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糸冬了【1】」(2006/01/26 (木) 22:13:58) の最新版変更点

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<h2>糸冬了(1)</h2> <p align="right">著者不詳</p> <p>  放課後。いつもの様にいじめられる糸冬了を、俺はだまってみていた。<br> それは、傍観者としてではない。いじめの主犯格として、教室の自分の机に座っていた。<br>  了をいじめだしたのは……ごく最近のことだ。<br> それも、クラスの男子が「糸冬って名前さ、駄洒落だよな。ダッセー。」と彼をからかっているのを見つけ、<br> 最近いじめに飢えていた俺は、つい手を出したというわけだ。<br>  しかし、俺が手を出したのは他にがある。<br>  彼がからかわれたそのとき、俺は被害者の反抗を始めてみた。<br> 「てめぇ。ぶっ飛ばすぞ……!」<br>  彼は普段喋らなかった。転校してきたときの簡単な挨拶も、<br> クールすぎるほどに黙って席に着いてしまったので、先生から少しあっただけだった。<br> 授業中当てられても黙るだけなので、親を呼ばれていたこともあったほどだ。<br> 「なっ……。じょ、冗談だって。なにキレてんだよ。」<br>  ギロリと睨み付ける目、初めて聞く声、その全てにもう1人は逃げ出した。<br> そう、それこそが俺の本当の手をつけた理由……のはずだった。</p> <br> <p>  今も、俺の手下どもと了のいじめ……というよりも喧嘩に近いものを眺めていた。<br> 正直言って、了は強い。<br> 「おいおい、お前ら使えんなぁ。ん? 1対3で互角とか…………。なぁ、了くん。俺とさしで……ね?」<br>  手下の1人が俺の言葉に口を挟もうとしたが、俺は軽々と制した。<br> 言葉が終ると了はより反抗的な目で俺を睨みつけてきた。<br> 「よしっ。それじゃぁ、お前ら帰れ!」<br>  俺は少しの笑いを堪えて、手下どもに手を振った。</p> <br> <p> 少し流れる沈黙が俺らの気持ちを高ぶらせる。<br> 誰もいない教室で、そして、誰もこない教室で好きあっている、<br> もしくはそれ以上の感情を持っている俺らが2人っきりだという事だけで、十分なムードだった。<br> 「今日も……ごめんね?」<br>  俺の言葉が静かに沈黙を破った。何も言わない了を見て、<br> 僕はできるだけ優しく、彼の肩に両腕をまわした。<br> 「ちょっっっ、やめろよ!!」<br>  ぎゅっと力を入れた瞬間に了が口を開いた。そして、今まで雰囲気が崩れる。<br>  思わず俺は笑ってしまった。<br> 「いいじゃん。俺、こういう、何か、学園ドラマっぽい展開好きだ――。」<br> 「だまれ。」<br>  遮って了が言い放つ。<br> 「了くーん。俺、その素直じゅないとこ好きだよー。」<br>  今の俺キモいな、と思いつつ続けた。いつも了の前ではこんな感じだ。<br> かなり教室とのギャップが激しいことは自覚していた。</p> <br> <p> 了の性格……かなり、俺のタイプだ。<br> 素直じゃなくて、それでもって、稀に顔を真っ赤にして素直になったり、何気に俺にメロメロだったり。<br> その全てに俺は惚れきっていた。<br> 「正直言って、キモい。」<br>  更に了が言い放った。<br> 「もう、素直じゃないなぁ。」<br>  俺は了に抱きついた……いや、飛びついた。<br> 「やめろってっ! ていうか、声聞こえるからっ!」<br>  クールな了くんは俺たちの為に、先生が来るのを気にしているんだな。と、勝手に妄想し、そのまま答えた。<br> 「ダイジョブだって、担任は会議だし……他の先生もだいじょぶだろ?」<br>  心で「たぶん」と呟いて、机に了を押し倒した。</p>
<h2>糸冬了(1)</h2> <p align="right">委員長</p> <p>  放課後。いつもの様にいじめられる糸冬了を、俺はだまってみていた。<br> それは、傍観者としてではない。いじめの主犯格として、教室の自分の机に座っていた。<br>  了をいじめだしたのは……ごく最近のことだ。<br> それも、クラスの男子が「糸冬って名前さ、駄洒落だよな。ダッセー。」と彼をからかっているのを見つけ、<br> 最近いじめに飢えていた俺は、つい手を出したというわけだ。<br>  しかし、俺が手を出したのは他にがある。<br>  彼がからかわれたそのとき、俺は被害者の反抗を始めてみた。<br> 「てめぇ。ぶっ飛ばすぞ……!」<br>  彼は普段喋らなかった。転校してきたときの簡単な挨拶も、<br> クールすぎるほどに黙って席に着いてしまったので、先生から少しあっただけだった。<br> 授業中当てられても黙るだけなので、親を呼ばれていたこともあったほどだ。<br> 「なっ……。じょ、冗談だって。なにキレてんだよ。」<br>  ギロリと睨み付ける目、初めて聞く声、その全てにもう1人は逃げ出した。<br> そう、それこそが俺の本当の手をつけた理由……のはずだった。</p> <br> <p>  今も、俺の手下どもと了のいじめ……というよりも喧嘩に近いものを眺めていた。<br> 正直言って、了は強い。<br> 「おいおい、お前ら使えんなぁ。ん? 1対3で互角とか…………。なぁ、了くん。俺とさしで……ね?」<br>  手下の1人が俺の言葉に口を挟もうとしたが、俺は軽々と制した。<br> 言葉が終ると了はより反抗的な目で俺を睨みつけてきた。<br> 「よしっ。それじゃぁ、お前ら帰れ!」<br>  俺は少しの笑いを堪えて、手下どもに手を振った。</p> <br> <p> 少し流れる沈黙が俺らの気持ちを高ぶらせる。<br> 誰もいない教室で、そして、誰もこない教室で好きあっている、<br> もしくはそれ以上の感情を持っている俺らが2人っきりだという事だけで、十分なムードだった。<br> 「今日も……ごめんね?」<br>  俺の言葉が静かに沈黙を破った。何も言わない了を見て、<br> 僕はできるだけ優しく、彼の肩に両腕をまわした。<br> 「ちょっっっ、やめろよ!!」<br>  ぎゅっと力を入れた瞬間に了が口を開いた。そして、今まで雰囲気が崩れる。<br>  思わず俺は笑ってしまった。<br> 「いいじゃん。俺、こういう、何か、学園ドラマっぽい展開好きだ――。」<br> 「だまれ。」<br>  遮って了が言い放つ。<br> 「了くーん。俺、その素直じゅないとこ好きだよー。」<br>  今の俺キモいな、と思いつつ続けた。いつも了の前ではこんな感じだ。<br> かなり教室とのギャップが激しいことは自覚していた。</p> <br> <p> 了の性格……かなり、俺のタイプだ。<br> 素直じゃなくて、それでもって、稀に顔を真っ赤にして素直になったり、何気に俺にメロメロだったり。<br> その全てに俺は惚れきっていた。<br> 「正直言って、キモい。」<br>  更に了が言い放った。<br> 「もう、素直じゃないなぁ。」<br>  俺は了に抱きついた……いや、飛びついた。<br> 「やめろってっ! ていうか、声聞こえるからっ!」<br>  クールな了くんは俺たちの為に、先生が来るのを気にしているんだな。と、勝手に妄想し、そのまま答えた。<br> 「ダイジョブだって、担任は会議だし……他の先生もだいじょぶだろ?」<br>  心で「たぶん」と呟いて、机に了を押し倒した。</p>

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