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きーちゃんの遭難ごっこ」(2006/01/31 (火) 16:01:28) の最新版変更点

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「しまったなぁ」  寒風吹きすさぶ中、僕は一人つぶやいた。  家の鍵を忘れてきて、締め出されてしまったんだ。  お母さんが帰ってくるのは遅いし、それまでどうしようかととぼとぼ歩いていると、  道のど真ん中で突っ立っているきーちゃんに出会った。 「きーちゃん、何してるの?」  ぼんやり空を見上げていたきーちゃんに声をかける。 「ん、ゆーちゃんか。雲の形が変わってくのを見てたんだ」 「こんなところで…寒くないの?」 「小松フォークリフト型だった雲が、豊田自動織機のフォークリフトに変わっていくのが面白かったものでつい」 「そ、そう…」  幼稚園の頃からの付き合いだけど、いまだにきーちゃんが分からないときがある。 「確かに寒くなってきた。風もきついし」 「あ、雪だ」  頭の上は晴れているのに、ちらちらと雪が舞い始めた。遠くの空に広がってる雲から風で飛んできたのかな。 「まずい。吹雪いてきた」  きーちゃんが深刻そうな顔で言う。……吹雪いて? 「このままだと遭難してしまう」 「こんなとこで遭難なんてしないよー」 「雪山を舐めるなー!」 「ええー?」  どうやらきーちゃんは、雪山遭難ごっこを始めたみたいだった。唐突になりきりごっこを始めるのはきーちゃんの癖だ。 「縦走路から外れたのかもしれない。窪地の積雪は危険だ。早くビバークするところを見つけないと」  やけに設定が凝っている。 「ぐずぐずしてると死んじゃうよ」  そう言ってきーちゃんはとっとこ歩き出した。仕方なく後をついていく。

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