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雅人と孝彦【2】」(2006/01/31 (火) 16:10:48) の最新版変更点

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最後の思い出に2人だけでなにかしたい。 そう思って、人気のない場所を探していたら、体育用具室に辿りついた。 体育用具室というのは、なぜこうもジメジメとして薄暗くて、人の不安を煽るのだろう。 しかし孝彦は落ち着いたもので、床に転がっているロープを足でクルクルと弄んでいる。 「それで、」 囁き声とともに、孝彦の顔がゆっくり雅人のほうを向く。 闇色の瞳が雅人をみつめる。 暗がりに溶け込むような髪、対象に白く浮かび上がる顔と肢体。 暗闇に孝彦はとても似合っている、と雅人は思った。 「ここでどうするの?」 「え、えと…」 何も考えていなかった。 「その…」 いや、本当はやりたいことがある。 ずっと、願っていたことがある。 いつか、今ではなく『いつか』叶えたいと切望していたこと。 ――孝彦とキスがしたい。 それを言えば嫌われえるかもしれない。 気持ち悪いと蔑まれるかもしれない。 誰に嫌われても構わない。だけど、孝彦にだけは拒まれたくない。 それだけは、雅人には耐えられない。 しかし。 チャンスはもう、今日だけなのだ。 今を逃せば、孝彦に2度と会えないかもしれない。 それにもし、いや、ほぼ確実だが、例え白い目で見られたとしても、それで孝彦の記憶に残るのなら本望かもしれない。 それが忌まわしい記憶だとしても、孝彦の思い出に永遠に刻まれるのなら。 例え雅人にとっても忌まわしい記憶になったとしても。 今しか、ない。 唇が震える。 「あ、あのね」 顔を見れない。うつむいて、孝彦の靴をみつめる。 「き、」 心臓が痛い。 走り回って泥だらけになった、孝彦の靴。 「き、キス…したい…たか君と…」 頭の中で、血の流れる音がゴウゴウと響く。 泥だらけの、靴。 孝彦の靴。靴下。足。 「いいよ」 ――声。

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