は判断を下し、両腕を交差させ、デンガッシャーの斬撃に備える。
トラックが衝突したかのような轟音が響き、V3の両腕から派手に火花が散りゆく。
思わず、数歩後退せざるを得ない状況となったV3。
なんとか耐え切り、V3は両腕の交差を解き、反撃の拳を放とうと、力を込め始めるが――

「うおぉらああああッッッ!!」

しかし、またしても遅い。
今度はデンガッシャーを左腕に持ち替え、電王はすぐさまV3に斬りかかる。
振り上げられたデンガッシャーがV3の胸部を抉るように、斜め一文字を描く。
胸部を襲う下方からの衝撃にV3の身体は浮きかけるが、辛うじて踏み止まる。
だが、V3が安堵する間もなく、電王は間髪入れずに腹部に対し蹴りを叩き込み、彼はよろめきながら後退する羽目となる。

(なんだ、こいつは……一体、この力は……?)

電王の蹴りの痛みに耐えながら、V3は目の前の相手、電王に疑問を抱く。
先程の戦闘で電王には充分な打撃を与えた筈であり、変身をした所で疲労や負傷は取れない筈だとV3は思う。
実際、V3の推測の通りであり、電王の身体状況は改善されておらず、更には今も刻一刻と彼の疲労は蓄積していた。
だが、電王の動きは全く精彩を欠く事なく、それどころか先程よりも動きにキレがあり、V3を圧倒している。
V3にはその、目の前で起きている現実がどうにもわからない。
何故、有利である筈の自分がここまで圧倒されるのかが。
そんな時、デンガッシャーを再び振りかぶり、距離を詰めてきた電王の声が響く。

「あいつらの声を聞いちまったからなぁ……いつもにまして負けるわけにはいかねぇ!!」

ありったけの力で振り下ろされたデンガッシャーをV3は間一髪で、身体を逸らす事で避ける。
漸く、電王の打撃を捌く事に成功したV3だが、余裕はない。
そして、同時にモモタロスが言った『あいつら』という言葉にV3はほんの少しだけだが疑問を抱く。
しかし、V3に深く思考を張り巡らす時間はない。


「カメも! クマも! ハナタレ小僧も! 気にいらねぇところはあるが……あいつらは俺の仲間だ!」

再度、返した刃で振り上げるように電王はV3を斬り上げる。

「あいつらはご苦労な事にこの俺につまらねぇコトを言いに来やがった……。
そんなあいつらに俺が負ける姿なんて……ぜってぇーに見せるわけにはいかねぇんだよッ!!」

寸前の所で、V3は両腕を交差させデンガッシャーを受け止める。
やがて小さく漏れるV3の嗚咽、そして対照的に電王の咆哮は大きな勢いを持つ。

「それに俺達が居なけりゃあ、あの不幸すぎる良太郎がどうなるかわかったもんじゃねぇぜ……!
だからな、俺たちがあいつをしっかりと見守ってやんなきゃならねぇ……」

だが、次第に電王の動きは鈍くなり始める。
今まで負傷した身体でここまで動いたことが祟ってきたのだろう。
その事実に気づいたV3が黙っているはずもない。
直ぐに体勢を整え、腰を回し、大きく右肩を引き、振りかぶる。

「オオオオオオッッッ!!」

電王が再びデンガッシャーを振り下ろすよりも先にV3の右拳が彼の左頬を捉える。
強烈な右拳の打撃により、否が応でも電王の顔は大きく右を向く。
手ごたえは確認するまでもなく充分。
右拳に乗った勢いを殺さずに、V3はそのまま右腕を振りぬこうとする。

「そうだ。だから、俺とカメとクマとハナタレ小僧の……俺達四人は――」


しかし、どうしてもV3はそれ以上拳を振りぬけない。
電王の左頬に突き刺さった右腕はまるで石のように硬く、それ以上侵攻を行えない。
やがて、V3の右拳に不可解な圧力が掛かる。


