「貴之と貴司【9】」(2006/01/23 (月) 00:42:46) の最新版変更点
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<h2>貴之と貴司(9)</h2>
<p align="right">著者不詳</p>
<p>「ああ、そうできるように考えてみる」<br>
兄さんはそういうと、ちょっとぎこちなく僕をハグしてくれた。<br>
ポンポンと叩かれる背中がとってもここちいい。<br>
こうなると、僕は全部がどうでもいいなって思っちゃう。<br>
兄さんは意志が強い人だし、本当に出て行くなら僕がお願いしてもむだってことくらい<br>
わかっているつもり。それでもやっぱり僕はごねてしまう。そしてそれを恥じるんだ。<br>
「親父とお袋が心配するし、そろそろもどろっか」<br>
体越しに伝わる兄さんの声はいつもよりちょっと低く響いてきて、いっそう僕を気持ち<br>
よくさせてくれる。<br>
「はい。」<br>
本当はもう少しこうしていたいって思ったけど、これ以上兄さんを困らせたら嫌われ<br>
ちゃいそうだし、素直に返事をすることにした。<br>
ごめんね、兄さん。いつもいつも心配かけてばっかりで。<br>
僕は感謝の気持ちがいっぱいいっぱい溢れてきて、自然に言葉が出た。<br>
「兄さん、大好きです」<br>
自分のじゃないみたいに聞こえる声。<br>
兄さんはびっくりしたような顔をしている。<br>
なんだかとっても恥ずかしい。ほっぺたが熱い。</p>
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