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ノエ外伝【1】」(2006/02/06 (月) 15:59:55) の最新版変更点

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今日は泥団子を投げつけられた。昨日は石だったから、それに比べればマシだと思った。 あいつらが僕を目の敵にする理由はわかってる。……僕が、混血の子だからだ。 同年代の子供達は、その明度に違いはあっても金髪——僕の髪は、鴉みたいに真っ黒。 目だって赤い。……僕は、あいつらのあの真っ青な目が嫌いだ。 帰り道はいつだって独りぼっち。山の向こうに落ちていく夕陽が目に沁みて、何だか少し、胸が苦しい。 「少年、何を泣いている」 突然、声が聞こえた。僕に向けられたのかどうか、辺りを見回すと、畦道に男の人が立っていた。 男の人は僕の方を見ていない。それでもそう声を掛けたのは、きっと見ていたからだろう。 「……泣いてなんかいません」 知らない人に見られた恥ずかしさと苛立ちで、僕はそっぽを向く。 「……そうか。私の見間違えのようだな」 男の人は素っ気無く呟くと、言葉を続けた。 「ところで少年、名を何と言う?」 僕は、自分の名前が嫌いだ。 混血の子、赤眼の不吉な鴉の癖に、名前だけは紳士みたいだな、なんてからかわれるから。 「……言いたくありません。見ず知らずの人に名前を教えたくありません」 ——後になって振り返ってみれば、僕はこの時なんて失礼な事を言ってしまったんだ、と自分を叱りたくなる。 「ふむ、では自己紹介をしよう。私は——」 これは、僕の大切な思い出。 兄様と僕が初めて出会った、あの夕焼けの記憶。
今日は泥団子を投げつけられた。昨日は石だったから、それに比べればマシだと思った。<br> あいつらが僕を目の敵にする理由はわかってる。……僕が、混血の子だからだ。<br> 同年代の子供達は、その明度に違いはあっても金髪——僕の髪は、鴉みたいに真っ黒。<br> 目だって赤い。……僕は、あいつらのあの真っ青な目が嫌いだ。<br> 帰り道はいつだって独りぼっち。山の向こうに落ちていく夕陽が目に沁みて、何だか少し、胸が苦しい。<br> 「少年、何を泣いている」<br> 突然、声が聞こえた。僕に向けられたのかどうか、辺りを見回すと、畦道に男の人が立っていた。<br> 男の人は僕の方を見ていない。それでもそう声を掛けたのは、きっと見ていたからだろう。<br> 「……泣いてなんかいません」<br> 知らない人に見られた恥ずかしさと苛立ちで、僕はそっぽを向く。<br> 「……そうか。私の見間違えのようだな」<br> 男の人は素っ気無く呟くと、言葉を続けた。<br> 「ところで少年、名を何と言う?」<br> 僕は、自分の名前が嫌いだ。<br> 混血の子、赤眼の不吉な鴉の癖に、名前だけは紳士みたいだな、なんてからかわれるから。<br> 「……言いたくありません。見ず知らずの人に名前を教えたくありません」<br> ——後になって振り返ってみれば、僕はこの時なんて失礼な事を言ってしまったんだ、と自分を叱りたくなる。<br> 「ふむ、では自己紹介をしよう。私は——」<br> <br> <br> これは、僕の大切な思い出。<br> 兄様と僕が初めて出会った、あの夕焼けの記憶。<br>

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