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  まずは、だ。
  ペヤングの上蓋をはずして沸騰したお湯を注いでやる訳よ。
  かやく?ああ、もったいないけどポイだ。ブラザー。

  容器のラインの所までお湯が入ったか?よろしい、ならば蓋を閉じるがよい。
  おおっと、角にある湯切り口はちゃんと今のうちに開けておくんだぜ?
  後でやると熱くてたまんねぇからな。

  さぁ、2分半の辛抱だ。何?容器には3分と書いてあるだって?
  ノンノンノン、それじゃぁ柔らかすぎだ。
  こだわる男は2分半。これプロの常識。

  ……しかし我ながら1人ごとが多くて困っちまうぜフゥハハハハァァッ!!

  2……1……オッケーベイベー!2分半だ!
  一気に湯を切れ!やけどはするなよ!
  流しがボコンと言っても自然現象だ、気にするな!

  もういいだろう、蓋を開けてっと……OH~、湯気の向こうにマイパラダ~イス!
  ダッシュで部屋に直行だ!

  えっと改造済カップメン容器はっと……あったあった。
  蓋がついてて穴が開いてるだろ?コレがポイントよ。
  こいつにペヤングの麺を移し変えてやって……っと。

  PCの準備もオッケー、麺もいい感じの硬さ、温度も人肌。
  いくぜぇっ、ステファニィィィッ!!

  ヘッドフォン、セットオォォンッ!!
  右手にマウス、左手に穴あきカップメン容器。当然下半身はネイティブモード!!
  AVIファイル再生、息子にちからがみなぎるみなぎる!!
  今だっ、P・H・D(ペヤングホールデバイス)そうちゃぁぁぁっくっ!!

  オゥイエェェ……いいぜいいぜ最高だぜスティーブン……
  ねっとり絡み付いて、それでいて繊細……
  これはまさに、神が生み出した芸術だね!

  や、やべぇ!このままだと男優より先にイっちまう!!
  ピストン停止……おっしゃぁフィニッシュ近いぜェ!
  F・P・M・P(フラッシュピストンマッハペヤング)発!動!

  うっ……げぇぇぇっ!体位変更だとおぉぉっ!?
  もう中に出しちまったってのこっちは。
  ん?メディアプレイヤーの黒い空白部分になにやら映って……


                  ■


  状況を整理しようかスネーク、まずは俺の状態だ。
  ヘッドフォンで外界からの音声情報が遮断され、視覚も無料サンプルエロ動画に集中していた。
  装備……ヘッドフォンにTシャツに手作りオナホール。以上だ。
  今ちらっと見えた……ああ、記憶と照合させている所だ。ちょっと待ってくれ。

  ……そうだスネーク。お前の言うとおりありゃ俺の妹だ。

  ……そういや部屋の鍵、かけたっけ?


  ……


  あばばばばばばばばぁっ!!!!!

  げ、幻覚とかそんなチャチなもんじゃねぇよな、あの、ドアの隙間がちょっぴりあい、開いてるのって……

  とりあえずそっと……まだ装着中の手作りオナホから、汁が垂れないように細心の注意を払いながら
  うっすらと開いてるドアへと近づいていく。
  よし、とりあえず誰もいないな。ノブに手をかけ、そぅっと引き……音を立てないようにしてドアを閉めた。
  当然しっかり施錠を施して、だ。

  ディスプレイに反射してたのは……間違いない、柚子葉の野郎だ。
  あいつの事だ、見ていたならそれをネタに、絶対、脅迫とかしてくるはず……
  いや、現場を直で押さえて写メ撮るとか……
  待てよ、今現在なんらアクションが無いのは……罠!罠なのか!!