「良太郎と一緒に闘う! それが俺達の――」


そう。電王は力任せに顔を振り、V3の右拳を押し返した。
思わず、後方へよろめく、V3。
一瞬の内に電王は前方へ飛ぶ。
デンガッシャーを握る腕に力を、ありったけの自分達の想いを乗せ、叫ぶ。
電仮面の下に潜む両目をカッと見開き、喉が潰れるくらいの雄叫びを上げながら――


「やりてぇコトだああああああッッッッッッッ!!」


がら空きのV3の胸板にデンガッシャーを突き刺す。
避ける事も、防御する事も叶わず、V3は傷を受けた箇所から火花を散らしながら後方へ吹っ飛ぶ。
そして、電王はライダーパスを手に取り、デンオウベルトに翳す。


――FULL CHARGE――


ライダーパスが翳された事により、デンオウベルトが鋭い真紅のエネルギーを――フリーエネルギーを放出する。
鋭い細線を模ったフリーエネルギーが電流のように電王の身体中に流れ、やがてデンガッシャーの先端に――オーラソードへ辿り着く。
燃え滾るようにゆらめくフリーエネルギーをオーラソードに纏わせ、電王は軽く両脚を開く。
両手でデンガッシャーを握り、刀身を天に向け、電王は構える。

「チッ――――」

そんな電王の不穏な動きを見て、V3は大地を蹴り飛ばし、跳躍する。
V3が跳躍を始めた理由。
定かではないが、きっと電王から只ならぬ気配を察し、本能的に跳んだのだろうか。
兎に角、V3は空中へ身体を預け、宙で一回転を行い、電王に右足を向ける。
先程、電王に変身するまえに叩き込んだV3キックをもう一度、蹴りこむために。
だがそんな時、V3の視界に、デンガッシャーを天に向かって振り上げる電王の姿が確かに入る。

「いくぜ! これが必殺――――」

刀身から離れた、フリーエネルギーに包まれたオーラソードを電王は、天へ飛ばす。
ドリル状となったオーラソードが、回転を行いながら宙へ浮ぶ。
そして、電王はここ一番、ありったけの力を込め、一文字にデンガッシャーを振りぬき、その斬撃の軌道を追うかのようにオーラソードが走る。
急な坂道を駆け下る滑車のように。
一直線に宙で、V3キックの姿勢を取るV3に向けて上方からオーラソードは振り下ろされる。
その名も『エクストリームスラッシュ』、仮面ライダー電王・ソードフォームの最大の技。
エクストリームスラッシュとV3キックが空中で――


「俺のぉぉぉぉぉッ必殺技だッッ!!」
「ウオオオオオオッッッ!!」


互いの咆哮を交えながら、激突した。


◇  ◆  ◇


「へっ……手間掛けさせやがって……」

エクストリームスラッシュに吹き飛ばされたV3の沈黙を確認した電王は左の膝を地に落とし、苦しそうに呟く。
電王とて度重なる打撃、そして先程V3キックの負傷のせいで状況はハッキリいって深刻だ。
悔しいが直ぐに何処か安全な場所で休憩を取らなければ取り返しのつかないコトになるだろう。
そう思い、電王はフラフラな身体を必死に動かし、歩を進める。
電王が向かう先は、うつ伏せに倒れ、V3への変身が解け、デイバックを横に取り落とした風見の元。
モモタロスに風見を殺すつもりはなく、みすみす放っておくわけにはいかない。
まぁ約束通り、自分の子分――トンタロスとして精々こき使ってやろう。
そんな邪な事を考えながら、電王は風見の下を目指すが――

「なっ……に……?」

ふと、電王の足は立ち止まる。
電仮面に隠された電王が浮かべる表情は驚き一色。
電王の視界に人影が一つ浮かび上がる。

「けっ……しぶといヤツだぜ……」

そう。それはゆっくりと、再び立ち上がった風見志郎。
彼が依然、感情を灯さない空虚な瞳で、しかしそれでいて食い入るようにモモタロスを見つめる。
そして、風見の腕に握られるものが一つ。
それは風見が休憩した時、マニュアルに眼を通していた代物。
そう。それは一本の奇妙なベルトだった。

「お前に譲れないものがあるように……私にも譲れないものがある……!」

風見がベルトを腰に巻く。
見慣れないベルトに電王は視線を飛ばす。
そして、風見の鋭い瞳はまるでナイフの刃のように研ぎ澄まされている。

「そのためなら……ちはるの幸せのためなら……私は……」

言葉を吐き出すように口を開く風見。
その表情から何か苦しさのようなものを電王は僅かながらに感じた。
そして、風見は徐に右腕を翳し、デイバックからその右腕に吸い込まれるように何かが飛び込む。
緑色と茶色の二色を帯びた、バッタのような物体が。

「たとえ、地獄に落ちる羽目になろうとも……後悔などないッ!!」

風見は握り締めた物体――ホッパーゼクターを力強く握り締める。
意志を持つホッパーゼクターは何故だかわからないが、風見を仮初の主と認めるかのように、黙って彼の腕の中で動きを止めた。
たとえ、地獄に落ちようとも闘う事を、求める事をやめようとしない風見の意思にホッパーゼクターが共鳴を起こしたのかもしれない。
そして、風見は決して譲れないもの――愛する妹、ちはるの失われた笑顔を思い出しながら。
風見はベルトの中央の窪みの部分にホッパーゼクターを滑るように差し込む。

――HENSHIN――

変身を知らせる電子音声が響き、風見の身体を脚の方から銀色の金属片が寄せ集まる。
やがて、その金属片は緑色と黒色の装甲を形成し、最後に風見の顔をバッタを模したマスクが覆う。
そして、全ての過程が終了し、マスクに備え付けられた赤い複眼が鋭い閃光を放つ。

――CHANGE KICK HOPPER――

奇しくも風見に付けられた名前、『ホッパー』と同じ名前を持つ戦士。
地獄をその眼で見てきたある男が変身したライダー――仮面ライダーキックホッパーに風見は変身を完了する。
デンガッシャーの刀身を上げ、キックホッパーの動きに注意を寄せる電王。
そんなキックホッパーは、電王の行動に眼もくれずにベルトの中心部に手を掛ける。
そう。マニュアルに記されてあった、ある機能を引き出すスイッチを滑るようにキックホッパーは押した。

――CLOCK UP――

瞬間、キックホッパーが一陣の風となる。
キックホッパーを含むマスクドライダーシステムに装備された、高速移動を可能とさせる機能、『クロックアップ』。
たとえ、制限されていようともその速度は高速である事に変わりはない。
一瞬の内に、キックホッパーは電王の下へ近づき、そして――

「うっ!うおあぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!」

両拳、両脚、四肢の全てを使い、キックホッパーが電王の周囲を回りながら打撃を与える。
クロックアップで補助されているといえども、すでに電王によって痛手を負っており、キックホッパーの動きには粗が目立つ。
だが、電王も既に満身創痍であり、キックホッパーの動きに上手く対応が出来ない。
キックホッパーの猛攻を受け、思わず電王は苦痛の声を上げる。
しかしそんな除々蓄積されるダメージが電王の命を確実に削り落とす。
やがて、キックホッパーが何度目かはわからないが、電王の目の前に立つ。

――CLOCK OVER――

クロックアップを終える電子音声が響き、キックホッパーの動きが電王のそれと大差ないものに戻る。
今までの仕返しといわんばかりに電王は反撃のデンガッシャーを振りかぶるが――
デンガッシャーが届く事はなかった。

「ガッ……!」
「お終いだ」

キックホッパーの高く振りあげられた右脚が電王の胸板に叩き込まれ、彼の身体が数十メートル後方へ吹っ飛ぶ。
勢いに抵抗できず、宙を漂う電王の身体はやがてしたたかに地面に叩きつけられた。
度重なるダメージがついに限界を迎え、電王への変身が解けモモタロスの姿に戻る。
最早、モモタロスにとって絶体絶命。
打つ手がないといえるほどのもの状況――

