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「うん、びっくりした?」 「ま、まぁ、ちょっとは驚いた」 さすがにおねぇにいろいろいたずらされ続けている僕でさえ、想像の及ばない話だった。 まぁ、僕がおねぇにされていることを言ったら、智のほうがびっくりするだろうけど。 「お兄さんって、東京で働いてるんだっけ?」 「そう。それなんだ」 「ん?」 「すっごく忙しいみたいで、さっぱり会えなくって。前に会ったのなんて、去年の秋だよ。 年末にも帰ってこなかったんだから」 「忙しいんだね」 「うん。なのに、電話でだいっきらいっていっちゃって。忙しいはわかってるのに」 智は壮大にため息をついて肩を落とした。 「僕の誕生日にね、どっか旅行に連れてってくれるって言ってたんだけど、急に仕事が 入ったとかでキャンセルされちゃって」 「そっか、来月だっけか」 「うん」 「ザンネンだね」 「そうなんだけど、でも、本当ににぃが忙しいのは分かってたんだ。」 どう慰めてあげたらいいんだろう。 「G.W.のときにね、にぃのところに遊びに行ったら、ゴミ箱がウィダーで溢れた。 忙しくってご飯食べてないんだって言っててさ、僕なんかの作った料理をおいしい おいしいって食べたくらいだったんだ」 そういってはにかむ智はとても愛らしく、見たことも無い兄と言う人にちょっと嫉妬を 覚えそうになった。 「すっごい忙しいんだね」 「うん。なのに、にぃに-僕のことどうでもいいって思ってるんでしょ、にぃが 全然分からないよ-っていちゃって、気が付いたら大嫌いって言ってしまって」 僕は静かに話の続きを待つ。 「そしたらさ、-そっか-って言われて電話切られちゃって。それからメールも電話も 全然来なくなって。」 辺りは少し暗くなっていてよく分からなかったけど、智は泣いているようだった。 「もう・・・嫌われちゃったかな。ダメなのかな・・・もう」 愛おしいってのはこんなときのことを言うんだろうと思う。僕は智の肩に手を伸ばして引き寄せ、 なぜだか抱きしめていた。 そんなに長い間じゃなかったと思うけど、それでも座りながら抱き合うなんてカッコウが キツイ体勢だって分かるくらいは時間が過ぎていた。 「ごめんね、ヘンな話しちゃって。気持ち悪かったかもしれないけど、ちょっとすっきりした。」 「そんなことない」 「・・・うん」 「ほんとにほんと、全然気持ち悪いとか思ってないから」 智はにっこり微笑む。僕はほんとにこれっぽっちも気持ち悪くない。 それがちゃんと伝わっていないような気がしてもどかしかった。 「うん」 あぁ、だめだ、このままじゃ絶対に伝えられない。そう思い込んでしまった僕は 何を思ったか智に口付けてしまっていた。周りの音が遠のいていく。 間近に驚きに目を見開いている智の顔がある。僕、なにやっちゃってるんだろう。 「ほ、ほらな、全然きもちわるとか思ってないだろ」 なにが、ほらなのか思い返すと自分でも分からないけど、智もおどいているようで、 そんなことには気付かない様子だった。 「ありがとう。弘はやっぱり優しいね」 「なんだよそれ」 「ううん、聞いてもらえて、ちょっと楽になた。」 「そっか。よく分からないけど、あれだ、もう一度ちゃんと離したほうがいいよ絶対。 「そうだね、そうしてみる。あと、コレはありがとうね。」 そういって智はコーラを掲げて見せた。 「うん、家宝にでもしてくれ」 僕は暗い雰囲気を打ち消すように、おどけた調子で返した。 「弘が、ともだちでよかった」 「ともだちかよー、恋人でもよかったのに」 「くすっ」 ますますおどけてみせる。僕にはそれしかすることができなかった。 「暗くなってきたし、帰ろっか」 「うん・・・帰ったら電話してみる」 「そうだね。仲直り、できるといいね」 「うん」 智はもとの智に戻っているように見え、僕はなんだかちょっと誇らしい気持ちになっていた。
