「チョコ妖精【5】」(2006/01/22 (日) 12:13:41) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
<h2>チョコ妖精(5)</h2>
<p align="right">著者不詳</p>
<p>部屋に帰ると「へんなの」が増えてた。<br>
<br>
あー、なんだソレ。またちまいのが増えたなオイ。<br>
「どこからソレ連れてきた」<br>
「えっとぉ……橋の下?」<br>
<br>
それは一月くらい前。突然俺は「チョコの妖精」と同居することになった。<br>
全身チョコ風味のそいつ・少年/外見年齢12歳/実年齢約200歳は、カワイイ顔をして案外淫乱……いや、違う。そうじゃなくてだな。ともかく、オレの生活を阻害し放題阻害した。<br>
食事は余分に作らされるし、こんなのが部屋にいるなんて、知られるわけにも行かない。毎日戦々恐々だ。<br>
で、それが「増えた」。<br>
仮にも人間の外見をしてるソレを「捨てて来い」と言えるほど、オレは道徳心を捨ててない。仕方無しに話を進める。<br>
「で、今度は何なんだ?」<br>
「…『悪魔』だってさ」<br>
あくま。悪魔ですか。ああそうですか。まあそういうこともあるかもね。妖精もいるし。あはは。はぁ……。</p>
<p>
「然り。我は『悪魔』である。役目は『幸福退散』、能力は『関係の切断』、対象は『人間』である」<br>
……。<br>
さて、やっぱり病院に行ってこようかな。疲れがたまってるのかもしれない。<br>
「逃げるでない、青年」<br>
「いやだ。オレはそろそろ精神科に行ってくる」<br>
よし、ハッキリ言ってやったぞっ! しかし、そんな達成感に満悦してもいられないらしい。左側から抗議の声が上がる。<br>
「ちょっとぉ! おにーさん、なんでそんなこと言うのぉ!? まさかあの、ぼくとの『熱い一日』を忘れたとでもっ!?」<br>
「いや、あれも多分幻覚妄想の類で、オレの脳神経が作り出した幻影だからさ」<br>
っていうか、あの時間帯、記憶おぼろげなんだけど。<br>
「おにーさん、独我論の類は他人に語った瞬間に偽になるんだよ? だから、その主張は無駄無駄無駄ー。拒否します」<br>
なんだそれ。<br>
「それにぃ、ほら、小さい子を困らせちゃいけないでしょお?」<br>
「小さい子って、どうせまた外見年齢と実年齢が一致してないんだろ? 今度は悪魔だからな。世界と同年齢だったりするんだろ?」<br>
しかし、悪魔少年はちょっと困ったように首を振る。<br>
「青年。肩書きだけで物を判別しようとするでない。我は、いわば『生まれたて』である」</p>
<p>「…『生まれたて』?」<br>
「然様。この世に在ることを許されて、然程時間がたっておらん。まだ赤子のようなものよ。 …といっても、御主ら人間とは尺度が異なるだろうがな」<br>
はぁ、そうですか。<br>
「で、実年齢、おいくつ?」<br>
80とかか。<br>
「生まれて、8年である」<br>
やっつかよ。小学生じゃないか。まさかそこまでとは……<br>
「実に3日前に、実体、すなわちこの体を獲得したばかりである。然るに、これが最初の仕事というわけだ」<br>
よろしくたのむぞ、と握手を求められる。<br>
「ああ、よろしくな」<br>
つい握手を返すあたり、オレも律儀なものだ。 ……ん?握手?「よろしくな」?<br>
相手 は 悪魔 だぞ ?</p>
<p>
「うふふ♪ よかったねぇ、『悪魔』くん。これで最初のお仕事が始められるね」<br>
「労い、感謝する。ここまで道程、貴公の助けによるところ甚だ大きい。重ね重ね、感謝申し上げる」<br>
目の前で超常存在が2人、なにやら会話を繰り広げているが、しかしそんなことは知ったことではない。<br>
オレはもはや呆然とするしかなかった。<br>
『人間』の『関係を切断』して『幸福退散』する『悪魔』と『よろしく』することに、してしまったのだ。<br>
つまり、どういうことか?<br>
「青年。困っているようだな? ふふん。小気味良い。もっと困るがいいわ。今後貴様は、友人も失い、恋人も作れずに、一人寂しく短い余生を送るのだ」<br>
残念だったな、と、悪魔は不適に笑う。<br>
「ん? ってことは、おにーさんがもはやマトモにコミュニケーション取れる知り合いは、僕しかいないってことかな?」<br>
やったぁ、と、妖精は無邪気に笑う。<br>
「あは、あはははははははは……」<br>
オレは、空虚に笑う。笑う。あはははは。</p>
