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64 名前: 彩 ◆mWaYx4UM2o 投稿日: 2006/02/20(月) 00:01:45.68 ID:Tw2qS6o90

  ベッドに横たわり、枕元のチェストに乗せられた写真立てに目をやる。
  数十年前に撮った……確か30代半ばの頃だったか。

  私と、志穂と、志穂が拾ってきた子猫のミルク。

  でも、今残っているのは私1人だけ。


  チェストの一番上の棚を開け、茶色い封筒を取り出す。
  そして、カサカサした震える指でその中身を引きずり出した。

(注:65~68のレスは、読みやすくする為ひとまとめにし、空改行位置を変更しました)
65 名前: 彩 ◆mWaYx4UM2o 投稿日: 2006/02/20(月) 00:02:36.18 ID:Tw2qS6o90
66 名前: 彩 ◆mWaYx4UM2o [sage] 投稿日: 2006/02/20(月) 00:03:14.88 ID:Tw2qS6o90
67 名前: 彩 ◆mWaYx4UM2o 投稿日: 2006/02/20(月) 00:03:43.96 ID:Tw2qS6o90
68 名前: 彩 ◆mWaYx4UM2o 投稿日: 2006/02/20(月) 00:04:13.40 ID:Tw2qS6o90

  『大好きな彩ちゃんへ』


  このお手紙を見てるって事は、きっと志穂はもう側にいないんだね。

  ごめんね、さみしい思いさせてしまって。

  彩ちゃんは私達が再会したあの日の事、まだ覚えてるかな?

  あの時はひどい事しちゃってホント、ごめんね。


  でもね、志穂は彩ちゃんとずっと一緒にいられて幸せだったよ。

  いつも志穂のわがままに付き合ってくれて、ホントありがとね。

  彩ちゃんがいてくれたから、志穂頑張ってこれたんだよ。

  一緒に暮らそうって言ってくれた時……本当に嬉しかった。

  ありがとうね、こんな私を選んでくれて。


  なんか最後まで迷惑かけっぱなしになっちゃってごめんね。

  彩ちゃん、寂しがりやなんだから無理しないでね。

  これから先、他の誰かと一緒になったりしても志穂怒らないから。

  彩ちゃんが選んだ人なら、志穂もきっと安心出来るだろうから。


  それじゃ、志穂は先にいなくなっちゃうけど、彩ちゃんは志穂の分まで長生きしてね。

  いつまでも彩ちゃんの幸せを祈って、お空の上から見守っているから。

  彩ちゃん、愛してるよ。いつまでも、ずっとずっと。


  追伸:別紙にお葬式の段取りや保険金の受け取り方なんかをまとめておいたよ。
  生まれ変わっても、また一緒になれたらいいね。

69 名前: 彩 ◆mWaYx4UM2o [sage] 投稿日: 2006/02/20(月) 00:07:30.66 ID:Tw2qS6o90

  ――今でも昨日の事のように思い出す。志穂を看取った、あの日の事を。
  だんだんと冷たくなっていく小さな手。
  まるで眠っているかのような安らかな顔。
  8年たった今でも、はっきりと覚えている。

  志穂が遺してくれた保険金や貯金のおかげで、こうして介護付きの老人ホームに入る事も出来た。
  身よりも無いアタシがこうして人並みの暮らしを出来るのも、みんな志穂のおかげだ。

70 名前: 彩 ◆mWaYx4UM2o 投稿日: 2006/02/20(月) 00:11:11.28 ID:Tw2qS6o90

  志穂の助けになりたい、力になりたいと懸命に頑張ってきた。
  でも、志穂はそれ以上に私の事を支えてくれた。

  死んでからも、こうやって私の事を守ってくれている。
  いまでもあの子は、私を愛し続けてくれている。

  そして私も、ずっとこの気持ちは変わらない。

  手紙を封筒に戻し、チェストにしまう。
  そして電気を消し、目を閉じた。

  だんだんと、だんだんと深い眠りへと落ちていく。

71 名前: 彩 ◆mWaYx4UM2o 投稿日: 2006/02/20(月) 00:16:07.26 ID:Tw2qS6o90

  (ここは……)
  見慣れた景色……そうだ、ここは家の玄関だ。
  いつの間に帰ってきたんだろうか。
  靴を脱ぎ、ガラス戸を開け廊下へと上がる。

  「あ、彩ちゃんお帰りっ!」
  廊下の角からぴょこんと顔を出す。
  その足元には子猫も一緒だ。
  「し……ほ……?」

  全速力で、志穂に駆け寄った。

72 名前: 彩 ◆mWaYx4UM2o 投稿日: 2006/02/20(月) 00:21:23.91 ID:Tw2qS6o90

  「志穂ぉっ!会いたかったよぉっ!!」
  力いっぱい志穂を抱きしめる。
  「ほらほら彩ちゃん、泣かないの」
  この声、この感触、間違いない、志穂だっ!!

  「彩ちゃんありがとうね……志穂の事、忘れないでいてくれて」
  なだめるように、アタシの髪を撫でてくれる。
  「だって、アタシには、志穂しかいないからっ!!」
  抱き合う2人の足元でミルクがじゃれつく。

  「ありがとう……これからは、ずっと一緒だよ彩ちゃん。ずっと、ずっと……」
  窓から、暖かい光が差し込み2人を包み込んだ。
  「いこう、彩ちゃん」
  「うんっ」
  また、一緒になれたね。志穂……


  ~完~