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夏の日、監房【1】」(2006/01/31 (火) 17:02:37) の最新版変更点

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「うあぁっ…!」 ついに捕まった。僕は全力疾走中に後からシャツをつかまれて倒れ込んだ。もう逃げられない。 その瞬間、僕の心を支配したのは、恐怖と絶望と羞恥心、そして後悔。 「約束は守ってもらうからな!」 僕の視界のなかで、陽に灼けた男の子が僕を見下ろしてそういった。ヒロ。僕のクラスメートで小学6年生。 普段は学校の野球部で活躍している。すこし癖のある髪を短めに刈ったヒロが口元を歪ませている。 こういうヒロの表情をなんて言うんだろう。シギャクテキ? いつもなら整った感じのする彼のほっそりとしたあごも、今の僕にはひどく攻撃的に見える。 「………」 むしあつい夏の公園のグラウンドに座り込んで、僕はなにも言えなかった。 あまりにも高まった緊張のせいかなのかぼやけてしまった視界に、今度は二人の人影が入り込んできた。 二人もやっぱり僕のクラスメートだ。その片方は不満そうな表情を、もう片方は期待に満ちた表情を僕に向けている。 それぞれが、僕が途中で逃げ出したことへの怒りと、これから起こることへの好奇心の現れなんだと僕は思った。 三対一。これで僕が逃げ出すチャンスは完全に失われた。これから僕の身に起こることを想像して、僕は心の底から後悔した。 もし全力疾走でなんとかヒロから逃げ切れていれば。もしこの賭けに負けていなかったら。 いや、野球部のヒロの足に僕が勝てるわけは最初からなかったし、このカケだって勝てる保証はなかったんだ。 僕がそもそもこんなゲームに参加していなければこんな恥ずかしい目に遭うことは… ぐらり。両うでを痛いぐらいにつかまれてひっぱられ、僕ははっとした。 心の中に今までに感じたことのないほどの苦い感情が広がった。僕がどんなに後悔しても目の前の現実ってものは変わらないんだ。 両脇のクラスメートが僕を立ち上がらせ、「目的」の方向へ向けた。公園のすみにあるコンクリート造りでタイルばりの四角い建物が見える。 公園におとずれた人が用を足す為だけにあるそれは、今日、僕の為の監房に、なる。 きっかけは些細なできごとだった。僕ら四人は近所の公園に集まっていた。 「ここの遊具でいつものように鬼ごっこ。ただし…」 普通の遊びに飽きたヒロたちが、賭けを思いついたんだ。 「…一番最後に鬼だった人は、トイレでシコってもらいまーす!」 公園の時計でながい針が0分の所に来るまで鬼ごっこをして、最後まで鬼だった子がトイレで… …他の三人が見ている前でマスターベーションをする。そういうことらしい。 本気なの…?と思ったけど、本気らしい。ヒロが、異存はないね?と一応確認を取る。 僕は…正直あまり乗り気じゃない。もちろん僕はマスターベーションというものを、したことはある。 初めてそれを知ったのは、合宿で一緒になった中学生から話を聞いた時だった。 できない。他の人にそんなところを見せるなんて。一人でもあんなに悪いことをしたような気分になるのに… でも…今ヒロ達に僕が反対したら?クラスメートの反論が思い浮かぶ。 「それじゃあ、俺ら3人だけで遊ぶから、お前は好きにすれば?」「みんなの前でしたくないんだったら、鬼にならなければいいんだよ。」 何故か、あんなに嫌悪感があった僕の心が、賭けに参加する方に急激に傾き始めていた。 大丈夫。実際にしなきゃいけないのは四人にひとり。僕は鬼ごっこには自信があるし、それこそ本当に鬼にさえならなければ全く問題無い。 その時は、勝手に三人でトイレにでも何にでも入ってればいいんだ。それに…ちょっとだけエッチなことにも興味があるし、その時はその時だし… 「それで、お前もやるんだな?」 聞かれた。 「あ…、うん。僕、やる。」 答えた。

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