「ま……まだまだあああああッッッ!!」

だが、モモタロスは諦めない。
最早、モモタロスの身体には限界以上の負荷が掛かり、碌に身動きも取れない筈であるにも関わらず。
うつ伏せの体勢からモモタロスは必死に身体を持ち上げ、彼の腹部と地面に僅かな隙間が生まれた。
そして、モモタロスはその隙間を縫うように、再びライダーパスをデンオウベルトに翳し、電王への変身を試みる。

「なっ!? 変身できねぇ!?」
「無駄だ。どうやら時間制限が掛かっているらしい……」

だが、デンオウベルトからは何も電子音声は流れず、変化は起こらない。
信じられない現実に対し驚くモモタロスに、キックホッパーが冷たく言葉を掛ける。
モモタロスにはこの会場で行われている変身に対する制限を未だ知らなかったからだ。
変身できない事に、キックホッパーの言葉にショックを受けたのだろうか?
モモタロスの身体は途端に再び崩れ行き、折角作り出した空間さえも閉じてしまう。

「もうわかっただろう? お前では私には勝てない。
だが、そのベルトを私に譲れば命は助けてやるが……どうする?」

そんな時、キックホッパーが倒れ伏せるモモタロスに冷たく、言い放つ。
勿論、この殺し合いに勝ち残るつもりであるキックホッパーには――風見にはモモタロスを見逃すつもりはなく、単なるブラフである。
だが、モモタロスのデンオウベルトに興味があるという事で嘘ではない。
キックホッパーに変身出来た事から、どうやら時間制限は一つの変身機能に対するものであるらしく、複数の変身を連続で行う事は可能であった。
ならば、変身を、力を与えてくれるものは一つでも多い方がいい。
そう考え、キックホッパーはモモタロスに嘘の提案を持ちかける。

「けっ……考えるまでもねぇ。答えは決まってるぜ……」

モモタロスは倒れ伏せたまま言葉を返し、キックホッパーはその言葉に特に満足も不満を見せはしない。
恐らく、キックホッパーも元々期待していなかっただろう。
そう。自分と今まで闘った相手――モモタロスが助かりたいばかりにベルトを差し出す真似はしないという事を。
モモタロスに対しキックホッパーは何かを認めるような、視線を送る。

「ならば、お別れだ……!」

不可解な感情を振り払い、キックホッパーは両脚を軽く開き、腰を落とす。
その構えは、いうまでもなく必殺の構え。
地を踏みしめる両脚に力を込めるキックホッパーだが……ほんの少しだけ、その力が弱まった。
何故なら、もう立つ事はないだろうと思い込んでいた人物。
モモタロスが傷だらけの身体で再び立ち上がってきたから。
もう、既に致命傷を負っていると思われるモモタロスが、再び自分に鋭い眼光を浴びせてきたから。

「こいつはなぁ……電王はなぁ……譲れねぇんだよ……!
俺とあいつらの……思い出ってヤツが……憎たらしいほど、入ってんだ……」

デンオウベルトを指差しながら、モモタロスが言葉を漏らす。
そんな時、ものを握る力も弱まったため、モモタロスは支えにしていたデンガッシャーを取り落とす。
途端にモモタロスの身体は前方へよろめくが、彼は辛うじて踏みとどまる。
モモタロスが絶え間なく響かせる呼吸音はとてつもなく荒々しいものだ。
最早、喋る気力すらも残っていないのかもしれない。
だが、モモタロスは傷だらけの身体で立ち尽くし、口を開く。

「そうさ、こいつは……俺の『記憶』みたいなもんだ……。
そして、俺の存在を証明してくれるもの……あいつらの中で一番強い、このモモタロス様の存在をな……。
だから、こんなところで止まるわけにはいかねぇ……止まれるわけがねぇ……!」

モモタロスは知った。
特異点である野上良太郎に憑き、電王として闘い、様々な事を知った。
只の弱者としか見ていなかった良太郎の――人間の強さを、そして仲間達との絆を。
だから、モモタロスにはここで退く理由などない。
零れ落ちる砂のように過ぎ行く時間の中で光る、唯一の存在。
自分自身の存在を証明してくれる『掛け替えのない思い出』を守るために。

