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無人島【1】」(2006/02/06 (月) 15:26:30) の最新版変更点

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無人島に行く人。 電波少年で飛ばされたろっこつマニア。 漂流する十五少年。 自分のことがサトラレだとわかった不幸な人。 そして、僕。 僕は毎朝足繁く無人島に通っている。 その無人島には荒涼として不毛な土地が広がり、北側には大きな岸壁がそそり立っている。 気候は温暖だが、やはり天気は変わりやすく、突然降水があったりする。 無人島とはいっても何も生息していないわけではなく、島固有の生物が生息している。 僕が島に行くと近寄ってくる性質があり、さまざまな泣き声を発する。 じっとしていれば危害を加えてくることは少ないが、手癖が悪くすぐに履物などを盗むので注意が必要である。 白いものを汚す習性があるらしく、無人島での出来事を書き記すために持ち込むノートなどは汚されることが多い。 ここで最も得難いのは食糧だ。 オアシスらしきところに植物が自生しているが、食べられる実をつけることはない。 仕方がないので島の生物のえさを食べるのだが、たまに腐臭がすることがある。気をつけなければならない。 やはりわかっていても孤独はつらいもので、言葉の通じない動物をやり過ごさなければならないとなると自然と涙が溢れてくる。 人間の涙を見ると興奮するという得意な機構を持った生物は、より一層にぎやかになり神経をやられそうになる。 そして、観測が終わると帰宅する。 このような毎日を続けている。 これが僕のような子供の義務であり、将来のためになるのだという。 そんな無人島観測だが、最近人間の言葉を話す動物が現れた。 人間並みの知能を持つとは到底思えない生物なだけに、これは世紀の大発見である。 昨日も突然の降水に見舞われると、タオルを貸してくれた。 シュウタと名づけられたそのオスは、ほかの個体とは異なっている点が多々ある。 言語能力だけではなく、その容貌も目を惹くものがあった。 「だいじょうぶ?」 それが彼の精一杯の言葉であるらしく、それだけ言うと一目散に僕の元を離れていった。 僕はそのやわらかな白い布を握り締めながら、一人机に突っ伏して肩を揺らした。 乾燥して冷たい肌というのはずっとその状態なら麻痺していてそのことにすら気づかないことが多い。 しかし一度暖かな空気に触れると耐え切れず痒くなり、温かみを求めてしまう。 それができないのがつらいところだ。 彼らには動物園のサル山のように不文律があり、掟を破ったものには制裁が加えられる。 そして、それが起こったのはある日の食糧配給の時間であった。

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