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チョコ妖精【1】」(2006/01/19 (木) 10:32:44) の最新版変更点

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部屋に帰ると、「へんなの」がいた。 講義を終えて、一人暮らしの寂しい部屋に帰る。 あれ? なにかおかしい。違和感がある。そう、部屋の奥に何か…… いる。 その「何か」は、少年だった。窓際においてあるベッドに腰掛けて、差し込む夕日を浴びながら、脚をぶらぶらさせている。 しかも満面の笑みをこっちに向けてくる。うわ、超かわいい。 「やっとかえってきましたねー?」 まだ幼さが残る声で、そう声をかけてくる。ああ、帰ると声が返ってくる暮らしなんて、もう1年ぶりくらいか。なつかしい。 ……いや、そうじゃなくてだな。 「おまえ、誰? てか、なんでウチにいるわけ? カギは?」 「? いや、おにーさん、何言ってんのかよくわかんないです。それより、ただいま、は?」 顔に似合わず、肝が据わってるらしい。 「ああ、ただいま」 律儀にあいさつ返すあたり、何やってんだろう。オレ。 ちょっと泣きたくなった。 「えっとぉ、僕は、要するに妖精さんです」 「ちょっと待ってろ。病院と警察とその他諸々の機関に連絡するから」 もはやオレが通報されないためには、先手を打つより他にない。そういう確信があった。 「おにーさん、ぼくのこと信じてないんですね?」 いや、信じろというほうが無理があると思う。 「まぁ、どこに連絡とってもらっても、無駄ですけどね。ぼく、戸籍とかありませんし」 妖精ですから、だそうだ。なんじゃそりゃ。 しかしオレも曲がりなりにも大学生、妖精さんですよなんて言われて、はいそうですか、ってワケにはいかない。 そういうものはアタマの中だけで楽しむものだ。子供相手で心苦しいが ……ちょっと、本気になろうか。 「少年。冗談はいいかげんにしようか? なあ?」 「おにーさん、アタマだいじょぶ? ぼく、冗談言ってないよー?」 んのクソガキ……っ。 「オレの負けだ。信じよう。」 にらみ合いを20分位続けた後(といっても、にらんでるのは俺だけで、自称妖精はそ知らぬ顔でにこにこしてただけだったのだが)、結局折れたのはオレだった。 ……。いや、顔を見つめてたら萌えちゃった、とか、そんなんじゃないよ? 「で、お前は何の妖精なの?」 「えっとですねー、ぼくはぁ、チョコレートの妖精なのです」 ああ、確かにそろそろそういう季節だな。うん。もうすぐ2月だし。 ……って、なんで納得してるんだろうか。いや、もうどうでもいいか? 「ふうん? チョコの妖精さんね? で、なんでこの部屋に湧いて出たわけ?」 「あ、ヒトをムシみたいに言うなんてヒドイです!」 オレにとっちゃ「突然現れた正体不明」だから同じなんだよ。そんなこと言っても仕方がないから言わないけど。オレの思いをヨソに「妖精」は続ける。 「おにーさんには、ぼくのやさしさがわかんないんですか?」 「やさしさ?」理解に苦しむ。 「そうですよぉ! ちっともモテなくて今年もまたゼロ個記録を伸ばしそうなおにーさんのためにこうしてぼくが……」 余計なお世話だ。帰れ。 また泣きたくなった。

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