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ノエ外伝【2】」(2006/02/06 (月) 16:01:57) の最新版変更点

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名前を聞いて初めて、男の人が貴族だとわかった。でもそれが何だというのだろう。 貴族だろうが平民だろうが、きっと僕の苦しみなんてわかってくれないだろうし——あいつらと同じように、僕を虐めるかもしれない。 だから名前は言いたくない。言えばきっと笑われる。あいつらみたいに青い目で見下ろして、僕を笑うに決まってる。 「……少年。私は名乗ったぞ。出来れば君の名前を教えてほしいのだが?」 男の人は困ったように笑った。……それはあいつらの笑いとは違う、なんだか大きくて優しい笑顔だった。 熱に浮かされるように、僕の咽喉が言葉を紡ぎだす。 「……僕は、ルーク……ルーク=ウェルマー、です……」 こんなに名乗るのが怖いなんて思ったのは、初めてだ。 あいつらに嫌われるのは構わない。僕だってあいつらが嫌いだし、立場が違えば僕もあいつらを虐めていたかもしれないから。 でも、なぜだか、この人には、嫌われたくない。 「そうか、ルーク……いい名だ。誇り高き騎士の名だ」 耳を疑う。 「今、何て……?」 男の人は困ったように溜息を吐くと、僕の傍までやってきて、その大きな手を僕の頭に乗せた。 「いい名だ、と言ったのだ、ルーク。君は聡明な紳士になるだろう、私が保証する」 その手がゆっくりと動く。今更になって、ああ、僕は頭を撫でられているのか、なんて事に思い当たる。 それは、何て心地の良い。 ぽたり、と雫が落ちた。……あれ?夕立かな……? 「……済まぬ、気に障ったか?」 違います、そんな短い言葉が、上手く紡げない。 その雫が自分の涙だと気付いた頃には、僕はとうとう、大声で泣きだしてしまっていた。

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