<h2>チョコ妖精(5)</h2>
<p align="right">著者不詳</p>
<p>部屋に帰ると「へんなの」が増えてた。<br>
<br>
あー、なんだソレ。またちまいのが増えたなオイ。<br>
「どこからソレ連れてきた」<br>
「えっとぉ……橋の下?」<br>
<br>
それは一月くらい前。突然俺は「チョコの妖精」と同居することになった。<br>
全身チョコ風味のそいつ・少年/外見年齢12歳/実年齢約200歳は、カワイイ顔をして案外淫乱……いや、違う。そうじゃなくてだな。ともかく、オレの生活を阻害し放題阻害した。<br>
食事は余分に作らされるし、こんなのが部屋にいるなんて、知られるわけにも行かない。毎日戦々恐々だ。<br>
で、それが「増えた」。<br>
仮にも人間の外見をしてるソレを「捨てて来い」と言えるほど、オレは道徳心を捨ててない。仕方無しに話を進める。<br>
「で、今度は何なんだ?」<br>
「…『悪魔』だってさ」<br>
あくま。悪魔ですか。ああそうですか。まあそういうこともあるかもね。妖精もいるし。あはは。はぁ……。</p>
<br>
<p>
「然り。我は『悪魔』である。役目は『幸福退散』、能力は『関係の切断』、対象は『人間』である」<br>
……。<br>
さて、やっぱり病院に行ってこようかな。疲れがたまってるのかもしれない。<br>
「逃げるでない、青年」<br>
「いやだ。オレはそろそろ精神科に行ってくる」<br>
よし、ハッキリ言ってやったぞっ! しかし、そんな達成感に満悦してもいられないらしい。左側から抗議の声が上がる。<br>
「ちょっとぉ! おにーさん、なんでそんなこと言うのぉ!? まさかあの、ぼくとの『熱い一日』を忘れたとでもっ!?」<br>
「いや、あれも多分幻覚妄想の類で、オレの脳神経が作り出した幻影だからさ」<br>
っていうか、あの時間帯、記憶おぼろげなんだけど。<br>
「おにーさん、独我論の類は他人に語った瞬間に偽になるんだよ? だから、その主張は無駄無駄無駄ー。拒否します」<br>
なんだそれ。<br>
「それにぃ、ほら、小さい子を困らせちゃいけないでしょお?」<br>
「小さい子って、どうせまた外見年齢と実年齢が一致してないんだろ? 今度は悪魔だからな。世界と同年齢だったりするんだろ?」<br>
しかし、悪魔少年はちょっと困ったように首を振る。<br>
「青年。肩書きだけで物を判別しようとするでない。我は、いわば『生まれたて』である」</p>
<br>
<p>「…『生まれたて』?」<br>
「然様。この世に在ることを許されて、然程時間がたっておらん。まだ赤子のようなものよ。 …といっても、御主ら人間とは尺度が異なるだろうがな」<br>
はぁ、そうですか。<br>
「で、実年齢、おいくつ?」<br>
80とかか。<br>
「生まれて、8年である」<br>
やっつかよ。小学生じゃないか。まさかそこまでとは……<br>
「実に3日前に、実体、すなわちこの体を獲得したばかりである。然るに、これが最初の仕事というわけだ」<br>
よろしくたのむぞ、と握手を求められる。<br>
「ああ、よろしくな」<br>
つい握手を返すあたり、オレも律儀なものだ。 ……ん?握手?「よろしくな」?<br>
相手 は 悪魔 だぞ ?</p>
<br>
<p>
「うふふ♪ よかったねぇ、『悪魔』くん。これで最初のお仕事が始められるね」<br>
「労い、感謝する。ここまで道程、貴公の助けによるところ甚だ大きい。重ね重ね、感謝申し上げる」<br>
目の前で超常存在が2人、なにやら会話を繰り広げているが、しかしそんなことは知ったことではない。<br>
オレはもはや呆然とするしかなかった。<br>
『人間』の『関係を切断』して『幸福退散』する『悪魔』と『よろしく』することに、してしまったのだ。<br>
つまり、どういうことか?<br>
「青年。困っているようだな? ふふん。小気味良い。もっと困るがいいわ。今後貴様は、友人も失い、恋人も作れずに、一人寂しく短い余生を送るのだ」<br>
残念だったな、と、悪魔は不適に笑う。<br>
「ん? ってことは、おにーさんがもはやマトモにコミュニケーション取れる知り合いは、僕しかいないってことかな?」<br>
やったぁ、と、妖精は無邪気に笑う。<br>
「あは、あはははははははは……」<br>
オレは、空虚に笑う。笑う。あはははは。</p>
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: