「雅人と孝彦【1】」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

雅人と孝彦【1】」(2006/01/31 (火) 16:09:26) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

陶器の人形のようだ、と雅人は思った。 孝彦の顔には、およそ感情と呼べるものは窺えない。 度々こういうことがある。何も感じていないはずはないのだ。 なのにこうやって、雅人を拒むかのように、心を見せようとしない。 「たか君、本当に東京に行っちゃうの?」 「うん、父さん転勤だから。仕方ないよ」 微笑とも、苦笑ともとれない笑みが孝彦の口元に浮かぶ。 「なんで…、なんで」 鼻の奥がつんっとする。 「たか君、こっちに残ればいいだろ」 「…僕だって、こっちには友達がいるし、雅人と離れたくない。でも、」 聞きたくない。 「無理だよ。わかるだろ?子供には、無理だよ」 孝彦はいつもそうだ。 できないことをできるとは決して言わない。 ほんのちょっとだけ現実から目を逸らすような、そんな一時凌ぎの嘘でさえ。 「2度と会えないわけじゃない」 また会おう、とは言わない。会いに来れるか判らないからだろう。 遠くても、電車でなら会いにいける。 でも飛行機に乗って行くのは、孝彦にとっても、雅人にとっても簡単なことではない。 孝彦と、会えなくなる。 遊べなくなる。 一緒に自転車に乗ることも、ゲームをすることも、野球をすることも、もうできない。 また会えるかもしれない。 だけど、孝彦が明言を避けたのだ。もう一生会えないかもしれない。 それならせめて、雅人のことを忘れないで欲しい。

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
人気記事ランキング
目安箱バナー