「…………」


――RIDER JUMP――


キックホッパーが無言でベルトに備え付けられたレバーを引き、跳躍する。
モモタロスの言葉を受け、キックホッパーが何を思ったのかは知らない。
だが、その天へ跳ぶキックホッパーの姿は全てから抜け出すように、がむしゃらに身を任せたようにも思える。
まるで、モモタロスの言葉が自分の何かを侵食しそうな恐れを抱き、そこから逃避するように。


「今度こそ、見せてやるぜ……俺の全てを証明してくれる、てめぇをぶったおす力を……。
そうさ……これが俺と!カメと!クマと!ハナタレ小僧と!良太郎のぉぉぉ――」


デンガッシャーを取る暇はない。
残り僅かな全ての力を右腕に込め、モモタロスは振りかぶる。
自分が持てる、大切な仲間達と共に持てるありったけのものをぶつけるために。
だが、そんな時、新たな電子音声が響く。


――RIDER KICK――


キックホッパーがレバーを戻す事により、左脚に装備されたアンカージャッキが上がる。
それはキックホッパーの必殺の技、『ライダーキック』の完成の合図。
右腕を振りかぶるモモタロスに上空からキックホッパーが左脚を向けながら、迫る。
口をこれでもかといわんばかりに、開けるモモタロスにキックホッパーが飛び込み
――


「クライマックスだああああああああああああッッッ!!!」


キックホッパーの左脚がモモタロスの突き出された右拳より先に、彼の胸板を捉える。
轟音が響き渡り、キックを受けた衝撃でモモタロスの身体が派手に後方へ吹っ飛び
ほんの少しの間を置き――

(へっ……お終いかよ…………じゃあな、お前ら…………)

大きな音を響かせ、派手な爆発が起きた。


◇  ◆  ◇


風見が停車させていたジャングラーを走らせる。
肩に担いだデイバックに新たに入ったものは電王のデンガッシャー・ソードモード。
デンオウベルトは爆発に巻き込まれ、回収は不可能だった。
そして、風見は今休憩できる場所を探している。
モモタロスとの戦闘で手痛いダメージを負った為、再び身体を休めておこうという考えからきたものだった。
モモタロスに貰った負傷による痛みに耐え、風見は真っ直ぐ前を見据える。

(モモタロスか……せめて、お前の名は覚えておく。また会おう……私が本当に地獄に落ちたときには……)

モモタロスへ、かすかな敬意のようなものを示し、風見は別れを告げる。
そう、先程の爆発の主――モモタロスに対して。
彼のキックで爆発を起こし、跡形もなく消えたモモタロスに――


――彼は僅かな感情の気配を見せた。




【モモタロス@仮面ライダー電王 死亡】
【残り44人】




状態表

【風見志郎@仮面ライダーTHE-NEXT】
【1日目 早朝】
【現在地:D-8 西部】
【時間軸:】THE-NEXT中盤・CHIHARU失踪の真実を知った直後
【状態】: 疲労大、全身打撲、大。両腕、腹部にダメージ大。二時間V3、キックホッパーに変身不可
【装備】:ジャングラー 、ホッパーゼクター、デンガッシャー
【道具】:不明支給品(未確認)1~4。基本支給品×2セット、ピンクの腕時計
【思考・状況】
1:殺し合いに勝ち残り、優勝してちはるに普通の生を送らせる。
2:ショッカーに対する忠誠心への揺らぎ。
3:取り敢えず、身体の負傷を癒す
【備考】
※葦原を殺したと思っています
※モモタロスの死を受け止め、何か複雑な心境です。
※ホッパーゼクターを扱えます。

【共通備考】
※ライダーパスは爆発に巻き込まれ、回収不可能です。またデンオウベルトは不明です
※ディスカリバー、モモタロスの基本支給品はD-8中心部に放置されています。

032:クライマックスは終わらない(前編) 投下順 033:ワインディング・ロード
032:クライマックスは終わらない(前編) 時系列順 033:ワインディング・ロード
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