「やめてよぉ、お兄ちゃん」

  亜qwせdrftgyふじこlp;@:!?
  ……脅かすなよマリリン。とりあえずAVI再生止めてっと。
  あ、そうだ。
  オナホも外さなきゃな……中の麺はいつものように窓から裏のドブにポイっと。

  まぁ何だ。見間違いかもしれないって事もあるかもしれないしな。
  俺はベッドの上にひっくりかえり、あれこれ思案を巡らせていた。
  アイツに赤点テストを奪われ、仏壇に祭られていた時の事やら、風呂に入ってる隙に
  着替えを全部隠された事や……いやさウチの風呂、離れにあって一度野外に出ないといけないんだよ。

  カタッ、どこかで物音がした。
  とっさに両手をお椀のようにして、スタンバイモードになっているわが息子を隠す。
  ……どうやら敵襲では無いようだ。

  それにしても……

  何のアクションも無いのが、返って恐ろしい……


                    ■


 「今週は一家4人そろって夕飯食べられるの、今日だけかぁ……」

  晩飯。四角いテーブルを挟み向こう側に両親、ヤツは俺の右隣に座っている。
  一家四人……まぁ親父さんがそういう所にこだわるのも無理は無い。
  母さんと親父さんが再婚して6年、一般家庭以上にそういう事が気になるってのは
  俺だって十分理解している。

 「ね~ね~アニキぃ」
 「な、なんだよ」

  一瞬背筋がはりつめ、思わず声が上ずってしまう……まさか、いくらコイツでも、
  こんな所で事は起こすまい……

 「ほら、アレなんだろ」
 「あ~?どれだよ……蚊か?まだそんな暑く……アッー!」

  てめぇぇぇっ!!ハンバーグ1/4切れ残ってたのに食いやがったなぁぁぁっ!?

 「ん?どったの?」

  悪びれもせず、口をもぐもぐさせながら小首をかしげつつ俺を見つめる。
  すこしつり目ぎみのくりっとした瞳。柔らかそうな頬。
  うっすらピンク色の、デミグラスソースがくっついているすらっとした唇。

  コイツの素性を知らない奴なら騙されるんだろうが、俺にその罠は通じない。
  コイツは……悪魔だ。

「……何でもねぇよ」

  反論した所で、証拠が無いの兄さんなんだから我慢しろのとなるのは目に見えているので
  毎度のごとく不戦敗を決め込んだ。

  その日は特に何事も無く(と言ってもあやうく親父さんの歯ブラシで、歯を磨く羽目になりそうになったが)
  次の日、朝食。

「柚子葉は今日何時ごろになりそう?帰り」
「ん~……6時半ぐらいかな、合奏コンクール近いし」

  台所からの母さんの問いかけに、ヤツがトーストをほお張りつつ答える。
  俺も用心ぶかくマーガリンをすくい取り、それをトーストに塗りつける。
  ……さすがに楽器用グリスとか食わされちゃたまらんしな。用心用心っと。

「金曜は出来るだけ早めに帰ってきてよ、私も勝彦さんも夜いないんだし」
「は~い」

  あ、そういえば明後日は母さんも親父さんも夜いないんだっけか……
  ……ん?
  もしかして……俺、ピンチなのでは?ペヤング事件の事があるし……

  まぁ、あれから特に何があった訳でも無し、便りが無いのは平和な証って事で……

「いってきまーす」

  母さんに挨拶し、自転車に飛び乗り学校を目指す。
  ああ、今日もいい天気ですがすがしい。五月晴れってやつか。
  ……あ?
  あぁぁぁぁ!?パンクかぁっ!?

  学校まであと15分という所でチャリの後輪がガッタンガッタン言い出しやがった。
  仕方なくその場で止まり、後輪をチェックする。
  ……空気の入れ口金具が緩んでやがった。

「遅刻確定だな、こりゃ」

  あぁ目を閉じなくても鮮やかに頭に浮かんでくるよ。
  ダークブラウンのふわふわの髪を揺らしながら、嬉しそうに高笑いする、あの野郎のツラがなぁぁぁぁっ!!!


                    ■


「今日は帰り遅かったね、アニキ」
「うっせ……」

  あいも変わらず悪びれもせず……帰り道にチャリ屋が無ぇってのも計算済みだったろテメェ!!
  ――などと母さんの前で言う訳にも行かず、黙々と肉じゃがを口に運ぶ。
  無論、下手に口答えして『あの』一件の事をばらされたりしようものなら……と言うのもあるが。
  いや、見られたって確証は無いんだけども用心用心……

  とりあえず、自転車の一件以外は特に何も無く一日を終えられたなっと。
  さ~て風呂入って歯ぁ磨いて寝るか。
  ……ん?俺の部屋のドアが開かないヨ~?
  って、何で蝶番の所に釘が刺さってるんだぁぁぁぁっ!!!
  無駄に手間ひまかけやがってぇぇぇぇっ!!

  バールのような物、どこにしまってたっけねぇ、ハァ……


                    ■


  翌日。
  ……あぁ?目つき悪いだぁ!?
  うっせーこちとらバール探して釘抜いてで2時間しか寝てねぇんだ!!

  ぱぱっと朝飯食って、学校……ああ、授業中ほとんど寝てたしあんま覚えて無ぇ。
  家帰って親父さんとヤツの3人で飯食って。
  風呂よし、歯磨きよし。
  さぁぁぁぁぁぁ、寝るぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!
  ドアも普通に開くぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!

  ……あれ?
  マクラドコー?
  おーい、枕~……

  仕方ね、座布団丸めて枕替わりにするか……
  ところでさ、俺って修学旅行とかで枕替わると寝られないタチなのよね。
  ええ、ええ、ヤツもその事はご承知済みですともさ。
  ……明日の夜が思いやられますね、これは。


                    ■


「じゃ行ってきま」

  何か黄色く見える太陽の日差しを浴びながら、今日も学校へ向かう。
  次にこの敷居を跨ぐときは、ヤツと俺との2人っきりの夜って訳なんだな……ハァ。
  学校でしっかり寝ておこう。何が起きるか分かったもんじゃない。

「お~い」

  あ~何か後ろの方から声が聞こえてき……いや待て、この声は、この声は……ッッ!!

「あんだよ、一体」
「大丈夫?アニキ……なんかフラフラしてたけど」

  そうです、こういう奴なんですよこの悪魔は。悪びれもせず、いけしゃぁしゃぁと……
  その濃紺色のブレザーも、何と言うか黒衣?そんな風に見えちゃうね!

「てめぇ、誰のせいでこんなになってると……
だいたい昨日、今日とで合わせて4~5時間しか寝てないんだぞ俺は!!」

  あ、学校で寝た分は入れてませんよっと。

「そうだったんですかぁ、大変だったんですねぇ~」

  女でなきゃ、妹でなきゃ、一発ぶん殴って……ぶん殴ってやれるものをっっ!!
  指先で肩に軽くかかる、ゆるやかなウェーブの髪をクルクルいじりながらいつものように悪びれず。

「……いっぺんシメるか?あぁっ!?」
「あのですね、ヤンキーでも今時そんな事いいませんから。それに――」

  髪をいじっていた指がピタっと止まり、自転車にまたがったまま真っ直ぐ俺の方を見つめてきた。

「――あの事、バラしちゃってもい・い・の・か・なぁ~?」

  口角がニィッと上がり、どこか怪しげな光を放つその瞳に……思わず背筋が凍りついた。

「なんだよ、あの事って」
「さぁて、何でしょ~?」

  じんわりと嫌な汗をたらしている俺をよそに、ガサゴソと自分のカバンを漁っている奴。
  あの事と言うのは……やっぱりあの事なのか?
  奴は相変わらず、鼻歌なんか唄いながらカバンを探っている。
  何を考えているのか分からない……いや、1つだけ確実に分かっている事がある。
  ――俺にとって良からぬ事、って事だ。

