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高良」(2006/01/27 (金) 19:58:36) の最新版変更点

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「にーちゃん、おかわりー」 「はいはい、わーったよ」 元気よく突き出された漆塗りの椀を、苦笑しつつ受け取る。豆腐とネギだけの シンプルな味噌汁を注いでいるあいだも、足をぱたぱたさせながら高良の話は続く。 「それでそれで、先生がね、兄ちゃんのことすごく良いお兄さんだねって言ってくれたの」 「そっか…一回面談行っただけなのに、よく覚えてるなあの先生も」 高良の担任と会ったのは、忙しい父親の代わりに行った面談の一回きりだったはずだ。 高校生の兄が行っても良いものなのだろうか、とひやひやしたけれど、家庭の事情を知って いる初老の教師はあたたかく俺を迎えてくれて、ひどく安心したことを覚えている。 けれど、相手のほうも俺を覚えているとは思わなかった。炊き込みご飯を食べながら、にこにこと高良が笑う。 「だっていつもおれが兄ちゃんの話してるんだもん! 父ちゃんの代わりに勉強教えてくれたりするよー、とか、 いっつもおいしいご飯作ってくれるんだー、とか」 「よせよ、恥ずかしいな」 照れているのを悟られたくなくて、別に喉が渇いたわけでもないのに何度もコップに口をつける。 高良が小さいうちに死んだ母親の代わりを、どうやら務められているらしいと知って内心ほっとしながら。 「あとねあとね、このまえぎゅーってしたまま一緒に寝てくれたのー、とか」 「ぶふぁっ!」 不意の爆撃に、俺は思わず盛大に烏龍茶を噴き出してしまった。慌てて布巾をつかみ、テーブルを拭く。 「に、兄ちゃん大丈夫!?」 「お、お前、それ言ったのか!?」 「それって?」 小首をかしげた高良に訊かれ、一瞬言葉に詰まる。 いや、別に兄弟だし、男同士だし、うなされる弟を思ってやったことだし、ええと、……なんで俺うろたえてるんだ? 「…いや、なんでもない」 「ほんとに?」 「ああ、大丈夫。ありがとうな、高良」 心配そうに俺の顔を見つめる高良に、どきどきしながら応じる。そうだ洗い物しないと、と言い訳のように呟いて 食卓を離れる俺の背中に、見なくてもわかるほど顔を輝かせた高良の声がかかった。 「兄ちゃん、今日も寝るときぎゅーってしてくれる?」 「………ああ、いいよ」 何かを諦めて返事をしながら、俺は一体何を動揺しているのだろう、と今更のように考えた。

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