「うん、びっくりした?」 「ま、まぁ、ちょっとは驚いた」 さすがにおねぇにいろいろいたずらされ続けている僕でさえ、想像の及ばない話だった。 まぁ、僕がおねぇにされていることを言ったら、智のほうがびっくりするだろうけど。 「お兄さんって、東京で働いてるんだっけ?」 「そう。それなんだ」 「ん?」 「すっごく忙しいみたいで、さっぱり会えなくって。前に会ったのなんて、去年の秋だよ。 年末にも帰ってこなかったんだから」 「忙しいんだね」 「うん。なのに、電話でだいっきらいっていっちゃって。忙しいはわかってるのに」 智は壮大にため息をついて肩を落とした。 「僕の誕生日にね、どっか旅行に連れてってくれるって言ってたんだけど、急に仕事が 入ったとかでキャンセルされちゃって」 「そっか、来月だっけか」 「うん」 「ザンネンだね」 「そうなんだけど、でも、本当ににぃが忙しいのは分かってたんだ。」 どう慰めてあげたらいいんだろう。 「G.W.のときにね、にぃのところに遊びに行ったら、ゴミ箱がウィダーで溢れた。 忙しくってご飯食べてないんだって言っててさ、僕なんかの作った料理をおいしい おいしいって食べたくらいだったんだ」 そういってはにかむ智はとても愛らしく、見たことも無い兄と言う人にちょっと嫉妬を 覚えそうになった。 「すっごい忙しいんだね」 「うん。なのに、にぃに-僕のことどうでもいいって思ってるんでしょ、にぃが 全然分からないよ-っていちゃって、気が付いたら大嫌いって言ってしまって」 僕は静かに話の続きを待つ。 「そしたらさ、-そっか-って言われて電話切られちゃって。それからメールも電話も 全然来なくなって。」 辺りは少し暗くなっていてよく分からなかったけど、智は泣いているようだった。 「もう・・・嫌われちゃったかな。ダメなのかな・・・もう」 愛おしいってのはこんなときのことを言うんだろうと思う。僕は智の肩に手を伸ばして引き寄せ、 なぜだか抱きしめていた。 そんなに長い間じゃなかったと思うけど、それでも座りながら抱き合うなんてカッコウが キツイ体勢だって分かるくらいは時間が過ぎていた。 「ごめんね、ヘンな話しちゃって。気持ち悪かったかもしれないけど、ちょっとすっきりした。」 「そんなことない」 「・・・うん」 「ほんとにほんと、全然気持ち悪いとか思ってないから」 智はにっこり微笑む。僕はほんとにこれっぽっちも気持ち悪くない。 それがちゃんと伝わっていないような気がしてもどかしかった。 「うん」 あぁ、だめだ、このままじゃ絶対に伝えられない。そう思い込んでしまった僕は 何を思ったか智に口付けてしまっていた。周りの音が遠のいていく。 間近に驚きに目を見開いている智の顔がある。僕、なにやっちゃってるんだろう。 「ほ、ほらな、全然きもちわるとか思ってないだろ」 なにが、ほらなのか思い返すと自分でも分からないけど、智もおどいているようで、 そんなことには気付かない様子だった。 「ありがとう。弘はやっぱり優しいね」 「なんだよそれ」 「ううん、聞いてもらえて、ちょっと楽になた。」 「そっか。よく分からないけど、あれだ、もう一度ちゃんと離したほうがいいよ絶対。 「そうだね、そうしてみる。あと、コレはありがとうね。」 そういって智はコーラを掲げて見せた。 「うん、家宝にでもしてくれ」 僕は暗い雰囲気を打ち消すように、おどけた調子で返した。 「弘が、ともだちでよかった」 「ともだちかよー、恋人でもよかったのに」 「くすっ」 ますますおどけてみせる。僕にはそれしかすることができなかった。 「暗くなってきたし、帰ろっか」 「うん・・・帰ったら電話してみる」 「そうだね。仲直り、できるといいね」 「うん」 智はもとの智に戻っているように見え、僕はなんだかちょっと誇らしい気持ちになっていた。 な・の・に、おねぇは!!! 「知らなかったなぁ、弘くんは男の子もいけたのねぇ」 「ちょっと、おねぇ!」 「ま、彼くらいかわいいと仕方ないか。うんうん」 「へんななっとくするなー」 「照れない照れない。うふふふ」 智ごめん、僕はおねぇと仲良いほうじゃないかもしれない。

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