「はいよ、アニキ」
「痛っ!」

  半ば呆然としている俺に何やら硬く、四角い物が投げつけられ、それは見事に眉間に命中した。
  足元に落ちたそれ……眠気覚ましのブラックガムだった。

「今日は寄り道しないで帰ってくるんだよ~」

  やっぱり何を考えているんだか分からない。
  手を振り去っていく背中を眺めながら、俺は怒りと戸惑いと不安とを頭の中で幾重にも廻らせていた。


                    ■


「おっかえりぃ、今日は寄り道しなかったんだね~、エラいエラい」

  学校でしっかりと睡眠を取り、家に帰り着いた俺を出迎えたのは
  居間からの小バカにしたような奴の声だった。
  それを無視し、階段を上り自分の部屋へと滑り込む。

  上着を脱ぎつつ、ぼんやりと考える。
  下におりて行くべきか、いっそこのまま部屋に閉じこもっていた方が……

「お~い、さっさと出て来~い引きこもりぃ~」

  突然、けたたましいノックと共に聞きなれたあの声が鳴り響いた。

「な、何なんだよ引きこもりっておいっ!」
「だって、ロクにただいまも言わず部屋に直行しちゃうんだも~ん。人間的にどうかと思うよ?ソレ」

  テメェに言われたくは無い。
  相手をするのもうっとうしいので、無視してネクタイをベッドの上へと放り投げる。

「返事ぐらいしろよぉ、ヒッキー」
「他人の部屋に勝手に入ってくるのは人間的にどうかと思うぞ?」

  ドアの開く音がしたので首だけをそちらへと向ける……
  奴がドアの隙間から顔だけ突っ込んで、こちらを伺っていた。

「まだ入ってないも~ん、覗いてるだけだも~ん」
「じゃ、覗きだな。このパパラッチ」
「もしかしてアニキ、覗かれてイヤなの?男のくせに?」
「男だろうと女だろうと嫌な物は嫌だろうが、普通」

  さすがに奴の見ている前で服を脱ぐ訳にも行かず、ベッドに腰掛け奴を正面に見据えて
  災難が去るのを待つ事にした。

「あっそ。減るもんでも無いのに」

  これで去るのか……僅かばかり油断したその時、奴が顔だけでなく、全身丸ごと部屋の中に入ってきた。

「何勝手に入ってるんだよ、おいっ」
「だって覗くなって言うんだもん。だから正々堂々見てやる事にしたの」

  なるほど、理屈は正しい……いやちょい待て、前提問題がおかしいだろそれ!!

「そうじゃ無くって、人のプライバシーを侵害するなとっ!!」
「たとえばオナってる所覗くなとか?」

  不意に確信を突かれ、思わずその場で硬直してしまった。

「え……あ……」
「う~ん、普通にならともかく……カップメン使うとか引くよ?普通」

  頭の芯が痺れ、反論の言葉も出てこない。

「そういえば中の麺とかどうしてんの?まさか食べてるとか……?」
「そ、そんな訳ねぇだろ!」

  さすがに人間の尊厳を否定されかねない事を言われては、黙ってなどいられない。
  ……この際妹にオナってる所見られたってのは置いといて、だ。

「じゃ、どうしてんのよ」
「捨ててる」
「どこに?それっぽい生ゴミは見たこと無いし」

  黙って窓を指差す。
  奴もそれに従い窓へと近寄り、そこから表を眺める。

「何、もしかしてあのドブに捨ててたの?それであのドブあんなに汚いんだぁ……」

  いや、それは昔からずっとだし。

  奴の後ろ姿を眺めていて、ふと妙な点に気が付いた。
  タンクトップにホットパンツと言うんだろうか?短パンみたいなのをはいていたのだが……
  何と言うか、それの口が足に対して大きすぎるというか……そのくせ、丈が短くて……
  奴が身を窓から乗り出すと、見える訳だよ。
  薄緑と黄色のストライプの端っこが。

「んな訳ねぇだろ、バカバカしい」

  口ではき捨てつつも、つい視線がそこへと集中してしまう。

「何にしても非道徳的だと思うわ、不法投棄って奴?」

  そう言いながら奴が身を捻り振り向く。
  とっさに視線を横にあるPCの方へと逸らしてしまった。

「うっせぇな……」